映画道楽 (角川文庫)

著者 : 鈴木敏夫
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年11月22日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041005668

作品紹介・あらすじ

世界的な人気作を生み出す映画製作会社、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫の映画論。自らの映画体験に始まり、ジブリ黎明期の奮闘、宮崎駿、高畑勲両監督の素顔、そして『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『火垂るの墓』『もののけ姫』『ハウルの動く城』等人気作の制作秘話も満載。貴重な体験から浮かび上がる「映画にとって本当に大切なこと」とは?映画&ジブリファン、また映画制作を志す者にも必携の1冊。

映画道楽 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 下駄で歩いていて、あけすけな物言いをするこのおじさんが好きです。

    映画作りに携わって、鈴木さんがあれこれやりながら思ったこと、監督とのエピソード、いろいろ綴られている。言わば参謀の鈴木さんがいなかったら、今のジブリはない。あの素晴らしい映画の数々にも触れることはなかった、と思うとぞっとする。

    映画論とはちょっと別の話だったけれど、「行動してから考える」いうのが気になった。身体が小さくなって頭が大きくなってきた、という話だと思うのだけれど、養老氏を思い出した。あとは、コピーの話。しがない言葉屋の身としては参考になることが多々あった。糸井さんもやっぱりすごいし。

    道楽という言葉が好きだ。ただ好きだからやっている。嫌で追い立てられて仕方なくやるのではなくて、好きで「やらずにはいられない」という感覚。「労働は喜び」という観念があまりにも少ない中で、この言葉のまとう空気に私の心は安堵する。道楽を馬鹿にする人は多いけれど、それは確かな豊かさをもたらす。「幸せ」の感覚だ。
    鈴木さんはあとがきでこう云っている。

    お金儲けに長けた人がもてはやされる時代だ。そんな時代と格闘し、そんな風潮を笑い飛ばしたい。コンテンツなんて言葉は、くそ食らえだ。映画は、楽しいから観るし、歓びを得るために作るのだ。

    私は時代と格闘することにエネルギーなんて使わないけれど、世の中に溢れているそういう意識や雰囲気を笑い飛ばしたいな、とは思う。そのことに関して、今はまだ半人前の意識がある。そして、「道楽」にはその力があると思う。今やすっかり、映画を作ったり、映画に出たりするのが仕事として成り立つ時代になった。そしてそれを享受する私がいる。でも所詮それだって、凡そすべてが単なる道楽なのだ。

    (20130726)

  • 大ヒット映画を生み出すスタジオジブリ、番頭役の鈴木敏夫プロデューサーが語る映画論。

    若い頃の映画体験に始まり、経歴、ジブリ創設、映画を創る、伝える、考える、についてのエッセイは、
    宮崎駿さんや高畑勲さんとの仰天エピソードはもちろんのこと、
    これまでの大人気作品の誕生秘話も、ぎっしりと詰まっています。
    さらっと軽やかな文体の中に語られる仕事道は、細部にわたるこだわりとアイデアの宝庫。ジブリ映画が世界で絶賛されるのも頷けます。

    自らの映画体験を通して培った「映画にとって本当に大切なことはなんなのか」を、
    好奇心と信念で追い求め続けることで、不思議&ステキなめぐり合わせを引き寄せて、そこから名作が生れていくのだな~。
    妥協のないまっしぐらな情熱に、ほれぼれしました。

    ジブリアニメのファンならずとも、マネジメントのヒントがいっぱい!の、熱くて深い一冊です。
    +「文庫のためのあとがき」も充実。ぐっと響きます!

  • 最近はよく表舞台にも出てくるけど、ジブリの真の重鎮の一人である著者。
    あれだけの成功を収める人のバックボーンは一体何なのか、少し垣間見ることができたように思う。

    彼はアニメが好きなのではなく、映画が好きなのだということを今更知った。
    そして、その膨大な知識から出てくるノウハウやコピーの凄さ、調整能力、きちんと謝ること、などなど、普通にビジネス書として面白いとも思った。(汎用性があるかは別として)

    傍目から見てもどう考えても扱いづらそうな「宮崎駿」と「高畑勲」をどうやってナビゲーションしているのか、別に複雑なことをしているわけではないけど、いろいろ工夫していることは分かった。

    ということで、勉強になったし、ジブリ作品の裏側が少し見られただけでも本書を読んでよかったと思う。

  • 本書は高畑勲、宮崎駿作品など国民的大ヒット映画を生み出しているスタジオジブリのプロデューサーである筆者が自らの映画体験を通して学んだ「映画にとって本当に大切なことはなんなのか」を語るものです。深い。

    「本当にお金儲けをしたいんだったら、映画なんか作っていないですよ」
    某番組でのインタビューでこういう印象的なことを語っていたスタジオジブリの番頭役としてその一切を取り仕切り、高畑勲、宮崎駿という稀代の天才であり、筆者以外の人間とは多分女房役はできないであろうという二人と長年にわたりコンビを組んできた筆者による道楽を語った本でございます。あんまりオカタイ本ばっかり読んでいると、ついこういうものを読みたくなるんですね。

    しかし、ここには筆者の半生と影響を受けた映画や寺山修司や加藤周一をはじめとする膨大な情報量を示されてあって、初めて本格的なアニメ雑誌である「月刊アニメージュ」を創刊していたときに高畑・宮崎の両氏に教養話でコテンパンにされたときのエピソードが語られていますけれど、なかなかどうして、筆者もまた一人の「教養人」としての姿がその行間からにじみ出てくるものでありました。

    さらに、創作の舞台裏として、自身が手がけた映画の予告編の絵コンテや、コピーのFAX文書などがそのまま掲載されてあったりと、サービス精神も存分に発揮されてあって、ジブリアニメのファンならずとも十分に楽しめると思っております。特に『となりのトトロ』と『ほたるの墓』の二本立てで劇場公開をすると決定したときの修羅場という言葉がまさにぴったりと当てはまる現場の様子と、『二本立てだから』こそ当時の宮崎監督が心底仕事を楽しんで作っていた様子や、結果からすると興行的にはトトロは失敗してもキャラクターグッズやその後のビデオで利益を稼ぎ出し、『ドル箱』になっていったという話も面白かったです。

    ひとつ判断を間違えば『沈んで』しまう映画作りを『道楽』と表現する筆者の姿がうかがえて、何度か大笑いしながらも、非常に楽しく読むことができました。

  • -

  • 鈴木敏夫の映画に対する情熱を感じる一冊。
    ジブリが流行ったのは宮﨑駿の作り出す映像美も勿論だが、鈴木敏夫らによるキャッチコピーや予告編へのこだわりはすごい。
    よいえいがはこだわりがある。

  • ほんとに鈴木さんの話は勉強になる。もっと昔の映画を沢山観ようと思いましたね。

  • ジブリとの関わり部分を読みたく、正直、ご自身の映画の趣味にはあまり興味が無い。

  • 映画の話。観ること、創ること、宣伝すること。ジブリの裏話も少々。
    鈴木さんって本当に創ることが好きなんですね!

  • 本屋店頭の衝動買いだけど、思いもかけず、当たりでした。

    内容(「BOOK」データベースより)
    世界的な人気作を生み出す映画製作会社、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫の映画論。自らの映画体験に始まり、ジブリ黎明期の奮闘、宮崎駿、高畑勲両監督の素顔、そして『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『火垂るの墓』『もののけ姫』『ハウルの動く城』等人気作の制作秘話も満載。貴重な体験から浮かび上がる「映画にとって本当に大切なこと」とは?映画&ジブリファン、また映画制作を志す者にも必携の1冊。

    だそうです(^_^;)。

    映画「世界の中心で愛をさけぶ」の公開前に、ヒットを公言していたのは鈴木さんだけだったと、プロデューサーから感謝されたらしい。鈴木敏夫は確信していた。何故ならば、
    「一人称の目でつくった映画。これは観客が感情移入できるんです。しかも、ここには現実ではありえない感動がある。この二つの要素をかね揃えれば映画はヒットする」(39p)なるほど!

    鈴木敏夫と宮崎駿、高畑勲の出会いは雑誌「アニメージュ」の対談だった。それに先立ち鈴木は「太陽の王子ホルスの大冒険」を観て驚愕する。

    「何だこれは。子供むけのふりをしながら大人むけの中身だな」と思いました。あとで考えると、あの作品は青年むけアニメーションの第一号なんですね。守るべき村があって、巨大な勢力と闘う。ベースになっているのは、ヴェトナム戦争じゃないかと。ヴェトナムで起こっていることをそういう形で映画にするなんて、実写映画で当時考えている人はいなかったわけでしょう。アニメーションなら、これができるのかと。(65p)

    編集型プロデューサーの鈴木敏夫は2人が言ったことに相槌をどう打つか、を実現するためには「その作家の教養の元を知っていて、自分も同様の教養を身につける必要があるんです」という。(64p)

    この文庫には、非常に多くのジブリ作品の企画書、制作計画、宣伝計画、CMコンテ、その他貴重な資料が載せられている。監督の側からではなく、プロデューサーの側からの資料とその見方である。アニメ制作のあれこれを初めて知ることが出来て、とても有益だった。

    「座頭市鉄火旅」(1967年)のコピーもいい。「もう1人切れば刀が折れる!むらがる敵は30人!いつ抜く、どう斬る座頭市」。僕は「座頭市鉄火旅」がシリーズの中で(座頭市のコピーの)一番の傑作だと思います。(125p)

    「魔女の宅急便」や「おもいでぽろぽろ」も、基本はタイトルロゴが明朝なんです。こういう書体を使うのは「これはお子様向け作品ではありませんよ」というアピールでもあります。(略)宣伝関係の人は僕が作ったロゴデザインを嫌がりますね。その理由として、一つは明朝とゴシックを使っていること。もう一つはルビ(ふりがな)がないことです。「紅の豚」の時には、「くれない」とルビをふれと言われました。でも僕は「ルビはいらない」と言い続けたんです。それは、作品にどこか文芸色を感じさせたいからなんです。文芸=高級感でしょう。(130p)

    「ハウルの動く城」の時に、宮崎駿は毎日愚痴を言い、鈴木敏夫も深刻な事態に気がつく。
    「若いアニメーターが動きを描けなくなった」
    彼らには「身体経験」がないからである。風呂を薪で焚いたことのない者にその場面は描けるか。ご飯を口にかき込むことをしたことのない人間に千尋のお父さんお母さんが食べ物をかき込むシーンを描けるか。モーションキャプチャーで立体的にアニメを作るディズニーには無い悩みが、日本のアニメーションにはあるのである。そういえば、最近のアニメを観ると登場人物がことごとく「非人間的」だったのはそういうことだったのかとガッテンがいったのである。

    加藤周一の云う日本文化論「部分から全体に進む」で、海外のアニメと日本アニメとの違いにやっと腑が落ちた、と書いていたのには嬉しかった。日本では、長編を1人で作る。しかも、キャラとか服装とか部分から始めて、脚本はあとになる。しかし、海外は概要を決めて皆が別れて分業で作る。集団作業が前提の作り方である。

    そういう作り方をしているからこそ、「もののけ姫」の犬神モロが場面によって大きさが変わったり、タタラ場からシシ神のいる森へ行く時間が歩いて五分だったりの「空間と時間の自由自在」が出てくるのである。

    なぜ日本人がそうやって絵で時間や空間を自在に変化させるのか。
    高畑さんの理論によれば、日本人はもともと絵が好きだったということです。単純な例として銅鐸があります。あれは中国で楽器だった。ところが、日本に渡ってくると、銅鐸の表面に描かれている絵。あの絵をどう描くかの方に関心が行った。本来の機能である音楽の方は、放っておかれるんですよ。どうも日本人は、音よりも視覚に訴えるものの方が好きらしい。(229p)

    そうであるならば、日本と海外の「いいところ取り」をした作品で、傑作が出てくる可能性はあるかもしれない。反対の場合もあるけど。

    加藤周一や堀田善衛の弟子たちが此処にいる。あと十数年は愉しめそうである。

    2013年3月16日読了

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