グランド・ミステリー (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 113
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (959ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008256

作品紹介・あらすじ

昭和16年12月、真珠湾攻撃の直後、空母「蒼龍」に着艦したパイロット榊原大尉が不可解な死を遂げた。彼の友人である加多瀬大尉は、未亡人となった志津子の依頼を受け、榊原の死の真相を追い始めるが−−

感想・レビュー・書評

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  • ここ数年で一番面白いと思った本。一度読んだだけでは筋が追えないが、二度目に読むとその仕掛けが実に秀逸であることが分かる。文庫の解説者は四度読んだそうだ。それだけ読んでも新たな発見がある本だと思う。

  • 猛烈に面白い!あらゆるジャンルと幾つもの筋が入り組んで重なりズレては交錯する。多層性が時空を広げてとてつもない奥行きをつくりだす。その先にあるのは矢張り私は闇なのだと思う。光を求めて彷徨いながらも終着するは無限に続く闇、そもそも終着などない。そんな恐ろしい光景が何度も脳裏に浮かび、現在の日本と照らし合わせればまだ戦後は終わっていないことをつくづく噛み締める。しかし奥泉光は天才だな。これほど複雑な物語を極上のエンターテインメントに仕上げ一気に読ませる。900P超のボリュームに尻込むこと全くなし。読むべし!

  • 「グランドミステリー」は、僕がはじめて読んだ奥泉作品だ。相当前に読んだもので、ストーリー云々はまるで記憶になかったが、時間を迷宮的に超越した、軍艦とベニスと加多瀬と志津子の物語、というふうに記憶していた。
    実に何年振りか(何十年ぶり?)かの再読だったが、記憶していた以上に辛辣な日本、日本人への批評的文学だったように思えた。ただしそこは奥泉さんなので、あくまでもエンターテイメント要素が前面に押し出され、むしろそちら方面に傾きすぎて重心が散らばってしまっているところが本作の弱点でもあるように感じた。夕鶴事件の真相、と銘打たれてスタートした物語だが、結局のところその真相などはたいした真相ではなく、手紙の紛失事件もその真相はたいした真相ではなく、川崎整備兵の失踪もまたたいした真相ではなかった。重心の散逸は、もしかしたらわざとなのかもしれないが、奥泉さんの小説を常に蝕んでいる。どた馬、豆だいふく、貧乏神などのエピソードに見られる悪ふざけも気に入らない。
    でも、それでもなおかつ魅了されてしまうのが奥泉さんの凄いところだ。なにを置いても絶賛されるべきは圧倒的なその表現力、描写力、文章力だ。ほぼすべての文に感嘆してしまう。連続ドラマの終わり方のような、章の締めくくりの一文も素敵だ。そして毎度の迷宮感。僕が奥泉さんの小説を読むのは、この迷宮感を味わいたいからに他ならない。グランドミステリーは、その名の通り、ミステリーチックな迷宮感を味わうには最適な作品です。

    今回文庫版を読んだのですが、ラストシーンが記憶と違っていました。単行本と変えてますか??それともただの記憶違いかな。

  • 文庫本で960P、440gという分量ですが、思った以上に面白くなく途中で断念しました。
    そしてこの本も、大森望氏推薦でした。

  • どんどんおもしろくなった。おもしろかった。(ダメな感想。)

  • 単純なミステリーとは到底言えない小説。戦記物であり、SFであり、それよりも物語として、久々に面白いと思った。個人的には、アービングの小説を読んだ時の満足感と良く似ている。持つのも大変なくらいの分厚い文庫本だったが、まったく気にならないくらいの読後感だった。

  • 久々の、得体の知れない面白さ。川越高校~ICU出身の芥川賞作家による、文庫で940ページ、1,300円の小説。解説で二人の作家が実に優れた紹介文を書いているので引用。

    ・「この人、まじで天才や…」(三浦しをん)
    ・「本格ミステリのモチーフと戦記文学の背景とSFの設定を借り、現代文学の方法論を使って書かれた一大エンターテインメント」(大森望)

    まさにこんな感じ。話の訳が分からないのではなくて(分かります)、なんでこんなものが出来上がったのか、そこが分からない。今まで未読ですみません、だけど残り全部未読かと思うととても嬉しい。

  • 登場人物達の思考の描写が事細かなところに、引き込まれる。
    ミステリーとしては、長編小説だけれど、後半あっさりと答えがわかってしまうのはやや寂しい。

  • 一時、チョビチョビとしか読めなかったので、途中混乱。時間のある時に一気に再読したい。

  •  大西巨人『神聖喜劇』、夏目漱石『三四郎』『吾輩は猫である』、坂口安吾『真珠』などの先行作品を貪欲に取り込みながら展開する、文庫版にして940ページにおよぶ一大ロマン。戦争の未来を知る人物が日本海軍に姿をあらわすという着想は、高木彬光『連合艦隊ついに勝つ』や、荒巻義雄『紺碧の艦隊』シリーズなどに先例があるが、本作の場合、そのことが具体的な戦闘の展開をいっこうに変化させていないところに特徴がある。むしろ、作の中心は、戦場での死と無法な殺人による死とがどのように区別されるか、という問いに置かれている。そして、本書の抱える大きな問題も、まさにその点にある。

     潜水艦の加多瀬と空母の顔振。ふたりはそれぞれ、戦闘ではない局面で謎の死を遂げ、ごく曖昧にその死が処理されてしまった個人をめぐる真相を探ろうとする。しかし、一方は士官、もう一方は下士官である二人は、責任の違いはあれ、それぞれ部下に死の覚悟を命じなければならない立場の人物たちである。とすれば、戦時下での将兵に対する謀略的な殺人による死と、ときに理不尽でもある上官の命令がもたらす死とのあいだに、どんな違いがあり、どれほどの逕庭があるのだろうか。命令による死もまた、ほとんど殺人と変わらないのではあるまいか?

     この作は、そのような問いにほとんど到達していながら、その問いを正面に据えることはしていない。最後の「硫黄島」の章で、ようやく出会った加多瀬と顔振との死をめぐる対話がいささか中途半端な印象をあたえるのは、本作が、作が問い始めてしまった問題と向き合うことよりも、物語としてきれいに「終わること」を重視したからではなかろうか。

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プロフィール

1956年山形県生まれ。1986年に『地の鳥 天の魚群』でデビュー。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、1994年『石の来歴』で芥川賞、2009年『神器』で野間文芸賞を受賞。

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