西巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.17
  • (61)
  • (81)
  • (26)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 649
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041007495

作品紹介・あらすじ

人が生きて行くには痛みが伴う。そして、人の数だけ痛みがあり、傷むところも、傷み方もそれぞれちがう……様々に生きづらさを背負う人間たちの業を、林蔵があざやかな仕掛けで解き放つ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 御行の又市でなく、靄船の林蔵が仕掛ける七つの話からなる、巷説百物語。

    今のところシリーズ最後のこの一冊だけは、特に理由もないまま、随分長く手に取りませんでした。
    ただ、手にとってみれば、一編一編あっという間に読んでしまうくらい、それぞれのお話とも1行目からすーっと物語の中に引きずり込まれていく。
    分厚さも何のそのグイグイと読ませられてしまう京極節、久々に堪能しました。

    お馴染みのシリーズかとは思いますが、簡単に紹介しますと、市井の人の届かぬ思い、果たせぬ願い、叶わぬ望みを、様々な「仕掛け」をもって叶えることを生業とする悪党どもの物語です。
    京極さんは、ご自身なりの「必殺」シリーズをイメージされたと聞いたことがありますが、必ず人を殺して怨みを晴らすのではなく、むしろ殺さずしていかに依頼人の願いが叶う形にするかに重点がおかれているように思います。

    そして、そこは京極さん、各エピソードにしっかりと「妖怪」が絡んで参ります。
    ただ、ありふれた言い方ですが、怖いのは妖怪よりもやはり人間で、そしてまた、どうにも弱く脆く哀しく危ういのも人間やなと、何となくこんな風に考えさせられてしまうのも、このシリーズの魅力かと考えてます。

    まっとうに生きるのと、悪事に手を染め堕ちていく境目は、ほんまにぼんやりとしていて、ごく僅かの「何か」によってどっちに進むか転ぶかが決まるんでしょうね。

    地の文と台詞の間に、時折挿入される、仕掛けられる側の人間のモノローグ-心の声-の効果が素晴らしかったですね。読者として目に見えている、耳に聞こえている、心で感じていると思っているものが、ゾワゾワと不安が増して、揺らいでいく、足元が覚束ない感じにさせられる感覚がたまりません。

    読み終わって、平凡に暮らしている自分を確認できてよかったと思う、そんな物語です。

  • 借りてました。人間の深さを訥々と語りかけてくる物語たちにどっぷり浸って読書できました。借りてる京極さん前後しちゃったけどあと1冊。このシリーズ大好き。最後に、又市さんと百介さんにまた逢えた。

    • hs19501112さん
      このシリーズ、大好きです。
      大好き過ぎて、既巻を読み切ってしまうのが嫌で、番外編だという位置づけの「西~」は読敬遠していたのですが…。
      ...
      このシリーズ、大好きです。
      大好き過ぎて、既巻を読み切ってしまうのが嫌で、番外編だという位置づけの「西~」は読敬遠していたのですが…。
      このレビューを見て、やっぱり読んでみたくなりました。

      ※誉田哲也さん好きで京極夏彦ずきな本棚、フォローさせていただきました。
      2019/03/15
  • 林蔵!
    林蔵ってこんなにすかしたやつだったっけ?
    前巻までの記憶があいまいで時系列もよくわかっていないのでちょっと混乱しました。

    「鍛冶が嬶」「豆狸」が切なくて好き。
    特に「豆狸」では悪い人がいないので好き。
    「桂男」「遺言幽霊 水乞幽霊」は、ああこの人はどうしようもないなーと思って読むからあまりかなしくはならない。
    それでもなにかしらモヤモヤした読後感なのが、『巷説』の魅力でしょうか。

    「野狐」には又市もいる。
    これで終いの金毘羅さんや

  • 巷説百物語シリーズは、続、後、前ときて、あーもうおしまいか〜と思っていたら「西」ときた!このシリーズがまだ読めそうで嬉しい限り。

    登場人物それぞれがみんな味があり、その味がまた良い。今回は「西」の話だけれど、新しい人物に加え、ちゃんとあのおなじみの立役者たちも出てきます。

    特に妖怪に興味はありませんので、人間社会の、理屈で説明できないものを「妖」として胸におさめてきた先人の知恵に納得しつつ、しかし妖怪蘊蓄はざっと飛ばし読み。それでももちろん内容は本当に面白いです。

    複雑に絡み合う人と人、純真ゆえにそれが過ぎて罪となる、相手を思うがあまり道を踏み外す、深い情念にとらわれてしまう人々、どの話も一筋縄ではいかない複雑怪奇でありながら、純粋ですとんと胸に落ちてくる読後の爽快感、西巷説百物語はこのシリーズの中でもかなり良かった。

    特に最後の「野狐」は圧巻のからくりでした。

  • さすが京極夏彦と言わせるシリーズ。巷説百物語は全作読んでいるが全然飽きない。是非ともテレビシリーズにして欲しい!知恵を使って悪を懲らしめる。受けるとおもうけどな。

  •  久々に読んだ京極作品。

     一気に「巷説」の世界にひきこまれた。面白かった。主人公の林蔵さんに、惚れた。

     「巷説百物語」シリーズの外伝的作品。主人公が違う、登場人物も舞台も違う、仕掛けのスタイルも違う。それでもやっぱり「巷説百物語」。

     また、シリーズを読み直したくなった。京極ワールド、大好き。

  • 読んだばかり。巷説シリーズ大好き。林蔵メインの巻かと思ってたら、最後に百介さんと又市さんが出てきてそれもかなり嬉しかった。
    巷説の時代もすごく惹かれるな。
    京極堂の時代も憧れる。

  • やはり読みごたえがある巷説百物語。

    御行の又市達が主体の本家百物語に比べてミステリ要素も妖怪要素も薄めで、なんだか身も蓋もない感じだなあ、これが西(上方)と東(江戸)の違いなのかなあと思いながら読み進めていると、最終話「野狐」冒頭でちゃんと解説してくれる。こういう、痒いところに手が届くような、丁寧で緻密な構成が嬉しい。(又市と百介を登場させてくれるサービス精神も。)

    身も蓋もない感じも、個人的には嫌いじゃなかった。正義のためではなく、あくまで商売として依頼を受ける一文字屋も。寧ろ、少々感傷的な部分を見せることがある林蔵にイラッとくるくらいだが、まだ若いのだ、ということで納得できる。
    人間は、他人を騙す前にまず自分を騙す。自分を騙した嘘に足をとられて破滅し、自分に嘘をつけなかった者だけが救済される……そういう物語だった気がする。

  • 又市の相棒、林蔵が大坂で活躍する百物語シリーズ。
    『前巷説百物語』よりも以前の設定かと思っていたら
    『巷説』シリーズと同時進行の出来事だったのでびっくり。
    シリーズに慣れたせいか仕掛けのあれこれが分かってしまうのは難点かな?
    それでもグイグイ惹きこむ筆力はさすが。
    又市だけでなく、百介さんまで登場してくれたのはサービス?
    この中では『豆狸』が一番好きですね。

  • 仕置き人に仕掛けられる側から見ると、こんなに恐ろしい目にあっていたんですね。身から出た錆と言えばそれまでですが、容赦ない追い込みに、若干同情を覚えてしまった。
    しかし、本作で何に一番驚いたかと言えば、仕掛けられる側からしたら、百介はあの程度の存在感しかなかったことでしょう。百介の視点では、がっつり仕掛けに絡んでいるように思えましたが、やっぱり又市は、一線を画する付き合いをしていたんですね。百介が置いていかれる寂しさに共感を覚えていたので、この事実は知りたくなかった。

全54件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

’94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。’96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞受賞。この二作を含む「百鬼夜行シリーズ」で人気を博す。’97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、’04年『後巷説百物語』で直木賞、’11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞。’16年遠野文化賞、’19年埼玉文化賞受賞。

「2020年 『文庫版 今昔百鬼拾遺 月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

京極夏彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印

西巷説百物語 (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×