氷点(下) (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.18
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本棚登録 : 979
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003398

作品紹介・あらすじ

兄・徹の友人・北原と愛し合うようになった陽子。しかし母・夏枝は北原にゆがんだ愛情を持ち、2人に陽子の出生の秘密をぶちまけてしまう……人間存在の根源に迫る不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は成長していく子供たちの心理が中心.併せて,子供が成長すると同時に,発端となっている娘の殺害からも時間が経過し,夫婦の感情にも変化が生じていく様が見て取れる.

    陽子が家族殺しの犯人の娘であるがゆえに陰険に接する母と,それが故に守らなければならない・幸せにならなければならないと考えて行動する兄との対照が印象に残る.終盤,陽子に対する曝露に際して北原が提示する視点は作品当初から抱いても然るべきものであったが私はついぞ気付かなかった.

    下巻では啓造を通じて,聖書やキリスト教に触れる場面が目立つほか,陽子の口から語られる世界の見方も興味深い.誰もが誰かしら・何かしらの載った因果の中で災禍の引き金を引いている・引かざるを得なくなっている可能性があり,それが罪であるというのが本作品の言う「原罪」なのであろうか.

  • 実娘が通り魔に殺されてしまった!なので代わりに乳児院から女の赤ちゃんもらってきた!そしたらその子はなんと実娘を殺した通り魔の子供で…!?

    上巻でこれでもかというほど夏枝のクソ女ぶりを喰らい辟易していたわけだが、下巻では陽子がすくすく育って陽子視点がメインになるのでとりあえずマシになる。この陽子さん、三浦綾子が原罪を描きたいと言ってたせいか基本的に人格がカッ飛び気味だ。というのもクソガキとかクソ女二号とかそういう方向性じゃなく、ひたすら被害者という立場を強調するためなのか陽子には後ろ暗いところも欠点もほとんど描かれていない。
    母親である夏枝が、クラス全員おそろいの白い服でダンスをすることになったから白い服を仕立ててねとお願いしたのにそれをシカトして自分だけ違う色の服で発表会に出たことや、給食費の支払いをしてくれなくて先生に注意されたことや、卒業生代表に選ばれて頑張って答辞を書いたのにそれを盗まれて頭真っ白で卒業式に出るはめになったこととか、とにかく夏枝のせいで不遇な目に遭わされるんだけども陽子は夏枝を恨みも憎みもしない。ひょんなことから自分が夏枝の実子じゃないことを知ると、「本当の子じゃないのに育ててくれてるんだから、意地悪にもなにか理由があるはず」とか言い出す。夏枝がクソ女なだけだよ。
    とはいえ、自分に非のない理由で自分を不当に貶めてくる夏枝にも陽子はちっともマイナスの感情を抱かない。抱かなすぎる。はっきり言って、多少自分に原因があろうとも自分を攻撃してくる相手にはマイナスの感情を持つのが人間としてのスタンダードだと思うんだけどそこらへんの感情が一切欠落している。
    そのあたりは作中でも一応触れられていて、夏枝あたりはそこを気味が悪いとか抜かしたりするわけである。てめえのせいだろクソババアと私は思う。
    そして陽子はすくすく育ち、養母である夏枝からは相変わらずクソ女的な仕打ちを受け、ついでに年頃になったせいで女としての嫉妬まで向けられ、自分をもらってきた養父である啓造からはいやらしい目で見られ(陽子は知らないのが救い)、このクソ野郎しかいない世界で唯一の清涼剤である義兄の徹からも恋心を向けられ、なんかもう可哀想としか言えない。
    読者目線としてはこの腐りきった世界で一人だけ真っ当な人間である徹の恋心は尊重し応援してあげたいところなんだけども、そりゃ陽子としては兄ちゃんだし、自分だけ血が繋がっていないという負い目がある陽子からすると、家族の中で唯一自分に好意的な徹に家族としての情を求めてしまうのは仕方がないことだと思う。っていうか親がクソすぎ。よくこの親から徹が生まれて育ったもんだ。マジで。
    徹は徹で「自分では陽子を幸せにすることはできないかもしれない…」とか言って自分の親友・北原を陽子に紹介するわけだが、この親友も良く出来た好青年で陽子との中は割と少女漫画ちっくに進展していく。誤解とかすれ違いとかアクシデントとかも爽やかである。
    なのにその爽やかな恋路に影を落とすのはやっぱり夏枝。息子が招いた友達である北原に色目を使い、北原からNOを突きつけられると「勘違いしてんじゃねーよバーカ!!!」みたいなキレ方をする。マジでクソババアである。滅せよ。
    そんで陽子と北原がうまいこと行きそうになるとこれがもう憎くて憎くて仕方ないらしい。自分をフッた男が陽子に惚れたことも気に入らない、陽子が幸せになるのも気に入らないというダブルパンチでとりあえず陽子を不幸にしたいので北原と陽子に陽子の出生の秘密を暴露して「不幸になれ!」という呪詛を吐く。ほんとクソ女だな~骨の髄まで腐ってるなこいつは~!
    ここまでの舞台はほぼ辻口家の中だけで、出てくる人間も辻口家の人間か夫妻にガッツリ深く関わってる人間しかいなかったので、ここにきてまったくの外様である北原は「いや夏枝の話ガバガバすぎでは?」と一石を投じてくれる。ショックを受けて茫然自失としている陽子に「いやいや親たぶん違う人間だと思うよ」という非常に真っ当なことも言ってくれる。なんて真っ当なんだ。
    しかしながら陽子は、自分の親が本当に殺人犯だったかどうかは関係ない、自分が自分で在るための矜持が折れてしまったと絶望して自殺を図るわけである。
    偶然にも帰ってきた徹がすぐさまそれを発見してくれて、救命措置でバタバタするわけだけども、夏枝が「あてつけがましい、これで死んだら私がどう言われるか(外から非難されるか)考えなかったのかしら」とかいうクソ女丸出しの思考でそれを眺めていたところ、一晩ですべてを突き止めた北原が、陽子の出生の証人である啓造の友人・高木(こいつも夏枝のシンパ)を連れて戻ってくる。
    北原は非常にいいやつなので「おばさんがあんなこと言わなきゃ陽子はこんなことしなかったのに!」とキレてくれる。私もそう思う。が、夏枝のシンパである高木は「夏枝さんのことがなくても陽子ちゃんはいずれこうしていただろう…生きていくには潔癖すぎる…」みたいなポエムを読み始める。クソが~!確実に夏枝のせいで起きた悲劇ですけど~!?確かに陽子そゆとこあるけどそれもこれも夏枝がそう育てたからですけど~!?
    当の夏枝は陽子がルリ子殺しの娘じゃないことを知るやいなや「許して陽子ちゃん~!私も辛かったぁ~!」みたいなことをほざく。マジで殺せよこの女を。殺意がマックスになったのこの瞬間だよ。
    とりあえず陽子の潔白性(いや陽子自身はマジで何もしてないんだけどねずっとね)が証明され、陽子持ち直したかな…?みたいなところで話は終わる。徹頭徹尾夏枝への殺意だけが揺るがない感想だった。こいつぁすごいクソ女だった。いつか私が「今まで読んだ創作物に出てきたクソ女ランキング」を作ることになったらこいつは絶対殿堂入りすると思う。

  • 人間の「原罪」とは何かを主題にした不朽の名作であり、過去に何度も、映画やドラマ化しています。原罪とは人間が生まれながらにして持っている罪であり、人間が生きていく上ですべての人に、平等に、優しさを与えられなければ自分の存在自体が他人を苦しめている可能性があるということです。
     ある一つのきっかけで人を憎み欺く、人間の身勝手さ・罪が曝け出されて行きます。約50年前の作品ですが、現代でも違和感なく読むことができます。程度の差こそあれ、人間誰しもが持っているであろう汚い感情に、自分を当てはめて考え込んでしまい、タイトルの「氷点」の意味がわかった時にはハッとさせられるのではないでしょうか。重いテーマではありますが、ページをめくらずにはいられないストーリーで、読んでいる最中も読み終わった後も考えさせられる作品です。(K.K)

  • 全体的に読みやすくおもしろいけど、時代の差か文章に違和感を覚える箇所がいくつかあった。
    いくら医者でドイツ語を勉強しているからといって、「シェーンなフラウ」とか「ハイラーテンする」とか、日常生活で本当に使っていたのかなと疑問に思った。
    腑に落ちないところは他にも。
    夏枝はたしかに酷いことをしたし、はじめは啓造に共感していたけど、一番は啓造が責められるべきじゃないのかと思う。
    夏枝のせいでルリ子が殺されたとか言って復讐した啓造が一番おそろしく感じた。

  • ひと昔前の昭和の昼ドラマみたいなお話なんだけど、先が気になって仕方ない(笑)

  • 下巻になれば救いがあるかと思って、まさかの救われない展開に瞠目。
    以下、ネタバレ含む。



    妻と若い医師の良からぬ「雰囲気」によって、娘ルリ子は殺された。
    夫・辻口は二人の関係を疑い、ルリ子が死んだことはそこに責があると考える。そこで、ルリ子を殺して自殺した犯人が連れていた一人娘、陽子を引き取ることにする。

    妻は陽子をルリ子の代わりとして可愛がり、夫はその様子を復讐として冷ややかに見つめる。
    しかし、早い段階で妻・夏枝は夫の復讐と陽子の出自を知ってしまう。
    陽子を、ルリ子を殺した男の子供として憎み、また女性としても美しさに磨きがかかる彼女を妬む姿は、鳥肌が立つくらい気持ち悪い。

    父・辻口も、兄の徹も陽子を家族としてではなく、女性としてしか見ることが出来なくなっていく。

    救いは外側の人間である辰子と北原だったが、二人も陽子の孤独に寄り添えずにいる。
    そして、陽子は嫉妬に狂った母から真実を聞かされ、服薬自殺を図るのだった。

    下巻は、衝撃の答辞隠蔽事件。
    継子いじめモノをいくつか読んだことのある私だけど、子供が答辞を読むのを、母が白紙のものとすり替えてほくそ笑んでるって!
    ここ。インパクトでかすぎる。

    救われないな、と思ったのは、自殺を図ってもなお、母には「これ見よがしに」と思われ。
    そして、いざ陽子が殺人犯の子でなかったと知ると、そこに憎しみの空白が生まれるのだった。
    それでも高木と父には「罪の意識に苛まれての自殺なら、遅かれ早かれ、誰の元に生まれても同じことになっていたかも」なんて、言われてしまうのは、もはや不憫。

    確かに、誰にも悪を秘める心、無意識的だったり、偶然の連鎖によって、それがある日、形となり罪を犯す「可能性」はあるのだろう。
    けれど、陽子が清らかであることへの潔癖さから、内在する罪を拒絶し、命を絶つことは、決して必然のストーリーではないように読める。
    彼女が、そうした性質を秘めていたとしても、その結末に至らずに済む「可能性」もまたある。
    そうでなければ、あまりにも残酷すぎる。

    中盤、物語から急にフェードアウトする村井と松崎にも、それぞれ生と死の結末が与えられるわけだが、宣教師や松崎を失って父・辻口に残ったものとは何なのか、分からない。

    結局、自分の罪を自分では意識出来ず、誰かのせいにしか出来ないイタい家族のために、純真無垢な少女が殉教する物語、として読んだ。
    これは、作者の意図する所とは違うらしいが。
    ストーリー展開は面白いけれど、「続氷点」もこのまま行ったらどうしようと、躊躇う。

  • この昼ドラ感!

  • 犯人の子でなかったとしても罪の意識は拭えない、と陽子が言うように、本物の母娘であったとしてもこの確執は避けられないやつなんだよな 母が女である限り、、
    同様に、啓造と徹の欲も陽子が本当の娘でも起こり得るものかもしれなくて、陽子がもらい子だからとか犯人の子だからとかいう言い訳に全員が甘えることでそれらの罪のしわ寄せが陽子にいったのだろうか

    「陽子も大人になったのね。ノーコメントよ、おかあさん」はしびれるな~

  • こんなにドロっドロの物語は今まで見たことないな、というくらいドロドロ。いまどきの小説でこんな物語は無いだろうなぁと思ったら1960年代の作品ということで納得。韓国でリメイクされているのいうのもなんとなくわかる。
    なんとなく、キリスト教の香りがするな、と思ったら作者の三浦氏はクリスチャン。テーマも原罪。なるほど。と思う。
    続編があるようなので、このまま一気に突入かな。
    文学なのか、下世話な文芸なのか紙一重って感じ。でも面白い。

  • 小川洋子さんのラジオ
    今日は北海道から、この本ということで
    読み直してみました
    なんかきちんと読んでいなかったのか
    ドラマを見たのか
    曖昧だったのがストンとしました
    「原罪」とか 重いです
    「続」はどうしようかなあ
    小川洋子さんの切り口が楽しみです

    ≪ 凍えきる 心傷つき 氷点に ≫

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著者プロフィール

三浦 綾子(みうら あやこ)
1922年4月25日 - 1999年10月12日
北海道旭川市出身。終戦まで小学校教員を努めたが、国家と教育に対する懐疑から退職。1961年『主婦の友』募集の第1回「婦人の書いた実話」に『太陽は再び没せず』を投稿し入選。
1963年朝日新聞社による投稿した小説『氷点』が入選し、朝日新聞に同作を連載開始。1965年、同作で単行本デビュー。刊行直後にベストセラーとなり、映画化・ラジオドラマ化される代表作となる。ほか、映画化された『塩狩峠』が著名。様々な病苦と闘いながら、キリスト者として執筆を続けた。

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