スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

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  • 角川書店 (2012年6月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041003275

作品紹介・あらすじ

ホームランを打ったことのない選手が、甲子園で打った16回目の一球。九回裏、最後の攻撃で江夏が投げた21球。スポーツの燦めく一瞬を切りとった8篇を収録。

みんなの感想まとめ

スポーツの持つ一瞬の輝きと人間ドラマを描いた作品は、昭和時代のノンフィクションとして特に注目されます。著者は、普通の人々がスポーツに挑む姿を丹念に追い、選手たちの揺れるメンタルや限界を超える身体の苦悩...

感想・レビュー・書評

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  • 昭和時代のノンフィクション。
    タイトルは知ってたが、実際、読んではない。
    この時代のスポーツと言えば根性論の時代だ。
    のらりくらりとやると監督コーチから怒られるのが、当たり前。でも、ここに出てくる人間はスポーツエリートではない。ごく普通の人間たちだ。
    今から考えると、作家の山際淳司はよく書けたと思う。それも今でも読めるのは、作家の先見の明だ。
    「江夏の21球」以外スポーツはプロではない。
    昭和時代のスポーツと言えば野球と相撲だけか?
    相撲もスポーツとは違うような気がするが…

    読んで気がついたのは、ボイコットがあったオリンピックの時か。そんな時代もありました。

    26/03/28 ノンフィクションなので冊数には入れません。

  • 【概略】
     自負心が脈打っている。13年間のプロ野球生活を支えてきた「マウンドを守る」という自負心、その自負心、ブルペンで肩をつくる投手を見て傷つけられた。「なにしとんかい!」と江夏は心の中でつぶやいた。そんな江夏を救ったのは「オレもお前と同じ気持ちだ。ベンチやブルペンのことなんて気にするな」と江夏に声をかけた衣笠だった。1079年11月4日(日)小雨降る大阪スタヂアムでの日本シリーズ第7戦広島初の日本一を導いた「江夏の21球」をはじめとする日本のスポーツノンフィクション。

    2020年09月09日 読了
    【書評】
     ちょっと野球関連の書籍、それもピッチャーを中心としたゲームの機微がどんな形で描かれているかを知りたくて手にとってみた。自分の野球経験は、小学校で友人とゴムボールとプラスチックバットでやった程度。プロ野球鑑賞をちょっとするぐらい。強烈に印象に残っているのは伊藤智仁選手かな。
     恥ずかしい話、山際淳司さんの作品を読んだのはじめてなのだけど、凄いね。野球選手に限らないスポーツ選手の光と影を見事に描いてる。だからといって影(?)というか、一線を退いた(または退かざるをえなかった)選手についても、魅力的に描いてる。
     モスクワオリンピックへの日本を含めた西側諸国不参加という政治的な要素に振り回されたスポーツ選手不遇の時代というのもあって、現代のアスリートとはまた違った「匂い」を行間から感じさせる。
     個人的には棒高跳びの高橋卓巳選手にスポットライトをあてた「ポールヴォルター」のトーンが好きだったなぁ。高橋選手ご自身が、平凡な中学生から棒高跳びの選手として、まさしくポールの高さがあがるかのような選手としての成長をとげていく様子がよかった。決して恵まれた体格ではなく、でもその体格と置かれた状況を理解し、本当に1センチずつあがっていく様子がわかるような、そんな光景が目に浮かぶような描き方だった。ちなみに棒高跳びって「pole vault」っていうのだね。だから棒高跳びの選手は「pole vaulter」なんだね。
     タイトルとなっている「スローカーブを、もう一球」も、リズムがよくて、イイ。読後感がまるで美味しい紅茶を飲み終わったスッキリ感がある。ここでも「ポールヴォルター」と共通するのが、取り上げられている投手が速球派ではないこと。アスリートだから体格や筋力などの先天的な要素に恵まれてたりするのは良いことだけど、そうじゃなくても戦えるんだよってところにまた凡人としては惹かれるよね。
     将棋の駒のように、色々な動き方があって、色々な局面でその存在意義は示されるのだよってのを感じた一冊だった。

  • 「山際淳司」の、スポーツノンフィクション作品集『スローカーブを、もう一球』を読みました。

    「山際淳司」作品は、昨年12月に読んだ『みんな山が大好きだった』以来ですね… スポーツ関係の作品が続いています。

    -----story-------------
    たったの一球が、一瞬が、人生を変えてしまうことはあるのだろうか。
    一度だけ打ったホームラン、九回裏の封じ込め。
    「ゲーム」―なんと面白い言葉だろう。
    人生がゲームのようなものなのか、ゲームが人生の縮図なのか。
    駆け引きと疲労の中、ドラマは突然始まり、時間は濃密に急回転する。勝つ者がいれば、負ける者がいる。
    競技だけに邁進し、限界を超えようとするアスリートたちを活写した、不朽のスポーツ・ノンフィクション。
    -----------------------

    野球(高校野球とプロ野球)、ボート、ボクシング、スカッシュ、棒高跳び… 多彩なスポーツノンフィクション作品6篇が収録されています

     ■八月のカクテル光線(原題:465球目の奇跡)
     ■江夏の21球
     ■たった一人のオリンピック
     ■背番号94
     ■ザ・シティ・ボクサー
     ■ジムナジウムのスーパーマン(原題:壁に向かって打て)
     ■スローカーブを、もう一球
     ■ポール・ヴォルター

    スカッシュや棒高跳び等、普段、馴染みの薄い競技も含まれており興味深かったのですが、、、

    たったひとつの落球… ホームランを打ったことのない選手が、延長戦までもつれた試合で放った一球… 1979年(昭和54年)夏の甲子園の3回戦、延長18回で決着した「箕島」対「星陵」戦で両軍に訪れた勝機とピンチ… 人生を変えてしまった一球、一瞬を描いた『八月のカクテル光線』、

    日本シリーズ最終戦、日本一が決まる試合の9回裏… 「近鉄バファローズ」最後の攻撃で「広島カープ」の抑えの切り札「江夏豊」が投じた21球を描いた『江夏の21球』、

    「長嶋監督」が直々に高校を訪問して「読売ジャイアンツ」にスカウトした一人の少年… 投手としては大成することなく、バッテイングピッチャーとして過ごすことになった「黒田真治」の生き方を描いた『背番号94』、

    野球経験の乏しい監督のもと、熱心さに欠けるエースがスローカーブを武器に快進撃を続け、ついには春の甲子園の切符まで手にしてしまう… クレバーな「高崎高校(タカタカ)」のエース投手「川端俊介」の活躍を描く『スローカーブを、もう一球』、

    個人的に好きな競技だということもあり、野球を熱かった、この4篇が印象に残りましたね。

    「広島カープ」ということもあり、『江夏の21球』は以前から大好きな作品なのですが、、、

    面白かったのは表題作でもある『スローカーブを、もう一球』ですね… 予想外の連勝に、ミスまで作戦と思い込み、相手チームが慌てる様子がコミカルに描かれ、良い味を出していましたね。

    何度でも読み返せる(実際に私も今回は20年振りくらいの再読です)、スポーツノンフィクションの名著… スポーツファンなら必見の書ですね。

  • 1980年前後の取材からおこされた、それぞれのスタンスで孤独と向かいあう男たちを描く、八つのスポーツノンフィクション作品集。著者の思いが多分に投影されるフィクション寄りの作風でもあります。「江夏の21球」が有名ですが、久々の通読でも表題作が抜きん出ていると感じました。以下は各作品の概要、印象に残った一節の引用などです。

    --------------
    『八月のカクテル光線』
    1979年夏の甲子園、星稜高校と箕島高校の試合。
    延長16回裏の落球からはじまり、試合に臨んだ選手と監督たちを描く。
    本書中ではもっとも全体になじまない作品に感じる。

    『江夏の21球』
    本書のなかで、そしておそらく筆者の著作として、最も知られた作品。1979年11月4日、近鉄と広島の日本シリーズ最終戦。9回裏のマウンドに上がった江夏豊の心中に沸き起こる葛藤を中心に投じられた21球を振り返る。。
    「誰も、江夏の自尊心にナイフを向けようとしているわけではない。にもかかわらず、マウンドの上の投手は心に傷を作っている。」

    『たった一人のオリンピック』
    「ある日、彼は突然、思いついてしまう。オリンピックに出よう、と。」
    ごく普通の学生だった津田正男は突然の思い付きからシングル・スカルのボート選手としての人生を歩みだし、5年の歳月をボート競技に注ぎ込む。思惑どおり日本一になった彼を待っていたのはオリンピックボイコットの不運だった。
    「≪結局は≫と、彼はいった。≪自分のためにやってきたんです。(中略)自分のため、ただそれだけです。≫」

    『背番号94』
    高卒からジャイアンツへの入団後の5年目、バッティング・ピッチャーを務めるクロダ投手が見たプロ野球の世界とそこでの挫折を描き出す。
    「ほんの数年前の夏にはたしかに自分のものだった夢や希望は、夏という季節をとおりすぎるたびに、その暑さに負けて溶けてしまったように思えた」

    『ザ・シティ・ボクサー』
    自分を限りなくカッコよく見せようと努める、ナルシスティックなボクサー、春日井健。四年のブランクがありながらも彼はプロボクシングの世界に挑む。
    「≪ぼくは何者かになろうと思っていた。サラリーマンをやっていると、それがだんだん見えなくなるんだ。子どもが大きくなる。家庭ができてくる。あ、このままいったらヤバイな、と思った。何の刺激もない。面白くもない≫」

    『ジムナジウムのスーパーマン』
    日本のスカッシュ競技世界で10連覇を達成した坂本聖二は、自動車メーカーの優秀な営業マンでもあった。
    「おそらく、彼の心の中には、誰もがそうであるように仕事だけでは埋められない空洞があるのだ。彼の場合、その空洞はスカッシュのボールの形をしている」

    『スローカーブをもう一球』
    甲子園常連の強豪校などとはほど遠い、ほぼ野球経験がない飯野監督率いる高崎高校野球部は、なぜか春の甲子園出場を目前にしていた。
    ≪それにしても、なぜ、ここまできてしまったんだろう≫
    高高(タカタカ)が擁するのは、これまた本格派エースのイメージからは程遠い、努力が嫌いな丸顔の川端投手。そんな彼の得意とする球種は「ゆらゆらと本塁に向かっていくボールがまるで自分のように思え」るスローカーブだった。
    「≪ピンチになれば…≫と川端俊介はいった。≪逃げればいいんです≫」

    『ポール・ヴォルター』
    恵まれない体格ながらも日本記録を更新した棒高跳び選手である高橋卓己は、体育教師として赴任した高校の放課後の誰もいないグラウンドで、ひとりポールをにぎる。
    「≪むなしさ≫という言葉を見つけてしまったのだと彼はいった。」

  • なんとなく手に取る。
    インタビュー中心に、スポーツ選手の生涯からワンプレーまでを丹念に追う。
    冒頭の高校球児の章は、揺らぐメンタルと限界寸前の身体でグラウンドに立つ心理を精密に描き、ページを進める手が止まらなかった。
    スポーツものは、プレーの描写が難しいと思うが、素晴らしい文章力だった。

  • スポーツ・ノンフィクション。叙情的でリズミカルな文体がくせになる。
    「八月のカクテル光線」(高校野球)
    「江夏の21球」(プロ野球)
    「たった一人のオリンピック」(シングルスカル※ボート)
    「背番号94」(高校・プロ野球)
    「ザ・シティ・ボクサー」(ボクシング)
    「ジナジウムのスーパーマン」(スカッシュ)
    「スローカーブを、もう一球」(高校野球)
    「ポール・ヴォルター」(棒高跳び)

  • この本を手にしたのは、『「考える人」は本を読む』(河野通和)のなかで紹介されていたのが直接のきっかけだったけど、この本のなかに収めらている『江夏の21球』で話題になってテレビでも盛んにとりあげられていた大学生時代、読んでみたいと思いながら、そのまま忘れていた作品でもある。

    この本のカバーの裏にある山際淳司さんの写真をじっと見つめていると、かつてNHKのサンデースポーツのキャスターをしていた姿が思い出されてくる。この眼鏡の下の鋭い眼差しが、ゲストにきたスポーツ選手から微熱を帯びた秘話を引き出していたのを思い出す。そして、その眼差しが、スポーツをする特定の人物を徹底的に掘り下げて、描写してくれたものを収録したのがこの一冊。

    山際淳司の言葉は、スポーツを観る者の勝手な想像や、感傷で語られていない。それは、彼のその人物が身につけてきたすべてを見透してやろうという視線で、徹底的に取材した材料が勝手に語りかけてくるものを、拾い上げているような作業に感じられる。
    だから、今語られてるシーンを軸に、いくつもの回想シーンが重なってその人物をより立体的なものとして、よりリアルなものとして感じてもらおうとして、語られる。

    ドラマを観ているように読むことができる。

    この短編の集まりのなかで、個人的にわたしが一番気に入ったのは『ザ・シティー・ボクサー』。この中でのいくつかの言葉を引用しながら、山際淳司の眼差しを感じてもらいたい
    〜〜「いつものパンチとどこが違ったのか。スローモーション・フィルムを見るように思い返した。あのときはひらめきがあった。今、打てばいいと思うようより先に吸い込まれるようにパンチが炸裂した。インスピレーション。パンチを出した。手ごたえがあった。そして倒れた」〜〜

    スポーツをした経験を振り返ると誰にでもあるこの感覚。“脳の反応を身体の反応が追い越してしまう”瞬間、でも、それってこうやって言葉にされてみて始めてその存在を確認できる。こういった掬い取りは随所にある。だから、キャスターとして、ルポライターとして、選手は山際の言葉に誘われて、奥へ奥へ、深く自分との葛藤の記憶を語りはじめてしまうのだろう。

    〜〜「ものごとや世間が見えすぎてしまうことは、結局のところ、遠回りすることになってしまうのかもしれない。」〜〜
    これも、山際の特徴的なところで、瞬間的に人生を語る言葉を挟んでくる。

    〜〜「ぼくは何者かになろうと思っていた。サラリーマンをやっていると、それがだんだん見えなくなるんだ。子供が大きくなる。家庭ができてくる。あ、このままいったらヤバイな、と思ったり。何の刺激もない。面白くもない。」〜〜

    こうやって、男たちの誰もが時折紛れ込む迷路の風景を差し込む。

    〜〜自分は、格好をつけていないと生きてる気がしないんだなと納得した。いつもそうだった。あれはまだ小学校に通っていたときだろうか。新しくできた友達に、オレ、ボクシングやってんだというと、友達は目を輝かせた。その瞬間、友達の目が春日井にとっての鏡になった。鏡の中の自分は完璧でありたいと思った。人はいる、他者との関係のなかでしか、自分を支えられないときがあるし、たいていの人間はそんな風に生きている。

    四年間のブランクと同じようにして残りの20分を費やしてしまうのが、彼にしてみれば不愉快だった。〜〜

    ここはもう山際は主人公のボクサー春日井健の人生を一緒に歩んでいて見えている世界を描いている。

    この本のなかに、誰でもお気に入りのドラマはきっと見つけられる。

  • 登場人物が愛おしくてたまらない。スポーツ=スター選手はもちろん大事だし、期待しちゃうが、だって人間だもの。選手一人一人に人生があり、物語がある。著者の暖かい眼差しがいい。

  • この本についてどこで知ったのか覚えてない。別の本のなかでノンフィクションの名作としてオススメされてたんだと思うけど… そういうのもメモっとかなきゃならんなぁ。

    タイトルも表紙も、最初数話も野球の話なので全部野球に関したノンフィクション短編集なのかと思いきや、ボートやボクシングもある、スポーツノンフィクションだった。正直野球はそこまで興味がないので、野球だけだったらアレだなぁと思いながら買ったのだが、野球部分も含めてとてもおもしろかった。ただ、「江夏の21球」という話は、そもそもが伝説のシーンらしいが、小説を読んでもどう伝説展開なのかよくわからなかった。分かる人が読んだらとんでもなく面白いんだろうなぁ。

    ノンフィクションではあるものの、事実が並んでいると言うよりは、短いインタビューや登場人物の紹介を、大量のエモい状況/背景説明文で彩っている形。試合の後のインタビュー内容なども合間に挟まり、ドラゴンボールアニメのようにとてもゆっくり時間が流れる。

    半分くらい小説のような雰囲気がある。だって、出てくる人たちの心情を勝手に語ってるように思えるシーンが結構あるから。そのおかげか、そのせいなのか、ノンフィクションというよりは、小説のように楽しんでたと思う。だから、個人的には非常に面白く読めたものの、ノンフィクションとしては邪道なのではと感じるときもあった。

    そして連載が1981年ということもあり、内容は80年代、そしてスポーツ。つまり、とにかくこの時代のだいぶ乱暴な考え方や暴力そのものの話も結構出てくる。指導=殴るだし、出てくる人たちもそれを当たり前に感じている。著者も含め。江夏が投球後にベンチでショートホープ吸ってたりもする。ここはまあ、時代だなぁ。

    そしてカバーうしろそでにある作品集がとても多い!こんなに書いてたのか。これは他のも集めたくなるなぁ。

    ・内容紹介

    最初の「八月のカクテル光線」はタイトルのエモさもそうだが、主人公が別に今はプロ野球選手として活躍しているというわけでもなく、銀行に勤めてて野球はもうしてない、というのがまた、良い。そうだよな、高校球児が全員野球の仕事するわけないもんな。

    「たった一人のオリンピック」そうだ、オリンピック出よう、と思いつき、それを実戦に移してしまう人の話、他のスポーツ選手とは違うベクトルのすごさ、怖さがある。

    しかもこれが得意だから、とかじゃなく、オリンピックに出られる、メダルを取れる競技をそここら探してシングルのボートを始める。考え方が怖すぎる。なのに全日本で勝ち続け、最後には選手に選ばれる。なのにモスクワ五輪に日本が参加しなかったことですべてが終わる。その後は電機メーカーに勤めて、ボートはもうやっていない。なんだこれー。切なすぎるだろ。

    p64
    オリンピックも、ヘリンピックもサヨナラです……

    ヘリンピックって、なにー!?ググってもなんか屁の強さを競うオリンピックというネタしか出てこなかった。

    次は高校で直接長島監督にスカウトされたのに1軍にはならず、バッティングピッチャーになって終わる人の話。なんか急に主人公が目立たない人たちになっていく。これはこれで面白いけど、切ない。ってか最初からずっと切ないかもしれない。

    高校、大学でひたすらバドミントンをやり、カーセールスの仕事に就職したら今度はスカッシュになり、セールスでもスカッシュでも勝ちまくる選手の話。これはもう彼自身のエッセイだ。

    p184
    「ハピネスなんて、そんなものだ。」

    こんな終わり方のノンフィクション、あるか?良すぎるだろ。

    そして最後の「ポール・ヴォルター」で急にものすごい村上春樹感が出てくる。

    p225
    彼はふと、妙な感覚におそわれた。《ぼくは涙を流すんじゃないか》と、彼は思った。

    なんだろう、このタイミングで春樹を読んでしまったのだろうか。調べてみると最初の風の歌を聴け、は本の発行は1982だが、発表されたのは1979年なので、読んでる可能性はある。でも、連載媒体は野性時代で、タイトルにもある「スローカーブを、もう一球」の次の話で、スローカーブの方は特に文体にハルキ感はなかったので不思議。まあ、偶然そうなっちゃったんだろうけど。

  • 読むことができて本当によかった。どの話も好き。スポーツに限らず何かに打ち込む理由って、ただ好きなだけ、現実から逃げるため、自分を守るため、なんでやっているか分からない、色々あるんじゃないかなぁって。同じ理由で同じ過程でやってきてる人なんていない。でも自分のためってことは共通点じゃないだろか。私にとってスポーツは苦手分野で、恥をかきたくないから出来ればしたくない事だけど、もっとスポーツを知りたいって思った。自分がプレイヤーというより、選手らの過程を知りたいなって。ヘミングウェイの言葉「スポーツは公明正大に勝つことを教えてくれるし、またスポーツは威厳をもって負けることも教えてくれる。人生ってやつを教えてくれる。」

  • 「江夏の21球」のみ読了。
    この作品をもとにしたNHKの特集番組を池上さんの番組で見て読んだのだが、両方を見ると映像も浮かんでより臨場感を感じられる。野球の深さがよくわかる作品。
    映像は地元の市立図書館に所蔵あり。

  • #86奈良県立図書情報館ビブリオバトル「真」で紹介された本です。
    2018.1.20
    https://m.facebook.com/events/312799515791278?view=permalink&id=317879898616573

  • 読み始めると止まらない。実に傑作。スポーツはあまり興味がないところなのだが、ISISでもあったので読んだら当たりだった。

  • 「江夏の21球」目当てに読んだ本だったが、さすが、スポーツノンフィクションの金字塔と呼ばれるだけの事はある。
    あまり知らないマイナースポーツでも魅せるチカラが宿っている。
    強いて言えば、ある一定の古い年代に偏っている事だけが難点。

  • 「江夏の21球」目当てで手にとりました。
    日本シリーズ最終戦、9回裏1点リードもノーアウト満塁の大ピンチ。
    広島のストッパー江夏、相手バッター、監督、野手、それぞれの1球ごとの心の動きをインタビューでふりかえることで、緊張感あるドラマが紙上に再現されています。
    その他の短編も秀作揃いです。

  • 様々なスポーツを題材にしたルポ集。簡潔でありながらカッコ良い言い回しが多い。たった1人のオリンピック、スローカーブをもう1球が好き。

  • 読みやすい日本語を書く人として紹介されていたので読んだ。
    野球には全く興味がない。
    そのためいくら文章が分かりやすくても、読むのにかなり苦労した。
    野球の話ばかりかと思っていたけど、違うジャンルのスポーツの話もあって、そちらのほうが面白く読めた。
    ノンフィクションだと、どうしても人間くさい話になるんだな。
    しかしそれこそがノンフィクションなんだよな、きっと。

  • ノンフィクション短編集です。
    この中の たった一人のオリンピックに
    かなり衝撃を受けた
    大学へ行き、落ちぶれてしまった
    男性が突然オリンピック選手を目指す話
    スポーツがすきな方は、ぜひ。
    ノンフィクションは読むのが苦手

  • 無名選手から江夏まで、様々なスポーツ選手の一筋縄では行かないスポーツ人生を描く。

    千葉県佐倉市のクロダは、得意な野球を武器に、農業高校へ進学する。それほど強豪校でもなかった高校で、才能あるピッチャーとして活躍するも、大事な試合の直前に飲酒をしてしまう…。

    なんというか、スカスカの文章で、NHKのプロジェクトX風のナレーションを延々読まされているような気になる一冊である。ひどい人生だろう。どうだ感動するだろう。そういう畳み掛けが続くため、あまり野球にも興味のない読者としては、くどいと言わざるを得ない。

    野球以外の、ボートやスカッシュという変わった題材もあり、そういうほうが行き場がなくなって就職するなど、読みどころはある。

    スポーツ雑誌のコラム的に書かれている、記者の文章なのかもしれないが、無名選手がうまく行かなくて挫折して就職、その後にもう一度試みるが…という話を、実話をベースに小説化するなどしたほうが良かったのではないかと思われるところが多々ある。

    ま、あと「くどい」と言わせしめるのが、変なカッコ使いが多いところ。なんで会話にそのカッコ?強調もカッコ?という部分が多く、読むペースが最後までつかめなかった。これは自戒も込めて。

  • 山際淳司を知ったのはNumberの「江夏の21球」。ノンフィクションの再録だったかなぁ。いずれ、他の作品も読んでみたいと思っていました。店頭で見かけて購入。

    「背番号94」「ザ・シティ・ボクサー」が心に残りました。
    どちらも、王道をゆく物語ではないので、読んでいる最中はもやもやしていました。爽快感や悲劇性があるわけでなく、雑に言ってしまえば御涙頂戴ではないんです。

    ただ、全ての物語が、わかりやすい栄光と挫折であるわけではない。自分の好みの物語があるわけではない。「江夏の21球」がドラマティックなだけに、そう決めつけて読んでいたのかもしれません。期待が決めつけになってしまっていて、先入観が多分にあったんでしょう。

    収録されている8作は、どれも1980年のもの。昭和の臭いも感じることができます。体罰・しごきという言葉が普通に出てくる場面もありますから。
    それが当たり前だった時代は、確かにあったという事実。語り手も聞き手も読み手も、そこに疑問を感じていないというところが、遠い遠い過去の感覚になってしまうのだけど。40年前の出来事に、心動かされることがあるのは、スポーツに期待しているものは、変わらないのでしょう。この先もきっと。自分はね。

    体罰・しごきの是非を問う作品でもないですしね。ふと思ったのは、いつか将来には、現代の表現にそぐわないと言う理由で、注意書きされちゃうのかなぁ。
    差別的な表現とされて使われなくなった言葉には、巻末や巻頭に注意書きあったりしますからね。風俗のことをトルコと言っていた時代なので、表現そのまま収録で、それについてのコメントがありました。

    かつて、使われていた言葉は、そのまま収録して欲しいと思います。作者が変更するのであれば別かと思いますが、グインの1巻のように。
    勝手に改竄されて無かったことにしてしまうのが、一番良くないことと思います。
    過ちをただした過去があるのなら、それを提示することが大事だと思うので。

    難しいことで、一朝一夕にどうにかなるものではないですけども。自分も無意識にあ過ちを犯しているとも思うし。
    成長、進歩するには、大事なことと思うのです。過ちを振り返ることは。とらわれてはいけないですが。

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著者プロフィール

作家。1948年神奈川県生まれ。中央大学法学部卒業後、ライターとして活動。80年「Sports Graphic Number」(文藝春秋)創刊号に掲載された短編ノンフィクション「江夏の21球」で注目を集める。81年同作が収録された『スローカーブを、もう一球』(角川書店)で第8回日本ノンフィクション賞を受賞。NHKのスポーツキャスターとしても活躍。95年5月29日没。著書多数。傑作選に『江夏の21球』『衣笠祥男 最後のシーズン』(いずれも角川新書)。

「2020年 『たった一人のオリンピック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山際淳司の作品

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