死神のキスは癖になる (角川ルビー文庫)

著者 :
制作 : 桜城 やや 
  • 角川書店
3.17
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本棚登録 : 45
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041008935

作品紹介・あらすじ

絶体絶命の事故から九死に一生を得た恩田の元に、自らを死神と名乗る男・紫が現れる。「あなたの寿命は尽きています」と告げた紫は、恩田から魂を回収するためだと言ってキスを迫ってくるが…。

感想・レビュー・書評

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  • 【観点別評価】文体☆4、設定☆2、作品としての質☆3、個人的嗜好☆4

    【総合評価】ご都合主義な部分が目につくが、中盤以降からラスト手前までが胸に迫る。☆3

     成宮さんの文体が個人的にとても好きだというのがまずある。一人称BL小説はあまり得意ではないのだけれど(心がバリタチなので、攻一人称なら攻と同じテンションで受さんを美味しくいただけるが、受一人称だとテンションを何処に持って行けばよいのかわからなくなる)、成宮さんの作品だと受一人称でも攻一人称でもどちらもとてもしっくり馴染む。恐らく文体の湿度が低いせいだろう。語り手がどんなに萌え滾っていようと切なさに震えていようと、読んでいてべたつかない。そしてそんな「語り手が少し距離をおいて語っている」ところによりいっそう滾りや切なさを感じさせる点が本当に上手いし素晴らしいと思う。

     で、問題はこの作品。タタリに縁結びと、神様関係で連続リリースしている成宮さん。今作は人間×死神。前二作がコメディーだったので、今回も楽しく読めると思っていたが、出だしがどうも散漫。確かに秘書のくだりなんて笑うところなんだろうけど、なんだかユーモアセンスにもいつものキレがない。序盤を読んでいるときは、正直いって文体の勢いがないなあとがっかりした。
     しかし、最後まで読んで納得。語り手がこういうキャラクターでこれこれこうだからこの文体になっているんですね!!!(物凄いネタバレになるから伏せるけど)

     で、文体の話。完全な一人称の作品の場合、語り手のキャラクターに文体を合わせるのは重要であり意外と難しい。たとえば男盛りのゴリゴリのヤクザさん(攻)を語り手に据えながら文体がどっかの軟派な高校生みたいだったりするともう萎えるどころの騒ぎではない(以前別の作家さんでそういうのがもごもご)。その点、この作品に関しては、「恩田要」(人間・攻)という実は色々と細かい設定の存在するキャラクターに、このちょっと精彩を欠いた文体(褒めています)はぴたりとハマっている。それはもう本当に。
     その文体が本当の意味でハマりだすのは中盤以降。人間と死神という二つの相容れないもの同士が徐々に惹かれあい、それによって破滅の予感と哀愁が色濃くなり始めてから。なのでスロースターターの感は否めないが、二人の感情が互いへ向いてからは涙なしには読めなかった。

     突っ込みどころは非常に多い。設定が設定なだけにご都合主義な部分が目立つのも事実。紫(死神・受)の隠れた真実も、もう少し作り込んだ方が心に響いたと思うし、或いはページ数がもっとあれば同じ設定でもより効果的に処理できたんじゃないかなと感じなくもなかったが、やはりそこへ持って行くまでの情報の出し方というか暗示の重ね方が非常に上手い。この設定でこの結末で、それなのにこんなにも読者を泣かせるのは(といってもこんなに泣いたのはたぶん私だけだと思うけど)さすが。この辺は文体の力も大きいと思う。実際読んでいて、まさかのバッドエンド来るんじゃないかって思ったし、そしてそれでもいいかとも思った。トンデモ設定なのに正統派の悲恋物語へと展開していったもので。ラストは甘すぎる気もするが、ここで鬱エンドを持ってこられたら中原一也さんの『淫雨』ばりに心にずっしり残って引きずりそうな作品になったのは確実なので(『淫雨』大好きだけど鬱エンドすぎて再読できない)、これでよかったのかな。

     少し話は逸れるが、終盤付近を読んでいて、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を思い出した。私は「ハードボイルド・ワンダーランド」パート終盤で眼球が流出するんじゃないかと思うほど号泣した人間なので、あれを思い出して泣いたというのも少しあるように思う。もちろん設定も結末も違うのだが、語り手の姿勢や雰囲気が少しだけ似ているような気がした。というわけで、『世界の終り~』の「私」視点で泣いた方は泣けると思う。逆にあれで泣かなかった人は全く泣かないと思う。そんな勝手なことを考えたり。

     というわけで、作品としての完成度は前作の方が上なんですが、もう魂が浄化されるんじゃないかってくらい泣いたので何も気にならなくなってしまいました。あ、あと紫が可愛かったです……。

  • 作家さん買い。何事にも執着せず退屈に生きている恩田要と死神だと名のる男・紫。淡々と職務を全うしようとする紫と恩田の関わりが深くなっていくにつれて、恩田には紫への執着が紫は恩田への感情が表れてくる。世界観が面白くてラストの持っていき方とかウマイなぁと感じました。段々と紫が感情を表してくる様子が可愛くて楽しかった~(^^) しっかり練られているストーリー展開など、成宮さんの作品は相変わらずの上手さでした。

  • ☆運命的で人種なき恋愛模様☆


    作者があとがきに書いていた粗筋が好きです(笑)
    「お前は(本来なら)もう死んでいる」的なことを言われた側の主人公と、言った側の死神が、キスを重ねる度に心を通わせていくお話し。

    人生に退屈していた要が、クールな死神の紫に興味を覚えて惹かれていく様がものすごく自然で、二人が愛し合うようになるのにも違和感がなく運命的でうらやましくなるような恋愛模様がでした(^^)♪
    愛のあるエロがステキ!!(≧∇≦)

    成宮さんはハズレなく安心して読める作家さんの一人なので、今回も大満足 o(^▽^)o

    深いです!!

  • 恩田は父に経済人、母に国会議員をもつエリートで自身の会社も成功している、すべてに恵まれた男。自動車事故に遭っても奇跡的に九死に一生を得る。
     しかし、無事を祝っているパーティーの会場で「紫」と名乗る謎の美形男性が現れて、自分は死神で、事故死しなかった恩田の魂を回収するためにきた、と告げる。期限内に肉体的に死が訪れなかったり、紫の事を他言したりなど規則を破ると強制回収~つまりキス~をするという。最初は全く信じなかった恩田だが、紫を死神と認めざる得なくなり、紫は恩田のいく先々について回る。しかし、何故かいくらキスしても魂が回収できない~

     そこそこ。設定がいろいろあるけれどちょっと都合良すぎる部分もあるかな。ストーリーも先が読めてしまう感もあり。。。
     キスも、もっとエロっぽいの希望~σ(^◇^;) もう少し。がんがんキスするんだからww
     いろいろなシュチエーション読みたいかな?
     小説の中で、少し無駄だなあと思う部分もチラホラある気もする。。。 
     
     でもわざわざエーゲ海の海岸まで連れ出したり、海辺でずっと待っていたりとこの辺りは結構好きです。ロマンチック。丁度、ヨーロッパ映画のワンシーンの様な気も。光景がうまく伝わってきますね。上手なのだとおもいます。

     最後ハッピーエンドだけれど、悲しい方向で終わるのもいいかなと思ったかな。ちょうどファンタジックに人魚姫的な。。。行き過ぎかな(^^;)
     雰囲気好きです。またこの作家さん読もうかな。  

  • ものすごい書き込みというか設定が練られているな~と感じましたね。なかなか世界に入っていくというか理解するのに時間がかかってしまったっていうのは、ルビー文庫では珍しいことですが、中盤あたりから紫が段々と感情というかそういうものを感じていって、 面白くなって行きました。ラストの実は恩田は・・・っていうオチもすごいですね。

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