金曜のバカ (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.56
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本棚登録 : 2271
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041005712

作品紹介・あらすじ

天然女子高生と気弱なストーカーが繰り返す、週に一度の奇天烈な逢瀬の行き着く先は-?(「金曜のバカ」)「また、星が降る夜に逢えたらいいね」-流星雨の夜に出会った少女が残した言葉が、今胸によみがえる。(「星とミルクティー」)不器用だけど一途な思いを抱えた"バカ"たちが繰り広げる、愛と青春の日々。何かを好きになった時のときめきと胸の高鳴りに満ちた、ほっこりキュートな傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 壊れやすくて傲慢だった10代の頃。

    童貞を捨てたら、
    セックスをしたら、
    世界がひっくり返るんじゃないかと本気で思っていたあの頃(笑)。

    そんな自意識過剰でバカ全開の
    青春真っ只中を生きている少年少女たちを描いた
    どこか甘酸っぱく微笑ましい短編集です。


    本書に収められているのは、

    天然女子高生と気弱なストーカー
    との
    週に一度の対決(果たし合い?)をコミカルに描き
    本作中一番笑った表題作の
    『金曜のバカ』、

    深夜の河川敷で知らない少女と見た「しし座流星群」の思い出を
    少年の視点から瑞々しく描いた
    『星とミルクティー』、

    彼女と二人きりで三泊四日の東京旅行を企む高校一年生男子の運命の1日を
    胸にきゅい~んとくる(笑)愛媛県は松山弁(伊予弁)の語りでユーモラスに描いた
    『この町』、

    恐竜オタクの少年は
    昔フラれたトラウマからオタクであることを隠していたが
    いい感じになった少女と何の因果か「大恐竜展」に行くことになって…
    『僕の愉しみ 彼女のたしなみ』、

    吹奏楽部を辞め淡い恋にも破れた高校三年の藤島七海(ななみ)と
    柴犬で老犬のゴンとの絆を、
    七海とゴン両方の視点から瑞々しく描いたあったまるこな逸品
    『ゴンとナナ』、

    の計五編。

    個人的には予想を覆す斬新とも言える展開を見せる(笑)『金曜のバカ』と
    柴犬の語りが泣ける『ゴンとナナ』がお気に入りです。


    それにしても越谷さんは
    『階段途中のビッグ・ノイズ』でも思ったけど、
    女子高生を書くのがホンマ上手い。

    有り得ない話でもそれぞれのキャラが生きてるから
    妙に納得してしまう(笑)

    有川浩さんや漫画家の荒川弘さんも女性なのに男性心理を描くのが抜群に上手く、
    男である僕から見てもまったく違和感ない魅力的なキャラを生み出すんやけど、
    男である越谷さんの女性キャラは
    同性の読者から見てどう映ってるんやろ?
    やっぱ共感できるんかな。


    たまたま出会った女子高生を勝手に運命の人と信じ
    護身術破りをあみだし、
    笹藪の中、待ち伏せするストーカー(笑)。

    自分の護身術がストーカー撃退に役立ったことに味をしめ、
    ストーカーに出会えることを心待ちにする女子高生(笑)。

    寒さにもメゲず深夜に星を見に行く
    天体オタクの少年と少女。

    東京に異常な憧れを抱き、早く童貞を捨てることしか頭にない
    おバカな高一男子。

    などなどタイトルそのまんまに
    登場キャラすべてが
    「愛すべきバカ」ばっかなんやけど(笑)、
    何の打算も計算もなくバカになれることって
    ある意味うらやましいし、
    「青春」や「思春期」と呼べる
    この時期だからこその特権でもあるんですよね。

    人生は思い込みで進んでいくもの。
    若い頃は後先なんて考えずに
    目一杯バカになればいいんです(笑)

    一度道を踏み外さなきゃ正しい道の有り難さや
    正しさの意味すら分かんないわけやし。
    とことんまで振り切れないと
    絶対に解らないものってあるしね。


    そしていい小説は読者の心の中に物語が生まれる。
    結論を押し付けずに、読む人が思いを巡らすための余白を届けてくれる。

    その法則で言えば
    この短編集もラストに明確な結論を出すことはなく、
    読む人それぞれの中で解釈し補完できる余韻のある終わり方で締めているし、
    それがまた心地いい。

    こじんまりとまとまっちゃって
    最近バカしてないなぁ~って
    そこのアナタ、
    イージーな大人になる前に
    コレ、オススメです(笑)。

  • 越谷さん5冊目。青春ストーリーだけど主人公の馬鹿丸出しで終始爆笑。男子の思春期特有の切なさを忌憚なく表現していて、共感する内容ばかりだった。タイトル通り全部の主人公が「バカ」なのだ。中でも「金曜のバカ」では、女子高生の○○○を見てしまい、彼女に恋をした変態男性ニート。その女子高生を草むらで帰宅する姿を見送る、が、この変態は女子高生に抱きつく。護身術を身に着ける彼女に毎日ぶん投げられる。しかし変態は毎回戦いを挑み続ける。彼女も何故か応戦する。全作、バカなんだけど健気な男子の姿に「青春だ~!」と納得した。

  • 陽だまりの彼女 で知った越谷オサム先生
    短編集で世界観を知ろうと思い読んでみた。

    【バカ】と表現する【愛】の短編話でした。

    思春期はとうに過ぎ去ったけど……
    バカを見て少し笑えたり、「わかる」っと共感したり ほろりと泣けたり ノスタルジックな気分にさせてもらえた。



  • 越谷オサムの金曜のバカを読みました。
    高校生のバカさを暖かく描いた短編集でした。

    表題作の「金曜のバカ」は女子高生と引きこもりの男の対決の物語でした。
    設定がバカなら、彼らの行動もバカです。
    しかし、それが暖かく描かれていて楽しく読みました。

    「僕の愉しみ彼女のたしなみ」は恐竜が大好きなオタク高校生片岡が主人公です。
    片岡は、気になるクラスメイトの黛さんを恐竜イベントに誘います。
    恐竜オタクであることがばれて2週間でふられてしまったという暗い過去を持つ片岡は、自分が恐竜オタクであることを悟られないように慎重に黛さんをエスコートするのでした。
    しかし、黛さんにも隠れた秘密があったのでした。

    本当に読んでいて楽しくなる物語たちでした。

  • 文体の楽しさがたまらないです。リリカル風よりコメディ風がたまらなく好きで、久し振りに声出して笑った小説。外で読めないです…恥ずかしすぎて。女子高生×ストーカーがなぜ少年コミック的格闘展開?!と、もうのっけから引き込まれましたぐいぐい。

  • 陽だまりの彼女を読んでから、同じ作者である越谷オサムさんの短編集を読んでみました。
    どの作品も、日常の中でのちょっとした出来事をほっこりと伝えていて、良かったです。
    最初の金曜のバカも、初めはよく内容がわからなかったけど、最後の終わり方には笑ってしまいました。
    私が、1番いいなぁと思ったのは、星とミルクティーです。初対面で星好きっていう共通点しかないのに、落ち着きをなくしたりして、にやけてしまいます。ひかりさんが忘れてしまった双眼鏡をいつまでも取っておいているとこもまた、いいなと思ってしまいます。星見るのを断られてしまった智子さんとも結婚して赤ちゃんを授かって、手には星の痣があって、なんて素敵ないい終わり方なんだろうと思いました。
    あと、最後のゴンとナナの、ゴン視線がとても良かったです。

  • 高校生が主人公だけあって、やっぱり若いなァ。現役の若者が読んだら等身大で感じるところを、遠い昔の記憶を掘り起こしながら懐かしい思いで読みました。こういった“バカ”は若いからこそ似合うものですw。

  • 初の越谷作品。 お気に入りさんが読んでいたので、気になって買ってみた。想像以上に面白い。 思春期的恋愛要素の多い短篇集。いい話も多いし、どアホウなヘンタイ男子思考もリアリティがある。男ってほんとアホだよなと思いつつ。遺伝子レベルで決定されているような、浅はかな行動が共感でき過ぎて辛い。 自分的な好みは、やっぱり「金曜日のバカ」。全然違うのに、なぜか表現が森見ワールドを彷彿とさせる。これは男が読むのと女が読むのとでは、感想がはっきり分かれそう。 「うわー、ムカつく。隕石でも当って死ねばいいのに、今すぐ」

  • 高校生の青春物短編五編。本のタイトルにもなっている「金曜のバカ」がバカらしくて一番面白かったかな。「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」も高校生の初々しい恋愛感情が伝わってきて楽しく読めた。やっぱり越谷さんの書く青春物は面白いね。

  • Amazonでえらく人気があるみたいで、品切れを繰り返していたので、在庫有りの時に思わずポチリ。中身はクスクス、ニヤニヤな良い感じのお話。解説にもありますが、5編共におバカ。若さゆえの愛すべきおバカな感じですかね。青春っていいなあ、なんて枯れたオジサンは読んでいて思うのですよ。

    『陽だまりの彼女』でもそうでしたが、男の憧れ、願望の塊みたいな、というか(笑)。本作は主人公が若いので、もう男というより「男の子」の願望ね(笑)。こんな彼女が居たらなあ、っていう願望・理想。この小説は女性が読んだらどうなんでしょうね?まあ、女の子が主人公のお話もありましたけど。

    一番は「星とミルクティー」。個人的にこういうのは好きです。まあ、ロマンチックファンタジーとでも言いましょうか。終わりが気持ちいい感じで。ちょっとループものっぽくて。「たんぽぽ娘」をちょっと彷彿させるような。でも、出だしの不安感を煽りまくって、どんな病気、涙ものか?とかドキドキしてたらお産でホッ(笑)
    「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」も良かったよね。こういうぶつかり合いっていうか、『実は・・・』と言って、わかり合えるの良いですよねー。
    あとは、最後の「ゴンとナナ」。急にゴン目線で話が進むのが、ビックリと同時に面白くて。ジジイ目線がちょっと共感(笑)。来年、ボートで行けたのか、不安な締めにちょっと心苦しく、ホロッと来そうだった。

    いやー爽やかな読後感。楽しめた。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。2004年、『ボーナス・トラック』で第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『階段途中のビッグ・ノイズ』『いとみち』『陽だまりの彼女』等がある。

「2021年 『まれびとパレード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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