氷点(下) (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.17
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本棚登録 : 2873
感想 : 181
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003398

作品紹介・あらすじ

兄・徹の友人・北原と愛し合うようになった陽子。しかし母・夏枝は北原にゆがんだ愛情を持ち、2人に陽子の出生の秘密をぶちまけてしまう……人間存在の根源に迫る不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わってお腹の底にズンと来るような物語だった。人間とはなんて弱く利己的なのだろうと思った。下巻でも暗い影が全体を覆っているけれど、読み進める手が止まらない。最後でなぜ「氷点」というタイトルなのかが分かった。
    解説を読んだら人間の「原罪」がテーマになっているとのこと。「どんなに無垢に見える人間でも原罪と無縁な者はいない」という悲しくもどうしようもない現実を、巧みなストーリーと描写で分かりやすく伝えてくれる。
    最後の最後でほんの少しでも希望が見えてよかった。

    「続・氷点」は「ゆるし」がテーマとのこと。読んでみたい。

  • 【原罪】
    人間であれば誰もが持っている「罪への傾向性」

    嫉妬、嘘、欲望、誤解、傲慢、罪
    全ての人に備わっているスペックだと思ったら
    そんなに悪いことでもない様な気がした。

    人間というものは自己中心である。P277

  • 続氷点が、手元にあって、よかった。
    直ぐに、読みたいと思います。

    陽子が、どうなるのか、どんな生き方をするのか、まるで、想像できません。

  • すごい、すごすぎる作品だった
    自覚すらしなかったかもしれない心理のすべて
    事件によって人間の内なる憎悪が具現化していく
    罪の根源について問う哲学的な結末に驚愕した

  • 陽子ーー!!!!!!!!!
    人間って、罪深い。本当に悲しい。

  • 全体的にじとっとした陰湿な雰囲気で、ドロドロした韓国ドラマを見ているよう。
    夏枝にイライラしながら読んだ。
    辰子だけが唯一まともな考えを持っている気がする。
    続氷点もぜひ読みたいな。

  • 実娘が通り魔に殺されてしまった!なので代わりに乳児院から女の赤ちゃんもらってきた!そしたらその子はなんと実娘を殺した通り魔の子供で…!?

    上巻でこれでもかというほど夏枝のクソ女ぶりを喰らい辟易していたわけだが、下巻では陽子がすくすく育って陽子視点がメインになるのでとりあえずマシになる。この陽子さん、三浦綾子が原罪を描きたいと言ってたせいか基本的に人格がカッ飛び気味だ。というのもクソガキとかクソ女二号とかそういう方向性じゃなく、ひたすら被害者という立場を強調するためなのか陽子には後ろ暗いところも欠点もほとんど描かれていない。
    母親である夏枝が、クラス全員おそろいの白い服でダンスをすることになったから白い服を仕立ててねとお願いしたのにそれをシカトして自分だけ違う色の服で発表会に出たことや、給食費の支払いをしてくれなくて先生に注意されたことや、卒業生代表に選ばれて頑張って答辞を書いたのにそれを盗まれて頭真っ白で卒業式に出るはめになったこととか、とにかく夏枝のせいで不遇な目に遭わされるんだけども陽子は夏枝を恨みも憎みもしない。ひょんなことから自分が夏枝の実子じゃないことを知ると、「本当の子じゃないのに育ててくれてるんだから、意地悪にもなにか理由があるはず」とか言い出す。夏枝がクソ女なだけだよ。
    とはいえ、自分に非のない理由で自分を不当に貶めてくる夏枝にも陽子はちっともマイナスの感情を抱かない。抱かなすぎる。はっきり言って、多少自分に原因があろうとも自分を攻撃してくる相手にはマイナスの感情を持つのが人間としてのスタンダードだと思うんだけどそこらへんの感情が一切欠落している。
    そのあたりは作中でも一応触れられていて、夏枝あたりはそこを気味が悪いとか抜かしたりするわけである。てめえのせいだろクソババアと私は思う。
    そして陽子はすくすく育ち、養母である夏枝からは相変わらずクソ女的な仕打ちを受け、ついでに年頃になったせいで女としての嫉妬まで向けられ、自分をもらってきた養父である啓造からはいやらしい目で見られ(陽子は知らないのが救い)、このクソ野郎しかいない世界で唯一の清涼剤である義兄の徹からも恋心を向けられ、なんかもう可哀想としか言えない。
    読者目線としてはこの腐りきった世界で一人だけ真っ当な人間である徹の恋心は尊重し応援してあげたいところなんだけども、そりゃ陽子としては兄ちゃんだし、自分だけ血が繋がっていないという負い目がある陽子からすると、家族の中で唯一自分に好意的な徹に家族としての情を求めてしまうのは仕方がないことだと思う。っていうか親がクソすぎ。よくこの親から徹が生まれて育ったもんだ。マジで。
    徹は徹で「自分では陽子を幸せにすることはできないかもしれない…」とか言って自分の親友・北原を陽子に紹介するわけだが、この親友も良く出来た好青年で陽子との中は割と少女漫画ちっくに進展していく。誤解とかすれ違いとかアクシデントとかも爽やかである。
    なのにその爽やかな恋路に影を落とすのはやっぱり夏枝。息子が招いた友達である北原に色目を使い、北原からNOを突きつけられると「勘違いしてんじゃねーよバーカ!!!」みたいなキレ方をする。マジでクソババアである。滅せよ。
    そんで陽子と北原がうまいこと行きそうになるとこれがもう憎くて憎くて仕方ないらしい。自分をフッた男が陽子に惚れたことも気に入らない、陽子が幸せになるのも気に入らないというダブルパンチでとりあえず陽子を不幸にしたいので北原と陽子に陽子の出生の秘密を暴露して「不幸になれ!」という呪詛を吐く。ほんとクソ女だな~骨の髄まで腐ってるなこいつは~!
    ここまでの舞台はほぼ辻口家の中だけで、出てくる人間も辻口家の人間か夫妻にガッツリ深く関わってる人間しかいなかったので、ここにきてまったくの外様である北原は「いや夏枝の話ガバガバすぎでは?」と一石を投じてくれる。ショックを受けて茫然自失としている陽子に「いやいや親たぶん違う人間だと思うよ」という非常に真っ当なことも言ってくれる。なんて真っ当なんだ。
    しかしながら陽子は、自分の親が本当に殺人犯だったかどうかは関係ない、自分が自分で在るための矜持が折れてしまったと絶望して自殺を図るわけである。
    偶然にも帰ってきた徹がすぐさまそれを発見してくれて、救命措置でバタバタするわけだけども、夏枝が「あてつけがましい、これで死んだら私がどう言われるか(外から非難されるか)考えなかったのかしら」とかいうクソ女丸出しの思考でそれを眺めていたところ、一晩ですべてを突き止めた北原が、陽子の出生の証人である啓造の友人・高木(こいつも夏枝のシンパ)を連れて戻ってくる。
    北原は非常にいいやつなので「おばさんがあんなこと言わなきゃ陽子はこんなことしなかったのに!」とキレてくれる。私もそう思う。が、夏枝のシンパである高木は「夏枝さんのことがなくても陽子ちゃんはいずれこうしていただろう…生きていくには潔癖すぎる…」みたいなポエムを読み始める。クソが~!確実に夏枝のせいで起きた悲劇ですけど~!?確かに陽子そゆとこあるけどそれもこれも夏枝がそう育てたからですけど~!?
    当の夏枝は陽子がルリ子殺しの娘じゃないことを知るやいなや「許して陽子ちゃん~!私も辛かったぁ~!」みたいなことをほざく。マジで殺せよこの女を。殺意がマックスになったのこの瞬間だよ。
    とりあえず陽子の潔白性(いや陽子自身はマジで何もしてないんだけどねずっとね)が証明され、陽子持ち直したかな…?みたいなところで話は終わる。徹頭徹尾夏枝への殺意だけが揺るがない感想だった。こいつぁすごいクソ女だった。いつか私が「今まで読んだ創作物に出てきたクソ女ランキング」を作ることになったらこいつは絶対殿堂入りすると思う。

    • ゆきやままさん
      素直なツッコミとともにとても詳しく書いていただいてるので、一度読んではいるけどぼんやりしていた内容を思い出すことができました。若い頃読んだと...
      素直なツッコミとともにとても詳しく書いていただいてるので、一度読んではいるけどぼんやりしていた内容を思い出すことができました。若い頃読んだときは徹の想いが報われてほしいなと思ったりもしたけど、むしろ外様の北原くんとの方が陽子には合ってたんですね。
      夏枝はたぶん今読んでもクソ女だと思います(笑)。若い頃もてはやされたことしかないと、こういう女になるんだろうな。
      2021/10/02
  • 陽子さんには、是非北原さんと結ばれて幸せになって欲しい。
    原罪という表現が相応しい作品でした。

  • 昭和の小説だが、今読んでも全く色褪せない。
    誰しもが持っている人間の欲望、罪、嫉妬などを巧みに表現している。
    続・氷点も読まずして終われない。

  • 人間の感情の激しさを、ここまで臨場感をもって表現できるなんて、、、最後の50ページはページをめくる手が止まらなかった。圧巻の筆力。三浦綾子さんの氷点との出会いに感謝したいです。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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