冥談 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2013年12月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (290ページ) / ISBN・EAN: 9784041011522

作品紹介・あらすじ

僕は小山内君に頼まれて留守居をすることになった。襖を隔てた隣室に横たわっている、妹の佐弥子さんの死体とともに。「庭のある家」を含む8篇を収録。生と死のあわいとゆく、ほの瞑(ぐら)い旅路。

みんなの感想まとめ

生と死のあわいを描くこの作品は、恐怖を静かに感じさせる独特の雰囲気を持っています。明確な恐怖よりも、じわじわと心に迫る不気味さが特徴で、ノスタルジックな情景が心の奥に響きます。読者は、登場人物の視点を...

感想・レビュー・書評

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  • 怖いのだったら読めないかも…と思っていたら、あからさま怖いというよりは、気付いたら「あ、怖い、かも」とフワッと静かにくる感じでした。どこかの郷里を思い出さずにはいられない、ノスタルジックな雰囲気もあり。

  • 好みは別れるであろう、この冥談と先日読了した幽談。それを分け隔てるのは実に僅かな違いなのかもしれない。オレは幸いこの冥談を後に読んだのだけども、それは個人的にはとてもよかったように思える。薄ら寒さだとか、怖気といったものは幽談の方が強いが、冥談には幽談になかった「人の死者や冥界に対する畏敬の念」だけでなく、人の生命の儚さや哀しさも内包していて、それを知らず知らずのうちに紐解いているからなのではないかと思っている。
    つまり、幽談は「人ではない何か」だからこそ恐ろしいのであり、冥談は登場人物の目線を通して「人の想い」に触れている。それは「人の業」といい換えてもいい。だからこそ、人が人としてイマジネーションの中に立ち現れるのだ。そして、既に現世にはおらず、冥界に逝ってしまっている人は、実に儚げに、そして哀しげに僕に微笑みかけるのだ。
    「キミがその現世から居なくならないと、もうぼくたちは会えないのだよ」と。

  • 幽談と併せて買って、こちらを後に読みました。
    タイトルだけを見た時は幽談の方が魅力があるように感じたのだけれど、
    蓋を開ければこちらの方が文章が胸に迫る。

    幽談は怪異と登場人物の間に距離が感じられます。
    『こわいもの』はあくまでもベッドの下にいる存在であったり、後ろから追いかけてくる
    正体不明のものであって、それと自分との間の温度は決して温かみがあるわけでは
    ありません。
    なんとなく怖い、気持ちの悪いものたち。
    一人称の語り口調で展開する文章が、不快さも混じえて気味悪く印象に残ります。

    一方こちらの冥談は、こわいだけじゃない。
    読んだ後に物悲しさがのこります。
    大事なものが消えていってしまった後の、その消えた背中の居た場所を茫と
    眺めているような。暗くて静かな、寂しい感じがします。
    生の側にある者と、死の側に行ってしまった者との儚いあわいの時間。

    幽談の話の多くは『もう会いたくない』感覚。
    冥談の多くは『もう会えないんだなあ』という感覚。

    気持ちがふわふわしている時に読むのがオススメです。

  • 「どうだろう。久し振りに来てくれたと云うのにこの有り様でね。屍と二人きりで留守番と云うのは気分の良いものじゃないだろうが、引き受けてくれるだろうか」

    静かに冷や汗をかくような短編集。派手な怖さはないが、不気味なシチュエーションと語り口で凄く不安な感情になる。各章の終わり方のうまさがさすが京極先生の筆致だった。

  • 久々にすっかりはまって「 」談シリーズ二作目、冥談

    定番っぽい「冬」や、多分に予感のする「庭のある家」も好きですが、「カゼの橋」が一番好きでした。
    今回は割と下賤な感じのお話多め、気温低めですかね


    椿は散らない。
    ある日、咲いていた形のままぼたりと落ちる。
    艶々した葉と毒々しいまでの紅さ。

    弱々しくなって死ぬのが良いのか、ある日突然逝くのが良いのか

    後者であれば、死んだことに気づいていないこともあるのではないかと思う。
    生と死の間を隔てるものは意外に。
    誰が死んで、誰が生きているのか…果たして誰も生きていないのではないか

    その紙一重な部分を覗けるか覗けないかで、予感だけでもういっぱいいっぱい。
    見てはいけない、話しかけてはいけない。
    もっていかれちゃうからね。

  • ふつうに、怖いはなしと思って読んでいたのに、

    「記憶」は「今」の幽霊
「お話」になったら、それは「ほんとうのこと」の幽霊
    もしかしたら想いは見えるのかもしれない、
気持ちなんて通じないけど、通じてほしいと願う、
人の想いは現世を変えることはできないけど、
ちゃんと届けば、彼方側は変えることができるんじゃないか。

    なんで最後にこんなのいきなりぶっこんでくるんですか…
泣くところだった…

    解説で、あがたさんが、ふたりの故郷、小樽が舞台なのでは?と書いている。
「過ぎた時は死んだ今」を彷彿させる町だ、と。
そういえば、
「庭のある家」とか「冬」とかは小樽の祖父母の家を想いながら読んだ。まあ、それは街のはなしじゃないけど…
再読するときは、小樽のまちを想像しながら読もう。

  • 昔あったことを思い出したり歴史を辿るような形で進んでいく方が、現代の怪談話を聞くよりも奥行きがありゾクゾクする。
    全体的に、分かりやすい怖さじゃなくて、部外者に語ると途端に意味を失うような話。実際にその中に入り込むと分かるんだろうなと客観的に読んでいた。
    美しいと感じた「庭のある家」と、現代の常識が通じない雰囲気がある「遠野物語より」が好み。

  • すっきりしない。この本の要の部分なのだろうが、薄霧の中でもがいているような、後読感ですっきりしない。私より、頭のよい人用の本かもしれない。

  • じんわりと、怖い。


    なんだか遠野物語のこわさに似ている。
    生きているのか、死んでいるのか、わからないけれど幼き日に出会っていた女の子。
    こわいから、こわい存在。

    風の橋
    これがいちばんゾッとしたかも。
    生きている人の恐ろしさ。

    予感
    途中までは家というものについての語りであり、こわさというものをむしろ否定しているかのようだったのに、オチですっと感じる恐怖。

  • 「幽談」と一緒に購入・・・するでしょ、並んでたら。モヤモヤする短編8つ。「幽談」同様、"日本的"な怖さを感じる1冊。ダイレクトに幽霊がひゅ~どろどろというのではなく、遠い昔の思い出にあるあれってもしかして・・・とか、なんか違う気がするといった、背筋がゾクッとする話。個人的には「凬の橋」と「柿」が、自分の記憶の中のことが実は違った意味を持ってたのでは・・・という恐ろしさがあり好き。時折出てくる、句読点を付けずに形容詞をまくしたてる表現は、怖さを助長させる。

  • 読んでとても 後を引くさびしいお話の集まり
    余韻というか話の空間が絶妙
    空地のおんなはちょっとむごすぎる・・・
    庭のある家の 異次元感覚がとても好き

  •  まず最初に全体を読み終わったの感想。

     なんだか漱石の『夢十夜』に似ている。勿論、雰囲気が似ているだけなんだけど……。

     『幽談』に比べると怖さは控えめ。どちらかと云うと幻想文学に近い印象。読んでいて映像が鮮明に浮かび上がる描写はやはり秀逸!

     この人は泉鏡花に近いものを書くこともできる作家なのだなと感じいった。

  •  京極作品、読みづらいのかなぁと思っていましたが面白いなんの。しっかり裏のあるミステリなのかと思っていたら、怪談話の様なストーリーの数々。個人的には「風の橋」という作品が面白かったなぁと。
     どこか遠く、果てもない先に死者と一度だけ会う事の出来る橋が存在すれば、自分なら行ってしまうのか。その橋を渡る際に、何人の声に反応してはいけない。反応すれば…。
     現代版の、江戸川乱歩の様な作品かなぁと個人的に思いました。これを機に京極作品を読んでみたいと思います。

  • 『冬』『凮の橋』が好み。ジワジワと湧き上がる恐怖あり、不思議と懐かしく読後感は悪くない。京極夏彦さんらしい小説でした。

  • ひんやりと背筋が冷たくなるのに、なんだかひとのあたたかさも感じる、そんな、不思議な短編集でした。

  • だんだんと主人公、語り手、聞き手の立ち位置、輪郭がぼんやりしてゆく。
    最後の話なんてここがどこだか分からない。

    短編集の場合、作者の好みで話の並び順が決まってたりするけれど、これは後半になるにつれてだんだんと曖昧になっていくところがよく出来ていると思った。

  • 短編集。幽談よりももっとこう怪談チックというか『死の世界』『あっち側』というのを感じさせる。でもどんな話だったか、と言われるとうっすらとしか覚えていないんだ…不思議…
    『柿』は精神状態が心配になるような話だった…。

  • あやふやな記憶についての物語が多く、ほとんどの話で、語り手のアイデンティティーに鬆が入っている。普通、この手の話はニューロティック・ホラーとか呼ばれる物語になるのだけれど、語り口やお話の構造はあくまでも怪談。そのギャップが面白いというか、読んでいてどこか宙吊りにされてしまうような感覚がある。「予感」あたりが恐かった。

  • 現代怪談シリーズ第三弾。短編集。このシリーズの他の作品は一度は読んでいたんだけど今作は初読。どの話も不思議で奇妙でちょっと怖かったり厭な気持ちになったりする。でも、その不思議さが愛おしかったり奇妙さが愉快だったり、ちょっとした怖さにドキドキしたり厭な気持ちもユーモラスになったりする。そういったアンバランスさが面白くてまた読みたくなったりするんだろう。

  • 曖昧模糊とした幻想のような仄暗い短編集。さらにこれ10年ぶり程の再読で、幽かな記憶が呼び覚まされてなんだか遠い夢のような読了感。"庭のある家"が1番好き、椿の花は打首のように突然死ぬ。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく・なつひこ):一九六三年北海道生まれ。九四年『姑獲鳥の夏』でデビュー。同作を含む〈百鬼夜行〉シリーズで人気を博す。九六年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞。その後も泉鏡花文学賞、山本周五郎賞、直木三十五賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞を受賞。〈巷説百物語〉シリーズ、〈豆腐小僧〉シリーズなど著書多数。

「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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