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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784041013236
作品紹介・あらすじ
北海道警察の裏金疑惑を大胆に報じた北海道新聞。しかし警察からの執拗な圧力の前に、やがて新聞社は屈していく。組織が個人を、権力が正義をいかに踏みにじっていくか。恐るべき過程を記した衝撃の証言!
感想・レビュー・書評
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読後に感じたのは、「正義はどこに?」という嘆きでした。
実名での執筆、これだけでも勇気と覚悟のいる作業だと思います。本書は、道警の組織的裏金作りをスクープした道新への圧力と、それに屈した記録です。悪いことをしていても必要悪とし、組織ぐるみの隠ぺいもトップの方針に従っただけと開き直る日々の妥協が組織のみならず個人の尊厳をも地に堕とす怖いお話です。さらに危惧されるのは、こうした問題がいたるところで提示されながら、警察組織の体質は変わっていないのだろうなと思わせる事実です。我々は素直に警察や裁判所などは国民を守る側だと信じていますが、権力サイドのトップの意向でいとも簡単に不正に手を染めてしまう聞き分けのよい職業人化してしまう事実はおそらくあらゆる組織が内包する危険性だと思われますが、であるからこそ最低でも司法と治安部門くらいは国民サイドの強固な砦であってほしいと願わずにはいられません。
その願いもむなしく、現在、安部政権下で政権の覚えめでたき黒川検事長定年延長が画策されています。
3権分立が建前の行政の権力者が司法のトップ人事まで介入・・なりふり構わない露骨なやり口にこの国は本当に大丈夫なのかと怒りすら感じます。
最後に、筆者について、Wikipediaから。
高田 昌幸(たかだ まさゆき、1960年 - )は、日本のジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授。元北海道新聞・高知新聞記者。
高知県立高知追手前高等学校卒業後、東京で新聞店従業員を経て法政大学法学部政治学科入学。卒業後、一般企業を経て、1986年北海道新聞入社。小樽報道部、本社経済部、本社社会部、東京支社政治経済部、本社報道本部編集委員、同部次長、東京支社国際部編集委員、ロンドン支局、東京支社国際部次長を経て、本社運動部次長。2011年6月に退社しフリーに。2012年4月に高知新聞に入社。社会部に所属。2017年3月に退社。同年4月より東京都市大学教授。
北海道拓殖銀行の破綻と営業譲渡、地元百貨店の乱脈経営、地元信用金庫の不正融資事件などを取材。
1996年、取材班の一員として「北海道庁公費乱用の一連の報道」で新聞協会賞、および日本ジャーナリスト会議(JCJ)奨励賞を受賞。
2004年、取材班代表として北海道警裏金事件取材(キャップ佐藤一、サブキャップ中原洋之輔、松本成一、林真樹、峯村秀樹、米林千晴、田中徹、青木美希、内山岳志、古田佳之、大出行秀)で新聞協会賞、JCJ大賞、菊池寛賞、新聞労連ジャーナリスト大賞を受賞。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
道警のそしきてな裏金作りを調査報道で暴いた北海道新聞が道警の反撃(捜査情報を流さない、裏付の甘かった報道への逆捜査、名誉毀損訴訟)の前に屈し、調査報道の中心だった著者をスケープゴートに手打ちをしようとした裁判の背景の当事者の手による告発ルポ。
もちろん第三者視点から見たときに、著者が強引な記者だったり、記事の書き方がセンセーショナリズムに偏るなどのことはあったとは思うが(だいたい記事なんて半分創作というか都合のいい部分使って書きたい結論に合わせて書き抜くだけだし)、それでもこの中身が事実なら(まず事実だろう)警察と新聞の腐敗の闇の深さに茫然とせざるを得ない。
組織維持の前に正義も使命も吹っ飛んでしまう官僚組織(新聞社上層部含めて官僚)の怖ろしさ。
著者が最後の方でエピソードとして書き加えた一般企業の内部告発者の「社長とその取り巻きの茶坊主どもを退任させたけど、結局後に座った連中もすぐ同じ顔になる」というコメント(大意要約)が胸に刺さった。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/731713 -
組織の論理や立場の違いにより苦境に立たされ、最後には排除される記者の話。時に利権にすがり、自分の都合のよいようにこじつけるのは人間の常であるが、それでも社会正義を象徴する警察組織の言動や対応に吐き気を覚えた。同時に「権力監視」を掲げる記者の無力感と難しさを痛感した。
「悪人はどこにもいない。どこにもいない。」という言葉が、読了後に余韻をもって響く。組織にいると、組織の色に染まり、社会の「正しさ」からずれていく。特に仕事に没頭すればするほど。そんなことも思った。 -
高田昌幸『真実 新聞が警察に跪いた日』角川文庫。
北海道警察の裏金問題追求の調査報道の裏側で進行していた北海道新聞の経営幹部らによる秘密交渉を暴いたノンフィクション。
確かに警察、企業の行為はあるまじきものなのだが、著者の感情が先走ったような文章や表現にやや興醒め。 -
マスコミ塾の講師のおすすめ記事を見て。
北海道ということもあったので、読んでみたがなかなかに難しい問題だった。
ノンフィクションというジャンルを読みなれていないので、もう一回読み直して映画化もされた「日本で一番悪い奴ら」を読みたい。 -
衝撃的な話。警察の裏金問題なら知っていたが、それがその後警察の猛反撃に完全に屈していたとは知らなかった。あと、赤旗よりひどいと言われる北海道新聞にこんなに立派な記者がいたことも新鮮な驚きだった。
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先日、記者クラブで道新の記者と道警の裏金問題の話になりました。
それであらためて興味を覚え、その足で図書館へ行って借りたのが本書。
紙面で道警の裏金問題を追及した当時の道新のデスクが書いたノンフィクションです。
読み始めるとページを繰る手が止まらなくなり、2日間で読了しました。
一連の道新報道のきっかけは、テレビ朝日の報道番組「ザ・スクープ」でした。
「旭川中央警察署で捜査用報償費が裏金になっている疑いが濃厚」と報じたのです。
2003年11月23日のことです。
日曜のがらんとした道新編集局フロアで番組を見ていた著者は、なかば呆然となったそうです。
道警の内部告発が、道新を飛び越して東京の放送局に届いたと推察されたからです。
そして、部下にこう言ったそうです。
「俺たち、みくびられているよな」
そこから道新の怒濤のような道警の裏金追及報道が始まります。
2003年11月から2005年6月にかけての約1年半に掲載した関連記事は、大小合わせて実に約1400本を数えました。
私もうっすらとではありますが、この間の道新の報道については記憶にあります。
埋もれていた事実を丹念に掘り起こし、それを材料にして手を緩めることなく執拗に追及する。
それはまさに「調査報道」の名にふさわしいものでした。
道新はこの報道で、新聞協会賞、JCJ大賞、菊池寛賞とトリプル受賞の栄に浴しました。
当初は頑なに裏金の存在を否定していた道警も、ついに抗しきれなくなって裏金の存在を認め、道民に謝罪しました。
ところが、渦中の道警の中枢に身を置きながら、断固として裏金の存在を認めない人がいました。
道警元総務部長の佐々木友善氏です。
佐々木氏は、道新の報道を元に書かれた書籍の一部を虚偽と断じ、自身の名誉を傷つけられたとして、ついには裁判まで起こします。
佐々木氏は裁判を起こすまでの間、道新の幹部と秘密交渉を重ねて、書籍の中の当該個所の取り消しと紙面上での謝罪広告の掲載をしつこく求めました。
しかも、この秘密交渉を道新側に無断で録音し、後に裁判で証拠提出したのです。
そのやり取りの生々しいことと云ったらありません。
驚くのは道新幹部のこんな発言です。
「私のほうの記事が引き金をひいたわけですから、その部分については、率直に、うちの記事がいたらない、いたらない記事がきっかけで。率直に謝ったほうがいいと思います」
著者ではありませんが、私も読んでいて「なぜ、謝罪する必要があるのか」と道新幹部の発言に憤りを覚えました。
この問題は、道新の内部にも大きな軋轢を呼び起こします。
著者をはじめ一連の報道に関わった記者たちに対して、道新幹部が記事の情報源を明らかにするよう執拗に迫りました。
著者らは道警側に筒抜けになることを恐れ、その要求をことごとく突っぱねます。
一連の報道に関わった記者たちは異動でばらばらになりますが、新しく道警担当のキャップになった記者が裏金追及報道の意義を全否定し、走狗のごとく道警にご注進に走る姿は読んでいて見苦しく、情けなくなりました。
そして、ついに、佐々木氏による名誉棄損訴訟は、著者ら被告側の敗訴という形で決着します。
裁判が終盤を迎えるころ、著者は入社2、3年目の若い同僚記者とススキノのバーで飲みました。
若い記者はこう話したそうです。
「先輩たちの裏金報道はすごいと思いました。入社前でしたが、あこがれました。でもいまはちょっと違うんです。自分は調査報道をやりたいとは思いません」
どうして、と問う著者に、若い記者はこう答えます。
「だって社内では調査報道をやろうという雰囲気、全然ないじゃないですか。あんな危ないものは手を出すな、みたいな気分が充満しているじゃないですか。社内では、調査報道なんて、まったく評価されていないじゃないですか」
本書には詳しく書かれていませんが、著者が居た堪れない気持ちになったのは容易に想像がつきます。
著者はその後、道新を辞め、フリージャーナリストを経て現在は高知新聞で記者をしています。
一連の報道に関わった記者のうち何人かは辞め、残った記者たちも全く関係ない部署で仕事をしているそうです。
若い記者の中には、裏金追及報道を知らない記者も増えているといいます。
道新だけではありません、道警の体制も大きく変わり、著者が道新で現場記者だった時代に付き合った警察官の多くは退職しました。
こうして一切のものは過ぎて行くのだと思いました。
北の大地から、調査報道の火も消えつつあるのでしょうか。
読後、寂寥感を禁じ得ませんでした。 -
「少しキツい内容」というように思ったのは、筆者達が「社内的立場がドンドン悪くなる」ような感じになる過程だ…筆者御自身は、現在では御出身の高知で新しい活躍の場を得ているというのだが、本書を読むと「多大な功績と数々の表彰を受けた経過が在るのに、半ば追われるように社を去り、北海道を離れたのであろう」という様子が伺える…
とにかくも、考えさせられる一冊だった… -
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驚きだった。恐ろしい内容だった。なぜ北海道警が認めた裏金問題で、報道した側がひざを屈しなければならなかったのか。関係を元に戻したかったから?スクープを推奨する会社側は、会社員であるスクープした記者を守るべきだが、全くできていない。体面を守っているようで、会社の歴史に禍根を残している。批判した記者はその後も弾圧され続けてしまう。
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北海道新聞が、北海道警察の裏金作りを裏付け取材をして記事にした。警察からニュースをもらっている、いわば飼い犬の立場であった新聞が、飼い主に噛み付いた。その果敢な取材は様々な賞を受賞したが、新聞はしだいに警察の圧力に屈していく
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このような事実をこの本を読むまで知らなかった。警察のような公権力の真実を知らせることの難しさがよくわかった。この本は、北海道警察と新聞社の問題であるのはもちろんだが、これからの日本に生きる我々にとって、何が大切かを教えてくれている。
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北海道新聞で道警の裏金追求のスクープを出した。著者を含むそのチームが、新聞社内の不祥事を材料に圧力を受ける。その後、チームで打った「泳がせ捜査」の記事が証拠がないとのことで撤回などを道警から求められる。著者らは抵抗するも、組織的にかけられる圧力により力を削がれる形となり、最終的には道警の意を汲む形で謝罪することとなる。
驚くべきことに「泳がせ捜査」の「真実」は当初の記事よりも闇が深く、単なる拳銃密輸の泳がせ捜査の失敗ではなく、拳銃輸入の摘発の代わりに覚醒剤の密輸を見逃すという取引を警察組織が行ったということであった。著者は、稲葉氏という元警察官の個人名を出してまでそのことを告発する。稲葉氏はそのことを自著でも暴露しているという。それでも、一度警察の軍門に下った北海道新聞は、対抗することがもはやできなくなっているのかもしれない。
著者は、「悪人はどこにもいない。どこにもいない」と書く。「悪人」はいないのに、結果としてこのような腐敗と不祥事が発生する。このことに対して少なくとも意識的でありつづけなければならない。 -
衝撃的な副題がついている。
マスメディアと警察権力との生々しいやり取りが綴られた著書。背筋が凍りそうなくらいだった。
この本で感じたのは2つのポイント。
一つはマスメディアと権力との関係。警察に限らず、政治、経済界も同じく。
もう一つは、組織と個人の関係。悪徳で不正な組織を分解すると、普通に一生懸命な、よき個人が出てくるのだ。「組織」の問題か、個人か。
組織というものが気味の悪いものに感じられ、読後感は。。。でも知るべき問題だと思う。読んでよかった。 -
メディアが権力に屈服した様を
執拗に生々しく描かれたおり、あっという間に読み終えました。
真実を追求するジャーナリズム、
しかし権力からの圧力な屈指なけらばならない組織の論理。
権力のなすがままとなった現実の怖さ、
それを実行した連中は悪人ではないことの怖さ、
それがこれからの時代、我々にも波及しそうなきな臭さ、
ジャーナリズムの力はどこまで通じるのか、
様々な怖さを感じずにはおれない作品でした。 -
北海道新聞、北海道警察を始めとするメディアと権力の関係や、大きな組織の自己防衛作用には絶望感を抱かざるを得ない。
ただ、この本が単行本として上梓され、文庫本にもなったことについて、微かな希望を見出だしたい。 -
北海道警の裏金問題に関する調査報道にまつわる裁判記録から明らかになった組織防衛の話。
道警側、道新側にも組織を守ろうとする人たちが登場する。組織を守れば、組織に守られると期待するが、結局組織は個人を切り捨てる。
組織と闘う個人の労力は並大抵のものではない。
自分に正直に生きる、正義を貫く、真実を追求することは実際大変なことだ。しかし、それでも勇気を振り絞ってやらなければならない時がある。
一番問題なのは、裁判にならなかったら、裏取引の事実がずっと闇の中にあったことであろう。
ほぼ不可能だと思うが、警察側からの視点でもこの事件を見てみたい。 -
2003年に発覚した北海道警察による裏金事件と、その後に起こった覚醒剤流出事件という大不祥事。その当時、北海道新聞社の社員として一連の取材指揮を執った高田昌彦氏による著書。
本作の内容は、事件当時に道警の総務部長であった佐々木友善氏が、警察を退職後に道新と出版社を相手に起こした、名誉棄損裁判の様子を記したものである。
道新に限らず多くの新聞社は、地元の警察から事件事故の情報を得ており、高田氏の言葉を借りると主従の関係が出来上がっている。その新聞社が警察の不祥事を約1年半連日のように取り上げたのだから、まさに犬が飼い主の手を噛んだような話だ。
裁判が結審した後にも記者個人を偽証罪で訴えるなど、佐々木氏の異常なまでの粘着質っぷりが恐ろしく印象的だった。佐々木氏は退官した自身を笹船、新聞社を戦艦大和に例えていたが、真逆の印象を受けたのは自分だけだろうか。
しかし、あまりにもイジワル爺さん的に描かれてしまった佐々木氏だが、約40年という警官人生の中では市民のために尽くした功績も少なくないハズである。できればそんなエピソードも少しは紹介してあげてほしかった。
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