- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041015544
感想・レビュー・書評
-
淡々と読み進めるうちに、自分も山に登ってみたくなる。ゆえに巻末に添えられた「未経験者の方は気軽な気持ちで登りに行くことがないよう、くれぐれもご注意ください。」の注意書きに吹く。ワシのことか。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文学
-
もう若くはない、けれども年をとったというほどでもない、そんな世代の女性編集者の日常と山登り。どこかにいそうな女性の、ごく日常の物語だから、読者も自分ごとに置き換えられる。北村さんならでは。
-
ちょうど今こんなのが読みたかったという本だった。
疲れているのに死んでしまってない主人公。前向きに山に登ろうする主人公。でも無理しないで、たまには登らないで引き返したりする主人公。
いちいち山に登るのに本を持ってかないと気がすまないというところもいいし、結局読めなくてもよいところもいい。
山に登って元気になる人の気持がわかる。
レベルが違って恥ずかしいけど、最近のわたしにとっての山は仕事の合間にちょっとだけする散歩で、図書館まで歩いていったり、猫をみに公園にいったり、ポケモンGOのジムにジムを破りにいったり、コースは毎日違うけど歩きながらいろいろ考えたり考えなかったりするのが気晴らしになってたり、田舎すぎて4kmくらい歩いても誰にも会わないこともよくあるのに、たまにお地蔵さんを参ってる人がいてこんにちはってゆってみたりするのもいい。
でも昨日の散歩では、いつもの靴なのに靴ずれして、わたしのジャックパーセルと友達にもらった二重になってるあったかい靴下に血がついてしまって、気分が大幅に下がった。帰ってすぐ漂白剤使って洗って、今まだ干してるところ。
インタビューを読んでたら、北村先生ご自身は山に登ったことがないのって。「こたつ登山」、いいね。わたしもその路線で、山登りの経験を読書を通して積みたい。 -
山の本としては読みやすく
余韻の残る本だ -
自然の偉大さと山の怖ろしさ。非現実の中での人との出会い。ところどころに垣間見る現実世界の胸の内の引っ掛かり。いろんなものに触れ、40女子は前進していく。
バリバリ働いていて、偏屈で、弱みを見せないけど、心にはいろんなモヤモヤがあって、雷に悲鳴をあげて泣いてしまったり、、、そんな主人公に共感。
読んでいて、自分も山に登ったような爽快感と、日常チクチク胸に刺さる嫌なことを乗り越える(受け止める?)強さを味わった気持ちになる。 -
旅は独り旅、登山は単独行を好むワシは、いわば自分のペースが最も大事で、それすなわち我が儘ということだろう。それでも、旅先や山で出会う、連絡先も聞かない人々との刹那の交流は楽しい。
本作の主人公、アラフォー登山女史には、そんな視点で共感を覚えた。
だけど文体にはやや違和感を覚えて、登山ブログかな、というのが読んでる最中からの正直な感想。これを、著者らしい軽妙さと見るか、著者らしからぬ軽薄さと見るか、難しいライン。もちろん、そこを狙った文体かもしれないが。
何にせよ、山に登りたくなるのは確か。鮮やかな情景が浮かんでくるのは良い。
余談だけど。作中にあるように、旅先刹那の交流で出会った人に日常で再会すると、妙な気恥ずかしさがあるよね。よそ行きの服で会ってた人に買い物用のジャージで会う、みたいな。日本一周をしていた北海道は礼文島で出会った沖縄出身の人が、千葉を通る時に連絡くれて飯食った時なんか、まさにそんな感じだった。 -
登山する女性の友人にすすめら、3ステップでのソロ山行を計画していたときに読む。
北村薫は大学時代に読んだ時と人三部作以降、4作目。
相変わらず女性視点の丁寧な描写がうまいなぁと思う。
ご本人、執筆時は登山せずに書いたそうでそれに納得する描写もいくつか。それでも楽しめた。
主人公のような一期一会があるといいなと思いソロ山行にのぞんだが、素敵な一期一会があり嬉しく思っている。 -
久しぶりの北村薫作品
主人公は都会で働く編集者の独身女性。
山登りのルート、実際に見える景色や、係る時間を正確に辿りながら、追い抜かれたり、すれ違がったり。
私自身は子どもの頃から山登りが苦手だったが、そこで出会う人々、山で過ごす時間、人間関係の尊重の仕方には憧れる。
山の魅力に取り憑かれたり、人生を登山に喩えたくなる気持ちが少しは分かるようになった。