宇宙エンジン (角川文庫)

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著者 : 中島京子
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年8月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041004418

作品紹介

一風変わった幼稚園の同窓会に招かれた隆一は、ミライと出会う。母の記憶が曖昧になりつつあるいま、会ったことのない父親を捜しているというミライ。人嫌いの厭人家という逸話、そして父らしき男がかすかに写った写真。手がかりはそれだけ。写真を見た隆一の姉は、言った。「この人、ゴリじゃない?」。70年代に消えた父は、何者なのか。二人は"エンジン"を捜すうち、風変わりな人々に巡り会い、近過去という時代を紐解いていく。

宇宙エンジン (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 幼稚園の同窓会に出掛けた主人公が、先生の娘・ミライの父親について調べる事になる。ミライの父親であろう人物は「宇宙猿人ゴリ」に似ていて…とそんな流れから始まり、コメディかと思いきや段々話は70年代の学生運動などの話に入ってきて反戦的な内容も感じられた。結局、最後がちょっとはっきりしない感じだったかなぁ。
    宇宙猿人ゴリというのを検索してみたら、本当に存在するものだった。スペクトルマンという正義の味方と戦う悪役だけど主役?知らない人は是非検索してみてください(笑)

  • タイトルや表紙から想像したものからは意外な内容だったけれど、読み応えがありおもしろかった。70年代。ラブ&ピース。学生運動。特撮ヒーローと悪役。自分のルーツである親たちの、親になる以前は何者だったのか。いつか、聞いておきたかったと思う日は来るのだろうな。・・・と自分/親とも重ねあわせながら、今の時代ともあれこれ重ねあわせながら味わう。

  • なんとも不思議な話。主人公が誰なのかもちょっと良くわからない。ミライと名付けられた、母親との間に確執を持つ娘が、無類の厭人家だったという会ったことのない父親について知ろうとする話なのだけれど、昔の子供番組「スペクトルマン」に出て来たという「宇宙猿人ゴリ」が登場する辺りから独特の展開を見せ、もしや作者の分身?のような女流作家が出てきたり、短編小説「宇宙厭人ゴリ」やそのモデルになった人たちが出てきて、ますます不思議な感じに。それでもさすがに最後はきれいにまとまって、現実とはお話のようにわかりやすい訳ではなく、むしろこんな風に、てんでバラバラなことがバラバラに起こっているのだなぁなどと妙に納得したような気持ちになりました。一人ではキリッとキッパリしていた感じのミライが二人になったらふわふわした風になり、一人ではまるきリ頼りない感じだったリュウイチが二人になったら見違えるようにシャンとなったのが印象的でした。

  • エンジンってかたかなで書かれると動力の方と思うよね。ところがこのエンジンはそれではなくもちろん猿人でもなく、厭人のこと。簡単にいうと人嫌いとなるけれどでも違う。もっと奥が深くて入り組んでいてこんがらがっている。ひょんなことからこの厭人といわれる男性探しに関わることとなった主人公。とてもいいやつ。好奇心もあるかもしれないけれど、いいやつだから絡まった糸がほぐされていくんだろうなあ。人と人とのつながり、過去を確かめ今につなげる力に溢れている一冊。そしてここにもひょこひょこおじさんがいて。世の中は繋がっている。

  • 心と体にためこんだエネルギーを
    あたりかまわず撒き散らす人ばかり、いた。

    鬱々として爆発できない人は
    ためこみ続け、思いもよらぬきっかけで
    あり得ぬ形で暴発した。

    雑多な食べ物の匂い。
    野良犬の排泄物の匂い。

    広告用飛行船。
    籾殻の野焼き。
    舗装され始めたばかりで
    まだ砂利だけ敷かれた田舎道。

    生命力と文明と食欲と暴力とポルノが
    等価であふれていたような混沌の時代。

    この作品にはその混沌が混沌のままで
    そこに再現されている。わずかながらに。

    そんな60年代から70年代を生きた者の
    息子や娘たちの…なんと理解しがたいことか。

    私は1962年生まれ。
    子供時代のノスタルジーに惹かれて読んでみた。
    私はあの時代がすこぶる嫌で…好きだったのかもしれない。

  • 直木賞作家中島京子さんの作品『宇宙エンジン』を読んだ。
    女性アーティストが自の母親がアルツハイマー病にかかったのを機に何故だかあった事もない父親の事を知りたくなる。そこで意図しないのだが、色々な人を巻き込んでしまいドタバタのなか、彼たちが集まって来る事で情報も集まって来る様が描かれている。さすが人間関係の設定がユニークだがとても秀逸です。父親が浅間山荘事件の頃活動家だったりするので、そんなくだりを読んでいると自分の多感だった15.16歳の頃が思い出され少しむず痒く感じたりもした。想像以上に楽しめました。

  • 70年代をめぐる家族の肖像であり、時代の肖像でもある秀作。一気に読ませる。

    ミライを通じて、60年代後半から70年代初頭にかけての流れを体現させ、彼女に「まかされて」ミライが生まれるにいたった過去の空白を埋めるべく行動する隆一がおかれている境遇を介して「グローバルキャピタリズム」がもたらす現在とのリンクも明示してみせる。

    ミライの母親と、父親だろうと思われる「ゴリ」が若かったころ。それは理想のあった時代で、人々がその理想を実現するために行動をおこした時代。

    それが「人と人とが関わればどうしたってそこには軋轢がうまれるし、批判にもさらされる。気がつけば、友人でいたかった人との間にさえ、抑圧的な関係ができあがってきたりする」という現実に直面して、だんだんと、幻滅し、分裂し、諦念し、、、80年代、一億総「中流」という幻想とそれをささえる「学歴社会」というやつがやってくる。

    この小説では80−90年代はでてこないけれど、30代でフリーターをやっている隆一が大学を卒業したのはちょうど就職氷河期の入り口のところなわけで、敷かれたレールの上にちゃんとのっかっていれば終身雇用という将来は保障されるという神話がはじめてほころびをみせはじめたころだ。

    それでも「アカルイミライを信じて生きていくことにする」というミライの母親(となる人)のことばによって、物語ははじまりに戻る。

    見事な手際で小説は終わる。

  • 中島 京子さん”宇宙エンジン”読了。 100点満点!不思議な風合いで始まるストーリーが、どんどん深い世界に飛んでいきます。”猿人ゴリ””スペクトルマン””学生運動””ウーマンリブ””過激派”‥素晴らしい作品です!

  • ―――真実ってものを捕まえるのは、ほんとに難しいや―――

    中島京子の小説はハズレがないので読んでみた。
    おそらくこの物語の主人公、隆一のもとに、トラウムキンダーガルテンという幼稚園から同窓会のお知らせが届く。
    勤務先から契約更新を「見送る」通達と、半年ほど付き合った彼女からの別れの手紙と同時期に届いたお知らせに、隆一は出席することを決める。
    物語は、この同窓会からスルスルと流れるように始まり、あさま山荘事件の1970年代を駆け巡る。

    物語性の高さも勿論だが、なにより文章力に優れた小説だと感嘆。
    主要人物が多く、あらゆる視点が必要とされる今作の、一人称の移行が巧み。
    三人称と見せかけての一人称の書き方が読みやすく、読者を見失わせない。

    広い庭で栽培した食材を使ったミライの手料理が美味しそう。
    柿の葉寿司、おはぎを筆頭に、隆一の作った天然酵母パンに、ミライの作った厚切りベーコンとピクルスの薄切りをはさんだものにヨダレじゅるり。

  • こういうストーリーをまとめ上げる筆力はすごいなと思った。
    最初のころは(いやかなり後半まで)この話はどこに行くんだろうという感じでぼつぼつと読んでいたが、終盤に向かって輪郭がはっきりしてきた。

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