星に降る雪 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2013年2月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784041005651

作品紹介・あらすじ

男は雪山に暮らし、地下の天文台から星を見ている。死んだ親友の恋人は訊ねる、何を待っているのか、と。岐阜、クレタ。「向こう側」に憑かれた2人の男。生と死のはざま、超越体験を巡る2つの物語。

みんなの感想まとめ

生と死の狭間を描くこの中篇集では、贖罪や再生、そして挫折がテーマとなっています。特に「星に降る雪」と「修道院」の二篇は、異なる男たちの物語を通じて、喪失と欲望、そしてその後の人生の選択を対比的に描いて...

感想・レビュー・書評

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  • 感覚的で境目の曖昧な生と死、そこから生まれる贖罪や再生。そして、挫折。それでも消えない僅かな救いを、静謐かつ知的な文体で余すことなく記したというか、閉じ込めたような中編小説二篇「星に降る雪」と「修道院」を収録。

    うまく言葉にできないのですが、とても儚い印象と余韻が胸をうちます。

    正直、「星に降る雪」は、難しくて、というか、あまりに専門的な設定と用語、感覚的な描写がすぎて、理解不能というか消化不良な面もあるのだけど、こんなものを形にできるのは、あの池澤さんだからかな、とも思う。 

    でも、ギリシア・クレタを訪れた日本人らしき観光客の男の些細な事故をきっかけとして語られる、贖罪の意識とそれでも抗えない欲望に苦しんだ一人の男と、そして、それを眺めてその後の人生を決定づけた人々を対比的に描いた、語り手と視点が入れ替わる入れ子構造が見事な「修道院」は、帰宅の電車をうっかり乗り過ごしてまで夢中になって読んでしまいました。
    罪を肯定する気は全くないのだけど、分岐したそれぞれの人生がじんわりと染みます。

    今の段階で好き・印象的だと思った点よりも、理解できなかった点に込められる意味を求めて、きっと、何度も読み返すだろうな、と思う味わいと奥行きを感じた作品でした。

  • 親友を喪った二人の男をそれぞれ描く中篇集。
    表題作と「修道院」では喪い方の違いか、辿ってきた道も行く先も異なってて「修道院」の方が好みでした。
    啓示を受けるために人界から離れていく表題作の田村はよくわからなかったけれど、贖罪のために礼拝堂を再建し、でも新たに重ねた罪を償うために再び彷徨うミノスの生のほうが苦しく静謐としています。
    2篇とも女性陣は立ち入れないけれど、それでもエレニには救済があったし。クレタ島の穏やかな風景も好きでした。

  • 標題作はイマイチ。抽象的というか、スピリチュアル過ぎるというか、意図がよく分からず。「修道院」の方は沈黙にも似た静謐さが漂い、作者がクリスチャンだと思わせる程の信仰心の描写も。またギリシア島嶼部への旅についての、寂れた景色の描写がリアルだった。

  • ちょっと辛い評価になってしまったが、「星に降る雪」という標題作に対するもの。敢えて★とした。
    というのは、私には、この中篇小説のよさが理解できなかったから。中途半端に★★★や★★とする理由が見つからなかった。
    意図したところは理解できた。文体には三人称が採用され、主人公ら3人を客観的に描こうということはわかった。
    そうして、雪崩れで死んだ親友・恋人が、星になったという童話めいた話が登場する。そのことを確かめるために、2人は性交する。そういった話。
    この中篇は、本当にそこで終わっている。でも、主人公の男性は彼女に対して欲情することができなくて、別れる。そうして、野辺山、神岡を経て、アタカマへと向かうという結末。
    一体、どこに視点を置いて読めばよいのかが、私には理解できなかった。恐らく意図して描写は最小限に削られている。具体的な地名は登場するが、描写は素っ気ないもの。
    いわゆる濡れ場にしても、リアリティを伴っていないし、女性が語る遍歴?にしても陳腐さを感じる。イタリアの手品師と、そんなに情熱的な恋をした、というなら、もっと違った描き方もあろうと。それほどに、激変したというのか。
    と、読めば読むほど、私には理解できない世界が開けて行く作品だったとしか言いようがない。

  • 同じ時に遭難して亡くなった男の親友と恋人による、星に近い天文台でのダイアローグ、「星に降る雪」。日本から来た男が聖母の涙を見て足をくじいた修道院は、何十年も前にふらりとやってきた謎の男により修復されたものだった、「修道院」。「星に降る雪」は、「スティルライフ」彷彿とさせるチェレンコフ光、「一瞬のチェレンコフ光を目が捕らえるところを想像する」◆「地上の日々には意味がない。それはただ正しい方法で旅立つための準備の時間で、だから人はただ待つしかない」p.54◆「修道院」は、ふらりとやってきて修道院を修復した男の、赦しを求めるための自分なりのミサ、濃密な人生と放擲、自分の罪悪感との対話、積み上げてきたものの瓦解。彼にあこがれて、助けになりたいと思っていたのに、ついには心を開かせられなかった宿屋の娘。◆主は全能の力を持っておられる。それなのになぜこの世に罪というものがあるのか?p.214◆地獄は人の中にある。つまり主の中にある。p.215◆「そうだよ。あんたは聖母から遣わされたのさ。憐れなミノスのために、憐れなアダとミルトスのために、おミサを挙げなさいとわたしに伝えるためにね」p.220

  • 【いちぶん】
    忘れるな、思い出せと言ってらっしゃるのかもしれない。そのお伝えをあんたがくじいた足で運んだんだ。苦労して歩くことにはいつだって意味があるんだ。

  • ・かつて人は夢を見ることができたし、夢を交換することもできた。星からのメッセージを間違いなく聞き取ることができた。だからそのメッセージを土台にして作られた昔の宗教は本当に人を救う力を持っていたし、人はどんな暴力の中にあっても救いを信じることができた。今はそうじゃない。今はなにもかも駄目だ。


    ・これでいいんだ。
    ずっと気づかないまま、おまえはこれを待っていた。そういうことだった。
    この啓示の準備のためにあの雪崩はあった。メッセージはこういう形で届けられる。それを待て、とあの雪崩はまず予告として伝えた。だから今夜、誰かに誘われるようにここまで出てきた。この星空に会いに来た。
    やがてもっと明快なメッセージが来る。
    それを待てばいいんだ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    電波天文台カミオカンデ。チェレンコフ光が燦めく様を夢想する男、田村のもとに、かつて雪山事故を共にした亜矢子が訪ねてくる。恋人を失った女と親友を失った男。あの時、何が起こったのか―(「星に降る雪」)。クレタに住みつき、礼拝堂の修復をしながら寡黙で質素な生活を送る石工。重い過去を背負った男の選んだ償いとは(「修道院」)。激しい懊悩に取り憑かれた男が生の中に見出した、奇妙な熱情を描く、精緻な中篇集。

  • 「スティルライフ」と同じムードと聞いたので読んだ。確かに!と色めき立ちつつ読んだが、結局後味は全く違った。「スティルライフ」に女性が登場すると本作になるという感じ。女性というか、「わからない」第三者というか。
    通じ合う者同士で完結していた「スティルライフ」の方がやはり静謐で美的に映った。

  • 表題作も良かったが、「修道院」がまた良い。

  • そういう世界もあるんだなということを本を読むだけでも知ることができる(現実にあるかはともかくとして) 池澤さんの作品は「キップをなくして」しか読んだことがないので「スティル・ライフ」とかも読んでみようと思う。

  • 「修道院」が印象的な話だった。

  • 表題作と「修道院」という二つの中編を収録。どちらも、親友の死に対峙する心を描いたものだが、非常にストイックな内容で読んでいて心が苦しくなる。

  • もっと大自然の中での雄大なおはなしを想像していたら、中編二篇とも一貫してけっこう男女の微妙で繊細、時には大胆な揺れ動きをえがいたものでびっくりした。星に降る雪、も良かったけれど、二篇目の修道院が最高。日本人以外を主人公に置くというのはそれなりに難しいだとはおもうけれども、そういった国籍とかを全く超越した神話性と現実味を合わせた異色なおはなし。こういう側面もあるのか、と改めて池澤夏樹の底しれなさというか、根のなさみたいなものに触れて、本って面白いなあと感じた。

  • タイトルに惹かれて。

  • 親友の死を経験したことで、いつでも死が間近にあることに改めて気づく。
    あの世とこの世の境が曖昧になったような感覚を体験する。
    そんな主人公のお話。

  • 「星に降る雪」「修道院」の
    二つの中編小説。

    両方共親友を失った男のその後の人生が
    描かれているのだが、
    「星に降る雪」の主人公田村には
    共感出来なかった。

    彼のもとを訪れる友人の恋人だった
    亜矢子の行動や考えにも
    全て納得出来るわけではないが、
    彼女の田村の話を聞いた時の反応は、
    理解出来ると思った。

    二人共、大切な人を雪山の事故で
    喪い、心の傷がまだ癒えないが、
    亜矢子のように現実的にこの哀しみを
    乗り越えよう、地に足をつけて
    生きよう、ともがいている状態で、
    田村から「星からのメッセージ」と
    言われても、当然混乱するだろう。

    (しかし、田村は死んだ友人と
    そのメッセージについて、分かり合って
    いたことで満足しているわけで、
    その考えを亜矢子に押し付けるつもりも
    ないのだが。)

    帰路に着く亜矢子の落胆が理解できた。
    今回は私も戸惑って終わった。
    また違う時期に読んだら、
    「星からのメッセージ」の受け取め方は
    違うのだろうか。

    「修道院」は、クレタ島の小さな村で
    自分の贖罪のために礼拝堂を修復する
    男の話。

    「星に降る雪」より
    生身の人間の繰り広げる愛憎の物語で
    ある気がして断然こちらの方が好き。

    怪我をした主人公が、滞在する宿の
    お婆ちゃんから五十年前の話を
    聞くのだが、最後にお婆ちゃんに
    かけてあげる言葉も良い。

    美しい男達、女達の、
    ギリシャ神話のような物語。

  • 生き方の違う人がすれ違う。

    周囲の音が遠くなる。
    不思議な静けさがある本。

  • 星に降る雪/修道院

    自分に向かって降ってくるものを待ち続ける男。空からのメッセージを捉えることができるのだろうか。

    古い修道院を一人で修復した男が抱えていたものの大きさに圧倒される。ある意味自分が自分に課した罰なのかも知れないけれど、それでも何を求めて生きているのだろう、求め続けることが生きていると言うことなのだろうか

  • スティルライフの存在を急に思い出し、タイトルに惹かれて買った。
    理科系の話は苦手だが、たまにはいいかもね。
    2013/03/23読了。

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著者プロフィール

(いけざわ・なつき)
作家。1945年、北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、40~50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごす。ギリシャ時代より、詩と翻訳を起点に執筆活動に入る。1984年、『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。その後の作品に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)など。その他、自伝『一九四五年に生まれて――池澤夏樹 語る自伝』(聞き手・文 尾崎真理子)、編著に『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』(全30巻)、『池澤夏樹=個人編集日本文学全集』(全30巻)などがある。

「2026年 『遙かな都』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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