- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041017692
作品紹介・あらすじ
戸惑いつつも、お互いに恋を認識した魚住と久留米。二人の関係は、秘密をはらみ進化する。そして、PTSDに苦しみながらも研究に打ち込む魚住に、アメリカ留学の誘いが届き……。感動の最終巻。
感想・レビュー・書評
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わたしには年に一度必ず読み返すと決めている本がある。村上春樹のノルウェイの森、マーガレットミッチェルの風と共に去りぬ、ジェインオースティンの高慢と偏見、そして榎田尤利の夏の塩・夏の子供。共通点は何度読んでも心の大切な部分が震わされて、新しい発見があること。読んでいて楽しいこと。ここに重要なことが書いてあると思えること。
魚住くんシリーズは、簡単に言うと居場所のない子供たちが彷徨い、ぶつかり、恋をして、次第に自分の居場所を見つけていく話である。魚住というキャラクターは、BLを読む読者の弱い部分、子供の部分を引き受けて生まれたキャラクターだろう。とびっきりの不幸を背負わされているこのキャラクターが、次第に人間らしく感情を取り戻していくその姿が、わたしたちの弱さを癒してくれる。
泣きたくなるシーンはたくさんあるけれど、やっぱり一番は死んだ少女からの葉書が、魚住が久留米に恋していることを見抜いていたことを知る時かなあ。
そしてこの本には、榎田尤利氏の素晴らしい後書きがついていてそれにも感動した。大洋図書版にはなかったので、このシリーズのファンは一読の価値があります。デビュー作・夏の塩が小説道場への投稿作だったことも書いてある。1995年に抱いていた得体の知れない不安が魚住となって現れたというのは本当に創作の一番素晴らしいところのことが書いてあって震えた。ちなみに元々全5巻の文庫で出ていたものを、わたしは大洋図書版の上下巻でしか読んでなかったんだけど、こうしてまた全5巻の文庫で出版されると、ああこういう構成のお話だったんだなというのがすっと腑に落ちるものがあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魚住くんシリーズ(全5巻)
『夏の塩』
『プラスチックと二つのキス』
『メッセージ』
『過敏症』
『夏の子供』
辛い過去を背負って生きてきた魚住真澄。
久留米やマリ、サリーム、濱田さん、さちのちゃん。様々な人との出会いと別れによって自分の過去と真剣に向き合い、泣いて、笑って、恋をして。
彼が成長していく姿にはとても感動した…。
死はいつでも自分の身の回りにある。
もしも、自分の大好きな人が明日突然いなくなってしまったらどうなるんだろう。
今まで考えたようで考えていなかった人の生と死の関わりについて、この本を通して彼らと共に考えさせてもらえた。
榎田尤利(ユウリ)先生に魚住真澄というキャラクターを生み出してもらえて良かった。
優しくて、そして誰よりも強い。
「強い子供」な彼に出会えて本当に良かった。
魚住くんシリーズはこの5巻で完結しているけれど、彼らの人生はこれからも続いて、沢山の出会いや別れを繰り返していくのだろう。
私も、いつか自分の好きな人たちと別れるときが来たとしても、その人と出会えたことを大切にしていきたい。 -
魚住くんシリーズ完結編。
響子さんが就職して、そこでの仕事に悩み悲しむ「リムレスの空」
PTSDに苦しむ魚住、苦しむ魚住を救えなくて悩む久留米を描いた「 アイ ワナビー ア フィッシュ」 どんな濁流でも進んで行きたいと考えるようになった魚住くん。 魚住くんは強い、どんどん成長する。
太一くんを祖父母の家で預かり一緒に過ごした夏を描いた「夏の子ども」 魚住くんの強さは、強い子どもだからなんど感じた。 生き物の命にも違いがある、ラットより金魚よりあなたの方が大事だと伝えたい。 あなたが無事ならそれでいいと。 命を奪った悲しみがすでに罰なのだと、子どもに伝えられたらいいなあ。 -
魚住は信じられないくらいに不幸に囲まれた生い立ちであったかも知れないけど、程よい距離感で接して理解してくれる友人関係があったことは僥倖だと思う。決して孤独なんかではなかったはず。こんな人間関係の中で再生できた事が嬉しくてたまらない。魚住以外に登場した脇の人物たちの人生、辛いことがあってもすべて輝いて見えた。いろいろ足掻いて進んで行く姿が素晴らしかった。
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ハードカバー版を既読。泣いた。泣いたったら泣いた。しかも本編であれだけぐずぐずと泣いたというのに、あとがきに更なるとどめを刺された。不安をかたちにしたキャラクターが読者のなかにもいるのだと感じるようになった、という著者の発言に特別と普遍の両方を感じて、それはまるで祝福だと感じられたのだ。覚えている限りの記憶では、わたしは昔から夏が好きではない。けれど嫌いにならないのは、数々の小説で描かれる夏の情景に惹かれるから。開放的でありながらさみしさもはらむ夏という季節は、太陽に背を向ける意地っ張りの背も確実に押す。
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最後の2行で泣かされた……
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シリーズ通して身近な人との別れが綴られて来たけど、表題作と最終話はその中にあった出会いの素晴らしさを強く意識できて、読んでよかったなぁと思った。
読んでる間、視界がにじむことにじむこと。
マリちゃんは本当にどこまでもかっこいいな。 -
全5巻とおして、生と死を考えさせられた
毎回泣けてしまい、また読みたいなと思うシリーズ
BLだけど、それを超えて大きくなったら子供達にも読んでほしいと思う
薦めるには少しドキドキしちゃうけど!
愛と人生…
魚住くんが幸せでいてくれたらいいなと心から思った -
あ〜読み終わってしまった、、、
でも魚住と周りの人々の人生は川の水のようにゆるやかに流れて続いていくんだなと思える、本当にほんとうに良い終わり方でした。
「そうだよね、人は生まれるんだよね。死ぬ人もいるけど、生まれる人もいるんだ」(p.319)
魚住のこのセリフが全てだった。
最初にこのシリーズを読んでから8年の間に私も大事な人を何人か亡くし、心の病気にもなりました。なぜ今この本を再読しようと思ったのか自分にも説明はつきませんが、何か導かれたように思えます。魚住と周りの人々の言葉に私は何度も救われました。
「全然知らない人が死んでも、べつに悲しくないでしょう?ちょっと知ってる人だと、やっぱりちょっとショックで、大好きな人だと、それはもう……悲しい」
だから、と魚住は続ける。
「すごく悲しいっていうのは、悪いことばかりじゃないのかな、とか」(p.297)
欲を言えば久留米のバックボーンをもっと覗き見たかったな、とか、響子ちゃんやマリ、濱田の日々や魚住と久留米の幸せな日常なんかももっともっと見たかったー!なんて思ってしまいますが、またどこかで彼らに会えることをひっそりと願って、傷とともにゆるやかに嫋やかに私も生きていきたいと思います。
これがデビュー作だなんて本当に…榎田先生に出会える人生で良かったです。そして手に取りやすい文庫にしてくださった関係者の皆様にも心から感謝申し上げます。