いのちの食べかた (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 298
感想 : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041013328

作品紹介・あらすじ

お肉が僕らのご飯になるまでを詳細レポート。おいしいものを食べられるのは、数え切れない「誰か」がいるから。だから僕らの生活は続いている。“知って自ら考える”ことの大切さを伝えるノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • R2.3.24 読了。

     日々食べている牛肉や豚肉や鶏肉などの肉はどのようにしてスーパーなどで売られている形になるのか?知っているようで知らない事実。動物の肉を食べるようになった歴史や悲しむべき被差別部落の存在。
     また、私たちはいかに多くの命に支えられて、生かされているのかを考えさせられた。これからは食べ物を食べる時には、いろんなものに感謝して大事に食べないといけないと思う。

    ・「何が大切で何がどうでもよいかの判断は、知ってから初めてできる。知らなければその判断もできない。」
    ・「世界には数えきれない『誰か』がいる。その『誰か』がいるから、僕たちの生活は続いている。」
    ・「命を食べるからこそ、命を無駄にはしないことを、彼らは知っている。」
    ・「大切なのは、『知ること』。知って、『思うこと』。人は皆、同じなんだということを。いのちはかけがえのない存在だということを。」

  • 僕はお仕事の一つとして、「お肉はどのように作られて僕らの食卓に届くのか?」というお話をするために、小学校に招かれて授業をすることがごくごくたまにあります。名付けて「いのちの授業」というものです。

    僕らが生きていくためには、栄養を摂らなければならなくて、そのためには「他の生き物の生命」をいただかなくてはならないわけで、それを残酷で嫌なことだと思ってしまうと、食べ物を食べることができなくなってしまうわけです。

    でも、それでは健康に成長することができなくなってしまうのですから、「他の生き物の命」をいただくことについて、何らかの折り合いをつけなければならないということになるのだと思います。

    僕のお仕事からすると、食肉を大切に、ありがたいという気持ちで頂いていただければいいなあ、と思うわけですが、この本ではもっと話を深めて、僕たちが生きていく上で出会う様々な矛盾についても目を向けて、生きていく力を身につけていくことに狙いがあるように感じました。

    小学生にも読むことが出来るようにルビのふられた文章は、読みやすく噛み砕いた表現で、この作品を読んだいま、「いのちの授業」に招かれたら、この作品の中からの一節を引いてお話に加えたいと思っています。

  • 当然にしてあるべき食肉加工(=家畜の屠殺)というプロセスがあり、それがあえて目に付かないようにされているということを、子どもに語るように説明した本。この本では、家畜を食べる、ということと、差別について語られれている。著者である森さんはTV向けの映像作成の仕事をしていたときに、家畜を殺して食べる、ということをテーマにして番組作成を企画したが、結局テレビ番組にはならなかった。その理由が、屠殺シーンの問題もさりことながら、それよりも大きかったのが被差別部落の問題だ。

    食肉加工という職業が「穢れている」とされて、部落差別の対象となっているということは事実としても知っていた。実際に自分の親も、ときにあまり躊躇いもなくそのことについて具体的な人の名前を挙げて語っていた記憶もある。そして、森さんに言われる通り僕はそれを見ることをしなかった。

    2つのこと(家畜を食べるということと差別部落)は事実としてもつながっているが、いずれも見ないことによって助長をしているということでも共通点がある。森さんのメッセージは僕たちはしっかりと自分の目で「見る」という意識を持たなくてはいけない、ということだ。それが森さんの問題意識。彼のオウム問題や死刑の問題にも通じている。その問題意識はどのように共有されるべきなのだろうか。それがこの本の感想。

  • もう十年ほど前でせうか、駅で聞いた、大学生くらゐの若い女性ふたりの会話。仮に夫々A、Bとしませうか。どうやら共通の知人宅へ行く為に駅で落ち合つたやうですが......
     A:何か買つて来た?
     B:うん、これ......(と言つて袋の中を見せる)
     A:ああ、食べ物ばかりだね。
     B:まあ、元は生き物なんだけど。
     A:さうだね、人間に食べられる為に生れてきたんぢやないからね。でも、すると「食べ物」つて何だらうね?
     B:うーん......

    『いのちの食べかた』は、元元年少の読者向けの叢書「よりみちパン!セ」といふシリーズの一冊として刊行されました。ゆゑに、本文は小学校の先生口調で、多くの漢字に振り仮名が付されてゐます。
    しかるにその内容は深く、老若男女すべての人間に関係するものであります。

    まづ牛や豚の肉について。我我の食卓に並ぶまで、いかなる経緯を経てゐるのか。誰がどんなふうにして殺してゐるのか。
    人類の肉食の歴史について。日本ではどうだつたか。鎖国下の肉食事情とはどんなだつたか。

    そもそも肉を食べる事は「残酷」でせうか。確かに他の生命を奪ふことは残酷でせう。しかし人間が生き延びる為には必要なことであります。生命といふものは食物連鎖の中で自然界に存在します。弱肉強食。
    菜食主義者なら良いのかといふと、さうでもありません。植物だつて生きてゐます。人間がその生命を絶つた瞬間に「痛い!」と叫んだり涙を流したりしないので、罪悪感を感じないだけの話であります。
    人間は他の動物よりも少しばかり知能が発達した為に、逆に生物界ではさまざまな矛盾を抱へた存在になつてしまつた。

    そして差別問題。屠殺に関はる人たちが受けてきた言はれなき迫害。人は自分の存在を守るために他者を差別する。男女差別や職業差別、民族差別、出自による差別や宗教差別など。差別が助長する先に戦争があります。
    かういふ事柄は、多分多くの人が知つてゐます。しかしながら差別や戦争はなくなりません。わたくしたち人間は歴史に学ぶことを忘れ、考へることを放棄し、楽な方へと流れてゆく。これは時の為政者によつて大変都合の良い状態です。

    森達也さんは警鐘を鳴らします。様々な悲劇は、わたくしどもが「思考停止」に陥つた時に起きる。
    だから、嫌な事でも目を逸らさずに現実を見なければならない。そして知ることが大事。
    知つたら、何が問題なのか考へる事。この世の色んな矛盾に気付くでせうが、それを忘れてはいけない。

    ううむ、改めて人間は罪深いものだと思ひます。しかしそれに気付く事で、避けられる争ひも災難もあります。世界を動かすのは一部のカリスマではなく、結局わたくしたち一般大衆と存じます。本書のテエマは極めて重いですが、万人に手に取つていただきたい喃と勘考する次第であります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-819.html

  • これが子どもに”も”読めるようになってるというのは凄く大事なことだと思うな。

  • 食べることについて、だけでなく、食べることを入り口として、世の中の見方、生き方を教えてくれる本。

    生きることと食べること、殺すことは、常に繋がっている。動物であろうと植物であろうと、生きているものを殺すことには変わりない。しかし、私たちは「食べること」には敏感でも、その前の「殺すこと」には目を向けないようにしている。

    「食べる」ことに関わらず、そういうことは世の中に溢れている。話は、日本に根付いた差別のことから歴史のこと、社会のこと、宗教のこと、文化のこと、戦争のことへと広がっていく。筆者は、子どもに向けた優しい語り口で、「知ること」の大切さを説く。
    著者の信条は私自身が日ごろ思っていることと重なる部分が多く、とても共感できた。

    見方や内容が偏っているという批判のコメントも少なからずある。けれど、著者自身が語っている通り、この本はあくまで入り口に過ぎないのであるから、内容そのものではなく、この本をきっかけにして、与えられていることを鵜呑みにせず、自分で調べて、自分で判断していくことが大切なのではないか。

    レビュー全文http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-466.html

  • 最初、読み始めは子どもに向けた文章のような感じで、読みやすそうだなと思っていた。
    だけど、とても濃い。
    食事、いのちを食べる私達。いのちを食料に変える人たち。それをする人を、昔の人は「穢れ」とした、まさかの差別の問題。

    大切なのは知ること。そして思うこと。だと著者は言う。
    この本のタイトルの映画もあるのだそう。見てみたい。

  • 肉を食べることから、世界の問題まで考えることができた。すべては繋がっていて、きちんと知ることが大切なんだと実感できた。無知は無力。大切なことを本当に大切にできるよう、知る、理解する、よく学ぶ。これからも、いのちの上に立っていることを忘れずに生きていこうと思った。

  • 同僚に勧められた本。
    肉食に関する話だと思ったら、日本の歴史や差別の話にも拡がっており読んでよかった。と場見学もしたい。
    同名別監督のDVD作品があるので観る予定。

  • キレイに加工・包装された食べものに囲まれて、なんの気なしにいただきますと言って口に運ぶ。でもやっぱり、それじゃいけないと思わせてくれました。
    いのちは巡るもの。何かをたべないと生きていけない私たちにとって、避けられない葛藤が描かれています。
    読んだ後はきっと、スーパーで売られる食べものを、いや、世界を見る目ががらりと変わるはず。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや) 1956年、広島県生まれ。ディレクターとして、テレビ・ドキュメンタリー作品を多く製作。98年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画『A』を公開、ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年映画『A2』を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年『A3』(上下巻、集英社文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自世界を構築している。16年に映画『FAKE』、19年に映画『i-新聞記者ドキュメント-』で話題を博す。著書に『死刑』(角川文庫)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)、『ニュースの深き欲望』(朝日新書)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)など多数。

「2022年 『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2022年前半』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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