新訳 フランケンシュタイン (角川文庫)

制作 : 田内 志文 
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 55
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041012406

感想・レビュー・書評

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  •  訳者解説が素晴らしい。父と子の物語、それから吸血鬼ドラキュラと同じく、フランケンシュタインの怪物に課せられた「言語の壁」という問題が取り上げられていた。ドラキュラも怪物も、ものすごく言葉に気をつかっている。英語の勉強をしたという描写が、両方ともしっかりと書かれているのだ。でもそれは、東洋やユダヤ人差別ではないという指摘が面白かった。
     フランケンシュタインの小説を読む前に、相当専門に勉強している人から、いろいろと教えてもらっていたので、さらに楽しめた。初期の頃は、もっとBL臭、または百合があり、文にキレがあったらしいが、版を重ねるときに、削除または改訂されていったという。もっとも初期の頃のストーリーがどのようなものか、ぜひ読んでみたいところだ。
     しかしこのフランケンシュタインが出されたディオダディ荘の怪奇談義。メアリー・シェリーの圧勝だっただろうし、これほど巧みで面白く、普遍的なテーマを一気に書くとは、しかも19歳で書いたとは、恐るべきことだ。
     特に最後、怪物はフランケンシュタインの前で、本当は父のことを想っていたこと。そしてフランケンシュタインも、憎悪以上に、「我が子」として思う責任を感じていること。この父と子は、宗教的なものを思わせるし、現実の親子でも思えるし、両方を感じさせて、本当に見事だと思う。
     手紙のやり取りで「いったい何が起こったんだ……」と思わせといて、フランケンシュタイン家の幸福な萌え展開。それから、エリザベトを引き取って、エロゲ展開。ジュスティヌとの百合。クレルヴァルとのBL。それから、最新の科学知識を盛り込んだ描写と怪物を作ったあとの、弟の死から、ジュスティヌの死刑。そして怪物からの告白と言語習得とずっと見守ってきた家族への絶望までの話。女の怪物を作ってほしいとの約束。その反故による、クレルヴァルとエリザベトの死。ついでに父も死。最後、怪物を追いかけて北極まで向かい、主人公フランケンシュタインは衰弱死する。衰弱死後、そこで怪物の愛情告白。
     内容がたくさん詰まっていて濃密だった。何より、エンタメであり、文学であり、文句なしの傑作だろうと思う。これの「解剖講義」という本があるらしいのだが、読んでみたい。

  • それなりにおもしろかったです。『批評理論入門』を読むために事前に本作を読んでおこうと思っただけなので、あまり思い入れをもたずに読みました。(2018年3月17日読了)

  • メアリー・シェリーが19歳の時に書いた怪奇小説。
    書くきっかけは、1816年、夫で英国詩人のシェリー、詩人バイロンなどとスイスに滞在中にそれぞれ幽霊物語を書こうということになり、彼女が発想したもの。
    1818年に出版。

    何重構造にもなっている物語。

    まず、ロバート・ウォルトン隊長が姉サヴィル夫人宛に手紙を書くところから。
    ウォルトンは誰も成し遂げられない北極探検を目指している。船の上から、そこで起こった奇怪なことについて姉に手紙で伝えている。
    氷河に捕まった船の上から見たものは、奇怪なものがソリで走り去るところ。
    その後、ヴィクトル・フランケンシュタインを救助する。

    ヴィクトルは船の上で、彼の生い立ちと奇怪なものの正体について語る。
    父と母カトリーヌの馴れ初め。
    妹エリザベトの生い立ち。
    弟ウィリアムとエルネスト。
    使用人ジュスティヌ。
    友人アンリ・クレルヴァル。

    彼は幸せに育ち、科学に興味を持ち
    インゴルシュタットの大学へ進学することになる。
    が、ここで不幸の始まりが・・・
    母がエリザベトの看病で猩紅熱に罹り、亡くなる。

    このことがヴィクトルが人をつくることへと突き動かしたのではないか。
    科学の方向性が歪み、ヴィクトルは怪物を作り出してしまう。

    怪物を作り出してからのヴィクトルの苦しみが凄まじい。
    でもそれはなんだか自分勝手だよな。
    そして、そこから不幸の連鎖が始まるのだけど、当たり前だよね。
    自分の作ったものを殺せないところがね。
    怪物だからということもあるけど、どこかに繋がりを感じる。
    特にエリザベトを失ってからの追いかけっこは、お互いが望んでいるとしか思えない。

    一番印象的だったのは、怪物がフェリックスとアガサの家を覗き見しながら、物事を学ぶところ。
    言葉や歴史、文学を学び、自分の感情を分析するところなど、人が成長する過程と同じで、興味深かった。

  •  
    2017.10.28 読了

    科学者ヴィクトル・フランケンシュタインは、創造意欲にあふれ、生命を持たないものに魂を吹き込んだ。しかし、自分が創り出した怪物の姿を不気味に思い、逃れようとする。
     
     また、怪物も醜さ故に、誰一人受け容れてもらえぬ、孤独さが創り主への怒りと化し、復讐に燃える。ヴィクトルの末弟が殺され、召使いは罪を被され死刑となった。立て続けの悲劇に怪物が現れ、(怪物の)妻を創ると約束させるが、ヴィクトルは気が進まず、反故にしてしまう。
     
     怒った怪物は、さらに仲の良かった、親友と妻までも殺し、ヴィクトルの妻の死で気落ちした父も亡くなった。ヴィクトルも復讐のため執念で、怪物を追跡し、ヴィクトルに共感した北極探検隊の船で北上するが、こと切れる。

     何かねぇ、最初は、ヴィクトル・フランケンシュタインが子供だった頃の話とか、両親がエリザベトを養女に貰って、
    弟二人もいてて、幸せな家族だったのと、不憫な女の子をわが家の召使に引き取って、明るくて幸せな家庭だったのに、母は、猩紅熱かかったエリザベト看病して、死ぬし。ちょっとヴィクトル気の毒で同情したんだけど。

     大学に入って、科学のとりこになって、人形創ってに魂吹き込んだはいいけど、勝手に創っといて、その不気味さに、自分の目の届かないとこへ隠すとか、ネグレクトだわ。本の挿絵で見る限り、ヴィクトルってイケメンなのか知らんけど、何より、構ってもらえずに、自分の顔を知らず、人目忍んで歩いて、水面に映る自分の醜さに気づいた者の身になったら、気味悪がる筋合いないと思うし。
     
     創り主からは疎まれ、交流したかった家族には、怖がられ、逃げられるの。怪物とはいえ、心が痛く傷ついたんだろう。だからって、逆恨みして人殺したり、罪を擦り付けたり
    したらいけないけど、まあ、ヴィクトルの無責任かつ、クズさ加減が露呈したかと。まあ、気持ち悪いだの、汚いだの、虐められる立場にも立ってみてよ、って心底思った。

     自分の家族だけならいざ知らず、友人にまで、類が及ぶとは思わなかったのだろうか、旅の途中で殺されたこの友人は、不憫でならない。妻、父も亡くなるが、誰一人自分の不始末を打ち明けられる人が(もちろん受け入れられなかったからとは思うが、)一人でもいたら、こうはならなかったのかもしれない。

     この本を読むまで、実は、フランケンシュタインと言う名の怪物というか、モンスターがいるのかとばかり思っていた。フランケンシュタインが人の名前で、怪物には名前がない。ホラーな部分が多いが、怪物のいたたまれなさが悲しかった。
     
     
     

     




     
     
     
     
     
     

  • 勝手に醜く生み出され、造り出した本人に醜さを忌避されるのは酷い。優しい心が人々から受ける迫害に次第に失われ、せめて愛する存在を、との希望すらフランケンシュタインの心変わりで叶えられず…と読んでいて怪物を生み出したフランケンシュタインの無責任ぶりに呆れつつ、怪物の哀しみを思うと遣り切れない気持ちになりました。

    フランケンシュタインの滞在先の景色の描写が多々あるのですが冗長に感じてやや読み辛く思えました。舞台に明るくないからなのでしょうが描写はいいから早く話を進めて欲しいと思ってしまいました。

  • 学生のころに別の人の訳で読んだ気がする。改めて時系列を意識して読んだら、フランケンシュタインが思いのほか若くて驚いた。そして怪物がとても切ない。最後フランケンシュタインが怪物を追うとき、怪物は自分を殺すためとはいえ、全てから忌避される自分を求めて追ってくる存在がいるというのにうれしい気持ちもあっただろう。怪物に最後まで名前がないのも個人的に気になるところ。

  • 面白かった!
    『屍者の帝国』からの流れで読んだけど、先にこっちを読んだ方が良かったかも。
    フランケンシュタインのゲスっぷりに驚く。
    怪物が、あまりにも哀れでならない。

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著者プロフィール

Mary Wollstonecraft Godwin Shelley.
(1797-1851)
政治思想家で作家のウィリアム・ゴドウィンと
女権拡張論者で作家であるメアリー・ウルストンクラフト
の間にロンドンで生まれる。
急進的思想を持ってゴドウィンの思想に共鳴した
ロマン主義詩人パーシー・ビッシュ・シェリーと
駆け落ちの末、結婚。
1818年に初の小説『フランケンシュタイン』を出版して
一躍有名になる。
その後、ゴシックな作品のみならず、歴史小説や
ヴィクトリア時代風の家族的なテーマを扱った小説、
さらには人物伝、旅行記など、多彩な執筆活動を行った。
そこでは西洋古典から同時代のヨーロッパ文芸にまで
至る該博な知識と、欧州様々な土地での体験が
ふんだんに発揮されている。
また、夫亡き後はその作品を整理して
詩集の編集・出版にも尽力した。

「2018年 『マチルダ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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