死刑 (角川文庫)

著者 : 森達也
  • 角川書店 (2013年5月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008812

作品紹介・あらすじ

賛成か反対かという二者択一ばかりが語られ、知っているようでほとんどの人が知らない制度、「死刑」。生きていてはいけない人っているのだろうか?論理だけでなく情緒の領域にまで踏み込んだ類書なきルポ。

死刑 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 2010年8月27日。法務省は時の法相の意向を受けて、小菅の
    東京拘置所の刑場をマスコミに公開した。

    日本で初めての公開と報道されたので、私もそうなんだろうと
    思っていたが本書によると以前にも刑場の様子は公開されて
    いたそうだ。

    2010年の公開にしても、勿論、取材出来たのは大手メディア
    だけ。公開されたのは一部分だけなので完全公開とはならな
    かった。

    日本での極刑である死刑制度。賛成か反対か。それぞれが
    意見を持っているであろうことなのに、詳細については厚い
    ベールに包まれていて、あまりにも知らないことが多い。

    本書は3年の月日を費やした死刑を巡る旅である。処罰なのか、
    それとも国が代行する復讐なのか。

    元死刑囚、執行に立ち会ったことある元刑務官、死刑囚と一時を
    過ごす教誨師、被害者遺族、元検察官、死刑制度廃止を訴える
    国会議員、そして死刑確定囚。

    存置か廃止か。取材を続ける著者はさまよう。同じ被害者遺族でも
    加害者の極刑を強く望む人もいれば、減刑を求める人もいる。

    何故、死刑が必要なのか。死刑には犯罪抑止力があるからとは
    長年言われ続けているが、そんなのは方便。抑止力があるのなら、
    死刑判決を受けるような犯罪は既に起きないはずだもの。

    法務省が隠したいからなのだろう。私たちは死刑があることは
    知っているが、死刑についてはあまりにも知らない。本書では
    執行に立ち会った元刑務官の話等で、少しはその実態を知り、
    考えることが出来る。

    存置か、廃止か。多分、明解な答えは出ないのだと思う。だが、
    本書を読んで考えることは出来る。

    単行本刊行当時、本書には長い副題がついていた。

    人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う。

    奪われていい命はない。命の重さに区別はない。しかし、それは
    理想論だ。分かっている。でもやはり、命は命なのだと思う。それ
    は他の命で購えるものではないし、ましてや金銭に置き換える
    ことなんて出来ない。

    裁判員制度が導入されて、死刑判決が増えている。被害者感情
    への共鳴の表れなのかもしれない。自分がいつ裁判員になるか
    分からぬ今、死刑制度についても考えなくちゃいけないね。

  • 著者は本書のなかで死刑に対する自身の立場を明確にしている。私自身はその立場に与するものではないが、本書の内容は非常に説得力があった。その理由は、論理と情緒を明確に分けて議論し、制度の本質に正面から対峙しているからだと思う。

  • 死刑を取り巻く人々に、踏み込みつつ、一歩離れて戸惑う感じが胸にフィットする。

  • 死刑は必要?不要?
    難しい問題。

  • 死刑、賛成ですか?反対ですか?

  • いろんな立場の人がいて、いろんな考え方がある。もっともっといろんな人の考えを聞きたい。

  • わたしもひとが好きで、ひとと話すのがすきだから。きっと死刑囚と会って話をしたら、彼と同じ気持ちになる。

  • 著者の迷いや揺れを隠さない姿勢には強く共感した。死刑は理論では割り切れない、結論付けられないという見方も正しいと感じた。
    けれど、だから情緒を判断基準とするというところには飛躍を感じ戸惑った。
    そして、死刑確定囚と会えばきっと死んでほしくないと思うはずだ、どんな人であっても会い言葉を交わした人には死んでほしくないというのは人間の本能だ、という跳躍にはぼくはついていけなかった。
    今まで死刑にまつわる本を何冊か読んでいるけれど、著者とは逆に、存置に傾いた自分を発見した。

  • 死刑制度に関して、政治家、被害者遺族、弁護人、同じ死刑を追うルポライター、漫画家、検察官、刑務官、教戒師――そして死刑について追う著者自身の変化を一個の素材として見ていくのに面白い一冊。状況の整理としてよりも、現在の制度の状態を当事者は、関係者は、どう見ているのかに優か。状況整理ならば『丕緒の鳥』(小野不由美、新潮文庫)収録の「落照の獄」か。
    著者の結論がどうであれ、自分の頭で考えなければ答えが出ないだろう問題であるので、著者の偏差を少しだけ気にして読めば良い。
    死者は死んでいるのだから、生きている人間に向けて偏るのは仕方のないことか。その偏りを歪みとするのか是とするのかは受取手次第といったところ。やや論理面で欠ける――情緒を是とするのか。生命刑を論点にするには避けられない問題も絡む。

  • 親族を殺された人間は、殺した人間と「同じ空気を吸いたくない。」しかし、著者も読者の殆ども、その気持ちは想像するしかない。今8割に及ぶとされる死刑存置派の多くはまた、「自分の親族がもし殺されたなら」という仮定に基づいて存置を求めているものだろう。理解ではなく、想像。理論ではなく、情緒。
    本書の価値はその存置を求める人々があえて眼を向けないもう一方の可能性、つまり「自分の親族がもし人を殺め、死刑判決を受けたら」どうなるのか、について出来る限り多角的に迫っている点にあるだろう。もちろん冤罪もあるから必ずしも人を殺めなくても死刑になる場合もある。
    両方の可能性に眼を向けてみれば、著者ならずとも人は逡巡するだろう。少なくとも8割という一方的な数字になるとは考えづらい。

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