団地と移民 課題最先端「空間」の闘い

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041013885

作品紹介・あらすじ

そこは外国人、高齢者をネトウヨが襲う「空間」と化していた。
団地は、この国の“未来”である。
外国人実習生や排外主義者の問題を追い続ける著者が、日本だけでなくテロ後のパリ郊外も取材し、日本に突きつける!!

団地。そこは、かつて「夢と希望の地」だった。
しかし、いまは都会の限界集落と化している。高齢者と外国人労働者が居住者の大半を占め、
さらにそこへ“非居住者”のネトウヨはじめ排外主義者が群がる。
排外主義的なナショナリズムに世代間の軋轢、都市のスラム化、そして外国人居住者との共存共栄……。
団地はこの国の課題最先端「空間」となっていた!!
厳しいこの現実に負けずに、“一緒に生き続けること”を実践している各団地の取り組みを私たちは“日本の未来”に出来るのか? 
この国の“これまで”と“これから”を浮き彫りにする、地べたからのルポルタージュ!!

感想・レビュー・書評

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  • かつての「ニュータウン」が住民の高齢化
    により、「オールドタウン」化している
    ことは、あちこちで報道されています。

    一方で、中国人などが移り住み、治安が
    脅かされている団地などがあるとも聞き
    ます。

    本当はどうなのでしょうか。

    本書では、とにかく現地での様子をルポ
    することにより真実をあぶり出します。

    高齢化は致し方なしとしても、外国人
    移民との分断は果たしてあるのか、事実
    を丁寧に取材しています。

    また、海外の例も押さえています。

    治安が悪化しているのが本当であるなら
    ば、本格的に移民を受け入れているフラ
    ンスなどはどうなのでしょうか。

    テロの温床とまで言われているパリの
    郊外の「団地」を訪れて、現状をルポ
    します。

    田舎でもない、都会でもない「郊外」の
    現状を詳細にレポートしている迫真の
    ノンフィクションです。

  • 我々が見慣れた「団地」を、移民と高齢者がひしめく課題最先端空間として切り取った一冊。両者の衝突が起こる本当の理由は、世代間のギャップ。摩擦は避けられないが、同じヒトとして相互理解に取り組もうとする人々の姿に勇気付けられた。著者の丹念な取材を感じさせる一冊。

  • 2023/11/04

  • 読み終わった。住居は生きていくために欠かせないけれど、人は排除を簡単に選ぶし、無知すぎる。

  • 都内の団地に住んでいる人間として、たいへん興味深い内容だった。1950年代以降の団地の流れもおおまかに理解できる。

    ページが進むにつれ、団地に住む移民問題に焦点があたり、差別や不平等の話がメインとなってくる。個人的には団地の文化的側面を多角的に知りたかったので、少し物足りなかったが、それでもおもしろい内容だった。

    団地の建て替えが住人の高齢化により社会問題となっている今、とても意義のある内容だと思う。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001196602

  • 興味深く読んだ。なんて言うと他人事みたいだけど、全然他人事ではない。今住んでるアパートにも外国人が多く住んでいる。隣に住んでいるのは日本人みたいだけど名前も知らない。下の部屋では孤独死があった。自分も孤独死する可能性は高い。

    著者の代表作であろう「ネットと愛国」は読んだことがあったので、この本もその部分に焦点が当てられているのかと思って読んだ。しかしそれは団地の一側面だ。団地にはその時代の市井の生が色濃く立ち上がってくる。孤立死、団地にまつわる時代の栄枯盛衰、価値観の変化、団地妻(!)、高齢化、パリの団地、外国人との軋轢、交流の取り組み・・・団地のそんな多様な側面にこの本は光を当てている。まさか団地妻に焦点当てて1章書くとは思わなかったが、ここでの描写には吉村昭を連想するものがあった。とにかく、そうやっていろんな角度から団地を描くことで、団地の過去と今、国内と国外、そして未来への希望が見えてくる。

    もちろん、先行きは簡単なことじゃないだろう。若い世代は未来を変えていこうする様子が描かれていて印象的だった。若さをまぶしく感じた。その一方、高齢者はどうだろう。変わることは難しいのではないか。それは自分事として、保守化して殻に閉じこもるのがわかる気がしてしまう。最終的には交流が深まるより先に、時間と共に高齢者はいなくなってリトルxxxタウン、みたいな閉じた小コミュニティが各地に誕生するのではなかろうか。移民を受け入れた欧米国と同じように。

  • なんか所々ちょっと話がブチっと切れる感じがしちゃうところあったけど、それ以外は興味深く読んだ。特に自分で住みながら共生を探ってる青年の話が面白かった。


  • 高齢化問題と移民問題、その2つを包含する団地のルポルタージュ。

    実際問題、こういうところの現状は、中に入ってみないと分からない

  • 団地の現状に取材したルポ。まちづくり、高齢化、多文化社会などを考えるきっかけになる。
    60~70年代に日本各地に建てられた団地は、かつては最先端の暮らしの象徴であり、憧れの生活モデルだった。濃密なコミュニティがあった。しかし現在は建物の老朽化、住民の高齢化とともにコミュニティも弱体化し、孤独死が課題となっている。
    一方で外国にルーツを持つ住民も増えて、世代と文化による断絶が生じている。中華系の多い芝園団地、残留孤児の住む広島基町、日系ブラジル人の住む保見団地。ヘイトを煽るデモや報道の一方で、現場では有志による文化交流などの努力が行われている。
    第4章では移民が多く住むパリの団地の現状を伝える。住民運動「アソシアシオン」では、貧しい人への炊き出し等が行われる。慈善だけでなく、住民自身のアイデンティティ維持のための運動でもある。

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著者プロフィール

1964年生まれ。産湯は伊東温泉(静岡県)。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。『ネットと愛国』(講談社+α文庫)で講談社ノンフィクション賞、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(月刊「G2」記事)で大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社) 、『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、 『団地と移民』(KADOKAWA)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日文庫)他、著書多数。
取材の合間にひとっ風呂、が基本動作。お気に入りは炭酸泉。

「2021年 『戦争とバスタオル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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