鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 5443
レビュー : 578
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018880

作品紹介・あらすじ

強大な帝国から故郷を守るため、死兵となった戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。 その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾うが!?

感想・レビュー・書評

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  • 年末のお楽しみにとっておいた上橋菜穂子さんの新作。
    分厚い上下巻の中に広がる世界に期待をふくらませつつ読み始めました。

    本書の主人公は2人。
    1人はかつて強大な帝国の侵略から故郷を守るために捨て身の戦を繰り広げ、敵国から恐れられた戦士団の頭だった男。
    1人はこの世界の学問の中枢に属する若き天才医術師。
    かつて大きな災いをもたらした病の再来…その謎を中心に、2人の男の物語が絡まり合っていきます。

    様々な民族の歴史や文化、国の内外の複雑な事情についての説明を読みながら、上橋さんの生み出す世界の奥行きに圧倒されました。
    それに、火馬(アファル)や飛鹿(ピュイカ)といった動物たちの、引き締まった体躯やしなやかな躍動が目に浮かぶよう…。

    ここから2人の物語がどのように1つにまとまり、どのような結末を迎えるのか。
    見届けないと年を越せない気がしてきました…。
    いそいそと下巻へ。

  • 「おれは長年、病んだ人を診てきたんだがよ、だんだん、人の身体ってのは森みたいなもんだと思うようになった」
    上巻で最も印象に残ったのは、この一言。
    この前後に語られる言葉が一番腑に落ちたように思う。

    この物語の世界には全く異なる考えを基礎とする二種の医術が存在する。
    それはその医術が生まれた国の宗教や文化をも反映していて、どちらの考えが正しいなんてことを語るのはとても難しい。
    清心教医術の教えで救われる心もきっとあると思う。
    でも医術として(人の病を治癒する術として)優れているのは、(宗教による)禁忌を犯すことを恐れずに命の秘密に迫っていくオタワル医術なのだろうと思う。

    人間は命を脅かす病を克服するために治療法や薬を開発していくけれど、世界には次から次へと新たな病が誕生していく。
    既知の病だって発病するリスクを下げるよう心がけることしか出来なかったりする。
    確実な回避策はない。
    ひどく恐ろしいことだ。

    薬を飲むことによる副作用や、手術による身体への負荷のことを思うと、自然に治る症状でも薬を処方するような医療への疑問を感じることもある。
    医師の診断も100%信頼することが出来るかと言えばそれは難しい。

    もし重病になったらどうする?
    そんな不安を抱えながらも、そんなことは起こり得ないという顔をして日々を過ごしている。
    けれど、それは起こり得るのだ。実際に。

    この物語を読んでいて考えさせられるのは、発病した時の対処法ではなく、医療というものへの接し方だ。
    恐ろしい病が登場するのだけど、その病の治療法が見つかればめでたしめでたしになるような話ではないと感じる。
    病に対してどう向き合うか。
    命についてどう考えていくか。
    寿命をどうとらえるか。
    適切な言葉が見つからないけれど、そういうもっと根源的なことを問いかけられているように思う。
    そしてそこに正解はないのかもしれないと思う。

    「ふだんは見るこたぁできねぇが、おれたちの中には無数の小さな命が暮らしてるんだ」
    「でもよ、後から入って来るやつらもいて、そいつらが、木を食う虫みてぇに身体の内側で悪さをすると、人は病むんじゃねぇかと思ってるんだ」

    私の身体は一つの命ではないという考え方にすんなり納得出来る。
    身体と心は別物という言葉にも納得出来る。
    この世界の人を脅かす病の物語が下巻でどんな結末をむかえるのかまだ分からないけど、命についての真実に誘ってくれるんじゃないかと期待してしまう。

  •  献本応募で当たりました。ありがとうございます!!
     自然の描写と、ごはんの描写が詳しい。私は、これが上橋さん初ですが、とっても読みやすかったです。ファンタジーって、設定が難しかったりしますが、この作品は、いろんな描写が詳しくて、すんなり入っていけました。飛鹿(ピュイカ)も、ああ、いそう、そんなシカ・・・って、あっさり受け入れてしまえましたし。

     苦労人のマコウカンが、なにげにおいしそうなカギを握っていそう・・・黒狼病を広めた人物とその理由、ヴァンとユナの「裏返り」の真相を早く知りたいです。うおう。下巻下巻!!

  • 待ちに待った上橋さんの新刊!
    今回は積まずに発売後すぐに読み始めました(笑)

    今回は大人向けのファンタジーという印象。
    守り人シリーズや獣の奏者同様に、
    すでに上橋さんの中で世界観がしっかりとできている様子。
    架空の世界でありながら、瞬く間にこの世界に引き込まれます。

    東乎瑠(ツオル)の支配する岩塩鉱で
    奴隷として地獄のような日々を送っていた元<独角>の頭ヴァン。
    ある日突然入り込んできた謎の犬に噛まれ、
    周りの奴隷達、奴隷監督達までもが次々と倒れていく。
    静かに蔓延していく疫病は、異様なスピードで人の命を奪っていく。

    噛まれながらも唯一生き残ったヴァンと、幼い少女ユナ。
    凄まじい序開きでしたが、2人の出会いと徐々に深めていく絆にほっこり。

    そして若き天才医術師ホッサルの物語も同時進行で進められる。
    謎の奇病・黒狼熱に挑む彼の姿は本当に格好良い。
    ホッサルの従者マコウカンも良いキャラしてますねー!
    やたらと医療に詳しい登場人物の中では、唯一読者視点(笑)

    ヴァンとホッサル。
    上橋作品では珍しくどちらも男の主人公ですが、
    2人の道が交わるのが楽しみ。下巻に進みます!

  • ツォル帝国に併合されたアカファ王国。
    その陽光とどかぬ岩塩坑で働かされる奴隷達を、ある日、黒い犬が襲う。
    犬は次々と奴隷を噛み、そのまま逃げさるが、噛まれた者たちは数日後、正体不明の病におかされて死んで行く。
    狐笛の彼方や 獣の奏者でも主役級で生き物が登場するが、この黒い犬とその病が重いテーマとなってこの作品を貫く。

    同時に、ツォル、アカファ、オタワル、奥、モルファ、そして辺境の民 ---- 生活環境や習慣、立場 の異なる集団が並立して描かれ、実世界の国際関係や政治を彷彿とさせる。

    黒い犬の惨事から1人生き残った <独角>のヴァンは、母の遺体に隠されるように生き延びた幼子を竃の奥に見つけ、その子を背負って逃走する。
    守り人シリーズの チャグムを守って逃げるバルサ....いや、バルサを託されて放浪するジグロの姿が重なる。

    そのヴァンに興味を惹かれ医術師ホッサルや、命令をうけてヴァンを追うサエなど主要な登場人物のみならず、ヴァンを受け入れるオキの民やホッサルを取り巻く人々などなど、周囲の人物もとてもくっきりと描かれていて、群像劇を見るようだ。

    ファンタジーとは、架空世界で、空想上の生き物や多くの場合は魔法などが繰り広げられる作品だが、何かしら読者を納得させる重みがなければ、広く読まれるものにはならない。
    民俗学研究を基礎に持つ上橋さんの描く世界には、目をこらして実世界をよくよく眺めた先に透けてみえるような存在感がある。

    上橋さんが国際アンデルセン賞を受賞されたのが2014年3月。その半年後の出版は受賞と関係が?と思ったが、そんなことを考えた自分が恥ずかしい。

  • 一気読み。これまでの上橋さんの物語は女性の物語が多かったけれど、今回は男性の物語。
    生きたいという意思が物語をぐいぐいと進めていく。
    無口で不器用なヴァン。理屈屋で医療の進歩の為に自分が残酷になれることもきちんとわかっているホッサル。共に魅力的だ。そこへユナやサエ、ミラル等の女性陣が寄り添っていく。
    その過程がいい!

  • 『鹿の王』上橋菜穂子 | 角川書店 | KADOKAWA
    http://www.kadokawa.co.jp/sp/2014/shikanoou/

    KADOKAWA/角川書店のPR
    http://www.kadokawa.co.jp/product/321403000185/

  • なんだか壮大であって盛大な作品である。いろいろなテーマやサブテーマが散りばめられていて、現代の病気や戦争のことを事細かに時代背景は違えどよみがえらせている。謎の病、黒狼病それは狂犬病のようだがそうではない。vector を通じての病、そして一度症状が現れると死を免れることはできないのをみて、狂犬病と1300年代にblack deathと呼ばれた悪しき病でヨーロッパの人口を40%も減少させたペストを彷彿させるような架空の病。そして、この時代にワクチンの発明の先駆者でもあるsmallpoxで有名なEdward Jennerの手法を取り入れた抗体の取り方をみていて、すごく興奮してドキドキしたとともに昔の人たちの神のあがめ方はきっとこういった不治の病から信仰したのだろうなと思わされた。ほかにも、脳科学で有名なMorris Water Navigation Taskというラットを使った脳と学習行動における実験も出てくるのですごくおもしろい。残念ながら、現代において科学も医療も発展していっているのに人々の思想は自然派といってワクチンを拒否する親も増えてきている。そんな今だからこそもう一度、子供たちの未来、私たちの未来を考えさせられる。

  • 剣と魔法が出てこないかわりに医術師が架空の伝染病を追跡して治療法を探すファンタジー。
    おお、ワクチンの概念ができつつある! 抗血清を作ろうとしてる! というよくわからん興奮が味わえるファンタジー。鹿の繁殖をがんばってるだけの章とかよい。

  • 上橋ワールドにまたもやどっぷり浸かってしまった。
    架空の世界の聞きなれない名前が次々に出て来て戸惑いながら読み始めたけれど、一度慣れてしまうともう止まらない!

    一群れの犬達に突如襲撃され謎の病が発生した。
    苦しみながら死に至る者が多い中、何故か生き延びる者もいる。
    死にそうな者を助けようと医術師達は薬を開発し懸命に治療するが、その行為を天の道を外れた異端の技と非難する者もいる。

    病にかからない人は何故いる?
    特効薬は?
    犬達を裏で操っているのは?
    古き因縁の病を巡る謎は深まるばかり。
    下巻へ続く!

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著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

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