- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041014820
感想・レビュー・書評
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冒頭───
入学式が終わって体育館を出ると、部活動の勧誘が待ち構えていた。それぞれのコスチュームに身を包み、キャッチセールス顔負けの無駄に爽やかな声で新入生に呼びかける。
体育館から校門まで桜並木が続いている。入学式に合わせたかのように見事に満開になっているのだが、桃色の花弁が散る中でカラフルなコスプレもどきをした人たちが騒いでいるのは、あまりにも見苦しい。桜への冒涜に等しい。
新入生の双子の姉小松茂子は、妹三重子を盲目の恋から立ち直すために高校内に政治部を創設する。
メンバーは、いつでも沈着冷静な茂子。
恋に恋してしまった妹の三重子。
電波オタクのムセンこと田崎もも。
大富豪の息子、ボンボンこと成村明人。
中年のような風貌のオッサンこと柏木保。
この五人が『政治部』という隠れ蓑の中で、訳あって“総理大臣暗殺”という目的を掲げ、それぞれの役割をこなしていく。
途中から、ガイコツこと清水弥生もそのメンバーに加わる。
この個性的で、自分の目的のためには手段を選ばぬ自己中心的な生徒たちが、用意周到な計画を練り、総理大臣暗殺に向かって着々と突き進む。
一見、荒唐無稽な設定なのだが、これがなかなかに面白い。
と言っても、実際の暗殺には当然のごとく、多くの障壁が立ちはだかるのだが。
自分の利益でしか結びついていなかった部員たちだが、最後の事件を機に、六人の間に不思議な心情が芽生え始める。
それまで経験しなかったことに遭遇し、一人一人が確実に子供から大人への一歩を歩みだしたことの証。
このときの六人は眩しく輝いてさえ見える。
あれだけ幼く、独りよがりの考えしか持たなかった六人が、自分の本音を吐露することで人間としての連帯感が生まれる。
冷酷なまでに無機的で感情を表さなかった茂子さえもが、ここにきて突然、血の通った人間になる。
その転換部分が見事だ。
そして、予想だにしなかった最後の三重子の行動。
この作品は何やら不思議な小説だ。
SFでもミステリーでもない。
読み終わってみれば、爽やかな青春小説にさえ思える。
白河三兎という作家の懐の深さを知る作品だ。
ちょっと変わった面白い小説を読みたい人にはお薦めの作品です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
感情がマヒするほど心が傷んでいるとき、ものすごく理詰めになる。きっと自尊心が高ければ高いほど。理詰めでがんじがらめになってる状態がほぐれるその瞬間をこんなに鮮やかに提示されるなんて。
共感できない題材だからこそむしろ共感出来てしまう。
傷ついてるなんて絶対に認めたくないって何とか背筋を伸ばそうとしてるときに、説教たらしくなく、するりと心に入り込んでくれるような本。 -
白河三兎は、例によって青春ミステリ。
政治部に入って、“総理大臣暗殺”を企てる妹の為に青春する姉の話。
村上春樹が非現実的で孤高な感じを醸すとすれば、白河三兎は実に愛着の湧くクールを描く。
キャラクターのユーモア・ニヒル具合が、個人的な趣味に良く合う。
ストーリーも、少しヒネクレた学園もので面白い。
筆者他作品に比べて、少し文学のテイストがある。壊れていない本谷有希子というか、エンタメ系藤野千夜というか。
今回の方針なのか、作風変えてきたのかは今のところ不明。
4- -
遠い暗殺計画の中にあるのは
身近な人への思い。
物語は欠落を埋め、想像力を高め、
そして私を救ってくれる。
時として絶望に追い込まれたとしても、
それでも物語に縋ってしまう。 -
途中までは、ありがちな学園ものかとか野ブタをプロデュースみたいな話になって読み進むのが遅くなったけれども、後半から一気に読みました。帯に書かれていた通り青春を戦った読後感のとても良い作品でした。でも伊坂幸太郎のアヒルと鴨のコインロッカーに似ているかな。
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荒唐無稽でバカらしく、「ないわー」って思いながらも読み進め、気づいたら納得しながら読んでるけど、やっぱりまた「ないやんw」って思うんだけど気づいたらまた納得して読んでる。
設定に奇抜も何もない、ちゃんと伝えたいものがあるからいいんだ。
初めて読んだ「私を知らないで」とは全くテイストが違うのだけど、彼女の吸引力というか求心力は力強くて、そのもの凄さは変わらない。 -
巷で話題だったので、図書館で借りて読了。最初の方の読む勢いは良かったが、後の方になると展開がいきなり変わって、理解できなかったり、感情移入できなかったりした。
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白川三兎らしくない作品。
芯のあるヒロインも、衝撃的な大どんでん返しもない。
白川三兎の良さは登場人物の内面を描くことにあると思うが、政治部のメンバーの背景がはっきりと見えてくるのは物語の最後なので、それまではキャラクターをはっきりとつかむことができない。
高校生が超短期間で暗殺の技術を習得するという中途半端な非現実性も受け入れ難かった。
『ケシゴムは嘘を消せない』のように透明人間が出てくるような圧倒的なファンタジーであれば逆に受け入れやすいのだが。
それと、これは著者の作品を読みすぎていることによる弊害なのだが、いつどんでん返しが来るかを警戒してしまって、素直に事実を呑み込めないことが何度もあった。
ムセンというキャラクターが主人公を上回る頭脳明晰な生徒なのだが、彼女が弱みのようなものを見せるたびに、「これは罠なのでは?」と不必要に勘ぐってしまう。
そんなのいちゃもんに過ぎないと思うかもしれないが、今作は全体的に状況説明やネタ晴らしの説明が下手な気がする。
そのせいもあり、文章からキャラクター像に違和感を覚えることが多かった。
オッサンとボンボンの友情が芽生えるエピソードもなく、三重子の内面もあまり見えてこなかった。
ガイコツは途中参加ということもあり、生徒会選挙以降は存在感が薄かった。
物語の中心に据えている「総理大臣暗殺」というのもいまいち現実味がなくて、個々のエピソードとのつながりが弱く、取っ散らかった印象。
構成力も光る作家のはずだったが、それも見えず、まとまりのない作品だった。 -
図書館で借りたもの。
新入生の三重子が立ち上げた謎の部活〈総理大臣暗殺クラブ〉。メンバーは一風変わった者ばかり。総理大臣暗殺というバカげた目標のために、青春の日々を楽しく、そして必死に費やす若者たちの真実は! ?
すっごく面白くて一気読み!!
タイトルから「シリアスな話?」って思ったけど、違った!(明るくもないけど)
テンポが良くて読みやすいし、頭脳戦が読んでてすごく楽しかった!
茂子の身体能力は蘭ねーちゃんを当てはめるとしっくりきます(笑)
映像化したら面白そうだなぁ。