- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041013335
作品紹介・あらすじ
月光の下、影踏みをして遊ぶ子どもたちのなかにぽつんと女の子の影が。影の正体とその因縁とは。「ぼんくら」シリーズの政五郎親分とおでこの活躍する表題作をはじめ、全6編のあやしの世界。『ばんば憑き』改題。
感想・レビュー・書評
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ばんば憑きでレビューしている。
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宮部みゆきさんの時代小説短編集。
やっぱり私は宮部さんの時代物が好み。読んでいて本当に心地よい。満たされる。
見せる部分、あえて見せない部分。メリハリ。想像力を掻き立てる筆致。
人のしなやかさとたおやかさ。半面脆さと醜さ。強さと弱さの混在。人間という存在の多面を巧い配合で見せてくれる。
不公平感、疎外感、寂しさ、孤独感が人を暗闇に走らせるんだなあと、途中で気づいた。
これ、読んでいたっけ。
『ばんば憑き』の改題版でした…。気づくのが遅い自分に溜息でした。 -
宮部みゆきのあやかしもの。短編集。
私は泣いてしまう話が多くて、外にいるときは
困ったので、涙腺がゆるいタイプの方は気をつけた
方がいいです!
表題の話はかなりせつない話だった。 -
宮部みゆきの作品には、思わぬところに他の作品の登場人物が出てくるから、楽しい。
「おでこ」、政五郎親分だったり、あるいは茂七親分。やあ、また会いましたね、となつかしくなる。
それにしても、宮部みゆきの語りには、脱帽! -
【読間】
宮部みゆきの江戸もの。
安心の宮部クオリティがなすワザで、化け物話、幽霊話という超常現象も受け入れられる。
……が、ちとしかし……、(もともと仲良しだそうだけど)京極夏彦チックなおハナシが2つばかりあり。
地方の小藩。
暴虐の限りをつくした藩主。
色に狂って、藩士の妻や娘も平気で奪う。
城の裏山に、死者を悼むかのような石仏の数々が……。
↑のエピソードが、どうにもデジャヴを拭えない。宮部さんの既読の江戸ものか…京極さんの“巷説百物語”のどれかか…での世界観が思い出される。いずれかのサイドストーリー的な位置付けなのかしら??
その他、“おでこ”だったり“捨松”ら三人童だったりの登場は、宮部ファンならニンマリものかと♪
さて、あと一篇……。
【読了】
最後の一篇「野鎚の墓」は、これぞ宮部節!な世界観にほんわか。
好きなハナシは、「討債鬼」と「博打眼」。
読間↑に抱いた感想は、他の方のレビューを読んで納得。青野先生と偽坊主は、三島屋さんの物語にて既に出ていたとは。そのハナシ、読んだはずなのに失念していたよ(苦笑)。
※“捨松”たち3人は印象にあったけれど。
※それでもやっぱり、青野先生の過去のハナシ…… に似た物語を、“又市”が活躍する京極作品でも見た気がするのだが。。。どれだったかしら?
★3つ、7ポイント半。
2015.12.24.古。 -
宮部さんの江戸ものは、割と安心して読めるので楽しかった。
深く考えれば暗く恐ろしい人の心の中を覗き込んでしまいそうなのだが、脇役や主人公達の人情味あふれる描写でかなり救われる。
宮部さんの話に登場する子供達は、純真だったり、とても賢かったり、悪がきだったりして生き生きしていてとても好きだ。ただ、そういう子供達を被害者として描くときも容赦ないところが・・・・宮部さんの怖いところだと思う。 -
宮部みゆきさんや東野圭吾さん、重松清さんなど大好きな作家さんの本を手に入れる時には、既読でないかブクログをチェックする。
【お文の影】は未読だったので手にしたのですが…
実はこの本、【ばんば憑き】という表題で発売されていたものを改題したものでした。
その事実がわかったときには少なからずショックを受けましたが、せっかく手に入れたので再読(?)。
短編集なのですが、すっかり内容を忘れているものもあり、楽しめました。
ブクログを見てみると【ばんば憑き】は2012年5月23日に読了。
その時の評価は☆3つでしたが、3年経って☆4つに。
再読も良いものです。 -
作者お得意の江戸の怪談話の短編集。2011年2月に「ばんば憑き」として出版された本書が珍しく3年半もかかってやっと出たと思ったら、何故か他の短編の題名を本の表題に代えて出された。
何処か物哀しく、何処か情深い。私は前回や今回の表題作よりも、次の二作がお気に入り。
「博打眼」
上手い、と思うのは博打眼の作り方。「それ」が必要になった土地の悲しい話も、「それ」を作る主体の人間の話も、遠く江戸の人間には失われている。その「悪意」はどうであれ、広がらないための人間の知恵と「狛犬」という神様の領域の知恵の共同作業で、身にかかる粉だけは振り払ったという話。宮部みゆきは、その元凶の元凶を求め、構造的に「変革」しようという意図は、これからも起きないと思う。身の丈に合った話しか作らない。だから、リアリティがある。
登土岐という土地の名前は宮部みゆきの創作かもしれないが、登土岐語は、おそらく何処かの東北の訛りをそのまま使っているのだろう。まだ読んでいないが、「荒神」に繋がる一作なのかもしれない。
「野槌の墓」
20匹ぐらいの物の怪が出て、百鬼夜行とは言えないまでも、かなり楽しい一作。柳井源五郎右衛門さんのキャラが立っている。また登場して欲しい。
「お文の影」には「ぼんくら」シリーズの、「ばんば憑き」には「三島屋」シリーズのサブキャラが登場している。マア楽しいオマケではある。
2014年9月1日読了 -
六編の江戸時代を舞台とした怪異譚を収録した短編集。
職人芸というか、円熟の域に達しているというか、宮部さんの江戸物の短編の安定感はやはりすごいです。この本に収録されている短編もどれも抜群の安定感があり、怖い話のはずなのになぜか読んでいて不思議な安心感も覚えました。
印象的だったのは『ばんば憑き』わがままな女房に振り回される夫が、同じ宿の相部屋になった老女性の過去を聞く話です。
怪異ものとしての怖さを描きながらも、最後に残る冷やかさは人間心理を余すことなく書ける宮部さんだからこそ表現できたものだと思います。怪異ものとしても、心理小説としても傑作! この短編集の中では少しだけ読みごこちが異なっていて、それも印象が強く残った理由かな、と思います。
『野槌の墓』は化け猫をはじめ様々な妖怪が出てきて読んでいて楽しくもあるのですが、主人公の決意に至る過程や、ラストの邂逅など読ませどころもしっかりと押さえられていて、こちらも良かったです。
各短編怪異を取り扱ってはいるものの、やはりその根底にあるものは人間の罪だとか業だとかがあるように思います。そういうものを感じてしまうと暗い気分にもなってしまいますが、そうした怪異に対し、優しさや人との絆で立ち向かう登場人物たちを見ていると、やっぱり人っていいものだよな、とも思います。そうした思いが短編の作品の根底にあるからこそ、怪異ものでも読んでいて不思議な安心感が得られるのかな、と思います。
そして子供たちの描写が生き生きしているのもさすがです。『お文の影』のしっかりものの男の子、『博打眼』で話の中心となる女の子とその男友達、『討債鬼』の悪童三人組、それぞれタイプの違う子供たちの表情がしっかりと見えてくるのも、宮部さんの腕を感じさせられました。