千年ジュリエット (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 801
レビュー : 86
  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041010808

作品紹介・あらすじ

文化祭の季節がやってきた! 吹奏楽部の元気少女チカと、残念系美少年のハルタも準備に忙しい毎日。そんな中、変わった風貌の美女が高校に現れる。しかも、ハルタとチカの憧れの先生と何やら親しげで……。

感想・レビュー・書評

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  • ハルチカシリーズ4作目。

    チカちゃんて、スゴイ。今まで、フツーとか思っててごめん。いや、一生懸命なところは可愛いしがんばれって思ってたけど、チカちゃん、実は天然にスゴイ子だったんだ。

    吹奏楽部のメイン活動は休止して、文化祭にまつわるお話たち。個人的に好きなのは、演劇の脚本のエンドがないまま、脚本家が失踪してしまった「決闘戯曲」。当日になって、どういうエンドだったのかを探るお話です。それが、脚本の中で語られるミステリーを解決する種明かし部分なので、上演するためには、なんとか解くしかないわけです。謎自体は、物語と思えばコロンブスの卵的結末だけど、命のかかった決闘と思えばその知恵と機転の切れ味に唸ることになる。

    日常系ミステリーといえど謎を解くわけなので、どうしても探偵役やその周囲には、理屈っぽさとか説明くささがついて回ることになりかねないのですが、このシリーズでは、ごくごくフツーの女子高生チカちゃんがいい意味でバカを入れていて、頭でっかちになりがちな部分を緩めていると思います。

    チカちゃんはそういう役目なんだと思っていました。

    が、この1冊のラストの1篇、そのまたラストでガツンとやられました。

    「黒玉でもいいじゃん、打ち上げられなかったらただの玉」

    若くって、楽天的であまり物事を深く考えるタチじゃないからこそのセリフかもしれない(むしろそうなんだろうと思う)。でも、特にこれといった問題のない環境で健康に育ってきたとしても、ナチュラルにそう思って、失敗恐れずに前向いて歩ける人ばかりじゃないよね。ハルタなんかも、私にはまだ奥は見えてこないのだけれど、チカちゃんのそういう部分が眩しく思えることってあるんじゃないかなって思う。それで救われるか、苦々しく思うことになるのかは、受け止める側次第。

    ハルチカは引き気味で、吹奏楽部の外の人たちのお話ばかりですが、どれも「一歩前へ踏み出す」物語に思えます。青春だ。だけど、それが必要なのは、現在進行形で「青春」な人ばかりではないと思う。

  • ハルチカシリーズ、なにが一番好き?って言われれば、パッと浮かぶのは『タイトル』このシリーズ、タイトルが全てすき。とくにこの『千年ジュリエット』この響きだけで何だか切なくて泣きそうになる。いつも重たい謎が渦巻いているけれど、『千年ジュリエット』は胸が締め付けられたよ。でも切ない、悲しいで終わらないのがこのハルチカシリーズ。今回もちゃんと笑顔になれるラストでした。

  • ハルチカシリーズ第4弾。大会が終わっての文化祭前後だけに絞った4つのお話。3巻がいまいちだったけど、今回はみんな面白かった。特に「決闘戯曲」。作中作といわれる作りだけど、その作中作が本当に面白い。これを演劇で見れたらほんとに面白いだろう。高校時代の演劇部を思い出す。やっぱ劇って面白いよな。あの頃のわが母校の劇をまた見たいものだ。「失踪ヘビーロッカー」も今思うとタイトルにも絡んでるんだな。優等生がハードロックをやっている、というシチュエーションにも好感が持てる。

  • 本格×青春ミステリ! 先生の過去が明かされてよかった。 

  • 2018/8 7冊目(2018年通算120冊目)。これまでとは趣向を変え、第三者の視点から見た形で文化祭の物語が進んでいく。良かったのは「決闘戯曲」「千年ジュリエット」。「決闘戯曲」の方は、とても良くできていて「ハルチカ」シリーズではないと思えるほど。「千年ジュリエット」の語り手の正体についてはコロッと騙された。登場人物はいささか変な人たちが多いが、吹奏楽に青春をかける青春ものとしても、人の死なない日常ミステリーとしても面白い。残り2冊、読んでいきたいと思う。

  • もはや高校の吹奏楽部が舞台である必要性を感じない話の展開だけど、ミステリー中編集としての完成度は非常に高い。それぞれが完全に独自のテイストを織り込んでおり、初野氏の想像力に魅せられました。
    ただ、この先どこへ向かうのだろうという謎は残りました。

  • 「ハルチカ」シリーズです。
    当作は文化祭のお話なので、日野原会長とブラックリスト十傑の登場率が高いです。
    表紙は山中verで、これはマレンなのか?

    ◆エデンの谷
    芹澤さんが吹奏楽部に入部しています。
    まだ部に馴染んでいなくて、片桐部長とは衝突しています。
    片桐部長が一番芹澤さんを気に掛けているんだよね。
    チカちゃんは「芹澤さんともっと仲良くなりたーい☆」という感じです。
    最近は「芹澤さんラブ」じゃないか?
    成島さんとも仲良く喋るシーンが見てみたいわ。
    成島さんはマレンと一緒にいるイメージが強いです。

    草壁先生が師事していた先生の孫娘・真琴が登場します。
    二人のあまりの親密さに、ハルタは嫉妬の炎を燃やしています。

    山辺氏が残したピアノは価値のあるもので、真琴の父親が借金返済の為に売りに出そうとしていた。
    しかし、ピアノの鍵がなくて、「鍵の在り処は真琴に託した」と祖父は言っていた。
    真琴が祖父から譲り受けたものはピアニカのみ。
    分解しても特におかしなものはなかった。

    ピアノの鍵盤を真琴のピアニアに移していたので、ピアノの価値は下がっていました。
    「鍵をなくした」というのはワザとなのかも。

    真琴さんも音楽家としては致命的なハンデがありました。
    だからこそ、芹澤さんに厳しいことを言ったようです。

    頼もしい指導者が出来て、吹奏楽部としては環境が良くなりました。
    後に、ハルタの実家に真琴さんが居候するそうです。
    今以上に女性に幻滅してハルタが真性ゲイになったらどうするのよ。

    日野原会長とチカちゃんのやり取りが好きです。
    日野原会長は絶対にチカちゃんを気に入っていますよね。

    ◆失踪ヘビーロッカー
    タクシー運転手とチカちゃんの視点で物語が進行します。
    タクシー運転手の息子に関する話は、後の伏線になっています。

    タクシー運転手がロッカー少年を清水南高校まで届けることになった。
    見た目は派手だが礼儀正しい少年に、運転手は好感を抱く。
    しかし、何が原因なのかは分からないが、少年の態度が変わり、おかしな指示をしてきた。

    ロッカー少年はアメリカ民謡クラブの部長・甲田だった。
    甲田は「ブラックリスト十傑」の一人だが、誰からも信頼されている優等生でもある。

    文化祭の舞台に立つ時間が迫っているのに、甲田が到着していない。
    甲田は真面目なので、ステージに穴を空けるという無責任な真似をする筈がない。
    ハルチカはアメ民のメンバー・清春と共に、甲田の身を案じる。

    まさか、毒ヘビが紛れ込んでいたとは。
    文化祭の会場に毒ヘビが逃げないように、甲田さんが配慮していたようです。
    甲田さんはギリギリでステージに立てましたが、清春くんの出番はありませんでした。
    草壁先生の提案で、清春くんと他二年生のメンバーは仮で吹奏楽部に籍を置くことになります。
    清春くん達も来年の大会に参加するかもしれませんね。

    「甲田」や「清春」って、ロックな名前ですね。
    芹澤さんの空回り振りが憎めません。

    そして、安定の日野原イズム。
    ソファに座って「パフォーマンスで癒せ」という注文は何なのよ。

    ◆決闘戯曲
    演劇部と絡んでいます。
    演劇部の秘蔵っこが脚本を途中まで作った状態で失踪します。
    残された演劇部とハルチカが通し稽古をすることで、どんな結末になるかを推理します。

    片目と右手が不自由な男が決闘で勝つ方法は果たしてあるのか。
    脚本を書いた学生の先祖二人は、共に不利な条件で決闘に勝っていた。
    立会人が狡賢いんですよね。
    立会人達は共に、詐欺師だったり賭けの才能があったりします。
    大きな階段で決闘をすれば、条件によってはお互いに怪我を負うことなく勝てるというオチです。

    甲田さんによって東京Xにされたハルタや、演劇部のコ達にアメを配るチカちゃんにクスリとしました。
    名越は裸になりたがりなのか?
    赤フンやら前バリやら…。

    ◆千年ジュリエット
    この話だけは、トモちゃん視点で進行します。
    難病に罹った女性達が集まり、恋愛相談のサイトを立ち上げます。
    彼女達は恋愛経験が乏しいものの、だからこその独特な答えを返していました。
    それが好評で、次々と相談が寄せられます。

    トモちゃんはマレンに会う為、清水南高の文化祭に向かいます。
    途中で、トモちゃんは「ブラックリスト十傑」達に遭遇します。
    甲田さんに至っては、トモちゃんに一目惚れしてしまいます。
    朝霧はトモちゃんの正体に気付いたのかしら。
    名越は気付いていないようですが、マヤは感づいた様子です。

    トモちゃんの正体は、「失踪ヘビーロッカー」に登場していたタクシー運転手の息子でした。
    引きこもったのは性同一障害だからかな。
    オヤジさんは、どう接していいか分からないですよね。

    トモちゃんこと智之には、智子という幼馴染がいた。
    智子は難病に罹ってしまい入院する。
    それでも二人の交流は続いて、智子は病院内にウェブカメラを仕掛けることを提案する。
    カメラを通して、智之は恋愛相談の答えを考える女性達を眺めていた。

    「写真立てに花」と書いてあったので、「誰かは既に亡くなっている」と思っていましたが、それが智子だったのか。
    智子は以前、病院に慰問に来ていたマレンに恋をしていたので、智之は会いに行ったのでした。

    男の娘というオチですか。
    可愛いらしいけど、体に触れば分かるレベルなのね。
    制服にマフラーとレギンスという格好は普通はしないですよね。
    三年も引きこもっていれば髪のカットはしていなさそうなので、ウィッグの必要性が感じられません。

    タクシーの運転手に既視感があったのは、自分の父親だから。
    すぐに分からなかったのは、滅多に顔を合わせていなかったからでした。

    トモちゃんにはクラリネットの才能がありそうなので、来年に入学する可能性もあるのかな。

  • 最後には謎を解決してくれるけど、答えをズバッと言ってくれる訳じゃないんよね~w
    さくっと書いて、ほら分かるでしょ?みたいな。笑
    新しい。笑

  • ハルチカシリーズ第四作。再読。
    第四作とは書いてあるが、位置付けとしては番外編というか寄り道編というか。
    大会を終え、間もなく三年生が引退するという秋。文化祭の直前から文化祭当日の二日間に起きたあれこれ。
    顧問の草壁先生を良く知っているらしき演奏家の女性が持ち込んだ、楽器の鍵の行方の謎。
    ヘビメタバンド部長のライブ直前の逃走。
    演劇部が疲労する劇の未完の結末。
    そして末期患者たちで作ったジュリエットの秘書掲示板と、彼女たちの知人の秘密。
    ハルチカ、草壁先生の謎解きもあるが、そこは一歩引いて主役はバンドリーダーや演劇部や謎目いたトモちゃんに譲っている。
    やはり清水南高校はある意味天才たちの集まりだし、純粋で良い子たちの集まりだ。
    生徒会長・日野原が引退するのが寂しい。彼の後継者は大変だ。
    また新しいメンバーか増えそうで、そして頼もしい大人も増えそうで楽しみ。
    次も再読してみる。

  • エデンの谷の、おじいちゃんの最期の一言が笑える、いや、泣ける。
    最期にスナフキンに残した形見も。
    一作が単独で読めるけど、いろいろ繋がってるので、読み返して確認したりして。油断できない。
    色んなところで、繋がって、少しづつ進んでるカンジ。

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著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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