西巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 564
レビュー : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041007495

作品紹介・あらすじ

人が生きて行くには痛みが伴う。そして、人の数だけ痛みがあり、傷むところも、傷み方もそれぞれちがう……様々に生きづらさを背負う人間たちの業を、林蔵があざやかな仕掛けで解き放つ。

感想・レビュー・書評

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  • 借りてました。人間の深さを訥々と語りかけてくる物語たちにどっぷり浸って読書できました。借りてる京極さん前後しちゃったけどあと1冊。このシリーズ大好き。最後に、又市さんと百介さんにまた逢えた。

  • 御行の又市でなく、靄船の林蔵が仕掛ける七つの話からなる、巷説百物語。

    今のところシリーズ最後のこの一冊だけは、特に理由もないまま、随分長く手に取りませんでした。
    ただ、手にとってみれば、一編一編あっという間に読んでしまうくらい、それぞれのお話とも1行目からすーっと物語の中に引きずり込まれていく。
    分厚さも何のそのグイグイと読ませられてしまう京極節、久々に堪能しました。

    お馴染みのシリーズかとは思いますが、簡単に紹介しますと、市井の人の届かぬ思い、果たせぬ願い、叶わぬ望みを、様々な「仕掛け」をもって叶えることを生業とする悪党どもの物語です。
    京極さんは、ご自身なりの「必殺」シリーズをイメージされたと聞いたことがありますが、必ず人を殺して怨みを晴らすのではなく、むしろ殺さずしていかに依頼人の願いが叶う形にするかに重点がおかれているように思います。

    そして、そこは京極さん、各エピソードにしっかりと「妖怪」が絡んで参ります。
    ただ、ありふれた言い方ですが、怖いのは妖怪よりもやはり人間で、そしてまた、どうにも弱く脆く哀しく危ういのも人間やなと、何となくこんな風に考えさせられてしまうのも、このシリーズの魅力かと考えてます。

    まっとうに生きるのと、悪事に手を染め堕ちていく境目は、ほんまにぼんやりとしていて、ごく僅かの「何か」によってどっちに進むか転ぶかが決まるんでしょうね。

    地の文と台詞の間に、時折挿入される、仕掛けられる側の人間のモノローグ-心の声-の効果が素晴らしかったですね。読者として目に見えている、耳に聞こえている、心で感じていると思っているものが、ゾワゾワと不安が増して、揺らいでいく、足元が覚束ない感じにさせられる感覚がたまりません。

    読み終わって、平凡に暮らしている自分を確認できてよかったと思う、そんな物語です。

  • 林蔵!
    林蔵ってこんなにすかしたやつだったっけ?
    前巻までの記憶があいまいで時系列もよくわかっていないのでちょっと混乱しました。

    「鍛冶が嬶」「豆狸」が切なくて好き。
    特に「豆狸」では悪い人がいないので好き。
    「桂男」「遺言幽霊 水乞幽霊」は、ああこの人はどうしようもないなーと思って読むからあまりかなしくはならない。
    それでもなにかしらモヤモヤした読後感なのが、『巷説』の魅力でしょうか。

    「野狐」には又市もいる。
    これで終いの金毘羅さんや

  • 巷説百物語シリーズは、続、後、前ときて、あーもうおしまいか〜と思っていたら「西」ときた!このシリーズがまだ読めそうで嬉しい限り。

    登場人物それぞれがみんな味があり、その味がまた良い。今回は「西」の話だけれど、新しい人物に加え、ちゃんとあのおなじみの立役者たちも出てきます。

    特に妖怪に興味はありませんので、人間社会の、理屈で説明できないものを「妖」として胸におさめてきた先人の知恵に納得しつつ、しかし妖怪蘊蓄はざっと飛ばし読み。それでももちろん内容は本当に面白いです。

    複雑に絡み合う人と人、純真ゆえにそれが過ぎて罪となる、相手を思うがあまり道を踏み外す、深い情念にとらわれてしまう人々、どの話も一筋縄ではいかない複雑怪奇でありながら、純粋ですとんと胸に落ちてくる読後の爽快感、西巷説百物語はこのシリーズの中でもかなり良かった。

    特に最後の「野狐」は圧巻のからくりでした。

  • 読んだばかり。巷説シリーズ大好き。林蔵メインの巻かと思ってたら、最後に百介さんと又市さんが出てきてそれもかなり嬉しかった。
    巷説の時代もすごく惹かれるな。
    京極堂の時代も憧れる。

  • やはり読みごたえがある巷説百物語。

    御行の又市達が主体の本家百物語に比べてミステリ要素も妖怪要素も薄めで、なんだか身も蓋もない感じだなあ、これが西(上方)と東(江戸)の違いなのかなあと思いながら読み進めていると、最終話「野狐」冒頭でちゃんと解説してくれる。こういう、痒いところに手が届くような、丁寧で緻密な構成が嬉しい。(又市と百介を登場させてくれるサービス精神も。)

    身も蓋もない感じも、個人的には嫌いじゃなかった。正義のためではなく、あくまで商売として依頼を受ける一文字屋も。寧ろ、少々感傷的な部分を見せることがある林蔵にイラッとくるくらいだが、まだ若いのだ、ということで納得できる。
    人間は、他人を騙す前にまず自分を騙す。自分を騙した嘘に足をとられて破滅し、自分に嘘をつけなかった者だけが救済される……そういう物語だった気がする。

  • 又市の相棒、林蔵が大坂で活躍する百物語シリーズ。
    『前巷説百物語』よりも以前の設定かと思っていたら
    『巷説』シリーズと同時進行の出来事だったのでびっくり。
    シリーズに慣れたせいか仕掛けのあれこれが分かってしまうのは難点かな?
    それでもグイグイ惹きこむ筆力はさすが。
    又市だけでなく、百介さんまで登場してくれたのはサービス?
    この中では『豆狸』が一番好きですね。

  • 江戸時代 商人の町 大阪を舞台に、仕掛け、騙し、芝居し、舌先三寸で、ターゲットの本音を引き出し、業を解き放つ。
    そこに人の心に巣くう闇が、哀しい因縁が、あばかれる。

    人の業を理解し、許しのこころも持つ林蔵たちが、人の哀しさを浮かび上がらせてくれる。

    「これで終いの金比羅さんや―」
    又市や林蔵たちとはもうこれで会えないのか?

    「終い(しまい)の金比羅さん」 は、「金比羅大芝居(しばい)」の洒落だけど、いつからあったのかなぁ。。。

  • 哀切漂う人の心の動きを描いた物語。百鬼夜行シリーズにならび大好きな百物語シリーズ。まあ、大好きというと少し誤解を招きそうですけどね。人の心の陰・迷いを妖怪になぞらえ読み解いていく。だけども一度惑ったものはぐらぐらと揺さぶられ、必ずしもハッピーエンドとは言えなかったり、というシリーズ。あっという間に読了です。

    今回もハッピーエンドではない、というかなんだかそういう一括りにできないようなお話。引き戻せるポイントがあったのに、「本当にこれでええのやな?」と再三聞かれたのに、あちら側へ落ちてしまった人間の業とでも言うのでしょうか。

    小股潜りの又市とはちょっと違う靄舟の林蔵の仕掛。仕掛そのものは又市のような派手さはないけど、けっこう容赦なく人の中の陰を抉るような。

    唯一の救いは「豆狸」か。与兵衛が死んじゃうのか?とドキドキしながら読んでました。先代の心遣いが堪らない結末。「夜狐」は山岡百介に又市に御燈の小右衛門等懐かしの面々が。お話は哀しい限り。女の意地というか嘘というか。「桂男」出だしから良い人の話が最後にはすり替わって、忘れていた自分の罪を最後に背負い込むことになる話。「遺言幽霊水乞幽霊」これまた兄殺しを隠し通そうとして仕掛けられる。「鍛冶が嬶」過ぎたるは及ばざるがごとし。今風にいうならヤンデレ男。「夜楽屋」人形に魂を取られた男。芸のためなら、か。「溝出」庄屋の2代目又右衛門が救いようのない奴。鬼となった寛三郎は結果的にたくさんの人を救ったのだけど。人ゆうのは所詮わからんもんなんや。

    「これで終いの金比羅さん」本当に終わりなの?もっと読みたいシリーズなんだけどな。

  • 今回は林蔵メインか~~~又市でないのか~~~、とか思って読み始めたのだが、全く問題なかった。めっちゃ面白かった。
    一話目の一文目から物語に引きずり込まれる幸福感たるや。物語の仕掛けの中にどっぷり浸かって堪能してきました。しあわせ。

    どれも良かったけど、「夜楽屋」「豆狸」が特に良かった。ぐっときた。

    「夜楽屋」は虚と真が人と人形の間で入れ替わる描き方が本当に素晴らしく、読んでる間、完全に作中に引きずりこまれておりました。
    それだけに、ラストで「人形に魅せられて、取り憑かれて、人の道を踏み外してしまった」っていうセリフにはかなりぞわっときた。人形ってやっぱり形容しがたい得体の知れなさある。
    「豆狸」は与兵衛さんに感情移入しすぎてしんどかった……。
    すんごいまっとうで優しい人だったから、あんな形で大切な人たち失くしてしまったのが本当に悲しくて、吐露される心情が苦しくて。
    全員は戻ってこなかったけど、大切な息子が戻ってきてくれたので、私の気持ちも救われたよ。良かった。

    巷説シリーズはこれで終わり?なのかな。
    読み易くて楽しかったから寂しいわ。

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プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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