妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.07
  • (22)
  • (21)
  • (14)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 149
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003435

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 読了後、思わずため息がこぼれた。
    どこをとっても素晴らしい。

    舞台は中国の古書、『金瓶梅』を下敷きとして書いたものらしいのだが、この舞台設定が作品の艶かしさを高めている。
    そして登場人物皆が魅力的でいきいきしてるのだ。
    手前勝手だが何故か憎めない西大慶。
    どうしようもない奴だが、どうしてか周りを惹きつけてしまう応伯爵。
    そして美しい妾たち。
    中でも潘金蓮の蠱惑的なことと言ったら…
    本書はまさに潘金蓮のために書かれたと言っても過言ではないだろう。

    そんな中で起こる殺人事件やらなんやら…
    冒頭の「赤い靴」で衝撃を受け、それ以降の作品でさらに衝撃を受ける。
    なぜならフーダニットとホワイダニットを排除してしまっているのだ。
    したがってハウダニットに主眼が置かれるのだが、これがまた毎回驚きを伴っているのだから凄い。

    ラストの方はストーリー仕立てになっているのだが、そこで潘金蓮の魅力は最高潮に達する。
    そこらの作家が小手先で書いた恋愛小説など霞むレベルの深い「愛」に読者は圧倒されるだろう。

    そしてラストを飾る「人魚灯籠」
    これがまるで走馬灯のような役割をもたらしなんとも言えない余韻が生まれる。

    この上なく贅沢な一冊。
    是非読んでみて欲しい。

  • 忍法帖以外で山田風太郎氏初めての作品、忍法帖があまりに有名であるが、デビュー後はミステリ中心の創作であるし、明治モノとジャンルされる作品群もミステリ要素は強いらしい。この「妖異金瓶梅」は忍法帖への橋渡しとなった作品のようで、忍法帖における氏の作風が垣間見える。

    連作短編集であるが、このパターン(後述)の類型は見たことがなかった、そして短編一つ一つがトリックの独創性に優れ、ゾッとする読後感に溢れている。本当にすごい作品であり、1950年代の作品というのが信じられない。

    中国4大奇書の一つ「金瓶梅」を下敷きにしているが、登場人物のキャラ立ては山田氏独特の味付けが行われている。何よりヒロイン藩金蓮の美貌とその恐ろしき「愛」の貫き方は今作の中核を成すものであり、彼女を中心としてエロス漂う世界観は忍法帖に通じている。

    以下ネタバレ










    ミステリの定石として探偵と犯人の存在があり、魅力溢れる探偵の創造に作家は腐心することであろうが、魅力的な犯人というのも創作上の大きな問題であろう、犯人は探偵と違い使いまわせない、犯罪が暴かれた後は退場するしかないのだが、この「妖異金瓶梅」ではこのジレンマを完全に払拭した独特の世界観を創りあげているのだ。オリジナル金瓶梅ではほんの脇役であった応伯爵が今作では探偵役であり、ヒロイン藩金蓮が常に犯人役である。様々な事件が発生し、ほとんどが殺人である。真相を暴けば全て藩金蓮の企みであり、応伯爵はそ知らぬフリで金蓮を見逃すのだ。その代償として切なく儚いご褒美を当の金蓮からいただく、というのが一連のパターンである。

    しかしながら犯人と探偵が常に固定されているという特殊な世界において、ミステリ性も「なぜ?」「どうやって?」に限定されるのだが、その足枷が物語を逆に面白くドラマティックに仕上げているように思える。これは妖しくもエロス溢れる世界観の中での限定的現象なのだろうが、ただただ山田風太郎氏の創作の勝利と言えるのだろう。

    これでもか!と叩き込まれる金蓮の悪巧みも、その本質は純粋過ぎるがゆえの強烈な「愛」によって生まれるものであり、垣間見える彼女の顔も恐ろしかったりかわいらしかったりする。読者は報われない思いを持って金蓮と接する応伯爵目線に立って物語に入り込むだろう。類希なる美貌の金蓮に心奪われながらも、その思いの強さゆえの悪逆非道を見せ付けられ、彼女に近づけないのだ。このもどかしさは自分自身強く感じた。

    このようなことも全て解説で述べられていたことであり、読了し大いに納得したことである。解説には高木彬光氏、有栖川有栖氏、綾辻行人氏などのビッグネームの書評、対談などが記載されている。有栖川、綾辻対談における「究極の愛の物語」に強い感銘を受けた。エロ、首切り、足切り、カニバリズム、同性愛、血生臭い殺しの果てに累々たる屍の山を見せつけておいて、最後に「愛」を感じることができた自分であった。

    エンタ性抜群の作品であった。

  • ‪山田風太郎『妖異金瓶梅』読了。‬
    ‪今回のシャカミス課題本。初山田風太郎作品だったのだけれど、50年前の作品とは到底思えない読みやすさだった。本作は、中国四大奇書『金瓶梅』を基に、キャラクターと舞台をそのままに連作ミステリとして再構築したもの。しかしすごいな表紙・・・・・・‬
    ‪後から知ったのだけれど、実はこの文庫は『妖異金瓶梅』とその続編『秘抄金瓶梅』を併録したもののよう。単行本で持っている稀有な方がいたら前半で終わっているかも。読書会メンバー大丈夫かしら。‬
    ‪さて、金瓶梅といえば水滸伝のスピンオフだが、厳密には水滸伝から分岐した違うルートである。‬
    ‪本作はその金瓶梅のシナリオを抑えつつ実は水滸伝のシナリオも重要な要素として機能している。とはいえ、元ネタの知識は不要。奇書繋がりでちょっとだけ知っていた僕は面白かったけれど、僕の知識はWikipediaの粗筋程度なので多分原作知識は要らないでしょう。‬
    ‪元の水滸伝、金瓶梅のキャラが非常にユニークで魅力的なので、当然本作もそのあたりは読んでいて楽しい。探偵役の応伯爵なんてめっちゃ面白いおっさんだし、潘金蓮の妖艶さもこの作品の肝だろう。これだけの数の登場人物がみな違ってみな魅力的なのは驚異的。‬
    ‪ミステリとしては本来は連作では用いない(普通は作品としては崩壊する)ある縛りをあえて使い、その上で成功させている。ハウダニット、フーダニットものの連作短編としても面白いが、連作が「長編化」していく終盤も見事。あまりに壮大で美しく哀しい。‬

  • 犯人はヤスならぬ潘金蓮。

    浅学菲才の身ゆえ『水滸伝』の武松の名こそは知っていたものの彼の伝で語られる豪商西門慶とその第五夫人潘金蓮はとんと知らず、まして水滸伝と並んで中国四大奇書とされる『金瓶梅』がそのスピンオフ小説でありタイトルの「金」がその潘金蓮の金だと知ったのは本作の読後の事であった。

    さて本作はその『金瓶梅』をベースにその官能性を失わぬまま大胆にアレンジした16篇からなる短編連作ミステリーである。

    作中で度々「稀代の大淫婦」「妖婦」「毒婦」だの散々な…恐らく水滸伝や金瓶梅そのままの評で呼ばれる潘金蓮が傍から見れば些末な出来事で癇に触れ、その相手を死なせる、死ななくとも酷い目に遭わせ、それを西門慶の幇間であり悪友にして本作の探偵役である応伯爵がトリックを見破りながらも彼女にべた惚れであるがゆえに役人に突き出すような真似はせず見逃し、潘金蓮が婀娜と微笑んで幕を閉じる短編が11と続く。
    3篇目ともなると事件の動機となる定型化されたやり取りに「あっ…(察し)」となり、案の定な事件が起きてハイハイ犯人は潘金蓮潘金蓮ワロスワロスとなる。フーダニット?ホワイダニット?何それ美味しいの?

    …が、しかし。12作目から物語は怒涛の展開を見せ始め、短編連作と思われた本作は実は一本の筋の通った長編であり(一本の長編と番外編の短編一作と言っても差し支えない)狂気とエログロはただひたすらな愛情であり、そして愛欲と憎悪が渦巻き果てはソドムとゴモラと化す「金瓶梅」とは潘金蓮だけを指す訳ではなかったのである…。

  • 2017/10/10
    フェチい
    妾が何人もいるけと嫉妬深いヒロインがどんどん殺す話

  • 「赤い靴」が傑作。なぜか感情移入してしまう登場人物造形に脱帽。

  • この全編を支配する淫靡で血生臭くも妖艶な世界観は何なのだ!?!
    酒池肉林の渦中に観る凄まじい肉欲と憎悪とそして死・・。
    まるで読み耽る自分が七つの大罪を犯しているかの如くに深淵に堕ちていく感覚・・・。
    絶世の美女でありながら稀代の大淫婦「藩金蓮」の凄まじい愛と欲望渦巻く妖異譚の傑作。

  • 楽しく読めた。

  • 面白い話もあったような気もするけど、全体的には退屈であくびが止まらなかった。。
    半分も行かずに断念。

  • 女同士の愛憎劇や、男の可愛いところも描かれ、誰もがもつ心理がわかりやすい形で溢れていて面白い。最期まで、いろいろな形の愛があり、ミステリーもあり、読み応えがすごかった。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2018年 『忍法双頭の鷲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)のその他の作品

山田風太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
ピエール ルメー...
高野 和明
ジェイムズ・P・...
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)を本棚に登録しているひと

新しい本棚登録 1
ツイートする