氷点(下) (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.18
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本棚登録 : 921
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003398

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は成長していく子供たちの心理が中心.併せて,子供が成長すると同時に,発端となっている娘の殺害からも時間が経過し,夫婦の感情にも変化が生じていく様が見て取れる.

    陽子が家族殺しの犯人の娘であるがゆえに陰険に接する母と,それが故に守らなければならない・幸せにならなければならないと考えて行動する兄との対照が印象に残る.終盤,陽子に対する曝露に際して北原が提示する視点は作品当初から抱いても然るべきものであったが私はついぞ気付かなかった.

    下巻では啓造を通じて,聖書やキリスト教に触れる場面が目立つほか,陽子の口から語られる世界の見方も興味深い.誰もが誰かしら・何かしらの載った因果の中で災禍の引き金を引いている・引かざるを得なくなっている可能性があり,それが罪であるというのが本作品の言う「原罪」なのであろうか.

  • 人間の「原罪」とは何かを主題にした不朽の名作であり、過去に何度も、映画やドラマ化しています。原罪とは人間が生まれながらにして持っている罪であり、人間が生きていく上ですべての人に、平等に、優しさを与えられなければ自分の存在自体が他人を苦しめている可能性があるということです。
     ある一つのきっかけで人を憎み欺く、人間の身勝手さ・罪が曝け出されて行きます。約50年前の作品ですが、現代でも違和感なく読むことができます。程度の差こそあれ、人間誰しもが持っているであろう汚い感情に、自分を当てはめて考え込んでしまい、タイトルの「氷点」の意味がわかった時にはハッとさせられるのではないでしょうか。重いテーマではありますが、ページをめくらずにはいられないストーリーで、読んでいる最中も読み終わった後も考えさせられる作品です。(K.K)

  • 全体的に読みやすくおもしろいけど、時代の差か文章に違和感を覚える箇所がいくつかあった。
    いくら医者でドイツ語を勉強しているからといって、「シェーンなフラウ」とか「ハイラーテンする」とか、日常生活で本当に使っていたのかなと疑問に思った。
    腑に落ちないところは他にも。
    夏枝はたしかに酷いことをしたし、はじめは啓造に共感していたけど、一番は啓造が責められるべきじゃないのかと思う。
    夏枝のせいでルリ子が殺されたとか言って復讐した啓造が一番おそろしく感じた。

  • 下巻になれば救いがあるかと思って、まさかの救われない展開に瞠目。
    以下、ネタバレ含む。



    妻と若い医師の良からぬ「雰囲気」によって、娘ルリ子は殺された。
    夫・辻口は二人の関係を疑い、ルリ子が死んだことはそこに責があると考える。そこで、ルリ子を殺して自殺した犯人が連れていた一人娘、陽子を引き取ることにする。

    妻は陽子をルリ子の代わりとして可愛がり、夫はその様子を復讐として冷ややかに見つめる。
    しかし、早い段階で妻・夏枝は夫の復讐と陽子の出自を知ってしまう。
    陽子を、ルリ子を殺した男の子供として憎み、また女性としても美しさに磨きがかかる彼女を妬む姿は、鳥肌が立つくらい気持ち悪い。

    父・辻口も、兄の徹も陽子を家族としてではなく、女性としてしか見ることが出来なくなっていく。

    救いは外側の人間である辰子と北原だったが、二人も陽子の孤独に寄り添えずにいる。
    そして、陽子は嫉妬に狂った母から真実を聞かされ、服薬自殺を図るのだった。

    下巻は、衝撃の答辞隠蔽事件。
    継子いじめモノをいくつか読んだことのある私だけど、子供が答辞を読むのを、母が白紙のものとすり替えてほくそ笑んでるって!
    ここ。インパクトでかすぎる。

    救われないな、と思ったのは、自殺を図ってもなお、母には「これ見よがしに」と思われ。
    そして、いざ陽子が殺人犯の子でなかったと知ると、そこに憎しみの空白が生まれるのだった。
    それでも高木と父には「罪の意識に苛まれての自殺なら、遅かれ早かれ、誰の元に生まれても同じことになっていたかも」なんて、言われてしまうのは、もはや不憫。

    確かに、誰にも悪を秘める心、無意識的だったり、偶然の連鎖によって、それがある日、形となり罪を犯す「可能性」はあるのだろう。
    けれど、陽子が清らかであることへの潔癖さから、内在する罪を拒絶し、命を絶つことは、決して必然のストーリーではないように読める。
    彼女が、そうした性質を秘めていたとしても、その結末に至らずに済む「可能性」もまたある。
    そうでなければ、あまりにも残酷すぎる。

    中盤、物語から急にフェードアウトする村井と松崎にも、それぞれ生と死の結末が与えられるわけだが、宣教師や松崎を失って父・辻口に残ったものとは何なのか、分からない。

    結局、自分の罪を自分では意識出来ず、誰かのせいにしか出来ないイタい家族のために、純真無垢な少女が殉教する物語、として読んだ。
    これは、作者の意図する所とは違うらしいが。
    ストーリー展開は面白いけれど、「続氷点」もこのまま行ったらどうしようと、躊躇う。

  • この昼ドラ感!

  • 犯人の子でなかったとしても罪の意識は拭えない、と陽子が言うように、本物の母娘であったとしてもこの確執は避けられないやつなんだよな 母が女である限り、、
    同様に、啓造と徹の欲も陽子が本当の娘でも起こり得るものかもしれなくて、陽子がもらい子だからとか犯人の子だからとかいう言い訳に全員が甘えることでそれらの罪のしわ寄せが陽子にいったのだろうか

    「陽子も大人になったのね。ノーコメントよ、おかあさん」はしびれるな~

  • こんなにドロっドロの物語は今まで見たことないな、というくらいドロドロ。いまどきの小説でこんな物語は無いだろうなぁと思ったら1960年代の作品ということで納得。韓国でリメイクされているのいうのもなんとなくわかる。
    なんとなく、キリスト教の香りがするな、と思ったら作者の三浦氏はクリスチャン。テーマも原罪。なるほど。と思う。
    続編があるようなので、このまま一気に突入かな。
    文学なのか、下世話な文芸なのか紙一重って感じ。でも面白い。

  • 小川洋子さんのラジオ
    今日は北海道から、この本ということで
    読み直してみました
    なんかきちんと読んでいなかったのか
    ドラマを見たのか
    曖昧だったのがストンとしました
    「原罪」とか 重いです
    「続」はどうしようかなあ
    小川洋子さんの切り口が楽しみです

    ≪ 凍えきる 心傷つき 氷点に ≫

  • 陽子は永遠の理想型。

  • 以前に読んだことがあったはずだけどうる覚えで再読。
    結末をすっかり忘れていたので、新鮮な気持ちで最後の事実に驚き胸をなでおろした。
    しかしまぁ、なんていう話!陽子がかわいそう過ぎる、というか周りの人間がひどすぎる。妻への復讐のために陽子を引き取る啓造もありえないけど、この妻の夏枝が最悪な女。夫が陽子を引き取った本当の目的を知った後の夏枝の豹変ぶりが怖い。
    その後、何かといっては陽子に憎しみを向け(陽子は何も悪くないのに言いがかりとしか思えない自分勝手な思い込み)冷たい仕打ちを繰り返す。そのうち陽子が美しく成長するもんだから嫉妬もあってもう救いようもない。この夏枝、自分が一番じゃないと気が済まないっていうやっかいな女で。一見優しそうに見えるのも始末悪い。
    頼りのお兄ちゃんの徹もだんだん恋心を抱いちゃうし、陽子が安住できる家庭環境ではない。なのに無理やりにでも前向きに生きていく陽子が健気というかかわいそうというか。本当に味方だなと思えたのは辰子くらいかな。そして北原。
    北原がいて良かった。すべてを暴いて真実を手繰り寄せてくれて良かった。手遅れではないよね?最後が中途半端なところで終わってしまって。これは「続」を読まねば。

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