中途の家 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2015年7月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784041014585

作品紹介・あらすじ

トレントンにあるあばら屋で、正体不明の男が殺されていた。しかし、その男の妻を名乗っているのは二人……。男は重婚者で二つの街で別々の人格として暮らしていたことが判明した。はたして犯人は……。

感想・レビュー・書評

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  • 一九三六年刊行、エラリーもの長編十作目。「読者への挑戦」が挿入される最後の作品。推理パズルから文学志向へと作風を変えていく転換期の一冊と言われる。

    一気読みだった。これまで国名シリーズを読んできて、ノッてくるまでに時間がかかることが多かったが、今回は始めからブンブンいって終わりまで読むスピードが落ちなかったなあ。
    重婚、裁判、女新聞記者、社会性、といった要素は、先に読んでいた一九四二年刊行の『災厄の町』と重なる。ただ、私は『災厄の町』より『中途の家』のほうが断然好き。名探偵たるエラリーの行動が、これまで読んだどの作品よりも人間的で自然だなあと感じるから。
    メタにいえば探偵小説の主人公なんだから頑張って捜査して推理して当たり前だが、今回のエラリーの頑張りの裏には、友人とその妹を守るため、という強い動機がある。エラリーのプチロマンス(?)がさしはさまれる点も『災厄の町』と似ているが、あちらのほうがどこか“物語進行の都合”、『中途の家』は“身銭を切った捜査の一環”という感じがした。(そして飯城勇三『エラリー・クイーン完全ガイド』にあったとおりの“寅さん体質”を遺憾なく発揮)

    犯人当ては、今回初めてまあまあ自信があったので、でもこれ正解だったらちょっと簡単すぎない?と思いながら解決編を読んだら、んもうこれまた見事に振り回されましたわ。楽しませるのが本当にうまいなあ。

  • 2つの名前を持ち二重生活をしていた男が殺された。
    彼は一体どちらの人格ととして殺されたのか。

    登場人物が魅力的で人間ドラマとしても面白く、クイーンのフェアプレイに徹したミステリーとして最高だった。
    エラリーの隙のない論理に感心しつつも、さりげなくも大胆にあった伏線を見過ごしてしまった悔しさも。
    クイーンがますます好きになった作品。

  • 被害者が二重生活を送っていたと判明してからの展開が特に面白い。
    また、裁判のパートが特に印象に残った。緊張感があるし、連日にわたる裁判の様子が結構なページ数を割かれて描写されている。捜査という形ではなく裁判という形をとりながらも新事実などが出てきてちゃんと話は進んでいるのが面白い。
    クイーン警視の出番はほぼないけど、旧友のために頑張るエラリーが良かった。

  • トレントンという町の粗末な小屋で、エラリーの旧友ビルの義弟ジョーゼフの死体が見つかる。死の間際にジョーゼフは「顔をベールで覆った女にやられた」と言い残し、ジョーゼフを刺したナイフはなぜか焼いたコルクに突き立てられていた。
    エラリーが捜査に乗り出すと、ジョーゼフはビルの妹ルーシーと結婚生活を送る傍ら、上流階級の女性ジェシカ・ギンボールとも結婚していたことが発覚する。ギンボールの一族はその事実を知るや否や、つい最近ジョーゼフの保険金100万ドルの受取人がルーシーに書き換えられていたことも手伝って、ルーシーに敵意をむき出しにする。さらに、事件のあった時間にルーシーの車が被害者宅周辺で目撃されていたことから、ルーシーは逮捕されてしまう。
    弁護士でもあるビルは、妹の弁護人として法廷に立ち、エラリーも旧友の妹のために協力することになる。当初は弁護側が優位に裁判を進めたが、指紋鑑定の第一人者らが召喚された結果ルーシーの有罪が確定し、禁固刑が言い渡されてしまう。妹を救うことができず自暴自棄になるビルに代わり、エラリーはギンボール家で唯一良心的ではあるものの、何かを隠し続けているアンドレアに接近し、真相に迫っていく。
    国名シリーズは、回を重ねるごとにパズル的要素に加え重厚な人間ドラマの要素も大きくなっていったが、この作品はまさにその傾向が強く、頂点に達した感がある。二重生活を送り続けたジョーゼフの人生、妹を助けるべく弁護人を務めるものの敵対するギンボール家のアンドレアに惹かれてしまうビル、いつもの飄々とした面はなりを潜め旧友の妹を救うために奔走するエラリー。人のためにこんなに感情を剥き出しにするエラリーは初めてではないだろうか。
    中盤は公判での証人尋問形式で話が展開されるので、その熱量と臨場感は半端ではない。天秤のごとく形勢は入れ替わり、相手方が持つ切り札とは何なのかとやきもきさせられる。また、このスタイルで話が進むためエラリーのいつもの「焦らし」はほとんどない。ルーシーの有罪判決が下された後も、落ち込む暇などないとばかりに社交界に進出してアンドレアに近付き、彼女の良心を信じてルーシーが収監される拘置所に連れて行くエラリーはいつにも増して格好いい。そういった点に、今までにないエラリーの人情を感じた。
    興奮のクライマックスと消去法による推理が本当に素晴らしい。

  • 今回は登場キャラクターに人情味がプラスされていて、推理パートも物語もとても楽しく読めました。
    読後感が、わたし好みの爽やかさだったので久しぶりに星4。

  • ★4にしようかとても迷ったが、裁判での手に汗握る展開には国名シリーズの中でも随一と言っていいくらいページをめくる手が止まらなかった上、エラリーの推理が今までの作品と比べても引けをとらないほど鮮やかだったので★5にした。

  • 国名シリーズの論理パズルとライツヴィルものの人間ドラマが融合した実験的な作品。紙マッチ、焼けたコルクから導き出す消去法推理はスリリングで、同種の『Zの悲劇』と甲乙つけ難い出来栄えです。
    また、ヒロインのアンドレアがなかなか魅力的で愛憎劇としても読み応えがあり、地味な物語ですが良作だと思います。

  • 角川文庫の越前先生の新訳本10冊目。これで国名シリーズはおしまい?ミーハーなので、このシリーズを表紙買いしていた私としてはもっともっと!という気分。
    さて、何が中途の家なのかというところからで、この本も先が気になり夜更かし&夜中起き&早起きして結局は寝不足までして読んだ本でした。一人一人のキャラがわかりやすくて現代版の映像化なども可能なのでは?
    で、通例の決め手となるアレも今回もまたあれ?っていうものでした。

  • 意味的には中途の家というよりは、真ん中にある家。何と何の真ん中にあるかというと…。

    エラリーは旧友ビルと再会し、妹ルーシーの様子を聞く。結婚相手ジョーゼフとの仲も良好だというビルだが、単なるサラリーマンにしては金回りがいいのが気になる。ところがビルが訪ねた時、ちょうど彼の家からヴェールを被った女性が出てくる。その後瀕死の状態のジョーゼフも、「ヴェールを被った女」と言い残して亡くなる。ビルに呼ばれたクイーンは、ジョーゼフが二重生活を送っていた事を知る。彼には別に妻も娘もいた。そして直前に保険金の受取人がルーシーになっていた事から彼女が疑われてしまう。

     しかし二重生活しながら、よく二つの家族をだませたもんだ。いろいろな意味で体力がないと続かない。今回は父親の登場頻度が少なく、ほぼエラリー回。親友ビルと、その妹の窮地を救うために奔走する。真意を語らず罠を仕掛けるので第三者には不評だが、当然ながら必ず彼の立てた推理が正解なので不肖に付される。恋愛と疑惑の板挟みになるビルを見ていると、これが一般人の心理なんだなとしみじみ。エラリーが恋愛したらどんな相手になるのやら。

  • 2024/12/24

  • 国名シリーズのプラスワンという趣の作品。
    タイトルは継承してないけど、読者への挑戦状は用意されている。展開はシリーズ作品とは異なる趣で面白い。けどこの落とし方はどうなの? 犯人が分からなかったから言うのではないけど、ちょっと何だかなぁ。

  • まさにエラリー・クイーンの真骨頂。パズラーとしての完成度の高さ。そして訳者の力量も素晴らしい。

  • 普通に面白かったし、中盤は法廷ものみたいで新鮮だった

  • 2021/03/20読了

  • ロジカルな推理小説は、時代とともに推理の前提となる常識(女性は○○を持っている、とか)が古びると納得するのが難しくなりそう。その点、人の心理に拠って立つ推理小説の方が案外賞味期限が長い。

  • 面白かった。
    登場人物が少ないせいか話もこじんまりしていた。

  • 流石だわー
    はー
    後ろから見るとなるほど、となるけれども誰が犯人かわからなかった!
    そうかーそういう理屈ならそうだよねぇ!という気持ちになる
    はー見事じゃ
    たしかに私も一応口紅持ってるなあ➰

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エラリー・クイーンの作品

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