さいはての彼女 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041006429

作品紹介・あらすじ

25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!?だが、予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。人は何度でも立ち上がれる。再生をテーマにした、珠玉の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 旅にまつわる女性たちの4つの物語。心が晴れ晴れとする読後感が味わえる作品です。

    最初の物語は、築き上げてきたキャリアやプライベートに行き詰まりを感じている女性社長・涼香が、旅先での印象的な人物との偶然の出会いを通じて、生きる活力を取り戻していく話で、勤め人の心によく響きます。

    特に印象深い旅先の登場人物が、表題にもなっている「さいはての彼女」です。ハーレー好きだった父親に背中を押され、障害を乗り越えて、カスタムビルダーになるほどハーレーにのめり込み、「サイハテ」と名付けた愛車を駆って長旅に出る華奢な若者ナギ。

    物語は、退職間際の心の離れた秘書に、セレブな沖縄旅行を手配させたつもりが、北海道知床の地でポンコツの軽自動車に乗り、途方に暮れるという場面から始まります。そんな時に涼香はナギと出会い、サイハテでさいはての旅を共にします。ナギのひたむきな人柄と彼女を温かく見守る人々との出会い、そしてお互いが抱える過去の自己開示を通じて、凝り固まった心が次第にほぐれていきます。秘書の手配の意図が意趣返しなのか、気付きを与えるためなのか、余韻を残す終わり方も良い感じです。

    こうした予想外の旅先での人々との出会いの展開に、遠い昔に旅先で出会った親切な人たちとの珍道中?(台風接近!沖縄→和歌山→京都→大阪→東京)の記憶が呼び覚まされ、ふわふわとした良い気持ちになれました。

    原田マハさんの作品は、まったく毛色の違う「ジヴェルニーの食卓」に続いての読了ですが、当時も思わずモネの作品集を手に取りたくなったように、心に何かを残していきます。旅に出るか…。明日も仕事です。

    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      harunorinさん、おはようございます

      そうなんですよね〜、マハさんの作品は心に何か残していくんです
      それも心のこもった温かいものです...
      harunorinさん、おはようございます

      そうなんですよね〜、マハさんの作品は心に何か残していくんです
      それも心のこもった温かいものです
      読んだあとはいつも得した気分になるんですよね
      私はマハさんの沼にハマってしまって、おぼれています=(^.^)=

      また素敵なレビュー、待ってます♪
      2023/08/03
    • harunorinさん
      ハッピーアワーをキメたK村さん、おはようございます(*´꒳`*)

      コメントありがとうございます。
      ハピアワさんのレビューが素敵で、読みかけ...
      ハッピーアワーをキメたK村さん、おはようございます(*´꒳`*)

      コメントありがとうございます。
      ハピアワさんのレビューが素敵で、読みかけの本そっちのけで読みました。ほんと良かったです!
      旅モノって、映像ではなく、文字から情景を思い浮かべるので(ネットもチラ見しますが)、自分の旅の記憶も渾然となって、うまく言えないんだけど、心地よい高揚感が得られて、好きですね。

      マハ沼はどれだけ深いのでしょうか、まだ2冊目(のはず)なので、これからどんどん深みにハマっていくのが楽しみです。
      ではでは、今日も良い一日を。
      2023/08/03
  • とても気持ちの良い短編集でした


    読んでいたら旅に出たくなります!


    仕事でちょっと行き詰まった時
    旅に出て、パッと視界が開ける感じ。

    やっぱり旅はいいですね

    ナギちゃんとてもいい子ー!
    私もバイク乗りたくなりました!


    そんな私は入院中で
    しかも絶賛、絶食中。


    本に出てくる食べ物の
    美味しそうなこと。


    あー食べたい。



    鬱々とした気持ちを晴らしてくれる
    素敵な作品でした(^^)


    ハグとナガラもちょろっと出てきますよー(^^)

  • この連休どうやって無駄に過ごそうか企んでいたのですが天気は下り坂で良くないし、おまけにぎっくり腰になってしまって山行き諦めました。
    小屋でくつろぎながら読もうとザックにしのばせてあった文庫本「さいはての彼女」を取り出してめくることにしました。山に持っていくには気にならない重さの4遍からなる短編集なんです。

    久しぶりに読む原田マハさんの作品なんですが、心地よい風が吹き抜けていくような感触に、じんわりしみ込んでくる読了感。今にも泣き出しそうな湿っぽい天気の中にあっても感じることができました。やっぱマハさんいいですよね。
    端っこ好きで、すみっこぐらしで、行き着くところは決まってこの先は海しかない陸の突き当たりが舞台になってる作品多くってっw

    キャリア女性が旅に出る話が続くのですがどれもいいです。
    最初は、尖った感じの女社長が主人公ですが、旅で知り合ったバイク乗りのイカした少女ナギちゃんに拐われちゃう話し、真っ赤なハーレーにタンデムして、滑走路のような1本道をどこまでも走る。独特のエンジン音を轟かせながら国道の路肩に停車してただのなんでもない場所が特別な場所に変わる。
    水平線に堕ちる夕陽が一面を赤く染める瞬間。深呼吸する二人、もうこれ絶対いいやつううぅぅぅ。
    このナギちゃんが明るくって人懐っこくて無茶いい娘なんですよねっw
    2話目は、初めての一人旅をするOLの話、旅先で手紙を書くなんてしたことないですけど、じんわりきますね。
    人生を足掻こうっていいなあ。
    3話目は、タンチョウヅルを見に行った話。鶴と添い寝した話は興味深々。その後恩返しはあったんか気になりました。
    4話目で、ナギちゃんのお母さんが主人公の話だけど、再びナギちゃん登場で右手を上げて親指立てて出てゆくとこかっこいいなあ。

    自分で勝手に引いた線、健聴者と自分を隔つ線。そんなものどこにもないんだ、越えて行けって幼いナギに亡き父が言った言葉はいつまでも沁みてウルウルきました。
    彼女の乗ってるハーレー自分で整備して「サイハテ」って呼んでるんですよw 過去に囚われない今日と明日のナギは凪じゃなく止まらない風なんですよね。

    やっぱこの作品無茶いいな。山の描写は羅臼山の峠道走るところしかなかったけど、山のお供に持っていて再読したくなる1冊でした。濡れないようにジップロックに入れてザックに入れておこう。

  • 再生をテーマにした四つの短編集
    どの話も良かった
    一番印象に残っているのは『さいはての彼女』
    仕事をがむしゃらに頑張って来たんだけど、どうしようもなくなって、立ち止まる
    そして旅に出る
    旅先での新しい人との出会い、美しい景色との出会いが、肩書きのある自分ではなく、個人の自分と見つめ合う機会を与えてくれる
    またここからゆっくり歩いて行けばいいんだよ、と背中を押してもらう

    そして、旅先で出会ったハーレーを乗りこなす凪ちゃんが、とてもキラキラ輝いている
    その影には、愛情たっぷり与えて育てくれた、今は亡きお父さんがいた
    お父さんがどんなに凪ちゃんの事を愛していたか、凪ちゃんを見ていればわかる
    風の様な凪ちゃんに会ってみたいな

    旅先には、知床、釧路、摩周湖等の道東や、静岡修善寺が出て来るので楽しめる

  • はじめての原田マハさん。とても透明感のある文章で、自分も「サイハテ」で風を受けて旅しているようでした。旅をする理由は人それぞれだけれど、共感するところ大でした。私も旅の中だからこそ考えることや、気づかされることがあります。それが強烈なキャラ?の登場人物と対比されるからこそ、旅の醍醐味がはっきり感じられました。読後感の爽やかさもすごくよかったです。
    他にも魅力的な作品がたくさんありますので、何から読みはじめようかいまから迷っています。

  • 布団の中で読了しましたが、バイクを乗っているときに感じるような、夏の爽やかな風を感じましたよー!今右手に当たってちょっと寒いクーラーの風とは大違いなのですよー!

    そしてマハさん、やっぱり大好きですよーー!(告白)

  • 自分で線を引く。風が吹く。心穏やか。人って変われて優しくなれる。

  • 4つの短編を収録。全て女性が主人公。都会で疲れ果てた女性が旅先で再生する話である。うち2編にハーレー乗りの若い女性・ナギが登場。彼女がとても素敵だった。初めて読んだ原田マハ作品、じわーっと良かった。

  • 自分の最善と思える生き方を、最大の努力で突っ走ってきた女性が道半ばでつまずいてしまう。そして燃え尽き症候群の様な状況に追い込まれて、、、しかし、何らかのきっかけで再生していく。

    原田マハさんの創り方がとてもいい味を出していたと思います。四つの短編に原田さんが「描きたいストーリー」、「思い」がまんべん無く込められている。読後感はそんな感じでした。そういう意味では読み始めから「安心?」してマハさんの筆力に身を任せて読み進めることが出来ました。

    ハーレー等のバイクのことはあまりよく知りません。でも、最初と最後の作品がバイク(ハーレー)を乗りこなす「彼女」を上手く溶け合わせていてマハ・ワールド全開でした。

    一つだけ違和感を覚えたのは「タンデム」という言葉。ググってみるまで明確には理解できていませんでした。もちろん文脈でバイクの二人乗りということは理解できるのだけれど、バイクに詳しくない私には明確には分からなかった。

    頭の中には一昔前のコンピューターの名称の様な印象が付き纏い、どうしても読んでいる側でこの言葉が出るたびにコンピューターを思い浮かべてしまうのでした。

    言葉の記憶、恐るべし。

  • 仕事で精神的に疲れた人にオススメの一冊。

    リフレッシュするために旅に出るのはオススメだろう。ついつい、少ない日程に予定を詰め込んでしまう。事前に入念に調べて、時間通りに予定した場所に行き、現地の料理を楽しみ。。お酒を飲んで。。といった、「期待通り」、「予想通り」の旅行で本当にリフレッシュできるのだろうか?

    今までの自分は、計画が少しでもズレる(天気が悪くなったり、渋滞や事故で時間が遅れたり)ことにイライラしてしまっていた。

    4つの短編に登場する旅人たちは、予定が無く旅に出て、新たな出会いと発見を得ている。まさに旅の醍醐味なのだろう。確かに運の巡り合わせかも知れないが、それだけでは無い気がする。

    予定が無いというのは、空っぽでリセットされている状態であり、普段私達が逃しがちな出会いやチャンスを拾う可能性があることかも知れない。例えば、ふとした瞬間に振り返って景色を見直したり、旅先で初対面の人に話しかけてみたり、といったことができる。いつもと違う行動が、自ずと素敵な結果を導くのかも知れない。

    思い切って、「行き帰りの飛行機以外何も決まっていないような旅」にチャレンジしてみたくなった。

    • kuma0504さん
      Sintolaさん、こんにちは。
      実際にはひとつ二つ行先を決めとかないと、メリハリがつきませんが、あとは全てフリーが、私の大体の旅のスタイル...
      Sintolaさん、こんにちは。
      実際にはひとつ二つ行先を決めとかないと、メリハリがつきませんが、あとは全てフリーが、私の大体の旅のスタイルです。旅にトラブルはつきもの、でも必ずまぐれのような発見がある。そういう意味では外れたことは先ずありません。
      2023/09/27
    • Sintolaさん
      kuma0504さん、コメントありがとうございます。
      旅行の計画は、絶対に行きたい場所が1つ2つあるところからスタートするのですが、どうして...
      kuma0504さん、コメントありがとうございます。
      旅行の計画は、絶対に行きたい場所が1つ2つあるところからスタートするのですが、どうしても欲張って詰め込んでしまう悪い癖があります。余裕を残しておくことが大事ですね。余裕という言葉より、「思わぬ出会いと発見があるかも知れない時間枠」という心づもりの方がワクワクしそうです。アドバイスありがとうございます。
      2023/09/30
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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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