八月の六日間

著者 :
制作 : 謡口 早苗  大武 尚貴 
  • KADOKAWA/角川書店
3.66
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  • 本棚登録 :1472
  • レビュー :249
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041015544

感想・レビュー・書評

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  • ブログでもTVでも紹介されていた本でしたが、なぜか食指が動かず。先日本屋のポップに誘われ何気なく開き、表題の八月の六日間をぱらりとめくり、挿画に思わずあっ、となりました。
    富山駅からバスで薬師岳の登山口に達し、北アルプスの山懐、黒部川源流の雲ノ平に至る山行。何十年前に辿った登山と同じルートではないか。

    アプローチが長く、歩く人も少ないので、山渓では天上の楽園と紹介されていました。そのまま即購入、単独山行の静かな雰囲気と、時折少しだけ不安になるあの感覚を再度味わうことになりました。

    会社生活を始め、週末になるとあちこちの山を巡っていた時代が懐かしい。私も主人公と同じく、人のペースに合わせるのが苦手で単独行を好んでいました。山に入りひたすら歩き続け、深い森で迷い、急峻な岩場に緊張したり、全身の感覚が鋭くなり、幾分ハイな気持ちで山歩きを楽しんでいた、あの頃と主人公の気持ちが重なります。

    雲ノ平に至る太郎小屋でも午後の2時ごろ天候が悪化、ゴロゴロと稲妻が鳴り出し、慌てて小屋に駆け込んだところ激しい雷雨が襲ってきた経験も今は懐かしい。黒部川の源流は斜面に残る雪渓の雪解けの雫。ポツンと溶けて滴り落ちる一滴が集まり、やがて大きな黒部川となっていく。
    むろん、雫をカップにあつめて生まれたての黒部の水を堪能しました。

    雲ノ平以外にも、八ヶ岳連邦の天狗岳、高見石小屋、白駒池など、自分と同じ山行ルートがいくつも出てきました。はしご場、ザレ場、鮮やかな高山植物、ガスって見通しの効かない行く手、雨に打たれ気持ちが萎えかけるが、やっと着いた山小屋でのビールの旨いこと、全く同じ感覚です。

    読後、押入れに保管していた古い40リットルのザックを出し、本棚に飾られた雲ノ平から撮影した薬師岳の写真を眺めながら、はるか昔?の山行を思い出す。山好きには大変面白い一冊でした。

    むろん、地上に戻った主人公、独身アラフォー、女性編集長の思いも聴いてあげねば。

    • カレンさん
      8minaさんも山、されていたんですね。
      私は遅がけから始めまして、ただいま夢中です(^o^)
      ですので山を題材にした本には飛びついてしまいます。
      雲ノ平にも行かれたんですね~
      水晶とセットで行きたいと思っているのですが、中々日程が・・・
      また是非、山再開してくださいね。
      2015/03/02
    • 8minaさん
      カレンさん、こんにちは。
      今日は家の用事でお休みですが、午後はゆっくりと読書できそうです。
      独身時代の山行も、結婚し、子供ができてからは遠のいてしまいました。車いっぱいの道具を積んだキャンプも、そんなに喜ばなくなるほど子供も大きくなり、そろそろまた単独行の山歩きの時期かもしれません。
      2015/03/02
  • ここ最近、平日は池袋・ジュンク堂に日参しています。
    その中に設置されているカフェで出会ったのがこちら。

    といっても、本そのものが置いてあるわけではなく、
    とある雑誌での、著者の北村さんと華恵さんの対談にて。

    “年を経ていくごとに繰り返して読みたい”、
    そんな風に語っておられたのがなんとも印象的で。

    主人公はアラフォーの編集女子、副編集長からそろそろ長に。
    役を持たない若いころは男性上司を、文字通り泣かしたことも。

    基本的には不器用で、ただひたむきに仕事を積み重ねてきた、
    それが故に“恋”もうまくこなせずに、未だに一人。

    そんな“強い”主人公が、日常から逃れるためにいくのが“山”。
    その山登りの様子が、5編からなる連作短編としてまとまっています。

    徐々に責任のある立場になっていくことで、
    若いころのように“自由”に仕事ができなくなるジレンマ。

    それ以上に自分の思い通りになることが無い自然の中で、
    その自然の美しさや一期一会の奇跡に魅入られていく主人公。

    なお、山歩きの際に必ず“文庫本”を持参するとの設定が、
    個人的には何とも素敵だなぁ、、と感じてしまいます。

    主人公の職業柄、“本”からは離れられないのでしょうが、
    ある意味そんな“仕事道具”を、非日常でどう昇華するのか。

     “ずっと本と一緒だった”

    そんな風に本への想いを綴っているのは、華恵さん。
    そのエッセイ集、『本を読むわたし』の中にて。

    これを狙っての対談であったとすれば、私は見事にやられました。

    日常と非日常をつないでくれるのが“本”、
    ケでもハレでも、自身の軸を思い出させてくれる、

    私にとっての本とはそんな存在なんだなと、あらためて。

    久々に人生唯一のトラウマに囚われつつあった自分を、
    現実に引き戻してくれた、そんな一冊でもあります、なんて。

  • 一言で表現すると「40代の女性編集者の登山日誌」なんですが、
    読んでいて、とても楽しく清々しい気持ちになりました。

    気力も体力もないから登山なんてとてもじゃないけど無理。
    (それも一人でなんて!)
    でも、この本のおかげで彼女に同行して登山を楽しむことができました。

    遠足の準備をするように、リュックの中身をチェックして~。(これが妙に楽しい♪)
    一番のポイントは、もちろんおやつ(笑)

    ”手の届くところに活字がないと不安になる”と言って
    持っていく本も気になるところでした。
    わりあい渋めなチョイスでしたね。
    『作家のおやつ』は今度絶対読みます。

    実際に登山する方がどうなのかは知りませんが、
    こんなにたくさん持って重くないのかなぁ…と。
    (さすがに後悔する場面も…。)

    ”羊羹の丸かじり”
    あぁ、これ人生のうちで一度はやってみたいことの一つです♪
    下界では少々罪悪感があってなかなか…。

    ただひたすら頂上を目指し、そして下山する。
    その達成感とともに、日常生活の中で知らず溜まった澱のようなものも”浄化”される。

    山に登るって、そういうことなのかなって思いました。
    「そこに山があるから」の言葉のように、
    そこに理屈はいらないんですね。

    本好きな自分が本を見ると、吸い寄せられるように手にしてしまう。
    それと似ているんだと思います。

    • 杜のうさこさん
      けいたんさん、こちらにも~ありがとう!

      これはね、年末恒例うさこの積読山お片付けの一冊(笑)
      だから『八月の六日間』を12月に読むという羽目に。あはは~
      でも雪山の章もあったからいいんだけどね。
      この本も面白かったよ♪

      あ~わかる!
      私もできる限り本屋さんで買いたいから。
      探し歩くのも本好きの楽しみのひとつだもんね。

      あ、それとさっき忠臣蔵コメントに書き忘れちゃったけど、
      昨日の私の大失敗に関するコメント
      けいたんさんの本棚の邪魔になるといけないから消しちゃってかまわないからね~。

      では、またね(*^-^*)


      2015/12/22
    • けいたんさん
      こちらにもまたまた失礼(〃∀〃)ゞ

      私も積んでる、積んでる(笑)
      本探すの楽しいよね〜♪
      そして、違う本買ったり。

      杜のうさこさんのコメントは、本の事が書いてあるので取っておきたいです。

      私の火花は消させてくださいね。
      私たちがけんかしてると思われたら寂しいので(*≧艸≦)

      では、またね〜
      2015/12/23
    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      今日は年賀状を印刷してました。
      失敗した年賀状の数々…=͟͟͞͞( •̀д•́)))

      コメントの件OKで〜す!
      これからもたくさんゆかいな思い出ができますように(*^^*)♪

      杜のうさこさん、ハッピーメリークリスマス(⁎˃ᴗ˂⁎)
      2015/12/24
  • 生活している間に身にまとってしまう鎧は重い。
    気負いも、何かを背負っているから
    かなり重いんだと思います。

    山を登るって、自然の中に入らせてもらうっていうのは
    きっとそんなものをそのまま持ち込むと
    命にかかわることになるから、

    そぎ取ってそぎ取って、
    動くのに、生きるのに、
    一番適正なところまでシンプルな自分になっていく。

    あんな大変な思いをして、怖い思いもして
    どうして山に行くのかは…山登りをしたことがない私は
    やっぱり本で読んだだけではわからないのですが。

    羨ましいことが3つ。

    そこでひっそり咲く花や山野草が見られること。
    頑張って辿りついた人だけが入れる高所の温泉に入れること。

    …そして、同じ山小屋にひっそりと佇んでいる本に
    また再会できること。
    こんな楽しみ方もあるんですね。山って。

    本を開くと清々しい風が吹いてくる
    熱帯夜に読むのもいい一冊です。

    主人公の持ち物の準備のくだりも楽しいです。
    北村薫さん、女性の好きな食べ物(お菓子)
    わかってらっしゃいますね~。

  • 好きな北村薫さんが帰ってきた気がした。

    わたしと北村薫さんとに出会いは「時の三部作シリーズ」から。
    今回も時にまつわるフレーズが出てくる。
    (あーやっぱり時に対する心持ちがいいなー)ってなる。

    今回の題材は山。
    あまり気にもとめずに繰り返している日常への感謝や、圧倒的な自然への畏怖や感動を体感したくなる。
    一人で旅をするのは海よりも山の方がいいのかな?と感じ入る。

    元彼氏 原田への棘を残したまま最後へ。
    最後に交わす言葉と表情に北村薫さんらしさを感じて読み終わり。

  • 人はなぜ山に登るのだろうか?
    「そこに山があるから」という、有名すぎる、哲学的な言葉ではなく、ひとりの「私」が、山に登る理由…
    自然に触れてストレス解消?
    体にいいから?
    同じ趣味の仲間を作りたい?
    登りきったら達成感?
    頂上を極めたら征服感?

    四十路を迎えたベテラン編集者の「わたし」は、責任ある仕事に誇りを持ちつつも、ストレスや重圧で体調が思わしくない。
    実は、数年前に別れた男の事も胸の奥底に滓のように沈んでいる。
    「明日。山、行きませんか」
    同僚の藤原ちゃんにある日突然誘われて、「わたし」の山人生が始まった。

    いつもの北村さんの女性キャラは、セリフ回しが独特でちょっとクセがあると感じるのだが、この作品はまるで、リアルに「わたし」が書いているよう。
    昔のままに覆面作家を続けていたら、この作品を持って読者の多くが、「ほらね、絶対に女のひとだってば!」と断定するのではないかと思った。


    『九月の五日間』
    槍ヶ岳。
    羊羹一本持ち歩く「香嚢鹿」さんとの出会い。

    『二月の三日間』
    ストレスで円形脱毛症に…
    裏磐梯。
    亡き友を思ったり、童心に帰ったり。
    ガイドさんやインストラクターもいろいろなタイプの人がいる。

    『十月の五日間』
    「副」が取れて「編集長」に昇進。
    現場から遠ざかるようで少し寂しい。
    昔の男の風聞にも心乱れる。
    上高地。
    おぼろに通り過ぎた風景を味わい直したい。
    山のベテランの忠告にへそを曲げるが、結局は彼の言うとおりだった。
    岡田さんが繋ぐ、香嚢鹿さんとの縁。

    『五月の三日間』
    天狗岳。
    五月の雪と雷、賽の河原。
    ゴールデンウィーク明けにご注意。
    特急「あずさ」は歌の時代とは変り、今は上りが偶数番号である。

    『八月の六日間』
    ロングビーチと山の稜線。
    避けられない一本道での男と女。

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    「わたし」は、山歩き中、よく、体力の限界を感じたり、具合が悪くなったり、命の危険にさらされたりする。
    体も心も極限まで追いつめられる。
    そこまで体をいじめて、なぜ山に登るのだろう…
    『解脱』…かな。

  • 私が山に登り始めたのは、4年前からです。
    体力も運動神経もない私が、富士山に登ってみたいというミーハー心で始めた山登り。
    年に2、3回のペースですが、ゆるくゆるく登っています。

    今回泊まりで山に行くにあたり(結局は、雨の都合で日帰りの山に変更になりましたが)、ずっと気になっていた本書を読みました。
    3分の2は登山前に、残りは帰ってきてから。
    羊羹やカステラ等を詰めて山への準備をするところにわくわく。今回初めて山に羊羹持って行きましたが、すごくいいですね!体力が回復します。

    さて、本書は主人公が40歳目前の女性。
    バリバリ仕事をしている女性ですが、恋人や親友との別れを経験して、苦味も喪失感も十分に味わった人生。
    ただ、そこをクローズアップするのではなく、長い人生の一部分と捉え、時間が流れ続けます。連作長編集になっていて、章ごとに様々な季節の山に登りながら、時間があっという間に経過します。

    冬山に登ることも、1人で登山することも今の私には全く考えられないですが、きっとそんな登山も魅力的なのでしょうね、と感じさせてくれます。
    体力のない私は毎回登り始めて30分もすると来たことを後悔し始めるのですが、それでも山に行くのはきっと、非日常が味わえるから。
    そして、「あーしんどいなあ」と思っても、いつかそれには終わりがある。途中、心癒されることがある。そんなことを、大げさに言えば人生に重ねて励まされているのかもしれません。

    何かが劇的に解決したり、大きなことが起こるわけではない本書。それでも厳しくも美しい自然が人に与えるパワーを感じられる気がしました。

  • 距離を絶妙に計りながら…社会や組織の中で働き、恋愛をし、交友を保つ都会での日常。閉じ込めるモノは多いながらも、私として、個として、一人としてのON・OFFの切り替えは、山歩きあり、書籍ありの"命の洗濯"感…満載。終章のくるめ方がまた良いなぁ♪。澄んだ素の息づかいと時の刻みが心地好く、読む側にもフゥーッと元気を与えてくれる山女通信!?。

  • 良本!OLさんが休暇に山歩きをする、ただそれだけの物語。大事件もなく教訓めいた記述もなく。なのに自分の人生に思いを馳せ、日々の悩みをちょっと手放して一息つける、清々しい読後感を味わえる文章。登山未経験者でもちょっと山に出かけてみたくなる。登山に限らず、ちょっと日常じゃないことにチャレンジしてみたくなる、かも。

  •  山ガールという言葉を聞くようになったのはいつごろだろう。北村薫さんの3年ぶりの小説作品は、帯によれば“働く山女子”小説だという。

     出版社で多忙な日々を送る主人公は、同僚に誘われたのをきっかけに登山に目覚める。仕事が一段落し、長い休みが取れると、計画を練って山に向かう。各編扉にルートのイラストが載っているが、巻末によれば本格的なルートであるという。

     軽装で実力に見合わない難しい山を目指し、遭難する登山者が後を絶たないが、彼女は実力に見合った山で3年間経験を積んでから、これらのルートに挑んでいる。それでも何度もひやっとするのだから、ずぶの初心者ならどうなるか、推して知るべし。

     ひたすら山の描写が続くのかと思ったら、半分くらいは彼女の仕事やプライベートの話であり、山の描写はそっけない。それもそのはず、彼女は写真をほとんど撮らない。記録を残すことより、山に身を委ねる今この瞬間を大事にしているようだ。

     小説というよりは日記に近いかもしれない。その日の出来事を時系列順に、ありのままに綴る。正直、山の素晴らしさが伝わってきたとは言えない。だが逆に、変に脚色されていない分、想像の余地があるとも言えるのではないか。

     単独登山を好む彼女だが、山には出会いがあるし、人との交流を何が何でも避けているわけではない。プライベートの独白から察するに、むしろ人恋しいように察せられる。本作中最も印象的なシーンは、実は山ではないとだけ書いておく。

     気軽な気持ちで登りに行くことがないよう、くれぐれもご注意ください─と、巻末で読者に釘を刺しているが、できれば経験を積み、その目で確かめてほしいというメッセージとも受け取れる。背伸びをせず、自分のペースを守ること。人生においても然り。

     彼女は今日も忙しく働きつつ、次の計画を練っているのだろう。

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