千年ジュリエット (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
4.04
  • (81)
  • (113)
  • (64)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 946
レビュー : 93
  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041010808

作品紹介・あらすじ

文化祭の季節がやってきた! 吹奏楽部の元気少女チカと、残念系美少年のハルタも準備に忙しい毎日。そんな中、変わった風貌の美女が高校に現れる。しかも、ハルタとチカの憧れの先生と何やら親しげで……。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ハルチカの前にハルチカは無く、ハルチカの後にハルチカは無い。

    まあ、究極的に言えばどんな作品だってそうなんですが、でも初野晴さんの作品、特にハルチカシリーズに関しては、さらに強くそう思ってしまいます。

    文化祭を舞台にした短編が4編収録されたシリーズの4巻目。ハルチカシリーズを読むのは久々で、すっとキャラたちに入り込めるかな、と思ったのですが、その心配は完全に無用でした(笑)

    元気少女チカのユーモア溢れる語り口に、ハルをはじめとした個性的なキャラの数々。ああ、この感じだったなあ、とあっという間にハルチカの世界に手を引かれたように思います。

    文化祭で起こる事件もバラエティー豊か。突然体育館に現われたピアニカを吹く女性の謎と、彼女の祖父の遺産の謎を解く「エデンの谷」
    文化祭での演奏時間が迫る中、タクシーで高校まで乗り付けたのに、その場でUターンしてしまった高校生の目的を推理する「失踪ヘビーロッカー」

    行方をくらました演劇部の脚本家に変わり、劇の結末を推理する「決闘戯曲」
    そして、ある決意を持ってハルチカの高校の文化祭にやって来た人物を描く表題作「千年ジュリエット」

    短編集で全ての短編が面白いと思うことはあっても、全てが後になっても思い出せるというのは決して多くはありません。でも今のところは、全て思い出せます(笑)改めてこの短編集の質の高さ、そしてインパクトの強さを感じます。

    ハルチカ、および初野さんの作品の特徴は、ファンタジー要素が強かったり、あるいはマンガのようなキャラたちの掛け合い、あるいはギャグ的な要素がある一方で、突飛で奇抜な謎を持ってきたり、あるいはシリアスな要素を違和感なく、物語に溶け込ませるところだと思います。

    「エデンの谷」はそんなキャラのかけあいや行動に笑わせられる反面で、その内容の厳しさに考えさせられます。シリーズとしても、あるキャラクターの転換点にもなりそうな話で、そうした面白さもあり、またオチで二度笑わせられる。なんだか、感情の起伏が激しくなる短編でした。

    「失踪ヘビーロッカー」は展開が楽しかった! タクシー運転手の視点、到着を待つチカたちの視点、それが交差し、そして徐々に演奏時間が迫ってくるというタイムリミットサスペンスの側面もあって、緊迫感があります。そして一方でドタバタコメディを見ているような面白さも併せ持ちます。
    さらに青春らしい熱い展開も挟まれたりと、これもハルチカでしか書けなさそうな短編。

    「決闘戯曲」では「退出ゲーム」でも登場した濃い演劇部の面々とハルチカのやり取りももちろん面白いのだけど、謎の設定もそれに負けずに魅力的。右目が見えず、左手を使えない状況の登場人物がなぜ、拳銃を撃ち合う決闘で勝利できたのか?

    結末のない脚本から、書き手の伏線や目的を読み取りたどり着いた結末。この推理の過程も面白いし、劇の種明かしはまさに知恵の勝利という感じがします。

    そして表題作の「千年ジュリエット」
    文化祭最終日の様子が描かれる一方で、合間に挟まれる回想は、あまりにも切なく儚い……。どこかの病院で5人が始めたネットでの恋愛相談の顛末は、読者である自分にも生きることや、命の意味を考えさせられます。

    そして明らかになる真実とともに、押し寄せる感動。喪われたものと、確かに繋がれたもの。それを彩る最後の光景とチカのセリフ。そして勇気をもって文化祭に訪れた人物の決意。

    マンガのようなキャラクターたちのユーモア・ライトミステリかと思いきや、予測のつかない謎や、思いがけない真実があり、そしてそんなユーモアとシリアス、そして感動を違和感なく両立させられる。ハルチカのハルチカたるゆえんは、そこだと思うのです。

    久々に読んだこともあってか、ハルチカここまで面白い作品だったか、とビックリしてしまいました。シリーズの中で時間の経過は描かれているので、ハルチカたちもいつかは卒業するのだろうけど、できるだけ長く高校生でいてほしいなあ、とも思ってしまいます。

  • ハルチカシリーズ4作目。

    チカちゃんて、スゴイ。今まで、フツーとか思っててごめん。いや、一生懸命なところは可愛いしがんばれって思ってたけど、チカちゃん、実は天然にスゴイ子だったんだ。

    吹奏楽部のメイン活動は休止して、文化祭にまつわるお話たち。個人的に好きなのは、演劇の脚本のエンドがないまま、脚本家が失踪してしまった「決闘戯曲」。当日になって、どういうエンドだったのかを探るお話です。それが、脚本の中で語られるミステリーを解決する種明かし部分なので、上演するためには、なんとか解くしかないわけです。謎自体は、物語と思えばコロンブスの卵的結末だけど、命のかかった決闘と思えばその知恵と機転の切れ味に唸ることになる。

    日常系ミステリーといえど謎を解くわけなので、どうしても探偵役やその周囲には、理屈っぽさとか説明くささがついて回ることになりかねないのですが、このシリーズでは、ごくごくフツーの女子高生チカちゃんがいい意味でバカを入れていて、頭でっかちになりがちな部分を緩めていると思います。

    チカちゃんはそういう役目なんだと思っていました。

    が、この1冊のラストの1篇、そのまたラストでガツンとやられました。

    「黒玉でもいいじゃん、打ち上げられなかったらただの玉」

    若くって、楽天的であまり物事を深く考えるタチじゃないからこそのセリフかもしれない(むしろそうなんだろうと思う)。でも、特にこれといった問題のない環境で健康に育ってきたとしても、ナチュラルにそう思って、失敗恐れずに前向いて歩ける人ばかりじゃないよね。ハルタなんかも、私にはまだ奥は見えてこないのだけれど、チカちゃんのそういう部分が眩しく思えることってあるんじゃないかなって思う。それで救われるか、苦々しく思うことになるのかは、受け止める側次第。

    ハルチカは引き気味で、吹奏楽部の外の人たちのお話ばかりですが、どれも「一歩前へ踏み出す」物語に思えます。青春だ。だけど、それが必要なのは、現在進行形で「青春」な人ばかりではないと思う。

  • 2019/10/3~10/5

    清水南高校、文化祭間近。晴れの舞台を前に、吹奏楽部の元気少女・穂村チカと、残念系美少年の上条ハルタも、練習に力が入る。そんな中、チカとハルタの憧れのひと、草壁先生に女性の来客が。奇抜な恰好だが音楽センスは抜群な彼女と、先生が共有する謎とは?(「エデンの谷」)ほか、文化祭で巻き起こる、笑って泣ける事件の数々。頭脳派ハルタと行動派チカは謎を解けるのか?青春ミステリの必読書、“ハルチカ”シリーズ第4弾!

  • ハルチカシリーズ、どういうところが一番好き?って言われれば、パッと浮かぶのは『タイトル』
    このシリーズ、タイトルが全てすき。
    とくにこの『千年ジュリエット』この響きだけで何だか切なくて泣きそうになる。いつも重たい謎が渦巻いているけれど、『千年ジュリエット』は胸が締め付けられた。それでも切ない、悲しいで終わらないのが、このハルチカシリーズ。今回もちゃんと笑顔になれるラストでした。

  • ハルチカシリーズ4作目でページ数が増量
    今回は文化祭

    日野原会長の手腕は校外まで及ぶのねぇ……

    障害を抱えた音楽家というのは、一般大衆に対してはまぁキャッチーな属性だよね
    辻井伸行も素晴らしい能力がある事は前提として、「盲目のピアニスト」という枕詞があるからこそここまで取り上げられたのではなかろうか
    では、そこそこの演奏技術を持っていてハンディキャップを抱えた音楽家なら?
    本人の自意識や周囲の評価基準のギャップがあるんだったら、やはり本人としては辛いものがあるんだろうなぁ
    ま、それでも辞められない魅力というのが音楽にはあるんだろうけどね

    それはそうと、鍵盤ハーモニカが学校教育に採用されている理由
    まぁ、学習指導要領に書かれてあるからという身も蓋もない結論でなしに考えると
    簡単に音階を奏でられて安くて丈夫だからかな?
    これはリコーダーにも言えるけど、プラスチック製ってのが大部分の理由なのではなかろうか?



    鍵のメッセージはウケた
    大層な仕掛けをしておきながらの肩透かし
    死して尚迷惑をかけるというね




    ロックのジャンルの違いが分からねぇ
    ヘビーメタルは様式美ってのは知ってるんだけど
    デスメタルとの違いは歌詞?パフォーマンス?
    ハードコアって何?
    その他にも、プログレだのオルタナだのと、既存のジャンルとの差別化しようとして結局何が何だかわかんなくなってる

    とりあえず、パンクは「生き方」というのはわかる(笑)



    右目左腕が使えない状態での決闘で勝つ方法

    演劇でってところがポイント
    つかこうへいって伏線がちゃんとはられてあるけど、今の若い人はアレを知らないんじゃないかなぁ~
    今度若い人に聞いてみよう
    ただまぁ5歩だと結構無理がないか?



    そして今回も最後は例のトリック
    これ系のトリックには僕は絶対に引っかかる自信がある
    何というか、描かれていないところは自分で勝手に辻褄が合うように設定を妄想してしまうからな

    それはそれとして、千年たっても残るものってそうそうない
    変容しつつ残るものはあるかもしれないけど、何かあるだろうか?

  • 4+

  • 文化祭パートということもあって、いつもの目的意識のある吹奏楽部とは違った、高校生の日常面が強調されている。短編の一つ一つに謂わゆる「捨て回」がなく、どの短編も濃密で切れ味鋭く、余韻も申し分ない。以前は、謎解きの手がかりが専門知識の有無が必要条件であったため、読み物としては面白くともそこが不満ではあったわけだが、今作の短編は手掛かりはちゃんと作中で提示されている。個人的に気に入ったのはやはり「千年ジュリエット」で、明かされた真相、重いテーマもさることながら、非常に細かな技法が作中に散りばめられていて、読み物として一番面白かった。前作から通じて会話のリズムやテンポがよく、キャラの性格に屈託がないのも魅力の一つ。高校生のプリミティブでイノセントな部分や、極端から極端に振れやすい性質がよく現れていて非常に面白かったです。

  • 「エデンの谷」で草壁先生の過去編?と思ったら、あとは文化祭メインのスピンオフっぽかった。
    「千年ジュリエット」はハルチカぽくない気がしたけど、こういう方が初野さんぽいような…?

  • <あらすじ>
    清水南高校、文化祭間近、晴れの舞台を前に、吹奏楽部の元気少女・穂村チカと、残念系美少年の上条ハルタも、練習に力が入る。そんな中、チカとハルタの憧れのひと、草壁先生に女性の来客が。奇抜な恰好だが音楽センスは抜群な彼女と、先生が共有する謎とは?(「エデンの谷」)ほか、文化祭で巻き起こる、笑って泣ける事件の数々。頭脳派ハルタと行動派チカは謎を解けるのか?青春ミステリの必読書、“ハルチカ”シリーズ第4弾!
    待ってました。ハルチカ第4弾。
    スナフキンといい、アメ民部長といい、またまたいいキャラが出てきた。
    ただ、当初と比べると、チカちゃんとハルチカの掛け合いが減って残念。

  • ハルチカシリーズ第4弾。大会が終わっての文化祭前後だけに絞った4つのお話。3巻がいまいちだったけど、今回はみんな面白かった。特に「決闘戯曲」。作中作といわれる作りだけど、その作中作が本当に面白い。これを演劇で見れたらほんとに面白いだろう。高校時代の演劇部を思い出す。やっぱ劇って面白いよな。あの頃のわが母校の劇をまた見たいものだ。「失踪ヘビーロッカー」も今思うとタイトルにも絡んでるんだな。優等生がハードロックをやっている、というシチュエーションにも好感が持てる。

全93件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

初野晴の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
三浦しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

千年ジュリエット (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×