星やどりの声 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 1663
レビュー : 162
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041013359

作品紹介・あらすじ

東京ではない海の見える町で、亡くなった父の遺した喫茶店を営むある一家に降りそそぐ奇蹟。若き直木賞受賞作家が、学生時代最後の夏に書き綴った、ある家族が「家族」を卒業する物語。

感想・レビュー・書評

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  • 母・律子、長女・琴美、長男・光彦、次女・小春、三女・るり、次男・凌馬、三男・真歩…父親・星則を病気で亡くした家族の物語。
    六人兄弟それぞれの視点から描かれる。とても優しくて、まっすぐで、一生懸命な家族の姿に温かい気持ちになり、そしてホロリと泣ける。いつも今までも、これからもずっと星空からお父さんに見守られ続ける早坂家。なんて素敵な家族なんだ!
    何度も読み返したい気持ちになる話だった。

  • 文庫化される前、図書館から単行本を借りて読んだときのレビューです。ご了承下さい。<(_ _)>

    何故かこの本、それほど古いものでもないのに所々でページの紙がしわしわになっている。
    とりわけ、最後に近づくにつれて、それが激しい。
    水分でも付着したせいだろうか。
    一度くっついてから、はがれたような跡が残っている。
    雨に濡れたか、雪でも付いたか。
    いずれにせよ図書館の本なのだから丁寧に扱わないといけないのに、と誰か分からぬ借り手に少し憤りを覚えた。
    だが違った。
    紙が濡れたのは、そんなことではなかったのだと、後に知ることになる……。

    星やどり──なんと素晴らしいネーミングセンスだろう。
    「雨やどり」ならぬ「星やどり」。

    亡くなった父親が秘かな思いを込めて改築し、命名した喫茶店「星やどり」。
    そこには天窓があり、夜になれば星がいつでも見える。
    家族は男三人、女三人の六人兄弟と母親。
    長女の琴美。
    長男の光彦。
    二女の小春。
    ニ男の凌馬。
    三女のるり。
    三男の真歩。
    それぞれ魅力的なキャラを持ち、その異なった個性を活かしながら、みんな自分なりの生き方を選んでいる。
    物語の後半、「星やどり」の本当の意味が明らかになる。
    ようやく、ぼくは気付いた。
    そのあたりから、この本の紙がしわしわになりつつあるのを。
    それは結末に向かうにつれ、頻度が高くなっていく。
    そうか、これは雪や雨に濡れたのではない。涙の跡なのだと。
    自分自身も、目頭が熱くなり、涙が零れそうになったから分かったのだ。
    この本を読んだ人たちが思わず感動の涙をこぼしたが故にできたしわの跡なのだと。
    それほど、このストーリーは結末に向かって、ほろりとさせる素敵な話だ。
    湯気の立ち上るビーフシチューの甘い香りが、行間から匂い立ってきそうな温かい物語。
    まさに、朝井リョウ君の真骨頂。
    文庫化されたら購入し、是非手元に置いておきたい作品です。


  • 三男三女がいる家族の物語。

    海沿いの街を背景に、きょうだい達がそれぞれの道でもがく姿が、とても爽やかな印象でした。

    1「すごくうるさい。すごくうるさいけれど、その中に入ってしまえば気にならない。
    こういうとき何も考えずにいられる人間のほうが、きっと、社会に出てからたくましく生きていける。」

    この感覚は、とても共感しました。
    何も考えずに楽しめばいい時に、ネガティブなことを考えてしまい、一瞬、温度が冷めてしまう。
    その結果、さまざまな場面で損をしてしまった経験が、自分には多いと思った。

    2「学費は親に出してもらって、バイクだって買ってもらって、自分の行きたい大学に行って、ストリートライブをして、好きな時に好きなように曲を作る。そんな佑介のそばにいて、確かめたいことがあった。
    お金と自由、その二つを持っていても、夢はかなわないということもあること。」

    自分も佑介のような立場なので、心が痛かった。
    経済的に恵まれない環境下で、自分勝手なことができない小春は苦しかっただろうと思う。
    でも、お父さんがくれた夢だけは捨てられない。
    小春ほど、夢に向かって、めげずにひたむきに頑張っている人はいないと思う。

    3「お父さんは、ほしのり、が欠けて途切れてしまう輪を、ほしやどり、で繋ごうとしたの。」

    きょうだい6人と、夫婦2人の名前のしりとりで作られた輪。
    その輪から、父がいなくなる。だからその代わりに作られたのが、ほしやどりだった。

    朝井さんの作品の中では珍しい、ロマンチックな結末だったと思う。


  • 舞台は鎌倉かな、と想像しながら読みました。
    自分ではこういう人、と思っているけど、家族とはいえ他の人から見たら全然違うんだなぁ。
    そのあたりのギャップが興味深かったです。
    若い方ならではのキラキラ感というか、クリアな世界観の中にひたることができて心が美しくなる小説でした。
    愛情のつまったビーフシチューが食べたいな。

  • 《quotation》

    「だってビーフシチュー、おごってくれるって言いましたよね。お父さんもそんなに好きだったんなら、どれだけおいしいのか楽しみ。約束守ってくださいね」
    「理由それかよ!」
    親指で涙を拭ってぐるりと振り返ると、あおいは楽しそうに笑った。
    「先生のお父さんだって、スーツ似合ってなかったですよ。リフォームが完成したときに一回だけ着てきたの、私、覚えてます。びっくりしたんです。似合ってなくて。」
    だから大丈夫ですよ、と言って網戸を開けたあおいは、「風つよーい」と黒髪を揺らした。
    開けられた窓から吹き込んで来た海風が、涙の跡の上を撫でていく。細い冷たさだけが光彦の頬の上をもう一度伝っていった。

  • 6人きょうだいそれぞれの視点から話が進められる。みんなの大好きだった父が亡くなってから、母は星の形の天窓?のある喫茶店を続け、長女は結婚した後も家族を支え続け…みんな魅力的でまたすぐ読み返したくなった。

  • 家族のひとりひとりが主役。そしてひとりひとり家族を卒業してまた新しい家族を作っていくんだなぁ。優しい物語でした。

  • 「雨やどり」ならぬ「星やどり」。雨を避けるのではなく、満点の星の光を避けるために改名した喫茶店。
    物語は、父が残したこの喫茶店に込められた本当の深い意味である家族愛を、妻、子供たちの成長とともに家族が一つになって、そして離れていくけれど、家族は広がり再び家族愛という輪廻の世界に繋がっていく。
    ラストは、そんな家族を天井からいつまでも見守る父がいる、いつでも家族を見れるように天窓を考えた父、その優しさは妻といつまで経っても子供たちの成長を楽しみにしている父の思いやりだった。
    子供を持つ父親にはお涙ぽろりの1冊。

  • 今の自分と同じ年齢の主人公が登場してきて、とても共感できました。
    何人かの人をそれぞれ主人公にした、短編集でしたが、それぞれの考え方の違いなどが、すごくよく表れていて、最後にはみんなが結びついていく。計算されたように思えてしまいますが、あまりにも綺麗に結びついていくので、その違和感のなさに感動しました。
    心の中に、ひっそりと、しっかりと残るお話でした。

  • 【あらすじ】
    東京ではない海の見える町で、亡くなった父の遺した喫茶店を営むある一家に降りそそぐ奇蹟。若き直木賞受賞作家が、学生時代最後の夏に書き綴った、ある家族が「家族」を卒業する物語。

    【感想】
    初めは、登場人物が多くて困惑したけれど、ひとりずつがどんなひとなのかわかってくると、物語にのめり込むことができた。どのひともそのひとらしさ、考え方、容姿、行動が違って、その違いが面白かった。家族の繋がり、そして絆には、本当に感動した。しばらくしたらまた、読み返したいなあと思った。

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著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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