モルフェウスの領域 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008300

作品紹介・あらすじ

日比野涼子は未来医学探究センターで、「コールドスリープ」技術により眠りにつく少年の生命維持を担当している。少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始する……。

感想・レビュー・書評

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  • 最新の医療技術は誰のためにある? 最先端医療ミステリー!

    日比野涼子は未来医学探究センターで、「コールドスリープ」技術により眠りにつく少年の生命維持を担当している。少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始する……。

  • コールドスリープ技術を巡る医療と政治のドラマ。二部構成の前半は話の筋書きは単純だが、表現が難しくて少し退屈していまう。一方、後半は氏の作品ておなじみのキャラクターが出てきて俄然読みやすくなる。コールドスリープという未来を感じさせる題材、お得意の政治批判、凍眠八則等の難解な筋書きで物語に深みが増す本書。ただ、アツシの両親が親権を放棄する理由かイマイチ不明確ではあるが話の御都合上仕方がないところか。あと、涼子が引き続きコールドスリープに入る事でアツシを救う意味や、スリープ時間を5年に設定するところに今一つ納得出来ない。

  • 久々の海堂作品は、やっぱり面白かった。

    今回は、「医療」というよりは、むしろ倫理的な一面、法律の矛盾との真っ向勝負とか、そんな印象。
    この小説の鍵となっている、涼子とモルフェウスの最大の敵であり、壁である「凍眠八則」を論じた本人の、ステルスシンイチロウ、曽根崎教授の一文。

    「スリーパーをひとりぼっちにしてはならない」

    を核として進むこの物語は、終始涼子のモルフェウスへの無償の愛が包み込み、女性の母性の強さを感じる。

    ひとりの女性として、感じるものがあったようにも思うし、共感するところもあった。
    なによりも、予想がつくけどつかない展開に緩やかだけど穏やかじゃないスリルを感じて、気が抜けない、海堂ワールドがこの作品にもあって、とても楽しめた。
    全ての作品が繋がっているから、登場人物に馴染みがあったりして、楽しいような疲れるような。
    でもやっぱり惹かれてしまう海堂ワールド。
    続編「アクアマリンの神殿」も、他の作品も楽しみだ。

  • バチスタシリーズ外伝。
    いや、正式にはナイチンゲールの沈黙外伝なのか。
    でも、ここまでくるとSFの世界ですね。
    ハインライン的な。
    こういう新領域医療に関するこの国の対応の悪さっていうのを指摘する、という本筋は分かるのだけど、今までのものと比べて圧倒的にリアリティに欠けているのではないかと。

    ナイチンゲール同様、少年に肩入れするおねいさんが活躍するのは、作者がおねいさん好き、なんですかね。

    いや、私こういうキャスティング好きなのでよいのですけど。

  • 913.6/カ  2023.9末までカウンター前コーナー架配

  • テーマに既視感があったが、それは小説ブラックジャックだったわ。こちらの方が論理的だったけど。私にとっての初桜宮。

  • 未来医療を考えさせられる。

  • 人工凍眠をテーマにした医療ミステリー。安定のおもしろさ。


  • 「バチスタシリーズ」2作目
    「ナイチンゲールの沈黙」のスピンオフ的作品

    本作に続く
    「アクアマリンの神殿」の前編ですな

    桜宮サーガシリーズの中で
    唯一の、医療SF作品となっている




    5歳の時、レティノプラストーマのため
    右目を摘出手術したが
    その後、残された左目にも発症した
    佐々木アツシ


    特効薬の承認を待つため
    桜宮市にある
    未来医学探究センター
    (通称 コールドスリープセンター)で
    5年間の凍眠に入った


    コールドスリープセンターに住み込み
    東城大学医学部から委託された
    資料の翻訳、整理と
    コールドスリープ被験者の管理を任された
    日比野涼子


    父親の仕事の都合で
    幼い頃から、世界各国を廻っていたため
    語学堪能

    アフリカのノルガ共和国滞在時に
    知り合った、本名不詳の日本人医務官から
    医学知識をレクチャーされていた


    コールドスリープ技術を開発した
    ヒプノス社の技術者である
    西野昌孝

    定期的に、コールドスリープセンターに訪れては
    装置の稼働チェックと
    眠りから覚めた、被験者の将来について
    問題提起をしていく


    コールドスリープが実施された際
    被験者の、個人的人権について
    提唱された「凍眠八則」の欠点に気がついた涼子は

    提唱者である、曾根崎伸一郎とコンタクトをとる中で

    被験者の将来を守るために
    涼子がとった行動は
    驚くべき方法だった


    「凍眠八則」を提唱したのが
    社会学者でも、医療関係者でもなく
    ゲーム理論学者というところがポイントとなっている

    国内の有識者が、議論を挑んだ
    天才ゲーム理論学者、曾根崎伸一郎は

    確か、「マドンナ・ヴェルデ」で初登場してたはず

    ココでの登場の仕方が
    微妙に、不自然だなーと
    違和感を感じてたが

    そもそも本作が
    「ナイチンゲールの沈黙」と
    「医学のたまご」に登場していた
    佐々木アツシの年齢矛盾の
    辻褄合わせに作られた作品だったと
    あとがきを読んで、納得 


    5年という期間
    1日も欠かさず、コールドスリープ管理をしている涼子が
    一度も、会話を交わしたこともない
    被験者であるアツシに対して

    母親のような感情を抱いていく
    気持ちの揺れ動きも
    丁寧に描かれている

    スリープ期間内は
    市民権を停止させられるという
    「凍眠八則」から

    目醒めた後のアツシの人生を

    自分の人生以上に考え
    試行錯誤していく姿は
    実の母親以上の感情だろう



    本作は
    「チームバチスタの栄光」から
    10年後の設定のため

    東城大メンバーの立ち位置も
    それぞれ出世しているのが楽しい


    その他にも
    涼子の直属上司である、八神が
    厚労省から天下ってたり

    涼子が、中学生の時に
    ノルガ共和国で、医療知識をレクチャーされた
    本名不詳の日本人医務官が

    「ブラックペアン」で
    行方知れずになった、海渡だったりと

    これぞ、桜宮サーガといったところだね



    医療と、近未来SFの合体版という
    大好物なジャンルで
    海堂作品で味わえるのは
    個人的には、非常に贅沢だったなー





    #モルフェウスの領域
    #海堂尊
    #コールドスリープ
    #レティノプラストーマ
    #桜宮サーガ
    #読書好き
    #ブクログ

  • 「悪意は無能と同居する」という言い回しがすごかった。
    人を守る法律が人を縛るものにもなりうるというのは非常に興味深い一言だった。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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