あんじゅう 三島屋変調百物語事続 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 161
  • Amazon.co.jp ・本 (629ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008225

作品紹介・あらすじ

ある日おちかは、空き屋敷にまつわる不思議な話を聞く。人を恋いながら、人のそばでは生きられない<くろすけ>とは……。 宮部みゆきの江戸怪奇譚連作集「三島屋変調百物語」第2弾、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  •  三島屋主人の姪おちかが様々な人の不思議な物語を聞き集める三島屋シリーズ二作目。

     この本に出てくる暗獣(くろすけ)が可愛い、という前評判はずいぶん前から知っていて、そんなに可愛いものなのか? と懐疑的に、また少々くらいの可愛さじゃ認めないぞ、というひねくれた気持ちで読んだのですが、これは文句なしに可愛かったですね(笑)

     よく幽霊より生きている人間の方が怖い、と言われますが、今回の百物語の話はまさにその典型です。一話目『逃げ水』は日照りの神様に憑りつかれてしまった少年の話ですが、この神様もまた可愛い(笑)
     神様と少年の交流だとか、いじらしい様子は読んでいて和みます。

     三話目の『暗獣』も冒頭に書いてしまっていますが可愛いです。彼と屋敷に住む夫妻の交流はなんともほほえましく、それでいて切ない。くろすけの話が出てくるまでの振りが長く、なぜこの話がくろすけの話につながるのかな、と思いながら読んでいたのですが、その辺も抜かりなし。くろすけの優しさが二重に伝わってくる話のつなげ方になっていました。

     それに反しての人の怖さを描いた作品もやはりいいです。特に四話目の『吼える仏』は旅の僧が旅の途中でたどり着いた村の話をするものなのですが、終盤の村の人々が取り込まれていく姿や人の恨みの凄まじさに慄然としました。

     さらにこの巻からレギュラー化しそうな登場人物たちが続々登場し、彼らの掛け合い、日常の様子は読んでいてにぎやかで楽しく、また三島屋シリーズが続いていくにつれて彼らがどう成長していくかも楽しみになってきました。またおちか自身も過去の事件のことを完全に吹っ切れたわけでもなく、彼女が過去とどう向き合い、未来へ向かっていくのかも今後のシリーズで注目ポイントになっていきそうです。

     三島屋の百物語もこれで9話が終了。第三弾には6編が収録されているらしいので、3巻で計15話。このペースだと百話になるには全20巻……。このシリーズとは長い付き合いになりそうです(笑)

     余談で最近の宮部作品を読んで思うことを。
     自分が言うのもおこがましいですが、最近の宮部作品はもはや文章が巧い、とかいうレベルを超えているように感じてきました。円熟した職人の文章というか、格が違うというか…。
     その分読みごたえはさらっとしたものじゃなくて、がっつりと読ませるものになっていると思うのですが、でも不思議と読んでいて疲れる、という感覚はなくて、こういう読み応えってなんだろうな、と考えているうちに、初めて文豪の作品を読んだ時の感覚に似ているように思えてきました。

     五十年後、百年後にはたぶん現代で文豪たちと称されている人たちと並んで、宮部さんの名前が並んでいるんだろうな、と思います。こういう作家さんの作品をリアルタイムで読めるって運がいいなあ、としみじみ思います。

  • あんじゅう!!
    切なすぎるお話でした。心にドンピシャ響いてきました。あんじゅうの甘えたい気持ちを初音の立場にどっぷりはまって浸ってしまいました。消えないあんじゅうがほしい。

  • 「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」宮部みゆき
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    一度にひとりずつ、百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。ある事件を境に心を閉ざしていたおちかだったが、訪れる人々の不思議な話を聞くうちに、徐々にその心は溶け始めていた。ある日おちかは、深考塾の若先生・青野利一郎から「紫陽花屋敷」の話を聞く。それは、暗獣“くろすけ”にまつわる切ない物語であった。人を恋いながら人のそばでは生きられない“くろすけ”とは―。三島屋シリーズ第2弾!
    「BOOK」データベースより
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    宮部みゆきの三島屋シリーズ。
    1作目と3作目は読んでたけど2作目飛ばしてしまってたので読みました。

    小説以外の本は、きりのいいところでやめやすいんだけど、小説は読み始めると止まらなくなっていかん。
    これも結構なボリュームの本だったけど、夜中の寝かしつけ後、かなり夜更かしして読んでしまったよ。。。
    宮部作品ですもの、今回ももちろん面白い。

    全部で4つのお話から成るんですが、私がいちばん好きなのは、タイトルにもなってる「あんじゅう」というお話。
    本、読んで久しぶりに泣いた。
    かわいくて悲しくて優しくて寂しい物語なんです(T_T)
    詳しくは書きませんが、ほんと、いい話だったわぁ。

    あと、ワタシ的によかったのは、新たな登場人物、青野利一郎という人!
    3作目を先に読んでしまってたので存在は知ってましたが、彼の初登場がこの「あんじゅう」でございました。
    青野利一郎、ことごとくワタシのツボ。
    ・地方から出てきた浪人(←朴訥としていてあか抜けてない)
    ・今は江戸で塾の若先生(←インテリ)
    ・剣の腕はたつ(←体育会系)
    ・人がいい
    ・金はない
    条件が、居眠り磐音シリーズの磐音様とかぶる(笑)
    磐音好きとしてはたまらない!
    青野利一郎目当てにもう一度3作目読み直したくなりました。
    彼も三島屋シリーズのレギュラーとなりそうですし、宮部さんが飽きなければこのシリーズしばらく続いてくれそうなので、とうぶん楽しめそうです。


    ワタクシ的名文
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    「神様でも人でもさ、およそ心があるものならば、何がいちばん寂しいだろう」
    それは、必要とされないということさ。
    「逃げ水」 より抜粋
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    アドラー心理学でいうと「貢献感」ですかね。
    自分が役にたってるっていう感じ。
    独身時代は全然彼氏もできないし、できてもすぐダメになるので「私は誰にも必要とされないのか。。。」と暗澹たる気持ちにしょっちゅうなってました(笑)
    (彼氏がいなくてものびのびできる人はたくさんいるし、それができるのがいちばんハッピーなんだけど、私は基本がネガティブなので卑屈感が凄かったのです。結婚願望強めだったし。)
    ありがたいことに運よく結婚できて、こどもを授かることができたわけだけど、子供の存在はものすごくわかりやすく「必要とされてる」感があります。
    そういう意味で、親という仕事は大変ではあるんだけどその点での満足度はものすごく高い。贅沢言えないな~と思う。
    子供じゃなくても、大人同士でも、もっとそういう親密なつながりができるようになるといいんだろうなぁ。
    結婚もさ、子孫残す意味では男女である必要はあるけど、そういう生物的なところと別に精神的な面で考えたら、同性婚とか、友人同士でも一緒にくらしたら家族、みたいになると自由でハッピーになっていいのになぁ。
    友達と家族になって、養子の子供を育てるだっていいじゃないの。その人たちの人生がハッピーになるなら。
    あ、話が逸れた(笑)


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    「里の連中は、富一の頭が冷えればいいだなんて思っちゃいなかった。あいつが気にくわなくて、死んじまえばいいと思っていたんだ。最初っからそのつもりじゃなかったとしても、あいつとおはつを閉じこめて、煮ようが焼こうが勝手にできると思ったときから、箍が外れっちまったんだよ!」
    人の箍。人の良心だ。誰かの上に君臨し、その生殺与奪を握ったとき、それは呆気なく外れることがある。とりわけ、衆を恃んで事を起こすときには。
    「吼える仏」より抜粋
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    戦争の時代はまさにこれだったんだろうなぁ。
    今の時代だって、ネット私刑とか、芸能人の不倫叩きとか、企業のCM炎上とか、おんなじだよねぇ。
    ネットのように匿名性がある程度確保されて、自由に言える場は、情報の世界的には相手の生殺与奪を握りやすい場で、「正義」「マナー」みたいな一見正しいっぽい何かを後ろ楯にして、集団で一斉攻撃するってのがしょっちゅうだもんね。
    たとえその大衆と自分の考えが同じに近かったとしても、ネガティブな事柄で大衆にのっかるのはイヤだな、と強く思う。
    ただ、それもどこまで心の箍としてワタシの中に在ってくれるかはわからない。
    ワタシの心の箍も多分何かの拍子に外れることはあるのかもしれない、人であるかぎりその危険性だけは常にもっていないとなぁ。

  • 気持ちがささくれだつようなホラーと違い、厚みのある名人芸というようなホラーでした。人でないものの方がずっとかわいらしく、一番怖いのは結局人・・・というオチつきです。

  • 三島屋百物語シリーズ第二弾。前作「おそろし」はまさに壮大な物語の序章といった感じだったが、この「あんじゅう」は物語を聞くことでおちかが成長していく様子が加速し、前作を上回るお面白さだった。
    幽霊などの摩訶不思議なものの存在を信じたくなるようなリアリティーはさすが宮部みゆきである。今作のタイトルともなっている暗獣=くろすけは妖であるはずなのに、あまりにもかわいらしい。
    そして今作最も魅力的なのは新たにレギュラーメンバーとなった登場人物たちだ。おちかになつく子供たちや、あばた面の自分を信じる人にとっては魔を避ける縁起物になると認識しているお勝、そしておちかとの恋が芽生えるのではと予感させる青野先生や、偽坊主の存在。怪異譚だけの面白さではなくおちかとそのまわりの人物たちの軽妙なやりとりが心地よい。
    ついに三島屋以外の外とも関わりを持つようになったおちかがこれからどうやって心の傷を乗り越えていくのか。期待が膨らむ作品だった。

  • 面白かった!手に取った時は文庫の分厚さにちょっとためらったけれど、一度読み始めてしまえばあっという間に物語の世界に引き込まれてするすると読了してしまった。今回も三島屋おちかが黒白の間にやってくる語り手から奇怪な話を聞くものだが、背筋がひやりと冷たくなる怖い話や思わずほろりとくる人情ものがあったりと、バラエティに富んだ一冊だった。物の怪なんてものは存在しなくて、一番怖いのは人間の抱える闇だ・・・とも限らないよ!物の怪はいるかもよ!といった微妙な書き口が個人的に気に入っている。早く続編を読みたい。

  • どうやら二回目。
    宮部みゆきさんが好きで時代小説が好きなわたしは大好きなシリーズ。でも読んだかどうかは覚えてなくて、でもところどころで先がわかったのできっと二回目。

    二回目でも十分楽しめた(ほとんど記憶にないこともあり)
    しかし何度も楽しめる要因はやっぱりキャラクターの魅力とストーリーのおもしろさ。
    ひとつひとつのお話は重いけれど読後感は爽やか。
    今回もわくわくとどきどきとほっこりをありがとうございます、宮部さん。
    お勝さんのように生きていけるよう努めたい。そう思いました。

  • 暗獣は二度目でも泣けた。単行本のかわいい挿絵が文庫にはなかった。TVドラマを見たので「おそろし」「あんじゅう」を再読。宮部作品はやっぱり厚みがある。登場人物ひとりひとりの心の内が軽いタッチながら細やかに書かれていて、身近に伝わってくる。くろすけ、お旱さんはもちろん、青野先生、いたずら三人組、お勝さん、読み終わる頃にはみんな大好きになる。

  • 宮部みゆきの作品は面白い。面白いのだけど、人の世の辛い部分も浮き彫りにされるから読むのにエネルギーを要します。この百物語の前作もそうだったので、続きが読みたいもののなかなか手が出せずにいました。しかしいざ読んでみると、確かに辛い部分はあれども、おちかの身の上話が一段落を迎えており前作よりも明るめの作風でした。周りの人々が活き活きと動き出し、また新たに現れた人々も作風を明るくし、恐ろしく悲しい話を扱っているのに爽やかな読後感でした。
    怪異よりも何よりも人が一番恐ろしい、そんな風に思える話でありながら、人がもつ力によって救われることも示すのが素敵です。

  • 連作短編集かと思いきや、しっかりお話は繋がっている。
    前作の『おそろし』からも繋がっているのには驚いた。

    『おそろし』は妖や霊がメインだったけど
    この『あんじゅう』に収められたお話は
    どれもこれも妖よりも人の心が生み出すモノの方が怖いと
    痛烈に思い知らされるものばかりだった。
    『逃げ水』と『暗獣』は
    妖(であるはず)のお旱さんとくろすけの可愛らしさに救われたけど
    『藪から千本』と『吼える仏』はただただ人間の怨念って怖いと思わされた。
    この2作からまた新しい味方が増えたってのはいいことだけど。

    そして青野先生登場でおちかの周りはざわつき出す。
    清太郎さん大変ですライバル出現です(笑)。

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