友情,愛と死 (角川文庫クラシックス む 1-1)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041004043

感想・レビュー・書評

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  • 高校生になった頃読んで以来。 2作共にストーリーがシンプルで読みやすい。今の世代とずいぶん異なる若者の考え。だが、意識は似ているかも。2020.3.3

  • 友情 と 愛と死 の二編からなる。わりとタイトル通り。
    まず、友情について。この主人公は友人の美しい妹である杉子に見惚れてから彼女に結婚願望を抱き続ける。が、どうもすぐに妄想に取りつかれてしまうらしく、もし彼女と夫婦だったならこういうシーンで彼女はこんな反応をしてくれるだろう、というように実際に見たこともないのに杉子を非常に神格化する。そりゃ、杉子も引くわ…。
    だが杉子も杉子で、「なぜ私なんかがこれほどまでに野島さんから好かれるのかわからない」と迷惑そうにカマトトぶりつつも、想いを寄せる大宮に対しては押しまくってついに恋を成就させる。このような行動は、なぜ好かれるのかわかっていなければできないことだ。周りの女よりは容姿が優れてて愛嬌があるくらいの自覚はあるがゆえの行動だ。杉子の抜け目のなさを見抜けなかった主人公がここで少しかわいそうになった。が、最後の決意表明はよかった。やっぱりそうでなくっちゃ。

    愛と死については、こちらは友情と違って主人公の恋は成就する。恋愛描写よりは、この時代を生きる人の、勉強する意志と日本賛美、日本に対する可能性を語る描写に惚れる。作者の思いが伝わってくるようだ。
    「地球の形が球でよかった」というセリフが、まさしくそれを表している。

  • どちらも恋に苦しむ男のはなし。
    人間の醜い部分、いわゆる人間の小ささが細かく描写されているが、結論は見えてるし、なぜこれが後世まで語り継がれる名作なのか、よく分からない。

  • 借りて読んだ。
    こういうのはあまり読まないので新鮮。古い時代のことなのに今と似たやりとりもあって、逆に今にはない落ち着いた感もあってふしぎ。
    どちらも叶わない恋で、切なくて悲しいけど読んで良かった。

  • 手紙のテンションすごい。この折り返しの写真にある武者小路さんが、この顔でテンションMAXの夏子の手紙を書いたかと思うと微笑ましいような気すらします。話の運びもこうなるだろうという展開を全く裏切りません。

  • 子どものころに読んだ感想と違って、今読むとすごく痛さがわかる。

  • もう幾度か目の再読。
    やはり、読むたびにいいと思う。
    特に愛と死は涙なくして読めない。
    夏子が余りにも愛らしくて、二人の出会いや将来を無垢に信じるそのピュアさに心が揺さぶられる感じがする。
    一度は読んでもらいたい名作。

  • 友人の事を考えて思ったり、悩んだり 好きな人の事をこんなに想う事っていまありますか?恋愛小説だけど悲しい。この古さが新鮮です。

  • 日本の青春の美そのもの。噂には聞いていたがやっぱりすごかった。

  • 「自分は生きているだけの資格があって生きているのではないのです。貴いものが死ぬのです」
    主人公の心理が丁寧に書かれています。
    『愛と死』はどちらかがいずれ死ぬと分かっているだけに、睦まじくしている描写が切なく感じられました。
    友情は小説としてのエンタテイメント性がありますが、愛と死のほうが当時の渡仏の様子と、作者の思想や生死観が窺えて面白かったです。
    題を見ていくらか耽美的なものかと思っていましたが普通の恋愛小説で、文章も意外と現代的で読み易いです。

  • 「友情」

    野島は友人の妹、杉子に恋をする。
    自分には何か才能があると思いつつも、混沌としてそれを表にだせない。
    そんな不器用で真面目な若者らしく、非常に不器用な恋である。
    親友の大宮にもさんざん相談に乗ってもらうのだが…

    後半は夏目漱石の「こころ」と対比させて読むと面白みが増すと思う!

    恋愛って相手に向くベクトル(相手のことをもっと知りたい・喜んで欲しい)と自分に向くベクトル(自分を磨きたい、どう思われているのか気になる)があると思うんだけど、
    この野島の恋については、ベクトルがほとんど自分に向かっているのが特徴的。
    相手に見合うように自分を磨かねば・・・と。
    恋愛に慣れていないとありがちなんだろうけどねー
    頭でっかちで不器用で未熟で…そんな自分からしてみれば、野島は気持ち悪いけど憎めない(笑

    野島は現代に生きていたら、二次元のキャラクターに萌えていたかもしれない。
    森見登美彦「太陽の塔」の主人公ともちょっと似ている?
    自分は人と違う何かをもってる、と信じているあたり、結局そのへんの若者と変わらんのよねー。

    大宮の器の大きさが素敵だ!
    やはりいい男とは器の大きさだな(笑


    「愛情」
    遠距離恋愛の男女の話。
    主人公は恋人の夏子を置いて、パリに行くことになった。
    その2人の手紙交換の様子がとてもなごむ。
    「友情」に比べて爽やかでほのぼのする感じ。

    夏子の一途さが可愛くて仕方がない。
    夏子は大勢の前で宙返りをするようなおてんばな女の子だけど
    会えない間は好きな相手を思って、苦手な裁縫・料理も頑張れてしまう。
    この健気さにぐっと来るなぁ。
    もともとおとなしい女の子、ではなく、普段は口も達者で元気な女の子でも・・・・恋をすると変わるのねぇー。
    どうりで、恋という字と変という字は似ているわけだ(笑

    話としては「友情」のほうが面白いけれど。

  • 2009/7/19 チェック済み

  • 文章が美しい。
    友情のほうが個人的には好きだった。
    親友をとるか女をとるかという、今となってはベタになってしまった筋書きだけれども,恋というものを盲目的に客観的に両方の視点から考えられる本だと思った。

  • 幸せを攫もうとする人たちの姿、神を信じて祈り、感謝する瞬間また疑惑、罪を感じるままを鮮やかに表現する作品。 「雁」を読む時のドキドキ、興奮して眠れない共鳴とは違って、一直線の描写、単純な感情、人間関係、書生の誇りなど、あまりも粋ではない主人公からはじまり、その大きくない願いを叶うための執念が貫かれていく。 でもさすがにビックリさせた、その快調、その流暢さ、大水の流れ如し、勢いよく掛かって来て届く前にまたすっかり静まって退く。 追うことじゃない。 誰かの定めと言うもの。 楽しいか悲しいかともかく、運命という渦巻きに廻らせ、遠くから見ればかなり華やかにも見えるが、当人はどうも大変に成らずには済まない。 終わる前逃げるなんかできやしない。 それはどうしょうもない、それが人生、作者からのメッセージである。

  • 友情はよかったなぁ。この人の作品は胸が空く。

  • 友情は奥が深い。だけど愛情だけじゃなく友情だって自然なものだと思う。

  • 葛藤と苦悩の恋物語…
    読みながら何度も「お前はホントにどうしようもないヤツだな!」と突っ込みを入れていました(笑)
    濃密な文書は美しく、悩める主人公の心境を鮮やかに映し出します。

  • かわいい!かわいいかわいいかわいったらありゃしない。
    それなのに、もーーう(号泣)な、お話しです。ためいき出たです。
    実篤の登場人物はピュアでけなげ。かくありたいです。

  •  偉大なる作家を志す青年の、恋と友情の話が「友情」<br>
     この「友情」というのがまた、意味深く恐ろしくも美しい感情なのだ、と思わせる。<br>
     序盤に伏線を張って、最後にそれを解き明かしていく様は、ミステリにも通ずる気持ちよさがある。<br>
     私がどんな人物か、と問われれば、武者小路実篤の書く主人公のような人間だ、と言いたくなるくらい、感情移入が出来て、面白かった。<br>
    <br>
     そして「愛と死」は、タイトルが示すとおり、愛と死をテーマに扱っていて、まさか泣くとは思わなかった。<br>
     友人(この友人と主人公の関係は「友情」に通ずるものがある)の妹に恋をし、相思相愛になった主人公は、友人から進められて巴里へ旅立つ事になった。<br>
     巴里へは半年間滞在する。無事、帰ってきたら結婚しようと友人の妹と約束を交わし旅立った主人公。毎日のように手紙を出し合う二人。<br>
     これで死がテーマと言えばわかってしまうでしょう。<br>
     最後、主人公が彼女の部屋を覗く場面でほろりと来てしまいます。というか、今も思い出して来てます。
    <br>
     もう一つ「愛と死」で興味深かったのは、主人公が巴里から帰ってきて言った言葉。<br>
    「巴里にいったところで、人間が居るだけであった」<br>
     そして巴里で僕は変わらなかった、と彼は言った。芸術はすばらしかったが、日本にも誇る人物は多くいて、という描写があったので、おそらく「人間が居るだけであった」というのは本当なのだと思う。<br>
     けれど、彼は成長したのだ、と言った。旅行中の手紙のやりとりで育まれた「愛」と、帰路の途中で知った「死」によって。<br>
     凄い衝撃を受けた。<br>
     平易なテーマだなあ、と思って読んでいたのに、一つ人間の大事な部分を知った気がした。<br>
     最近、成長という言葉が、どこか「自動詞」のように扱われているのに、憤慨する。<br>
     何もしないで、ただ「何か」を待つ人間を私は好きになれない。<br>
     かならず物事には「過程」があり「結果」がある。わかりきった事なのに、いまさら強く認識できた。<br>
    <br>
     この「強く認識」出来る事が、創作物のすばらしさだと思う。<br>
    <br>
     ああ、面白い。面白い。面白い!

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著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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