- Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041007501
作品紹介・あらすじ
愛するその「手」に抱かれてわたしは天国を見る−−エロスと魔法と音楽に溢れたファンタジック連作集。榎本正樹によるインタヴュー集大成「桜庭一樹クロニクル2006−2012」も同時収録!!
感想・レビュー・書評
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少女趣味な文章に秘められた甘美な猛毒。めずらしい雪の降る夜、朝まで鳴り止まない教会の鐘、1、2、3、悠久と名付けられた姉妹……色々な要素が不思議で可愛らしくて、桜庭一樹先生の生み出す世界感を改めて愛おしく感じた。
「道徳という名の少年」というタイトルでいて内容は不道徳の極みであり、しかし全くいやらしさや気持ち悪さを感じないのはまるで御伽噺のような語り口だからだろうか。
『ジャングリン・パパの愛撫の手』が特にお気に入り。息子夫婦の夜の営みを補助する父親という不道徳の極みであるのに、いやらしさや不快感を感じないのは少女が見つめているのはジャングリンでもジャングリンパパでも無く、『ジャングリンパパの腕』というピンポイントな身体のパーツだからだろうか。腕というパーツには不思議な温かさや愛着があるように思う。父親の大きな手、母の温かい腕の中……その手の描写は時に安全や安心の象徴として使われる。『隣家のパパの腕に心奪われる少女』。童女がキラキラとした瞳で乾いた男の腕を欲し、その心を大人になっても持ち続けている、そこにロマンチックさを感じる。深く考えると結構気持ち悪い。しかし、その響きだけで人を酩酊させるような蠱惑的な魅力が確かにあるように感じた。
インタビューの部分は流し読み。まだ桜庭一樹先生の作品をコンプリートしていないので。読み終わり次第、再読したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半、道徳という名の少年
後半、インタビュー集
桜庭さんのお話が好きなので、インタビューも興味深く読めた。
同じ作家の作風の変化が分かりやすく見えた。 -
インタビューも本編も素敵でした。僕の代わりに歌ってくれ、がとても好きです。
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一家系の官能的で甘美な愛の物語集 心に残る作品です
戦地へ赴くジャンの物語「ぼくの代わりに歌ってくれ」がとてつもなく好きです
桜庭一樹クロニクル(インタビュー集)も必読 -
前半は小説、後半はインタビューです。小説は戯曲のような内容でした。世代が変わりながら短い話が続いています。
全体を通して、作者に「道徳とは」を問いかけられているのかもしれない。
父のない子を産むこと、血の繋がった姉弟で結婚すること、夫の父と3人で愛を共有すること、殺すように歌うこと、自分の作品を世に示すことなく死ぬこと。桜庭一樹の思う不道徳てんこ盛り、なのかな。
わかりやすいストーリーを楽しみたい方にはオススメしないです。 -
本の前半分が小説で、後ろ半分がインタビューという構成で、小説部分の短さに驚きました。
「道徳という名の少年」はいくつもの時代にまたがる昔話のようで面白かったです。代々の一族は美しいかんばせを持っていても、晩年凄く太るのも興味深いです。道徳には打ち勝てずとも、楔は打ち込めた気がします。
インタビューも面白かったです。既読の作品も、未読の作品もわくわくしました。「私の男」の構成は『ペパーミントキャンディー』なんだ、ソル・ギョング観ねば。
桜庭さん、小説もかなり読まれると思っていましたが、映画やドラマもかなりご覧になられてて範囲が広いな…すてき。未読の作品を読みたくなりました。