TRIP TRAP トリップ・トラップ (角川文庫)

  • 角川書店 (2013年1月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041006610

作品紹介・あらすじ

ハワイ、パリ、江ノ島……6つの旅で傷つきながら輝いていくマユ。凝縮された時と場所ゆえに浮かび上がる興奮と焦燥。終わりがあるゆえに迫って来る喜びと寂しさ。鋭利な筆致が女性の成長と旅立ちを描く。

感想・レビュー・書評

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  •    『TRIP TRAP トリップトラップ』


       第27回 織田作之助賞


    この作品 とても好き♡

    六編からなる連作短編
    最初の「女の過程」以外は旅にまつわるお話
    タイトルからしても「旅」を表していたり、「罠」という意味も含んでいたりして…

    「女の過程」「沼津」「憂鬱のパリ」
    「Hawaii de A loha」
    「フリウリ」「夏旅」 となるのだけれど

    主人公のマユがこれらのお話の中で
    時間とともに成長していく姿が

    少女が大人の女になっていく過程が
    「旅」を通じて描かれていく


    「女の過程」
    マユは十五歳の中学生…学校は退学同然
    母親との折り合いが悪くて家出をしている
    パチンコ店に勤める恋人と同棲していて
    同棲相手には監禁同然で囲われている彼女
    買い物にも気を使わなければならなくて…
    不自由さに辟易しつつも、とても自由。
    アパートの隣りに住む男と浮気したりと…
    冒頭から『金原ひとみWORLD』全開なの。

    「ポジティブな言葉に隠されたネガティブな感情に、冷たい手で心臓を鷲づかみにされたようにぎょっとした」

    …とか

    「女は人生の中で何度も、完全な別物に生まれ変わる。それは青虫が蝶になったり、蛆が蠅になったり、猿が人間になったりするのと同じだ。女は何度も生まれ変わって、美しくなったり、醜くなったりする」

    って、唸っちゃうなぁ♪



    「沼津」
    冒頭の作品から二年経っていて…
    マユは十七歳になっている。
    ユウコという女友達と
    夏の海辺で過ごす四日間が描かれている。



    「憂鬱のパリ」
    この作品はすごく好き♡


    マユは人妻になっているの。。。しかも、
    彼女は作家になっていて、編集者の夫がいる。
    夫と一緒にパリに仕事にきていて
    仕事関係者たちとのお食事会の場面
    ファビオという男性の隣に座ったマユは…



    ファビオが話の途中に携帯をポケットから出し、光った液晶が目に入った私は酔っているせいもあって無理矢理に覗き込んだ。
    「ガールフレンド?」そう聞くと、彼は笑って僕の一番大切な女性だ、可愛いだろう、と誇らしげに答えた。私は何故かその瞬間泣きそうになった。弾けんばかりの笑顔で映っている、三歳くらいの女の子が、私は羨ましくて仕方なかった。誰が私を一番大切な女性だと思ってくれるだろう…



    …という文章を読んだ時
    なんか泣きそうになってしまった
    わかる気がしたの


    マユとマユの夫は次からの
    「Hawaii de Aloha」「フリウリ」「夏旅」
    でも、距離感が絶妙!


    「フリウリ」
    マユの赤ちゃんが出てきます。
    まだ四ヶ月の赤ちゃん…旅行なんて大変!
    マユは旦那さんにイライラしたり…
    他所のお母さんと赤ちゃんが完璧に見えたり
    自分と赤ちゃんのそれと比べてしまう
    焦っちゃうのよね
    …わかるなぁの連続でした


    「世界一愛おしく、世界一鬱陶しい赤ん坊」
    という 言葉選び が正直すぎて好き♡


    金原ひとみさんの小説は
    「綺麗事」があまり描かれてなくて 
    嫌な部分や狡さが多い感じがします。
    ある意味、すごく正直で。
    だからかなぁ すごく惹かれてしまう。

    どの作品も魅力的で引き込まれました
    ぜひ 読んでみてね ( ◠‿◠ )

    • ともちんさん
      S uper8 さん こんにちは♪
      コメントありがとうございます

      金原ひとみさん…

      ちょっと直接的な表現も多くって
      薦めたいのだけど
      苦...
      S uper8 さん こんにちは♪
      コメントありがとうございます

      金原ひとみさん…

      ちょっと直接的な表現も多くって
      薦めたいのだけど
      苦手 (O_O) って思う人も多いかもです

      でも とっても素敵なんです!!
      『TRIP TRAP』は比較的 読みやすいです
      ぜひぜひ 読んでみてくださーい♪
      2025/06/16
    • おびのりさん
      8さん、同感です
      私も早く読みたくなります
      感受性が豊かよねー
      8さん、同感です
      私も早く読みたくなります
      感受性が豊かよねー
      2025/06/16
    • ともちんさん
      おびのりさん♡ こんばんは♪
      コメントありがとうございます
      金原ひとみ いいですよ♡
      次の作品 読むのが楽しみ ( ◠‿◠ )
      おびのりさん♡ こんばんは♪
      コメントありがとうございます
      金原ひとみ いいですよ♡
      次の作品 読むのが楽しみ ( ◠‿◠ )
      2025/06/16
  • 圧倒されました。

  • 大好きなひとみ姉さんの作品。なかなか読むに至ってなかった。妻が絶賛していたので、楽しみにしていたが、読む前にポツリと、これ読んで過去を反省して下さい!と。…なんか非常に読むのが怖くなった。そして、この主人公の考え方、めちゃくちゃわかるわ〜とも。読んでる過程で??? こんな考え方してんの?と、色々物語以外で考えさせて頂きました。ありがとうございます!

  • めんどくさい。そして、それにもかかわらず、心を動かされる小説です。
    特に前半の主人公はめんどくさい。一部は読み手である私にも通ずるような気もしながら、主人公のほうがずっと面倒で、ただそこに、人に対しても物に対しても事に対しても私よりよっぽど自由で、いつも自分の斜め上あたりに冷静でやる気のない(つまり何にも縛られていない)自分をもつ主人公を見出して、私はこんな生活も心の乱高下も嫌だけどどこか羨ましくもなる。
    そして何度も生まれ変わりながら、何かを捨てて捨てて捨てて、たぶん同時に何かも得ているんだけど、どっちかというと得るより捨てていく主人公の姿のほうに、羨ましさとともに妙な安らぎみたいな感情で胸がうずめられるような気分になりました。私も女である以上、人生に苦しい段階があろうと甘い段階があろうと、捨て去り脱皮し生きていくのかもしれない、と。

  • ”多分彼らは、幼稚で愚かな者に対する哀れみに近い愛情によって、そういう目でわたしを見ているのだろう。でも、あと三年で有無を言わさず自分が消滅すると知っている私の気持ちが、いくつ歳を重ねても今の自分の延長線上を辿って成長していくだけの男に分かってたまるかと思った。女は人生の中で何度も、完全な別物に生まれ変わる。”

  • 2025.7.18 読了
    15歳のマユが25歳になり母親になるまでのお話し。
    私小説ぽい?同じ金原さんの「オートフィクション」に読み心地が似ていた。金原さんの描く危うい女性が大好きだ。そんなマユが少女から母になるまでの成長の過程は非常に読み応えがあった。「沼津」「夏旅」が特に好きだった。
    稲葉真弓さんの解説も良かったなぁ。「マザーズ」も読みたいと思った。

  • とっても読みやすかった!
    女なら身に覚えがある、
    何も怖くなかった15歳から
    20代にかけ雁字搦めになっていく様に
    共感と羨望と
    読む歳によって感想が全然違うはず。
    もっと早く出会いたかった本。

  • 女女していますね。

    払ってもいい金額:500円

  • 金原ひとみの書く「わたし」に圧倒される。もうわたしわたしわたしわたしでこの人の世界にはわたししかない。わたしとわたしのことを好きといってくれる男。たまにわたしの子供。それも結局わたし。なんかもうほんとうに凄い。ここまで清々しくわたしなら、もうわたしだけでいいじゃん、なんにも迷うことも心配することもないよ、って感じだけれども、わたしがわたしだからこそ、イライラしまくってるわけで。なんだか「わたし」がゲシュタルト崩壊しそうだけれども、そのくらい「わたし」が全開だったし全面に出ていた。ちょっとアンバランスさも感じて(ただの自分大好き女の小説ではない)、この人もなにかと色々いきるの大変そうだな、と思った。

  • 旅は時々、自分時間と自分のいる空間の殻を破ってくれる。「女の過程」「沼津」では帰る場所のないままの旅だったが、母となり帰る場所に制約される現実を受け入れていく。

     金原ひとみの作品があまり好きになれないのは、動物的感覚の強さかもしれない。危うい均衡さでズブズブと堕落しながらも、最後はつま先で踏ん張ってしまうような、そんな感覚がある。
     「女の過程内」の「可愛い」という言葉に含んだ軽蔑のニアンスにはニヤリとしてしまった。便利な「可愛い」と言う言葉の多様性を見せてくれた。
     期待していた「沼津」が拍子抜けした。沼津は潮の香りが強烈な町だよ。ただこの作中で、四人がサークルになって手をつなぐ4次元旅行の体験遊びが、祈りにもにた精神状態から現実にもどり、一番旅らしく思った。
     社会に迎合しない強さが不気味で、読了後、不快感になってしまうのかもしれない。
     

  • 普通に真面目に学生時代を過ごし、
    普通に結婚し、子を育ててる自分からみると、
    なんだコイツは…
    が感想。
    子供の頃に変に大人びていて、大人になったら変に子供じみていて。
    フワフワ、地に足がついてなくてイライラ。
    そんな気持ちにさせる、文章力は流石。

  • "私たちは、サラダスピナーの中に放り込まれた菜っ葉のように
    ぐるぐると回され、遠心力で壁にへばりつき、
    運命という力に抗えないまま身動きが取れなくなっているようだ。"





    刹那主義、破滅願望、男性依存、作家。


    著者の作品に共通するいつもの「私」

    今作の「私」も「Hawaii de Aloha」の中盤から一度落ちる。
    しかし「フリウリ」の彼女はマユに戻っていて、
    むしろ彼女は「母性」を身につけている。
    「夏旅」の「私」もTRIPすることもになく旅行から戻ってきており、
    「マユ」のままで終わる。
    ドロドロとしたものを抱えて終わることが多い著者だが、
    今作の終わりは割と意外。


    ”大抵、人と人との関係は、相手が伝えようとすることを悪意からであったり
    保身からであったり、理由は色々あるだろうけど、誤解してみせたり、
    勘ぐってみたり、ねじ曲げて捉えたり、他の話にすり替えたりして、
    結局相手の伝えたい事は分かっていても分からない振りをしたり、
    本当に伝えたい事とは別の事を主張してみたり、
    そういう回りくどい事をするばかりで結局話も関係も何一つ進まない”

  • 祝文庫化。「成長」とか「旅立ち」と言う言葉に弱いかも、、、

    角川書店のPR
    「ハワイ、パリ、江ノ島……6つの旅で傷つきながら輝いていく女たち。凝縮された時と場所ゆえに浮かび上がってくる興奮と焦燥。終わりがあるゆえに迫って来る喜びと寂しさ。鋭利な筆致が女性の成長と旅立ちを描く。」

    TRIP TRAP トリップ・トラップ|金原ひとみ
    http://www.kadokawa.co.jp/sp/200912-06/

  • めちゃめちゃよかった。共感

  • 夏の青春を描かせたら、けどお腹いっぱい感

  • ふむ

  • ・金原ひとみさん、今更、恥ずかしながら、という感じですが、初めて作品を読みました。
    ・最高。
    ・特に短編の「沼津」はヤバいと思った。
    ・他のも何か読もう。

  • 主人公は精神的に幼くて依存心が強く、最初はイライラしてました。
    人に甘えすぎでしょ…と読むのをやめようかと思ったこともあります。
    だけど読み勧めていくうちに、心の何処かで感じていた、抑圧の存在に気づきました。

    きっかけは彼氏とパリ旅行する章。
    主人公が、他の男性から強引に二次会に連れて行かれるのを、彼氏が阻止しなかったことに不満を感じる。
    もっと私に執着してよ、とストレートに彼氏に言うが、彼氏は面倒になり適当に返事するようになると、主人公は大人しくなるどころか「私の話を聞いて、理解して」と激しい感情で怒る。
    (私は、彼氏に見捨てられるのが怖くてこんなこと言えないよ…)とハラハラしたり不安になりながら読んでいたが、話は急展開。
    主人公は牡蠣に当たって寝込むが、彼氏は観光に行く。
    主人公はそのことを知ると、彼氏に理解されていない、愛されていないと大暴れする。
    しかし、彼氏が戻ってきたら吹っ切れてケロリとする。

    愛情を相手に要求する主人公の行動に心を動かされました。
    私は相手の愛情を確かめることが怖く、愛されたいという感情に気づかないようにしてやりすごしていたのだなと気づきました。

    読後は、愛情を確かめたい欲求は抑圧するべきだという呪いが解けたような気がしました。

  • 『最後の音楽:|| ヒップホップ対話篇』という本で菊地成孔氏が紹介していて気になったので読んだ。著者の小説は昔は熱心に読んでいたが久しぶりに読むと自分が歳をとったこともあり理解できる感情が多く楽しめた。
     短編が6作収録されており主人公はいずれも女性かつ一人称。タイトルどおり国内外問わず旅行に行ったときの感情の機微が丁寧に描写されている。こないだエッセイを読んだ際にも感じたが日常における小さな違和感を見つける観察力とそれに対してぶわーっと感情が溢れだしていく文章の連なりがユニーク。引き算して行間で魅せるというより足し算でゴリ押しスタイルなので活字中毒者には心地よくグイグイ読んだ。
     菊地氏が紹介していた「沼津」や「女の過程」といった短編はヤンキーの生息する社会が文学という形で表現されている稀有な例であった。氏が言う通り濃厚なヒップホップの匂いがそこにある。著者自身の出自もあいまって「中卒の言葉にやられちまいな」というAnarchyのラインを引用したくなる。

     一つ目の短編から家出というトリッキーな旅行から始まるあたりに一筋縄ではいかない著者を垣間見た。短編はいずれも直接はつながっていないが、中学生、高校生から妻、母と読み進めるにつれて主人公のライフステージは変化していく。登場人物の名前も一部重複しているので、一つの世界線として読むこともできるだろう。その観点でみると若い頃はとにかく異性に依存していたい気持ちが悪びれることなく全面に表現されているが、子どもを持つ主人公になると破綻してくる。異性に依存する側から子どもから依存される側への移行に伴う心情描写がかなり正直だった。特に男性が育児に関わらないことで女性が育児に「トラップ」され自己犠牲を極端に強いられることに対して懐疑的であり「育児も当然大事だが自分の人生が押し潰されるなんておかしい」という主張が2009年時点で放たれている点がかっこいい。タバコを吸いながら泣いている子どもが乗ったベビーカーを押しているシーンがその際たる例で小説だからこそできる表現だろう。未読の作品がまだまだあるので時間見つけて他のも読みたい。

  • いくつものテーマを織り込みながら、一つのストーリーとして描ききる力量に感服した。
    少女から女、女から妻、妻から母への変身に伴い、人として成長し男との関係も変化していく。
    主人公マユの成長が文体にも表れており、最初と最後の章ではすっかり別人が書いたのかと見紛うほど。
    個人的にはパリ旅行編の慌ただしさがコミカルで楽しく読めた。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞を受賞。10年『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、20年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞。他の著書に『AMEBIC』、『オートフィクション』、『fishy』、『パリの砂漠、東京の蜃気楼』、『デクリネゾン』、『腹を空かせた勇者ども』、『ナチュラルボーンチキン』『YABUNONAKA -ヤブノナカ-』など。

「2025年 『マザーアウトロウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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