天地明察(上) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 8960
感想 : 826
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003183

作品紹介・あらすじ

四代将軍家綱の治世、ある事業が立ちあがる。それは日本独自の暦を作ること。当時使われていた暦は正確さを失いずれが生じ始めていた--。日本文化を変えた大計画を個の成長物語として瑞々しく重厚に描く時代小説

第7回本屋大賞受賞作、待望の文庫化!
監督:滝田洋二郎、主演:岡田准一で映画化も決定!2012年9月公開

感想・レビュー・書評

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  • 人は情熱を注ぐ対象があることで、幸せを感じ、挫折を味わい、感動するのだろう。

    良い小説。描写の細やかさが、私の好みにぴったり。
    主人公の若さゆえ、どこか青臭さを感じさせる部分も、すごく上手に表現されている。馴染みの無い言葉も出てくるが、漢字から意味を汲み取って読んでおけば特に差し支えない。

    江戸時代。碁打ちの名家に生まれた春海。
    お偉方の相手をし、碁を教え、どこか退屈な日々を送っている。
    奇しくも碁への精通が、彼を思いもよらぬ、出会いや機会へといざなってゆく。
    自分の生き方への疑問を抱いた春海。
    そして敷かれたレールから外れ、自らの情熱に従い、算術いわゆる数学に傾倒して行く。
    関孝和という男の影が、春海を生涯、算術の坩堝へと、引き摺り込む。

    江戸時代に行われた星の測量事業に参加したこときっかけに、優秀で老齢な技術者の野心に触れた春海。
    意思を受け継ぎ、いつか日本の暦の改革を誓う。

    活力溢れる若き青年が、偉大な功績を残すであろう物語や如何に。ワクワク。

    上巻読了。下巻へ。

  • 江戸時代、神社の絵馬に出題者が作成した算術問題に対して、興味ある者がそれを解き、正解だったら「ご明察(はっきりと真相や事態を見抜く)」と出題者が記載。このような古き良き日本の姿が誇らしく思う。江戸城内でお偉方に囲碁を教える主人公・渋川春海。あまりにも平凡でつまらない日々に飽き、算術問題に熱中する。さらに、お偉方から日本中を訪れ、北極星の位置を基に、日本独自の暦(こよみ)を作る壮大なプロジェクトを拝命する。同道する老人2人の熱い想いに触れ、新知見を得たいという欲求を追い求める姿に感銘した。下巻も楽しみ。

  • 冲方丁を読むのは「十二人の死にたい子どもたち」に続き、これで二冊目。

    天地明察については、名前を知っていた程度。なんとなく、タイトルとあらすじから難解な印象を持っていた。

    実際には、やはり角川文庫だけあって読みやすい。全年齢向けと言った印象。語り口はポップで、感情移入も容易い。キャラクターも分かりやすいものが多い。少年マンガ誌で漫画化されてもおかしくない感じ。

    上巻では、江戸城の碁打ちである主人公が、算術士として北極星の測量の旅に出るところまでを描く。

    個人的には、日本史に明るくないので、江戸の社会感というか雰囲気を改めて学べた想い。家柄や職業が今よりも固定化されていた時代。江戸城でどうやって生き残っていくか、という観点には池井戸潤のような、会社小説・立身出世小説のテイストを感じた。

    それから、碁打ちであり算術士である主人公の、好きなものに没入する感じも良い。三浦しをんの「舟を編む」のような、独特の世界にのめり込んでいく様が読んでいて気分がいい。囲碁と算術に関して、その道のライバルや大先輩が登場するのも良い。才能や好奇心を扱う小説は、やはり自分の好みのジャンルだと再確認。

    SF小説好きとしては、暦がズレていることによって「今日があさってになっている」という現象に、SF的要素を感じてしまった。暦が正確であることが当たり前の現代だからこそ、それがズレているという可能性は新鮮に読めた。

    文量は多くなく非常に読みやすいので、1日もあれば読めてしまうと思う。娯楽小説としては、文句ない仕上がり。

    大きな思惑に巻き込まれた主人公がどうなっていくのか。暦改変プロジェクトがどうなっていくのか。下巻を読むのが楽しみ。

    (より詳細な感想などは、書評ブログの方を宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%AE%E7%AE%97%E8%A1%93%E5%A3%AB%E3%82%92%E6%8F%8F%E3%81%8F_%E5%A4%A9%E5%9C%B0%E6%98%8E%E5%AF%9F%E4%B8%8A_%E5%86%B2%E6%96%B9%E4%B8%81

  • 上巻を読み終えた段階で「これは良い小説だなあ」と感じ入る小説でした。それだけ登場人物たちの魅力が溢れ返っている。

    碁打ちの名門の家に生まれ、上覧碁という過去の棋譜を暗記したものを将軍の前で披露し、それを将軍に解説する、そんな御城碁を打つことを勤めとする渋川春海。

    そうした決まり切った碁を打つことに退屈を覚えていた春海が熱中するのは、算術と暦術。
    春海はある日、江戸には算額という算術の問題が記された絵馬が多数奉納されている神社があることを知り、早速見に行くのだがそこで衝撃的な出会いをする。

    鳥居に刀をぶつけたり、絵馬の下に刀を忘れてきたりと、ドジというか、算術のことになると周りがみえなくなる春海。そんな春海の性格や物腰、言葉遣いはどこかユーモラスで穏やか。
    そのため親しみやすいキャラクターなのですが、彼の内に秘めたる葛藤が明らかになるにつれ、その葛藤の熾烈さにまた驚きます。

    退屈な城での勤め、義兄や名門の家との関係性。渋川春海というのも本名ではなく、春海自身が勝手に名乗っているのですが、そこに秘めた思い。そして算術や暦術に熱中する理由も、そんな退屈さや窮屈さから逃れたいため。

    穏やかでユーモラスなのに、満たされない忸怩たる思いを抱えている。そのギャップが春海をより魅力的に映し、読者を引き込みます。

    算額を見に訪れた神社で、衝撃を受けた春海は幻の算術の名人を求め、江戸を歩き回り遂に一つの塾へたどり着く。そこにいたのは、神社でも出会った、ハキハキした性格と言葉遣いの娘のえんと、塾の師範である村瀬。

    えんの性格やはっきりと物事を言う性分であったり、村瀬の気さくに、そして真摯に春海と向き合ってくれる感じであったりと、脇を彩る登場人物たちもそれぞれに魅力が光る。
    そして村瀬は春海にある算術書を貸し出し、春海はそこでもまた衝撃を受けて……

    春海に絵馬のことを教えた安藤は、渋川と名乗る春海の思いをおもんばかり、律儀と筋を通しつつ、共に算術を楽しみ、上巻中盤では春海に重大なことを気づかせてくれる。そして春海と同じく御城碁を打つ道作は、若い才能を持て余し上覧碁に退屈を覚え、春海をライバル視し、真剣勝負の場を望む。その青さと熱さ、そして春海との対比もまた読ませる。

    春海の元に訪れた転機。日本各地で北極星の位置を観測する“北極出地”の命が春海に下されます。旅立ちの直前春海は大きな挫折を抱え、この北極出地の旅に出るのですが、そこで、共に旅する二人の老人、建部と伊藤がこれまた魅力的。

    二人とももはや隠居してもおかしくない年でありながら、全国をめぐり星を観測し、そして見果てぬ夢を、どれだけ手を伸ばしても届かないように思える天と星へ挑み続ける。

    その飽くなき探究心や、好奇心も読んでいて清々しく、この旅と、二人との出会いも春海に大きな影響を与えます。そして春海が二人と結んだ約束。上巻の一つのピークともいうべき感動的な場面です。

    まだ上巻ながら、印象的な登場人物、そして場面が数多くあり、下巻が楽しみなのはもちろんなのだけれど、読み終えるのが既に勿体なくも感じ始めています。

    第31回吉川英治文学新人賞
    第7回本屋大賞1位

  • 誰からも愛される性分の春海なので、とても応援したくなります。理系男子とでもいいましょうか、春海と安藤の2人が算術についてキラキラと嬉しそうに話している姿は好感が持てました。
    観測隊の建部、伊藤両名にあっても若い春海にさまざまな良い影響を与えてくれる大人たちでした。建部とは永遠の別れになってしまいましたが、きっと腕に天を抱きながらこれから天と壮絶な勝負が始まるであろう春海を見守っていることでしょう。
    えんも春海のもとから去ってしまったのが心残りになってしまいました。再度挑んだ関孝和への設問は命が宿っているようでした。
    ここまで読んで清々しい気持ちになりました。下巻も楽しみです。

  • 若かりし春海の真っ直ぐなところや、それを見守る建部と伊藤の大きさが読んでいて心地よかったです。下巻も楽しみです。

  • 映画を見ようか本を読もうかと思ってスルーしてた作品。

    私は天文学も数学も結構好きなので面白かったですね。
    ちょっと文章はさらさらしているので
    マンガか映画の方がより良いのかな。ということで
    ★一つ減らして4つ。

    そういえば岡田准一と宮崎あおいって
    この映画で夫婦役なんですねえ。しみじみ。

  • 舞台は江戸時代ですが、読みやすい文章で、内容も理解しやすいように工夫されています。当時からの日本人の持つ謙虚さや美意識、勤勉さというのを感じられました。北極星を観測して全国を巡る旅は、やや駆け足気味でしたがとても素敵ですね。2010年6月に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」が、地球を離れて60億kmを巡る宇宙の旅の雄大さや、他天体の物質を持ち帰り、日本中を賑わしたのもついこの間のこと。宇宙という広い世界に思いを馳せ、憧れる気持ちは、江戸時代の人も今の時代の私たちも、きっと変わらない。下巻も楽しみです。

  • 江戸時代の囲碁や測量の世界を垣間見させてくれて教養としても面白い。主人公のキャラクターが漫画のようでリアリティがないようにも感じた。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』でスニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞受賞。09年に刊行した『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞。2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。他の著作に、『テスタメントシュピーゲル』『もらい泣き』など多数。

「2021年 『麒麟児』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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