最近、空を見上げていない (角川文庫)

  • 角川書店
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本棚登録 : 751
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041010846

作品紹介・あらすじ

その書店員は、なぜ涙を流していたのだろう―。ときにうつむきがちになる日常から一歩ふみ出す勇気をくれる。本を愛する人へ贈る、珠玉の連作短編集。(単行本『赤いカンナではじまる』を再構成の上、改題)

感想・レビュー・書評

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  • ほんわか小説だねえ。書店員と出版社営業部員が主人公の話だが、気楽に気持ちよく読める本。「ほんわか、しんみりさせたるでえ」というのが見え見えだけれど、悪くはない。最後のザリガニの話はまあいいかな。

  • -最近、空を見上げていない-

    確かに。
    と思って、思わず借りてしまった本。

    最近ハマっているジャンル、お仕事小説で、
    出版社の営業マンのお話。

    今まで読んできたお仕事小説とはひと味違った感じで、リアルさを感じるのと、押し付けがましさがないタイプです。

    「普通すぎる日常」が描かれているから、というのが大きいと思います。

    主人公が実は凄い才能を持っていた、とか、会社の闇を暴く、とか、ライバルと切磋琢磨、とかそういうドラマチックなものではなくて。

    起承転結じゃなくて、承承承承。
    山場もどんでん返しもときめきもない。そこら辺に転がっている日常を切り取った感じです。

    なので、よりリアルさや共感、期待を感じることができるのかなと思います。

    作中に、「空」の描写が沢山出てくる訳ではありません。

    日中はPC画面を見つめ続け、やることに追われ、気づいたら暗くなっていてカーテンを閉めて1日終了。なかなか空を見る機会は少ないかもしれません。
    でも、ふとした時に見上げた空に着色があったり、空に対して何か感想を抱いた時、ほんのちょっとでもエネルギーチャージされることってないですか?
    夕焼け空だったら、あー自分割と頑張れてるなとか、雲間から青空見えたら、もうそろそろ状況もいい方向に行くんじゃないかとか……。空の表情に自分の心情が引っ張られることもあるんじゃないでしょうか。

    普通すぎる日常が、少しだけいいものに思えたりする。自分の今の仕事、今の生活、今の人間関係も悪くないものなのかもしれない、と、背中を押すまでとは言わないが、肩に手を添えてくれるような、ふとした時に少しだけ自分を肯定してくれる空みたいな本でした。

  • ■サマリー
    ・とある出版社に勤める男性を主人公としたお話。
    ・本は4つの短編集で構成されている。
    ・よくある手法だが4つの短編集は繋がっている。
    ・内容には山や谷はない。
    ・東野圭吾さんとかを好きな人には物足りないかも。
    ・読後はスーッと清らかな気持ちになる不思議な本。

    ■心に残った部分(解説含む)
    *******************
    いったい自分は、何がしたいんだろう。
    いつもそう思って生きてきた。
    大人になれば、やがて自分にもやりたいことが見えてくる。そう思っていた。
    でも、いまだに自分には、何も見えてこない。
    そんなものだろうか……。(最後の夏休み より)
    *******************

    *******************
    みんなそれぞれ辛かったり、悲しかったり、
    折れそうだったり、たまに苦労が報われたり、
    そうやって三歩進んで二歩下がる人生を送っている。
    そういう姿を読む度に、頑張っているのは自分一人ではないと知って、安心する。(解説文 より)
    *******************

  • 出版社の営業マンのちょっとしたエピソード。小さな出来事だけれども凄くワクワクします。最後はほろりとするオチがあり、スッキリします。大好き度❤️❤️

  • 電車での暇潰しにと思ったら意外に面白かった。買う決め手になったのは「本を自分で棚のなかから探す楽しみを放棄して~新聞の切り抜きか何か持ってきて『おい、これくれ』だもん」ってのと書店員といいうのは多くの場合、疲れているものだってとこでした(笑)分かる~書店員だと分かる~!!!!!あと出版社にもちょろりといた事があるので登場人物達の気持ちとか分かるなぁ~と。フランチャイズになってしまったので書店員の面白さは減少したけどこれ売りたいなぁって本が売れると嬉しいです。でも最近の有名書店員さんオススメみたいな風潮は嫌いです。出版社の怠慢だ!宣伝は自社で頭を捻って下さいと。書店員さんに聞いた今一番面白い本フェアとかさ、丸投げっぷりが頭きます(笑)書店員さんそんなに暇じゃないんだよー。アンケートとか面倒くせーんだよー。でも最近は本が好きだから書店員になったけど流通の面白さが分かってきたのでさらに仕事が面白くなった気がします。売れる本の予測を立てどのように売るか作戦を練り手配する。それが生き物のように動き(この場合は売れる)だした時快感だなーと思うのでした。

  • 書店や出版社に関わる人たちの連作短編集。主役は出版社・営業の作本さんなのかな。そういわれてみれば私も最近、空を見上げていないなと思い、そして本にかかわる小説だったので手にとってみました。
    表題作の『最近、空を見上げていない』と『美しい丘』が特に良かった。余談だけど、どの業界も社会で働いて自分で稼いで生きていくのは難しいなと思った。

  • 2013.12.4読了。

    そう言えば、最近、空を見上げていないなぁ、、、なんて私も思いました。
    出版社勤務の私には、良くも悪くも、だけど良い仕事じゃないか!と思えて楽しめた。
    「美しい丘」はたまりません。

    • greenflashさん
      美しい丘、同感です。力いっぱい共感します!
      美しい丘、同感です。力いっぱい共感します!
      2013/12/05
  •  本にまつわるお仕事小説は、ちょっと前に、大崎梢『平台がおまちかね』とか、碧野圭『書店ガール』シリーズとか、門井慶喜『おさがしの本は』などなど、立て続けに読んで、どれも「まあ面白いんだけどなぁ……」という感想を抱いて以来、少し遠ざかっていました。
     これらの本の頃は(今も継続中なのかもしれないですが)、ライトミステリーブームで、お店屋さんの店員がが日常の謎を解き明かすタイプのお話が圧倒的に多かった。
     で、お仕事小説としては面白いけどミステリーとしてはあと一歩かな、という評価をそのときはよくしていた気がします。

     ……前置きが長くなりました。

     変わったタイトルだなぁ、と思いつつ、本の厚みも程良いし隙間時間にちょいちょい読むつもりで朝、持ち出して……、
     結局、移動の電車の中と、出先でできたまとまった時間のうちに一気に読んでしまいました(笑)
     そのときちょうど心が弱り気味だったせいか、人情話にぐいぐいと引き込まれました。
     本に向き合う姿勢、人と向き合う姿勢、仕事に向き合う姿勢……、ほのぼのと心の温まるストーリーながら、自然と背筋が伸びます。
     シビアな面を削ぎ落とした、少しご都合主義なところもありますが、とても素敵なお仕事小説でした。

     一つ学んだことは、「社会人には成功の体験が必要」。

  • 目的の本を買いに書店に行くことも多いですが、時間があるときはゆっくり面白そうな本を探します。そういうときに参考になるのはタイトルだったり、ポップだったり、本のおいてある場所だったり、帯の惹句だったり。本を作る作家さんや編集さんだけではなく、営業さんや書店員さんのお陰で手に取ることになった作品も多々あります。どんなに良い本でも、誰かが手にしてくれないと売れない。口コミだって読んだ人がいて初めて広がっていくものだし、置き方や売り方を間違えればせっかくの本が存在も知られずに消えていく。重要なお仕事ですよね。
    仕事に関する描写も引き込まれますが、やはり中核は「本が媒介する物語」。文芸書担当の女性書店員の涙のわけは。特定の書店に自分の本をおいてほしいという著者の理由は?ある本に同級生を見つけて探し出そうとする青年、思い出の朗読。すべてに本が関わってきます。読んで、内容について語って、それで終わり。場合によっては人生を動かすくらいの作品に出会うこともあるけど、本の役割ってそれだけではないんだなと感激しました。そして各章のタイトルがまたいいのです。最初はこの物語のどこに関係してくるんだろう?と思うのですが、徐々に意味がわかってきて高揚のうちにラストを迎えるのです。気がついたら泣いていた、という読書は久しぶり。良い作品に出会えて感謝です。

  • 元書店員という立場(視点)でこの作品を読んだ。自分が担当をしている部門の棚や平台にはすごく愛情を込めて展開をしているので、担当を変わるとなるとすごくショックである。この作品を読んで少しでも書店の事がわかっていただければと思う。

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著者プロフィール

千葉県生まれ。商社、出版社勤務を経て作家に。二〇〇六年『サッカーボーイズ再会のグラウンド』でデビュー。「サッカーボーイズ」シリーズ、「海が見える家」シリーズの他に『帰宅部ボーイズ』『ようこそ、バー・ピノッキオへ』『会社員、夢を追う』『太陽と月サッカー・ドリーム』などの著書がある。

「2022年 『サッカーデイズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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