パラダイス・ロスト (角川文庫)

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著者 : 柳広司
制作 : 森 美夏 
  • 角川書店 (2013年6月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008263

作品紹介

スパイ組織”D機関”の異能の精鋭たちを率いる“魔王”――結城中佐。その知られざる過去が、ついに暴かれる!? 世界各国、シリーズ最大のスケールで繰り広げられる白熱の頭脳戦。究極エンタメ!

パラダイス・ロスト (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • シリーズも巻を追う毎にマンネリ化してきた感はありますが、それでも背表紙の内容紹介文には否が応でも期待が高まります。結城中佐の知られざる過去が暴かれる…だと…?!(ザワ…

    英国特派員が「外国人にして日本語に長けた彼だからこそ気付けた盲点」を契機に、一気に中佐の正体に肉薄していく短編【追跡】。今作を読んでいる最中は、

    「中佐の正体とかめっちゃ知りたいけど知りたくないわ〜嫌だわ〜胸熱だわ〜←」

    と悶えました、はい( ^ω^ )←
    しかし、そこは中佐ですね( ^ω^ )
    英国スパイがちょっと頑張った位では、簡単に尻尾を掴ませるわけがないのです、はい( ^ω^ )

    ……でも、実は英国の彼はイイ線迫ってたんじゃないかしら。【彼の閃きの取っ掛かりになった部分に、中佐が事前に予防線を張っていた】と考えるよりも、【英国の彼が真実に迫りつつあるのを受けて、「結城中佐と目された人物」をでっち上げた】と考える方がありそうじゃないかしら〜!と邪推したのでした( ^ω^ )=3ムフー←満足

    要するに、今回もやっぱり結城中佐は結城中佐で、素晴らしくかっこよかったのでした( ^ω^ )←←←

    他の三編は、前作同様、中佐の教え子達の活躍譚です。

    記憶喪失になっても、「記憶が無くて尚、自分が如何に立ち居振る舞うべきか」を理解している主人公の姿に、骨の髄までスパイ!なD機関の凄まじさを改めて思い知らされた【誤算】。

    D機関、どこで関わってくるの?と首を傾げながら読んで行くと、後半で正体が明らかになる【失楽園】。(この作品が表題作になったことに、ちょっと違和感があります…)

    目の前でターゲットを何者かに殺され、緊張関係にある英国軍人の監視下に置かれるという状況で、見事に事態を打開してみせたD機関スパイが、最後に意外すぎる決断をする【暗号名ケルベロス】。

    今回も、大満足の一冊でございました〜(^人^)ご馳走様でした!


    ◎誤算…ドイツの占領下に置かれた、フランス・パリ郊外。過激な反ナチ発言で捕らえられた老婆を助けようとした日本人青年が、ドイツ兵から逃げようとした際に頭を打って記憶障害になってしまう。彼を助けたレジスタンス達は、一般人とは思えぬ機転を次々と見せる青年を怪しむが、誰よりも混乱しているのは記憶を無くした当の本人。やがて、ドイツ兵の追及の手が伸びようとするが…。

    ◎失楽園…欧州の人間が極東に見出した楽園の地・シンガポール。彼の地に威風堂々と聳え立つ最高級ホテルで、事件は起こった。米海軍士官・マイケルが見初めた現地人の婚約者が、ホテルに滞在していた英国人殺害を認めたというのだ。彼女の無実を信じるマイケルは、独自の調査を開始するが…。

    ◎追跡…謎に包まれたD機関の元締め・結城中佐。彼に興味を持った英国タイムズ紙の記者プライスは、やがて彼の幼少期を知る人物との接触に成功する。果たして彼は「魔王」の人物像に肉薄することができるのか?

    ◎暗号名ケルベロス…日米間を繋ぐ太平洋航路を航行中の豪華客船・朱鷺丸。多くの民間人に混じって乗船したドイツ軍関係者の存在に、船長以下船員達は不安を覚えていた。そして、彼等の不安は的中し、ドイツと交戦しているイギリスの軍艦が朱鷺丸の前に立ちはだかった!その頃、朱鷺丸船内では、一人のアメリカ人紳士が何者かに毒殺されていた!

  • 文庫化をすっかり忘れていて、慌てて手に取った『ジョーカー・ゲーム』シリーズ第3作。

    今回の短編はどれも、舞台に国際性がさらに加わって、厳しくも華やかな雰囲気がたちのぼる。ナチスとの戦端が開かれ、総力戦へとなだれ込む欧州や、国際紛争のエアポケットとなるシンガポール、いまだ中立のはずの太平洋上。どのエピソードも、わずかな時間や空間の中でのものだろうが、その短さを感じさせないほど張りつめて美しい。読んでいる最中の感覚は、自分の真正面で行われるクローズアップマジックを、じいっと息を詰めて見ている感覚に似ている。

    私がこのシリーズを好きなのは、各登場人物に過剰なキャラを求めず、文章と作品の描く世界から漂う空気だけですべてが出来上がっているからだと思う。D機関の「魔王」、結城中佐という強烈すぎるキャラがあるといえばあるのだけれど、彼の実像はあってないようなものだし、彼が選び抜いた配下のスパイたちにも、実像は求められていないというドライさがいい。個人的には、彼らのその実像の見えなさを使った『誤算』『追跡』が好み。

    勝手な想像だけれど、D機関のスパイたちは百戦錬磨というものの、いくつかの任務を終えたのち、結城中佐のもと、ひいては軍から去っていくのだろう。D機関に「死ぬな、殺すな」のモットーがあるから生き残るというのではなくて、おそらくは自分なりの立ち位置を見つけて、負けない形で軽やかにゲームから下りていくのだろう。どの短編の締めかたにもその感覚はあるんだけれど、『暗号名ケルベロス』の幕切れでは特にそう思った。

    第1巻を読んだときの高揚感が蘇ってきて、思わずイッキ読みしそうなところを、もったいなくてブレーキをかけつつ読み終わった。あー、やっぱり国際謀略ミステリはいいなあ!大野雄二や菊地成孔といった、派手やかなホーンの鳴る音楽と一緒に楽しみたくなる短編集でした。

  • 今回は個人的には、今までの「小気味いい」部分がだいぶ減っちゃったかなあ、という感じでした。
    時代も、前回で真珠湾攻撃が起こっていよいよか!と思ったら、どうやらちょっと戻った?
    それにしても、ちょくちょく出てくるD機関のメンバーに選ばれるための試験(階段の数とか)。あんなの、現実に答えられる人ってホントーにいるのだろうか……。ごく少数だけど、いるんだろうなあ。

  • 面白かった。
    他人の考えを影で本人にも気付かれないように操るスパイ。
    追跡者の話もドキドキ。
    最後の「ケルベロス」、内海のその後が気になります。

  • 1940年、ドイツが火蓋を切った第2次世界大戦の最中に、どいつ寄りではあったが中立国としての大日本帝国陸軍D機関として活動するエージェント。英国MI6諜報員が結城中佐の謎を解き明かすか? と思われた短編を含む5つの物語。もし、日本軍部が諜報戦を重要視していたら、そしてD機関がが最大限に機能していたら、世界の歴史は変わっていたかも知れない、と思わせるフィクション。

  • シリーズ第3弾
    安定の面白さ
    結城中佐は、ほとんど登場せず

  • 「追跡」が一番好きかな。
    一体、どこまで想定して色々な布石を打っているのか。それが魔王たるゆえんか。
    踊っているのか、躍らされているのか。

  • 大戦中、日本帝国軍内に秘密裏に存在したスパイ養成機関通称D機関。
    そこに所属するスパイ達を軸として、あるいは狂言回しに据えて語られる連作集第三弾。
    今巻のテーマは「選択」と「岐路」と「決断」。
    時間が進み第二次世界大戦の狼煙火が大きくなったせいか、今巻登場するスパイ達には、既刊とは一味違う印象を抱いた。
    顕著なのは「追跡」と「暗号名ケルベロス」。
    基本的に自らの頭脳のみを恃みとする自負心の塊であるD機関スパイの価値観はブレず、「誤算」のようにその先見の明で祖国の敗戦を見通しながらも任務に従事し続けるのだが、「追跡」と「ケルベロス」のラストでは、スパイのもう一つの人生が示唆されている。いわばスパイを降りたスパイの人生……スパイの余生だ。
    あるものは己の負けと衰えを自覚し、あるものは己が引き受けた責任を果たす為、スパイとしての人生に見切りをつけるのだが、彼等が新しい人生に示す決意表明が潔く爽やか。
    特に「ケルベロス」は結末だけ見ればバッドエンドなのに登場人物が覚悟を貫き通す読後感が清々しく、ハッピーエンドに見えてくるのが不思議。
    「標的の目に世界がどう見えているのか、常に意識するのは当然」
    これは作中の内海の言葉だが、ならば表題作のラストにおける奇妙な爽快感は、読者が内海と視点を共有しあたかも彼の目を通しカモメ舞う船上の青空を見ているからか。
    そして事実、これから坂道を転がり落ちるかのように戦争の泥沼に沈んでいく日本軍の歴史を知る者にとっては、リタイアしたものこそ正しかったのではないか、幸せな余生を選び取ったのではないかという感慨も滲む。
    内海が言う責任とはノブレス・オブリージュの亜種、貴きものが負いし義務改め優れたものが負いし義務。謎を解く行為に取り憑かれた人間の業深さ、義務を蔑ろにし戦果のみを求めた人間の滑稽さが招いた皮肉な結末が心に残った。
    また、概ね高評価の中で低評価をつけている人の理由も理解はできる。
    「人である前にスパイであれ」なD機関に非人間的完璧さを求めて読んだら、今巻では「スパイである前に人である」また「スパイから人に戻った」諜報員の在り方や人間味がフィーチャされ、物足りなさを感じたという所か。
    しかし徹底した個人能力主義であるD機関において、結城中佐は各自の選択を否定せず、個々の判断を尊重するに違いない。それが原因で有能な人材を失う事になっても、だ。
    スパイの賞味期限は自らの能力の限界を悟った時、守るべきものを託されてその責任を引き継いだ時。
    最新刊では戦況とスパイの変化を感じ取ったが、結城中佐の一切ブレない圧倒的な存在感は健在。
    「追跡」では英国のスパイが結城中佐の生い立ちに迫るのだが、その素顔は暴けなくても、老人の口から語られる結城中佐の輪郭がより濃くなるような終盤のエピソードが心憎い。

  • 後半に読み進めるほど、読むペースが遅くなっていった三冊目。
    一流と二流以下の違いや、スパイの止め時、引きどころという点が多く語られたような気がした。

    結城中佐に関しては言うことがない。
    生まれた時から魔王か。

  • 信頼。友情。仲間。祖国解放。多くの人が喜んでその言葉のために命を投げ出す。戦争の時代を彩る、唯一の希望のように。
    けれど“D機関”の男たちにとっては、そんな甘美な夢さえ無用の長物に過ぎない。彼らの至上任務は、生き延びること。生きて帰って報告することなのだから……『誤算』のほか、シンガポール、ラッフルズ・ホテルで起きた殺人事件。その真犯人を探すキャンベルだが、その推理は何者かのコントロールによるものなのか。日本軍が侵攻する直前の楽園を描く『失楽園』。
    イギリス人新聞記者・プライスが結城中佐の過去と正体を探る『追跡』。
    サンフランシスコを出航し、日本へと向かう豪華客船《朱鷺丸》の船上で起きた殺人事件。殺されたのは英国諜報機関に雇われた暗号の専門家“教授”。時を同じくして、船内のドイツ人乗客の拘束を目的に、《朱鷺丸》に迫る英国軍艦。“教授”を殺した犯人を探る『暗号名ケルベロス前篇・後篇』

    “D機関”の活躍は前にも増して華やかさがある。所詮は誤算も計算のうち。ミスリードも大いに結構。という化け物の化け物たる所以と本領発揮。機関員に課せられた使命と、その徹底ぶりも改めて認識させてくれるが、エンターティメント性はシリーズ中随一かもしれない。シリーズ第三巻。

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