続氷点(下) (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 455
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003855

感想・レビュー・書評

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  • 2014.10.11

    続氷点上巻から続く、辻石家と三井家の複雑な人間関係。そして陽子と順子、徹、北原の関係にもドキドキハラハラとしながら読み進めました。
    順子の衝撃的な手紙での告白、そして見本林での夏枝の言動、北原の事故…全ての出来事が当人たちに動いて欲しくない方に動いてゆきます。でもそれが人生の辛さであり、また生きる希望にもなり得るのだと思います。
    人間とは何か、罪と赦しとは…。
    とても重く壮大なストーリーで、最後は希望を感じられる終わり方でした。陽子、徹、北原、順子には幸せになれるはずです。
    読後には不思議と爽快な気持ちと、なんとはなしにもやもやとした思いが残りました。でもそれはこの本に対しての思いではなく、自分に対しての思いです。

    久々に心が揺さぶられる小説を読みました。とにかくこの本に出会えたことに感謝。こういう出会いがあるから読書はやめられないですね。
    何年か後に読み返したとしたら、その時自分はどんな感想を持つか楽しみです。

  • 上巻を読んでいた間は(続編は蛇足では)と思っていたが下巻を読んで色々納得できた.自分の罪の大きさを実感するからこそ,他人を裁くことから離れて,許せるようになるというのは深いと思った.

  • なぜなのだろうと疑問を持ち、自分なりの答えを導き出せる人と、その場の感情でのみ動いてしまう人とでは、長い人生を終える時に大きな差になっていくのだろう。常に相手に過失を見出してしまう習性の人は、その思いに囚われ、冷静に自分を見ることができなくなってしまう。
    宗教観が随所に光るが、それがなければ深みのない作品になってしまっただろうし、キリスト教の事はよく知らないが、それでもその哲学が味わい深い。
    この本を通して、心に残るは啓造・夏枝夫妻。この二人は実に人間らしく、愚かであり、また純粋でもある。

  • 北原さんのことでまた陽子が傷つき 徹とのことでも彼女は苦しむことになる…

  • わたしは出自まで遡って罪を感じたりはしないな 知るまでは無実、知ってからは罪となるのは矛盾しているように思うから 神でない我々はどうせすべてを知り得ないのだから、罪であるかどうかは基本的に自分がコントロールし得た事象に関して自分の良心との対話のみで判断すべきだと思う。ただ、自分でコントロールし得た事象に関しても、あの時はああするしかなかったと自分を慰めてしまいがちだけど、罪の意識がないから他者を責めるのだと一貫して説いている。目の中の丸太オチはナチュラルだけど全編通して説得力があってさすがだったな

  • 前編はひらすら「罪」、「罪」とすべての登場人物が罪という言葉を自らに問いかけていたけど、続編はひたすら「ゆるし」を問いかけ続けていた。
    キリスト教という薄いベールに包まれつつ、ゆるし、ということを問い続けていた。それぞれの立場で許し、という言葉の意味も感じ方も度合いも違うけど、それらを超越した陽子の心情が最後の流氷のシーンに表れていた。とても美しい光景。大好きな貫井徳郎の「神のふたつの顔」のラストシーンとなんとなくかぶる。「神の二つの顔」牧師の父と子のラストシーンも「ゆるし」がテーマだったのではないか、と今になって理解できたような気がする。

  • 罪を犯して激しく後悔していたり他人の罪をゆるせなかったりすると、こんなにも生きづらいのかと思った。では、罪はどのように償われるべきなのか。謝罪し、相手にゆるされたところで、その事実は消えない。罪とは、たとえゆるしゆるされても一生消せないものだ、と思った。

    p142
    「ごめんなさい、心配かけて。でもね、わたし自殺しようとしたからいえると思うけれど、真実に生きることよりは、死ぬことのほうが、やさしいわ」
    「なるほど、そういう考えって大切だね」
    「そしてね、考えたの。生れてきて悪かった人間なら、生れて来てよかったとみんなにいわれる人間になりたいって」

    p162
    ペンの先から思いが溢れてこぼれ散り、心のすべてを書きつくすことができないような気がした。

    p167
    「ほうたいを巻いてやれないのなら、他人の傷にふれてはならない」

    p192
    「傷つけたいと思わないけど、人間なんて、つきあっている限りの人間に、傷をつける存在じゃないのかなあ。かすり傷か深傷かのちがいはあってもさ。」

    p341
    「好きということと、愛することとは同じですよ。ねえ、あなた」
    「いや、よくはわからないが、好悪というのは感情で、愛というのは感情ではないようだね」


    p341
    「しかし人間が本当に問題にすべき愛は、本来意志的なものだろうね」
    「では好きではなくても、愛するということがありますの」
    「あるだろうね」

    p342
    「むずかしいことだよ。愛について書いてある本を読んでごらん。大変なことだよ、愛するとは。何しろ、自分の一番大事なものを他にあげるのが真の愛だそうだよ」
    「一番大事なものって、お金や着物でしょうか」
    「夏枝は命は二番目に大事なのかね」
    「あら、命は別ですわ」
    「その命をあげることのできるのが、愛だそうだ」

    p375
    相手より自分が正しいとする時、果して人間はあたたかな思いやりを持てるものだろうか。自分を正しいと思うことによって、いつしか人を見下げる冷たさが、心の中に育ってきたのではないか。

  • 氷点に続く続氷点。こちらは初めて読む。陽子が助かってほっとしたけれど、その先も悩めること山積みの陽子の人生。登場人物も産みの親の三井恵子一家が加わり、さらに人間関係が複雑に。
    殺人犯の子ではないとわかったけれど、不義の子を産んだ恵子に対しての許せない気持ち。自分が望まれて生まれてこなかったことに対する悲しみ。自殺後は母夏枝の態度は軟化、父啓造は過去を悔いて徐々に陽子の理解者になる。そして愛を持って陽子を見守り続ける徹と北原。
    このまま静かな生活が続くかと思いきや、異父姉弟の達哉の出現で陽子の生活も引っ掻き回され、思わぬ結末になる。この達哉、自分勝手で衝動的な行動ばかりでイライラする。そしてこんな結末とは。
    でも最後の最後、どうなるのかはっきり書かないのはもやもやする。さすがにもう続はないだろうし。
    氷点での嫌な人ランキング:夏枝、村井、達哉。好きだったのは高木先生、北原、それから辰子。もちろん陽子もだけどいい子過ぎて。順子も同じく。啓造、徹、恵子は良かったり悪かったりだけど、罪深いと感じることも。罪のない人間はいないってことらしいけど。テーマは原罪と赦しなんだそう。結局最後は宗教に救いを求めるしかないのか。

  • デビュー作’’氷点’’の昼ドラマとしての傑作ぶりに感嘆して、続編を手にとったのですが、登場人物がやたらと増えすぎて(あいかわらず自分勝手な人たちも健在)、しかも、かかわりが表層的で、韓流ドラマばりにご都合主義が多すぎて、とっちらかっちゃった印象。キリスト教っぽいにおいも苦手。それでもラストだけは気に入りましたが

  • はあー救われない…
    この本を、ドロドロだったねで終わらせられる人はまだ人間の醜さみたいなものに気付いてないか鈍感でいられる人なんじゃないかなあ。徹の好奇心が全てを引き起こしてしまったわけだけど、元を辿ると啓造だって夏枝だって諸悪の根源になる。つまりは沢山の人間の醜い思いが積もり積もってこんな結末になってしまった。そして最後に怪我を負うのはなんの落ち度もない北原というのもやりきれないよ。なんという現実、という感じだ。
    夏枝のように自分の痛みにしか結局は目が向かない人もいるし、人の痛みを自分の痛みのように背負ってしまう人もいる。だからこそ悲劇は起こる。全4冊を通して、どうにもならない世の中のむなしさを伝えられたようだった。最近は忘れがちになるけど、すっきり終わらない物語こそが本当は現実なのだ。

    三浦綾子はすごい。人間の無常をこんなにも淡々と分かりやすく書いてしまう空恐ろしさ。ほうたいを巻いてやれないのなら、他人の傷にふれてはならない。そのとおりである。
    人間の病状の診断はあっても、ではどのように生きてゆくべきかという処方箋はない。あとがきも響きました。

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プロフィール

三浦 綾子(みうら あやこ)
1922年4月25日 - 1999年10月12日
北海道旭川市出身。終戦まで小学校教員を努めたが、国家と教育に対する懐疑から退職。1961年『主婦の友』募集の第1回「婦人の書いた実話」に『太陽は再び没せず』を投稿し入選。
1963年朝日新聞社による投稿した小説『氷点』が入選し、朝日新聞に同作を連載開始。1965年、同作で単行本デビュー。刊行直後にベストセラーとなり、映画化・ラジオドラマ化される代表作となる。ほか、映画化された『塩狩峠』が著名。様々な病苦と闘いながら、キリスト者として執筆を続けた。

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