ふちなしのかがみ (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.24
  • (88)
  • (303)
  • (578)
  • (147)
  • (27)
本棚登録 : 4758
感想 : 398
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003268

作品紹介・あらすじ

芦田愛菜さんのおすすめ本として大きな話題の一冊!

***

冬也に一目惚れした加奈子は、恋の行方を知りたくて禁断の占いに手を出してしまう。鏡の前に蝋燭を並べ、向こうを見ると――

2009年に発売された辻村深月の短篇集が文庫化。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『コックリさん』というイケナイ言葉の魔力。時代を超えて子どもたちを虜にするこの禁断の遊び。『文字盤を囲み、その中央に鳥居を描く。十円玉をそこに置き、上に指をのせる。そして、幽霊を呼び出す。指が動き出し、十円玉が文字の上をぐるぐる動く。知りたいことを聞いて、答えてもらう』とこれだけで子供の頃の色んな記憶が一気に蘇る人も多いのではないでしょうか。という私は、超がつく怖がりだったこともあって、クラスメイトが輪を作るその場に近づくことができず、遠目に、でも興味だけは持って見ていたのを覚えています。『学校の七不思議』、『トイレの花子さん』、そしてこの『コックリさん』など、思えば学校には今から思えばどうしてあんなに夢中になったんだろうという怖いけど見てみたいという世界がたくさんあったように思います。この作品は、そんなあの日にあなたをいざなってくれます。そう、これは辻村さんのホラー短編集です。(怖いよ〜、でも読みたい、というか読んじゃったよ〜、 怖かったよ〜という世界があなたを待っています)

    『幽霊を見る人は、それを見るだけの理由を持つ。目の前にあるのは、あなたを映す鏡である』。えっ?理由?怖いよ〜。と、唐突な言葉から始まるこの作品。5つの短編から構成されています。私が気に入ったのは次の二つ。一つ目は〈踊り場の花子〉です。『日直のために一人で出勤し、職員室で仕事をしていると、後輩の小谷チサ子から電話がかかってきた』という相川教師。教育実習の際に音楽室に忘れ物をしたので取りに行きたいと相川の元を訪れます。施錠されていたはずの校舎にどうして入れたのか、疑問を抱きながらもチサ子と廊下を歩き出す相川。チサ子は何故か花子さんの話を始めます。花子さんの七不思議、『一つ目、この学校の花子さんは階段に棲んでいる』…と話しをやめないチサ子は、今度は唐突に相川がかつて受け持っていた生徒の話を始めます。そして…、という感じで展開する短編ですが、コレ、怖いです。はい、怖いです。この短編がホラーという意味では一番怖いかもしれません。でも、途中から私に見えてきたのは違う世界でした。辻村さんのデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」、あの世界観がスッと蘇りました。真夏と真冬、先生と生徒というように描かれる世界は一見全く異なりますが、紛れもなくこの世界観は「冷たい」と同じもの。『冷たい校舎の中で、彼らと一緒に過ごしたこと』を思い出し、なんだか怖かったのがいつかノスタルジックな気分に変わってしまいました。でも、『冷たい』を読んだことのない方は、やっぱり、コレ、怖いです。

    二つ目は〈八月の天変地異〉です。これはこの作品の中では異色中の異色。正直なところホラーでは全くありません。『俺はもう二度と、蝉捕りをすることはないんだと思う』というシンジ。『誰だって、あんな夏を過ごしてしまったらそうなるはずだ。あの一週間』と過去を振り返ります。『俺たちの小学校は、各学年とも生徒は二十人くらいしかいない』というシンジはそんな中で、小さい頃から喘息で苦しむキョウスケと一緒に行動することが増え『俺とキョウスケは、みんなの中ではセットだった。一度イメージが固定されてしまうとなかなか変更がきかない』とクラスメイトから孤立していきます。『俺に友達がいないなんて誤解だ』とシンジはある日、あることを語り出します。そして…。この〈八月の〉は、短編という位置づけではありますが、辻村ワールドそのものです。間違ってもホラーじゃありません。感動巨編、もとい感動短編として、結末に向かって、辻村さんの『謎解きモード』を持つ作品同様のあの感動が間違いなく訪れます。こんなところにこんなものが、と全くの予想外で、これは思わぬ収穫だったと感じています。

    『見てはいけない、振り返ってはいけないと禁じられた甘いお菓子を食べることほど、楽しいことはありません』と『あとがき』で辻村さんは語ります。子供時代に親からまたは先生から『○○してはいけません』と言われたこと、本当にたくさんありました。でも『○○してはいけません』と言われれば言われるほどにやって見たくなるのが子供心というものです。『都市伝説、コックリさん、おまじないや占い。小学生の頃、大人たちから、「そんな怖いものばかり読むんじゃありません」と何度注意されたかわかりません』と続ける辻村さん。『そんな「いけないこと」を抱えながら、それでもやめられずに最後まで読み上げてもらえるのが、私が思う、理想の読書のかたちです』と辻村さんはまとめられます。

    この作品が短編集として出されたのは2009年ですが、それぞれの短編はそれ以前に雑誌に掲載されたものです。つまり、今も我々の心を掴んで離さない辻村さんの初期の作品群が書かれた時代と同じ時期に書かれた作品ということになります。あの時代の辻村さんの作品をこよなく愛する人にはまさしく、こんなところにこんなものを見つけた!という逸品がここにあります。正直なところ、あまり期待していなかった分、収穫の大きさに満足した、そんな作品でした。

  • 短編のお話が何個か入ってました。
    最初の物語が読みやすかった。
    どれも少し怖く、ラスト驚き

  • 怖くて不思議な話で面白い。現実と幻想の狭間の境界線がふちなしなのかと思った。ゆらゆらと怖さがやってくる。

  • かがみの孤城をおすすめした友達が、読んで辻村深月さんにハマったみたいで、お試しで買ったこの本が怖すぎで読みきれず、わたしにも読んでみる?と言ってくれました。
    面白いんだけど、それ以上に怖さがあふれて無理……。ホラー苦手なのになんで借りちゃったんだろう、と後悔しました。友達は、おとうさん、したいがあるよまで読んだらしく、わたしはふちなしのかがみでリタイアしたので一作分多く読めたけど、おとうさん、したいがあるよがよくわかりませんでした。ちょっと大人向けだったのかな?今はピアノの上に置いてあります。ゴールデンウィーク終わったら即返したい……そういえば、カバーが二個もついてるんだな。一つ目も二つ目も怖いです……。

  • 花子さんとかコックリさんとか学校の怪談とか青春ホラーを辻村深月さんが描くとこんなに面白くなるんかいなっていう短編集。

    さすがさすがの辻村深月先生!!短編集なんやけど一作目で本当に参りました!さすがです!面白いわ〜しかもなんか流れるような展開が綺麗やわ〜上手いこと書いてるからこんなにもすっぽりと話に入り込んでスッキリと読めてしまうんやろうなぁ〜。

    辻村深月先生の作品は何作か読んでるけどいつも読みだすと「あ〜!さすがやわ!これもめちゃくちゃ面白いやつやん!!」って読み出して数ページで確信できるし残り数ページで満足感が半端ないやんってなってるけどこの作品もまさにそうなってた。

  • ホラーの短編小説だった。
    【踊り場の花子】は小学校の頃の七不思議とか思い出したりして面白かった。
    【ブランコをこぐ足】もコックリさんとか、キューピット様とか…あったなあ〜懐かしい。

    【おとうさん、したいがあるよ】
    これは意味がわからなすぎる…でも気味悪さとかホラー要素ではダントツだと思う。
    死体を見つけた時の周りの反応だとか、その他多く残る謎とか。

    ほかの2話も面白かった。
    最後の話はちょっと切なかったし…

    不思議な読後感。気味悪さを存分に味わえる1冊だった。

    この本に出会わせてくださったフォロワー様に感謝☆

  • 5話短篇集はホラーテイスト。
    特に1話目『踊り場の花子さん』はとっても怖いので、苦手な方は読む場所と時間を選びましょう(笑)

    アチラ側とコチラ側、現実と鏡、真実と夢など、境界線があるはずのものが… が、共通のテーマ(作者あとがきより)

    『おとうさん、したいがあるよ』は難解で混乱(・・;)
    『八月の天変地異』には目頭が熱くなった。
    表題『ふちなしのかがみ』は辻村深月氏ならではの仕掛けもあり、5話それぞれ楽しめた。
    怖かったけど(・・;)

  • ホラーは苦手だけど、辻村深月なら読まなくては!!と購入。奇妙な怖さがじわじわとくるので、逃げ出したくて若干飛ばし読みしてしまいました(汗)そのせいで、ちょっと「?」な部分がいくつかあったので、結局また頭から読み返す事になりそうです(笑)面白かったけど、やっぱり辻村深月は長編がいいな…。

  • 誰もが1度は通過してるのでは?という馴染み深い怪談から、奇妙なホラーっぽい話などの短編集。
    最後まで読んでも、「どういうこと?」な話がありますがそれが面白いポイントかなと思います。
    最後の「八月の天変地異」は小学生の頃を思い出し少し淋しく、懐かしくも感じました。

  • ホラー小説ですが、私には合いませんでした。
    年齢的なものなのか、何も考えずに読んだからか、特に感想もないかなぁ。

全398件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×