翻訳百景 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 181
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018637

作品紹介・あらすじ

原文の「歯ごたえ」を残しながら、いかに日本人に伝わる言葉を紡ぐのか――「名人芸」が生まれる現場を、『ダ・ヴィンチ・コード』訳者が紹介。本を愛するすべての人たちに贈る、魅惑的な翻訳の世界への手引き。

感想・レビュー・書評

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  • 越前敏弥さんのブログはたびたび読んでいたのだが、このたび、ブログの記事+お仕事に関するあれこれがまとめられるということで手に取った。

    前半は「文芸翻訳ってどんなこと、プロの翻訳者はどんな作業をしなければならないか」について、ご自身の訳書で発生した作業や経験を例にとって触れられている。作品を訳するうえでの苦労話は翻訳家さんのエッセイでの定番素材なのだが、この本のように、「出版翻訳は個人の作業であって個人の作業ではない」という面が取り上げられているのは、翻訳者さんのご著書ではあまり見かけないように思う。編集者さんのアシストや、翻訳学校の生徒さんからのアイデア出し(授業というよりワークショップ的な)、共訳者チームとの訳語・設定すり合わせ作業などがリアルに描かれるので、文芸翻訳の勉強をしようかと考えていらっしゃるかたが見落としている局面を知ることができ、意外にプラクティカルなのではないか。個人的には、大森望さんの『新編 SF翻訳講座』と併せて読めば、翻訳という作業、作品についてかなりクリアに見えてくるのではないかと思っている。

    後半、特に最後の章は、書店イベントで見聞きした内容と重複するものが多いのだが、「はじめに」で述べていらっしゃることにすべてつながる。実数3,000人といわれる翻訳書の読者を増やすため、その魅力を伝える機会を増やしていくのはなかなか一筋縄ではいかないし、翻訳書の訳者名を覚えているのはその中でも一握りで、大部分が「『ハムレット』面白かった!」と作品名だけ記憶して終わる。広げにくい間口、残りにくい名前という試練(というのかな)を何とか打開していくための取り組みが紹介されるのは、今までの翻訳者さんのエッセイでは見られなかった。越前さん以外にも、翻訳者さんによる海外文学の紹介イベントや小冊子を目にする機会が少しずつ増えてきたということから考えると、この本で紹介される読書会や書店イベントは、朝ドラ的表現をすれば"First Penguin"的な動きだったんだろうと思う。

    和訳に関して、卑語的なサンプルが出ているのでそのあたりの受け止めかたはいろいろあると思うが、私はぎりぎり許容範囲(たぶん)。

  • 翻訳について小難しく書かれている本かと身構えて読んだが、
    とても読みやすく、楽しみながら読むことができた。
    またそれだけでなく、濃い霧の中をさまよっているような状態の自分の心の中に一筋の道を照らしてくれたような、厳しくもあるが温かい励ましをいただけたような、そんな気持ちにもなった。
    読みながら、本の中に線を引きたくなる箇所がたくさんあった。私のように翻訳に携わりもっと上を目指している者はもちろんだが、どんな職業でもスキルアップを目指す人々にとっても指南となる箇所が多くあったのではないかと思う。
    私自身、英文科出身なのですが、学生の頃読んだ、というか、読まされた古典文学はどれも難解で(笑)いや、きっと私の読解力が悪すぎただけなのだろうけど。。。それ以来海外文学は避けて通る羽目となった。
    しかし越前氏の訳書「ダ・ヴィンチ・コード」を読んだことがきっかけで、海外小説にも手が伸びるようになった。
    言葉の力って偉大だ。選んだ言葉ひとつでその作品の良し悪しに影響する。読者の心にどれだけ響くかも変わってくる。読者をその作品の世界へと誘い魅了できる文芸翻訳という仕事ってやっぱり素敵だな。

  •  実は、翻訳小説が得意では無い。
     名前がカタカナだし、聞き慣れない地名だし、習慣だし、世界観を理解するのに時間が掛かる。しかし、最初は読みつらいのだが、中盤で理解し終えた後の加速感というのはすごく面白くて、読み終えると読んで良かったなぁと感じる。

     翻訳家による、文芸翻訳にまつわるエッセイなのだが、言葉に対するこだわりはもちろん、構成や物語に対する情熱がすごい。そしてミステリ小説の翻訳の謎を丁寧に読者にしめすことになれているせいか、このエッセイでも情報の提示のタイミングが見事。

     ああ、問題があるとすると、また読みたい本が増えた。

  • 翻訳家がどのような点に気を配り、翻訳を仕上げているかがよくわかった。
    わかりやすい訳文はもちろんだが、柔らか過ぎる日本語ではかえって外国の雰囲気を台無しにしかねない。
    そのため、わざと歯ごたえを残し、未知の世界を感じてもらう。
    最終的には翻訳者の裁量で、咀嚼し、異言語に移し替えるのだが、原文の雰囲気は感じてもらいたいので、長文派の文章を切り刻むようなことはしない。
    細部にも気を配るべきだが、忠実でありすぎれば全体を見失う恐れがあるので、広く見渡す視点も重要だ。「ゆっくり読み込んで、さんざん迷いながら訳語をひねり出す」、これが翻訳家の「日々の仕事」なのだ。

    東江さんの業績でも触れられているが、翻訳の作業は、原書に関係する分野の調べ物が非常に多い。
    あまりに門外漢だと分からないところは監訳者に丸投げする訳者もいるかもしれないが、苦労して長く深く調べた経験は、訳文にきっと現れる。
    東江さんの凄いところは、特定の作家だけの文芸翻訳だけでなく、政治から金融に至るまでの幅広いテーマのノンフィクションを次々に手がけていたところだった。

    いまやTVで引っ張りだこの林修先生のように、予備校出身の人がマルチに活躍する姿を見ることが多いが、本書の著者も元講師で、講演や教室、ネットなど多方面で発信を続けている。
    いまでは受験参考書の指南役も務める元外交官の佐藤優氏や、かつて塾の講師でも成功していたと思うと語った養老孟司氏など、こうした方面に親和性の高い人に共通しているのは、その道の専門分野について門外漢にもわかやすく解説し伝える能力と、学習の取り組み方に対する並々ならぬ自覚の強さだろう。

  • 再読。ある翻訳講座の参考書だったので、久しぶりにリアル本棚から取りだして読んだ。翻訳者のひとりとして「名訳」に憧れるが、ある訳が「名訳」と呼ばれるのは、その裏にある膨大な知識の蓄積と緻密な訳出作業あってこそのものだということがわかる。同著者の「日本人なら必ず…」シリーズも折に触れて再読したい。

  • 色々な翻訳の方法 解釈のことば使いなど面白い

  • 書店で見かけて購入。同名のサイトも面白い。

  • 「試験は努力して落ちることが最良、努力して受かるのは二番目に良い、最悪は努力しないで受かることだ」という話が最も面白かった。
    翻訳の上達には日本語、英語の双方で質の高い文章に絶えず接するよう努力しなければならないことがわかる。
    ただ、翻訳のノウハウを期待した読者はやや期待はずれになるのではないかと思う。

  • 文芸翻訳者の裏側がわかって面白かった。

  • CL 2016.7.22-2016.7.24

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著者プロフィール

1961年生まれ。文芸翻訳者。東京大学文学部国文科卒業。英米の娯楽小説や児童書を主として翻訳する。朝日カルチャーセンター新宿教室、横浜教室、中之島教室で翻訳講座を担当。著書に、『文芸翻訳教室』(研究社)、『翻訳百景』(角川新書)、『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。訳書に、ダン・ブラウン『オリジン』(KADOKAWA)、同『ダ・ヴィンチ・コード』、エラリー・クイーン『Xの悲劇』(以上角川文庫)、スティーヴ・ハミルトン『解錠師』(ハヤカワ・ミステリ文庫)、E・O・キロヴィッツ『鏡の迷宮』(集英社文庫)、ジェイムズ・キャントン『世界文学大図鑑』(三省堂)、スティーヴン・ローリー『おやすみ、リリー』(ハーパーコリンズ・ジャパン)などがある。

「2018年 『ねみみにみみず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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