呪い唄 長い腕II (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041004777

作品紹介・あらすじ

汐路のいとこ兄妹が命を落としてから数ヶ月、町を呪った近江敬次郎の復讐はまだ終わっていない-。そう考え、町にとどまった汐路は、一人の老人に引き合わされる。戦時中、近くに駐屯していたという元軍人で、終戦直後に姿を消した部下の行方を捜している、という。幕末に流行した「かごめ唄」が平成の世にまたはやり始め、童謡に乗せて、新たな罠が動き出す。横溝賞受賞作『長い腕』に、待望の続編が書き下ろしで登場。

感想・レビュー・書評

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  • 前作から数か月後、島汐路はさらなる過去からの罠を予感して故郷での探索を続けていた、そんな中汐路は元軍人の老人と引き合わされる。

    プロローグにさまざまなエピソードが断片的にはさまれて次が気になってしまう展開です。さらに驚きなのは汐路が現代の時間軸で調査するのと並行して、勝海舟の若い時代の話が同時並行で進んでいくこと。この二つがどう結び付くのかとても楽しみにしながら読んでいきました。

    ただ導入部は引き込まれるものもそれぞれの事件のつながりが分かりにくく、勝海舟というビックゲストが出てきた割にそこでの謎解きも正直なところあまり大したものではないかなあ、と思ってしまいました。

    汐路が調査をする現代のパートの犯人の動機もイマイチ分からなかった。前作は「歪み」の原因となる罠がはっきりしていただけに恐ろしさも感じたのですが、今作は罠というよりもそれぞれの人の問題じゃないか、とも思ったり…

    あとがきによるとこの『長い腕』は三部作になるそうです。個人的には毎回事件に介入してくる石丸さんが気になって仕方ないので、そのあたりの説明も入れてくれる作品を期待しています!

  • 前作で、どこか島家は敬次郎の呪いから除外されているような気がしていた。
    島家こそ、喜助一家を何とか助けてくれていた家で、敬次郎はこの家にだけは呪いをかけていないのではないかと。
    だが、『呪い唄』の結末を読んで、それは違う気がした。
    確かに、島屋敷を歪ませはしなかったかもしれない。
    それはもしかすると、島家が喜助一家を助けようとした家だったからかもしれない。
    けれど、人間の感情の複雑さは、多分そんなに明確に憎む相手を区別しないんじゃないだろうか。
    それこそ、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
    どんなにいい思い出があっても、一つの大きな凶事がそれをどす黒く染めてしまうこともある。
    敬次郎は、確かに有力者たちを恨んだかもしれない。
    けれど、それはしばらく離れていたことによって、「早瀬」という土地そのものへの憎しみに変わったんじゃないか。
    そう思わずにはいられない、今回の仕掛けだった。

  • 「長い腕」の続編。
    展開の早さと幕末と現代を行き来して謎解きが進むところが面白くて、一気読みだった。一作目より読み応えがあった。

    前作が横溝正史ミステリ大賞受賞だったが、この作品の方が横溝正史色が強いように思う。あちこちに撒かれた伏線が一気に回収されるまで犯人の予想がつきにくい。

  • 元セガ勤務だった方の小説二作目。前作の「長い腕」はゲーム会社に勤務している人が主人公、という理由で手に取った訳ですが、前作は本筋のミステリ部分よりどうしても職場描写が気になってしまい、そっちの記憶の方が強かったりします。

    それもあってか、前作におけるミステリパートの純然たる続編の本作では、なかなか前作の記憶を引き起こすことが出来ずに、感情移入することが難しく感じられました。加えて、現代パートと江戸時代パートを行き来する展開が、いっそう本作の本筋が何なのかを分かりづらくさせてくれる印象が…

    とはいえ、序盤を少々過ぎたあたりで前作の記憶補完が完了し「で、どうなる?」と興味津々モードに入りつつも、なかなか話は大きな展開を見せない。クライマックスまでは「眠れないほどじゃないけど、なんかこの後の展開が気になる…」な精神テンションのまま、話は続いて行きます。

    しかし、クライマックスからは本当に急転直下な展開。現代パート、過去パートともに真相があらわになっていきます。ただ、その内容自体は悪くないけど、やはり後半に物語の“比重”が集中しすぎてしまっているところがアンバランスな気がします。

    そして…前作同様、石丸D最強過ぎ。もうね、この人ゲーム会社のディレクターやってる場合じゃないよ、っていう天才振りですわ。前作も同じような印象受けましたが、政界牛耳って日本をいい感じにしてくれよ、ってくらいの有能振りを見せつけてくれました。

    作者の、人としての理想像が、この人に反映されてるんでしょうかね。

    そして…最後の最後で、実は本シリーズが三部作であったことが明らかに… なんだかんだで続編気になるんで、早々に出してほしいところであります。本作発表が前作発表から10年以上近く経っているので、次はもっと早いペースで発表してくることキボンヌであります。

  • 三部作という本作、今作はミステリというよりもサスペンスが際立つ。だが、自分には今ひとつ何がしたかったかよく分からずに読み終えてしまったという印象が強い。主人公がどうも影が薄くて作者の都合のいいようにだけ動く設定にしか見えず、そこだけ残念。

  • 2022.03.19

    「長い腕」から10年以上経って上梓された本作は、前作のテンポ、スピード感ともに失速していてやや残念だった。
    登場人物が多く、混乱したし、結局最後はまた源田と石丸に持ってかれるのかよーとも。

    謎解き要素も多々あるものの、前作よりだいぶ弱く感じる。汐路のキャラも失速していた。200ページあたり汐路が東京に見舞いに行くあたりでやっと少し面白くなってきたかな…という感じで前半のもたつきが長くて読むのに時間がかかってしまった。ハラハラするシーンも、坑道に入ったところ数ページで物足りなかった。

    なんとか読み終えたけど「弔い花」も読むのはしんどいな…と思ってしまった。石丸が気になるので読みますが。

  • 長い腕シリーズ二作目となる今作では、過去と現在、二つの時代を行き来しながら物語が展開されていく。敬次郎の罠が分からず、主人公とともに謎を追いかけながら読み進めることができた。それにしても、石丸が何を囁いたのか気になる…。

  • 会社を辞めてフリーランスになった汐路。東京には戻らず、故郷で一人暮らしを始める。呪いはまだ続いていたのか。事件はまだ続く。本巻は、初作から約10年経っての続編。その長い空白を感じさせないこともすごい。

  • ・三部作だったのね、続き読みたい(><)
    ・石丸さんの汐路ちゃんセコム兼メンタルクラッシャー健在(´ω`)

  • ストーリー自体はおもしろく、また「現代」と「幕末」で並行して話が進んでいく構成もおもしろかった。だから好みの問題ではあるのだけど、2つの時間軸が交互に登場するのが、その度の話の流れが途切れるかのようで、少し苦手。
    1作目が歪みを描いたのであれば、2作目もまた、呪いを創作してしまう、人の心の歪みがテーマのように思う。

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著者プロフィール

1961年、愛媛県生まれ。京都大学理学部動物学科卒業。セガ・エンタープライゼスなどゲーム制作会社に勤務。2001年 『長い腕』 で第21回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。2012年、続編の『呪い唄』を刊行後、『弔い花』 『疫神』 『誘神』 『署長・田中健一の憂鬱』 と精力的に執筆活動を続ける。本書は、著者の郷土愛が詰まったお仕事ミステリー第3弾。

「2021年 『明日に架ける道 崖っぷち町役場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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