オランダ靴の秘密 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041007099

作品紹介・あらすじ

オランダ記念病院に救急搬送された一人の患者。だが、手術台に横たえられた彼女は既に何者かによって絞殺されていた。犯行が可能だったのは手術前のたった数十分だけ――。名探偵エラリーの超絶技巧の推理、第3弾!

感想・レビュー・書評

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  • 国名シリーズ第三弾

    まさに犯人当てミステリーの本流。
    「読者への挑戦状」で挑まれた読者は、いつもとは違う部位の脳みそをフル回転しなければいけない。
    これまでの経緯や数多くの登場人物、犯行現場の見取り図などを(ムムッとしながら)見直すことに……。
    安穏と見下ろしていた立場から、一気に物語の中に引きずり込まれることになる。

    他のミステリー作家と比較しても、犯人当てに特化したゲームのような感覚は、ピカイチ。

    そう楽しむことが重要。

  • エラリー・クイーン・シリーズ

    百万長者アビゲール・ドルーン夫人殺害事件。手術前に絞殺された被害者。容疑者であるジャニー医師はアリバイを主張するが証人スワンソンの正体を明かさない。ジャニーのアリバイ証人スワンソンの登場。同時刻に起こったジャニー殺害事件。背後から何者かに殴られ絞殺されたジャニー。ジャニーの背後にあった書類整理棚と事件の関連。靴紐の修理に使われた絆創膏の謎。ジャニーに化けた犯人が残した手術着に隠された秘密。エラリーが筆記の助手としてお願いしたジャニーの助手看護婦ジェニー・プライズ。

  • 古き良き王道のミステリー。
    目を引くような斬新さはないけど、読者にフェアで、解決編を読んでいくとなるほどと思わされる。

    ただ、後から考えると納得できるんだけど、読者の挑戦状を読んで実際に犯人を見つけるのはなかなか難しいですね。

  • 病院を舞台とするミステリーって、この作品が嚆矢らしい。
    病院ならではの小道具の使い方が、トリックを際立たせている。さすがですよね。

  • エラリーお馴染みのたった一つの物証から犯人像を絞り込む推理は気持ちいい。
    ただ遺留品の扱いとか犯人の行動にいくつか違和感がある。

    ・エラリーが遺留品から導き出した犯人像は全て犯人がそう思わせるために仕組んだミスリードの可能性も否定できない。

    ・犯人XがAに化けて殺人を犯したのに、なぜ共犯YはわざわざAと実際に会ったのか。Aのアリバイを証明することになるし、警察がAのアリバイを疑って調べれば自ずとYにも疑いの目が向けられてしまう。Aを人目のないところに呼び出すのが最適では?
    →急遽予定を変更した計画だったから。Aを現場から引き離すことは必要不可欠だから。

    ・第二の事件を急ぐ必要はあったのか?そもそもAを殺すつもりだったならなぜ第一の事件でAに化けたのか?
    また犯人を指し示す手がかりが現場からなくなったのは全くの偶然であり、それでなくても容疑者がかなり限られてしまう状況でなぜ犯行に及んだのか。
    →Yに疑いが行ったから?

    フーダニットの問題に動機ではなく、犯行に及ぶ心理的ホワイダニットの観点から文句つけるなんてナンセンスだとは重々承知してますが推理の論理性が素晴らしいだけにもったいないとも思う。論理パズルの究極系であり限界でもある。

  • 最終章、ついに真実が明らかに。エラリーがひとつひとつ緻密に真相を解明していくたびに、私が怪しんでいたあの人やこの人の潔白が証明される。じりじりしながら読み進める。謎解きが長い分、最後の最後で犯人を明かす場面で潔く終わっていて、すっきり爽快な読後感だった。

  • 当時、病院が舞台の推理小説はまだ無かったとは意外。その斬新さに加え、フェアなトリック。人気の高さが窺い知れる。無駄がなく穴もないフーダニットに驚かされた。
    エラリーとジャーナのやり取りや、余白を用いた幕間など、遊び心も垣間見えて良いね。

  • フーダニット、誰が犯罪を犯したのか。それを見事な推理で解き明かすエラリーに引き込まれた。まと病院が舞台というのも当時としては斬新で良かったと感じた。

  •  エラリー・クインの国名シリーズ第三弾です。今回の舞台は、ニューヨークのオランダ記念病院の創業者アビゲイル・ドールン夫人が緊急手術でオペする直前に殺された。
    容疑者は主治医で夫人が後見人のフランシス・ジャニー外科部長だ。手術控え室で看護婦が付き添っている中で彼だけが接触した人物だという。

     クイン親子は、例によって現場の病院の一室で関係者に次々と尋問を行い、思考し推理する。確たる物証のないままに、尋問から更なる容疑者が浮上する。
     
     夫人の弟で遊んで暮らすヘンドリック・ドールンは賭け事で11万ドルをギャングのマックから借りており夫人の遺産目当ての可能性がある。
     
     捜査に大きな進展があった、行方を晦ましていたジャニー医師のアリバイを証言出来るスワンソン出頭して来た。何とジャニー医師の息子だった。スワンソンの証言からジャニー医師の疑いは晴れたが、今度は病院でそのジャニー医師が絞殺された。手口は夫人と同様だった。

     今回も2人のクインが関係者と読書を前に劇場さながらの雰囲気で推理を繰り広げる様は現在のスリルやサスペンス等のドキドキ、ハラハラ感は微塵も有りませんが古典的なミステリーがまた面白いです。

  • 国名シリーズ三作目。
    ・今まででいちばん「オランダ」味がわからなかった。
    ・『フランス白粉』に続き、“エラリーの友人”が登場する。信じていいのか疑っていいのかドキドキさせるポジション…。
    ・病院が舞台の殺人事件。これが発表当時は相当斬新だったとのこと。冒頭の病院描写シーンは医療ドラマっぽい。
    ・『ローマ帽子』『フランス白粉』では、事件が起きてから馳せ参ずる警察の(非公式の)一員としてやってくるエラリーだったが、『オランダ靴』では三作目にしてはじめて、“事件現場にたまたま居合わせた名探偵”のパターン。その後すぐお馴染みの面々が出動するので捜査シーンはいつも通りだが。
    ・キャラ萌え的な見所は、クイーン家の何でも屋少年ジューナ。前二作にも登場していたが、ここへ来てようやく見せ場が。エラリーの母、つまりリチャードの妻はエラリーの幼い頃に亡くなっている。エラリーが大学に行くため家を出たおり、寂しくなったリチャードがどこかで拾ってきた孤児がジューナで、家事全般を一手に担い、リチャードを「クイーン父さん」と呼び慕っている。その後エラリーも帰って来てからは男三人で仲良く暮らしていて、『ローマ帽子』時点で19歳。『フランス白粉』も『オランダ靴』も『ローマ帽子』より前の事件という設定なので、正確なところは不明だが『オランダ靴』時点でも十代後半なのだろう。エラリーは果たして何歳なのか。『フランス白粉』では友人の彼女が「30歳くらいに見えるがもう少し若いかもしれない」という印象を持ったと書かれていた。『フランス』と『オランダ』の前後関係もよくわからないので、まあだいたい27~30歳くらいか。リチャードを主人とする従者ジューナからするとエラリーは言うなれば若旦那であり、リチャードに劣らぬ敬意を受けている。エラリーもジューナに対して遠慮なく何でも言いつけるし、言葉づかいを直すなど教育的指導もしている。本作では、捜査に行き詰まったエラリーが戯れにジューナの意見を求めたところ、その虚心な一言に助けられ事態は好転。エラリーは、「将来はあなたのような探偵になりたい」と無邪気に言うジューナへ、ご褒美/お礼(この辺、封建的なのか家族的なのか難しいところ)に変装セットを贈る。(自分で与えておきながら、さっそく変装をして出てきたジューナを不審者と見紛い怯えるエラリーがちょっと可愛い。)

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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