未来予測を嗤え! (oneテーマ21)

  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018156

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすいけど、何が書いてあったのかあまり記憶に残らない。基本は過去作品の内容を焼き直したもの。

  • 792

    神永正博
    1967年生まれ。東北学院大学教授。京都大学大学院理学研究科(数学専攻)博士後期課程中退。博士(理学)。専門分野は解析学(量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式)および暗号理論(ICカード、ICタグなどの暗号解読、ハッキング防衛技術の開発)

    それをいうなら、歴史なんてまさにストーリーですね。ほとんどの出来事は偶然に起こっているのだけど、それらをつなげて因果関係で説明しようとする。第一次世界大戦の開戦理由にしてもいろいろと説がありますが、結局はよくわかっていませんよね。

    往々にして、論理的な人が詐欺に引っかかったりしますが、たぶんそういう人はフレームワークのメンテナンスをしていないんでしょう。 優れたフレームワークを最初から与えられていたがゆえに、そのフレームワークに収まらないことがあると簡単に騙されてしまい、自分が騙されていることにも気づかない。有名な科学者でも、疑似科学にころっと騙される人がけっこういます(笑)。

    神永  陰謀論のように、いったんあるフレームワークで物事を見るようになると、何でもそのフレームワークで説明できるような気がしてきて恐ろしいですね。 小飼   何でも理路整然と説明できてしまうのは、きっと説明のつかない物事を外しているからなんでしょう。 詐欺師が人を騙すテクニックはそれですよ。つじつまの合わない部分は、隠して見せない。

    どの大学でも重要なのは教育内容ではないのかもしれません。数学にしても、 プロの数学者になるような人は、講義に出て人に習っているだけではありませんよ。自分で勝手に学んで、勝手に理解していくんです。 大学の講義で教えてもらわないとわからない人達は、生き残っていけません。

    Amazonは膨大なデータを処理できるクラウド構築といったことに加えて、営業を終了した酒屋の酒類販売免許を取得したりと非常に泥臭いことまでやっていて、それが彼らの強みになっています。

    数学もそうですよ。素数の性質などを研究する数論という分野がありますが、これが何かの役に立つなどと想像できますか? しかし現実に、インターネットは数論なしでは成立しません。インターネット上で安全にショッピングができるのは、暗号技術によって通信が保護されているからです。現代の暗号技術は、数論の研究によって得られた成果を活用しています。

    しかし、数論にしてもわかっていないことはまだある、というより、私たちがわかっていることなどほとんどないのではないかとすら思います。だから、応用の方が重要だというのは、わかっている範囲でしか見ていないからでしょう。基礎研究の方がはるかに重要ですよ。  基礎研究で戦うのは、本当に大変です。私も先日、数学の論文を2本仕上げて学術雑誌に発表したのですが、1つは解けるまでに9年かかりました。数学的な証明をするためには、膨大な数の試行錯誤を何年も繰り返す必要があります。しかも、それだけ苦労してもみんなが褒めてくれるわけでもありません(笑)。 応用研究の方が予算もつきますし世間的には評価されやすいのですが、誰かが基礎研究を頑張っていないと、応用研究もいずれ止まってしまうでしょう。

     例えば、AmazonのCEOのジェフ・ベゾスという、ものすごく頭のよい人がいます。ああいう人の部下になるのは大変でしょうね(笑)。ベゾスはAmazonを立ち上げた当初から、「Amazonはウェブ書店ではない」ということを言い続けていました。世の中の投資家や僕なんかは、「いや、本に特化した方がいいよ」と思っていたんだけど、結果はご覧の通り、プラットフォームを押さえるという彼の野望の方が正しかった。もちろん、ベゾスだって百発百中ではないし間違えることも多いだろうけど、私たちとは異なる次元で彼は何かを理解して結果的に正しいところにたどり着いたりする。 進化した人工知能というのは、そういうベゾスみたいに賢い人がいつも 側 にいてくれるようなものではないでしょうか。

    何がまずいかというと、そうしたカリキュラムでは答えがある問題しかやらせないこと。 世の中には、答えのない問題の方が、ずっとずっとずっと多いんです。 ほとんどの問題の答えは簡単には出てこないし、答えそのものがなかったり、きれいな答えにはならないことだってあるけれど、学校では簡単に割り切れる割り算しか教えてくれない。

    ええ、自分たちが好きだと思うことをやっているだけだから。そういう人ばかりでは世の中が回らないので、彼らを使う人が必要になります。人間を動かす立場に文系が多いので、世の中を文系が支配しているように見えるのかもしれませんね。もちろん、人に対する興味とモノに対する興味の両方を備えた人もいますが、多くの理系はそうではありません。

    教育格差はカネの格差よりもシビアかもしれません。 カネは簡単に譲渡できますが、知識や経験は簡単に譲渡できなくて、最初から自分で学んでもらうしかない。カネだけでなく、時間も手間もかかるわけです。しかし、そうやって培った教育をカネに変えるのは簡単でしょう? ───ベタな例でいうなら、これまではいい大学を出て給料のいい会社に入れば元が取れたわけですからね。教育機会を与えられた人と、そうでなかった人との差は世代にまたがってどんどん開いていくと。

    その通り。好奇心の重要性について先に述べましたけど、 好奇心の元手になるのもまた過去の知識や経験ですからね。 いろんなことを知っている人の方がより強く好奇心を持てるのは確かでしょう。  知らないことがあれば知りたくなるのが人間ではあるけど、元手になる知識があまりにも少ないと知ろうと思わなくなってしまう。

    カネがあるうちに、しっかり若い世代の教育に回しておかないと、元気のない国になってしまうということですね。 小飼  社会保障を高齢者にばかり配分しているのは非常にまずいです。 ───あえて問いますが、好奇心が減るとどういう不都合があると思いますか? 小飼  それを問題だと考えない人もいるでしょう。好奇心のない人は従順だから、為政者や経営者にとってはありがたい存在です。しかし、従順な人よりも、ロボットはもっと扱いやすいんですよ。結局、好奇心のない人は社会から必要とされなくなってしまいます。

  • 未来はわからないが、確率的な予測は可能。重要なのはどうしたいか。

  • テーマは、未来予測、認知論、ビッグデータ、人工知能、IT企業、経済発展、人間の欲求、教育と好奇心、反知性主義、格差問題と幅広い。

    他人が言ったことが本当かと疑うのは、とてもエネルギーコストがかかる。間違いがないと認められた権威を信用してコストを節約しようとするのが、権威主義、権威システム。様々な局面で権威システムを採用せざるを得ないが、論理的な正当性はない。

  • 社会を変えるには
    ルールを変えること。

  • 内容紹介
    統計学やビッグデータの普及によりいろいろな分野で未来を予測することが可能になった。しかし予測では知ることがきない、人類にとって大事なことがある。人気の書評家と気鋭の数学者による白熱講義!
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    相変わらずdankogaiは博識だなぁ。。いったいどんな頭脳を持っているのか。天才だなぁ

  • 新しい発想や知見を得られる非常に読みやすくわかり易い対話本である。

  • いろ色な物の見方や、本質を示してくれていて、参考になる。

  • おもしろかった!普段科学から距離がある自分(システムに携わる仕事だけど)にとって、とても興味がわく書籍。
    中卒でもわかる科学入門の続編ということもあって迷わず手に取りました。
    「STAP細胞にしろ原発にしろ、起きている問題を理解するためのレベルがあがっている。そのために、自分は何も知らないのだという気持ちを持つ」という趣旨の部分が心に残りました。
    ひとりひとりがそういう態度でいれば、有事のとき「これは本当に正しい情報なのか?」と疑ってかかったり、幅広い情報を集めたりできますもんね。

    「単純化して物事を考えてしまう」のが人間の本能というのは納得いきました。
    最近「プレゼンで聴衆が覚えていられるのは3つだけ」という言葉を聞いたこともあります。あと仕事で依頼をたくさん書いた資料を提示するのと、ひとつだけ書いた資料を提示するのとでは、受け取る方の理解度に差が生じることは経験したことがあったからです。

    アルゴリズムの順番だけで処理速度が何割も違うという話、ビッグデータによって予測統計の価値が下がる、統計はかならず解釈が入っている、というのも面白い話でした。メモ。

  • 我々がiPhoneを欲しかったということはiPhoneが登場するまでわからなかった。
    コンピュータによって人間の仕事がうばわえると言われるが、仕事をどんな風に自動化したいか、どんな仕事にしたいのか、その欲求を持つのは人間の仕事。
    世の中には答えのない問題の方がずっと多い。
    物事を進めるうえで、最悪なのは良心に訴えるやり方。貧乏人がかわいそうだからと訴えたところで、世の中は変わらない。

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著者プロフィール

1967年東京都生まれ。博士(理学)。東北学院大学工学部教授。日立製作所中央研究所などを経て現職。著書に『「超」入門 微分積分』『直感を裏切る数学』『ウソを見破る統計学』『現代暗号入門』(以上講談社ブルーバックス)、『Pythonと実例で学ぶ微分方程式』(コロナ社)などがある。

「2023年 『Pythonでしっかり学ぶ線形代数 行列の基礎から特異値分解まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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