教室に雨は降らない (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 381
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041004869

感想・レビュー・書評

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  •  小学校の臨時音楽講師となった森島巧。腰掛け気分で働いていた彼だったが、子どもたちの様々なトラブルに関わるうちに徐々に心境に変化が芽生え始め…

     序盤は登場人物たちの行動が極端に感じたことと、臨時講師に関わらず他のクラスの問題に積極的に関わっていく森島の姿の違和感が強く、なかなか入り込めないところもあったのですが、
    後半以降、ミステリ要素が減り、生徒の好き嫌いを隠そうとしない教師の存在や子供内のパワーバランス、学校の隠ぺい体質、森島自身の岐路を描き始めたあたりから面白く読み進めることができました。

     読んでいると小学校教師の大変さと外からは分かりにくい職場環境から来る閉塞感や気苦労というものが伝わってくるような気がします。

     たぶん森島がこれだけ動けたのも、”臨時”講師という肩書のおかげというものもあったのかと思います。それだけに教師の限界というものもこの本では描かれているように思います。

     結末でいきなり思わぬ方向に話が言ってしまったのにちょっと違和感があったのが残念でしたが、利益や保身のことを考えず、現代の学校事情に喝を入れるような彼の行動は読んでいて少し爽やかな気分になれました。

     個人的には井岡さんにはミステリのサプライズを意識せずに小説を書いてほしいなあ、と思います。

  •  教師はいつだって悪者だ。思い出したかのように、メディアが「教師バッシング」を行ったかと思えば、マンガの中では生徒が教師に「叛逆」して読者からの喝采を浴びる。「モンスターペアレント」は日々学校へ、担任教師への批判を垂れ流し、そうでない親たちは、家庭内で教師への疑問を独りごちる。そんな中、ファーストフード店では中高生が教師の悪口話に花を咲かせている。教師はいつだって悪者だ。

     たしかに、旧態依然としたいわゆる「教師」像は、さまざまな「イノベーション」が望まれている現状に見合わない存在なのかもしれない。しかし一方で、教師はそうしていなければならない、という事情だってあるはずだ。学校には学校の文法があり、教師はその文法に則って、精一杯の力を発揮しようと努力しているとは捉えられないのだろうか。
     では、その「学校の文法」とやらが間違っているのではないか。いいや、それだって長い年月をかけて蓄積された理論や実践に基いて作られたものであろう。そして、それはおそらくまだ完成していない。急激な「教育改革」など無用だ。「学校の文法」は今なお、じわりじわりと――それはハワイが日本に日々近づいているように――形を変えているのだから。

     本作「教室に雨は降らない」の主人公「森島巧」は、小学校で音楽を教える「アルバイト教師」である。決して教師を目指していたわけではなく、友人に勧められるがままにとった教員免許を持て余し、大学卒業後もしばらくフリーターのように暮らしていた男だ。しかし、児童らとの交流をきっかけに、本人も気づかぬうちに教育熱を帯びていく。
     さて、これだけ見れば、本作はありがちなものと感じるかもしれない。「アルバイト教師」であるからこそ、破天荒さを武器に、旧態依然とした教師たちの理論をねじ伏せ、児童からの信頼を勝ちとる。たとえば、藤沢とおるさんのマンガ『GTO』に見られる展開が想起される。
     しかし、本作はそんなレールに乗らない(乗せない?)ところが面白い。なるほど、「森島巧」は破天荒だ。フットワークも軽い。児童からの信頼も得た。ところが、とんだ「甘ちゃん」なのである。現実を知らなすぎる。学校現場からしたら、はっきり言って邪魔な存在――「目の上のたんこぶ」というのではなく、文字通り「邪魔」な存在なのだ。

     つまり、本作は「学校」をぶっ壊すような破天荒な「アルバイト教師」を主人公に据えながら、旧態依然の教師――本職としての教師――の強さを際立たせる作品である。
     もちろん本作の中で、主人公である「森島」は格好良く描かれている。だが、それは確実に空回りしている。伊岡さんの狙いはわからないが、本作はうまい具合に『GTO』系の作品群のアンチテーゼとなっているし、つまりそれは「教師」を一方的に悪者にしない配慮がなされているということもできる。

     本作にはさまざまな形の教師が登場するし、本作に登場する教師も現実の教師同様「悪者」だらけだ。しかし、じっくり読んで「森島」への違和感を覚えたとき、本作は急激に面白いものへの昇華していく。


    【目次】
    教室に雨は降らない
     第一話 ミスファイア
     第二話 やわらかい甲羅
     第三話 ショパンの髭
     第四話 家族写真
     第五話 悲しい朝には
     第六話 グッバイ・ジャングル
    解説 北上次郎

  • 爽やかな話が多い。テレビドラマ化出来そうな小説です。

  • 小学校の臨時音楽講師として働く森島の話。
    生徒、教師、保護者、同僚のことなど。
    それから本人の未来、恋。
    学校はそれぞれ独自ルールがあったり、学校の常識は世間とずれていたり。
    でも子どもはどんな場所でもたくましい。
    そして子どもは子どもである前に人だと気づく。
    でも現実に担任でもないクラスにここまで介入することはないだろうな…。
    小説としてはよかった。

  • 学校が舞台で、まあ学校での出来事で特に大きな事件などはない(殺人などっていうことです)中で、若い非常勤講師の日々を綴りながら語られていきます。
    そういった題材でも読ませるところが伊岡瞬のすごいところ!最後まで楽しめました。そして爽やか~!
    ありがとうございます!

  • 短編集。
    「ショパンの髭」感想
    自分にとって大切な人、守りたい人を笑いものにされて気分のいい人間がいるはずはない。
    子どもとか大人とか関係ない。
    誰にだって特別な存在はいるのだ。
    卒業後、すぐに先生と呼ばれるようになる教師という職業。
    何かあるとすぐに上司のチェックが入ったり叱責が待っていたりする一般の職業とは少し違う。
    いったん教室という空間に入ってしまえば、そこは絶対権力を持つ教師という大人が支配する異世界になってしまうのだから。
    真っ直ぐなものを曲げることもできる・・・故意かどうかは別にして・・・それが教師という職業だ。
    逆に言えば、曲がったものを真っ直ぐにもできるし、回り道も無駄じゃないということも教えることができる。
    「自分は教師として間違ったことはしていない」という間違った固定観念が一番面倒だ。
    あとになって「そんなつもりはなかった」などという言い訳はいらない。
    教師はどうあるべきか?
    常に自分に問う心構えは忘れないでほしいものだ。
    逆さ警告。
    こんなもの、わたしの頃にはなかった。
    「調子に乗るな!」ってまるで法律に引っかからないように脅す暴力団の手口のようだ。
    子どもの世界も殺伐としてきているんだな。
    好きなことが嫌いになっていくのは悲しい。
    専門家は別にして、音楽は楽しんでこそ価値があると思うのだけれど。
    音楽室で音楽の楽しさに目覚めるなんてあるのだろうか。
    そういえば、中学までは音楽の時間は退屈でしかたなかったっけ。

    森島に共感し、イラつき、失望し、最後には「そっか、よかった」と思える。
    そんなに上手くいくもの?と疑問に感じるところもあるけれど、一生懸命さは伝わってくる。
    方法を間違うこともあるけれど、前に進もうとする姿もいい。
    ミステリーというよりも、頑張っている人の成長記という感じがした。

  • 少しミステリー

  • 小説としてとても面白かったです。学校現場が舞台の連作短編集。所々にリアルさはありますが、現実にこういう学校はありませんのでご安心ください。ラストの校長の台詞に、主人公のようにカチンと来られる方もいらっしゃるかと思いますがほとんどその通りで、主人公の行動は教師のそれではありません。いくら音楽専任のアルバイトであっても。心はいつも忙しい、に大変共感しました。

  • アルバイト教師、森島巧。
    臨時で音楽を教えることになった森島が、学校関係者の中で起こる事件を解決していく。

    放火。
    カメ盗難事件。
    歌が下手になった生徒。
    元妻をストーカーする先生。
    私立中に受かった生徒。
    そして、最後は森島自身。

    色々な生徒との人間関係や、先生との確執や些細な気持ちの変化、この小説一冊に詰め込まれた感情一つ一つが素晴らしかった。

    いやぁー、森島先生、素敵でした!

  • 家にあった本、何気に読んだら、はまった

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著者プロフィール

伊岡 瞬(いおか しゅん)
1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞しデビュー。著書に『145gの孤独』『教室に雨はふらない』『代償』『ひとりぼっちのあいつ』等がある。
2010年「ミスファイア」で第63回日本推理作家協会賞(短編部門)候補、2011年『明日の雨は。』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補、2014年『代償』で第5回山田風太郎賞候補、2018年『痣』で第20回大藪春彦賞候補。

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