鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.99
  • (536)
  • (791)
  • (407)
  • (51)
  • (17)
本棚登録 : 5442
レビュー : 578
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018880

作品紹介・あらすじ

強大な帝国から故郷を守るため、死兵となった戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。 その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾うが!?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 年末のお楽しみにとっておいた上橋菜穂子さんの新作。
    分厚い上下巻の中に広がる世界に期待をふくらませつつ読み始めました。

    本書の主人公は2人。
    1人はかつて強大な帝国の侵略から故郷を守るために捨て身の戦を繰り広げ、敵国から恐れられた戦士団の頭だった男。
    1人はこの世界の学問の中枢に属する若き天才医術師。
    かつて大きな災いをもたらした病の再来…その謎を中心に、2人の男の物語が絡まり合っていきます。

    様々な民族の歴史や文化、国の内外の複雑な事情についての説明を読みながら、上橋さんの生み出す世界の奥行きに圧倒されました。
    それに、火馬(アファル)や飛鹿(ピュイカ)といった動物たちの、引き締まった体躯やしなやかな躍動が目に浮かぶよう…。

    ここから2人の物語がどのように1つにまとまり、どのような結末を迎えるのか。
    見届けないと年を越せない気がしてきました…。
    いそいそと下巻へ。

  • 「おれは長年、病んだ人を診てきたんだがよ、だんだん、人の身体ってのは森みたいなもんだと思うようになった」
    上巻で最も印象に残ったのは、この一言。
    この前後に語られる言葉が一番腑に落ちたように思う。

    この物語の世界には全く異なる考えを基礎とする二種の医術が存在する。
    それはその医術が生まれた国の宗教や文化をも反映していて、どちらの考えが正しいなんてことを語るのはとても難しい。
    清心教医術の教えで救われる心もきっとあると思う。
    でも医術として(人の病を治癒する術として)優れているのは、(宗教による)禁忌を犯すことを恐れずに命の秘密に迫っていくオタワル医術なのだろうと思う。

    人間は命を脅かす病を克服するために治療法や薬を開発していくけれど、世界には次から次へと新たな病が誕生していく。
    既知の病だって発病するリスクを下げるよう心がけることしか出来なかったりする。
    確実な回避策はない。
    ひどく恐ろしいことだ。

    薬を飲むことによる副作用や、手術による身体への負荷のことを思うと、自然に治る症状でも薬を処方するような医療への疑問を感じることもある。
    医師の診断も100%信頼することが出来るかと言えばそれは難しい。

    もし重病になったらどうする?
    そんな不安を抱えながらも、そんなことは起こり得ないという顔をして日々を過ごしている。
    けれど、それは起こり得るのだ。実際に。

    この物語を読んでいて考えさせられるのは、発病した時の対処法ではなく、医療というものへの接し方だ。
    恐ろしい病が登場するのだけど、その病の治療法が見つかればめでたしめでたしになるような話ではないと感じる。
    病に対してどう向き合うか。
    命についてどう考えていくか。
    寿命をどうとらえるか。
    適切な言葉が見つからないけれど、そういうもっと根源的なことを問いかけられているように思う。
    そしてそこに正解はないのかもしれないと思う。

    「ふだんは見るこたぁできねぇが、おれたちの中には無数の小さな命が暮らしてるんだ」
    「でもよ、後から入って来るやつらもいて、そいつらが、木を食う虫みてぇに身体の内側で悪さをすると、人は病むんじゃねぇかと思ってるんだ」

    私の身体は一つの命ではないという考え方にすんなり納得出来る。
    身体と心は別物という言葉にも納得出来る。
    この世界の人を脅かす病の物語が下巻でどんな結末をむかえるのかまだ分からないけど、命についての真実に誘ってくれるんじゃないかと期待してしまう。

  •  献本応募で当たりました。ありがとうございます!!
     自然の描写と、ごはんの描写が詳しい。私は、これが上橋さん初ですが、とっても読みやすかったです。ファンタジーって、設定が難しかったりしますが、この作品は、いろんな描写が詳しくて、すんなり入っていけました。飛鹿(ピュイカ)も、ああ、いそう、そんなシカ・・・って、あっさり受け入れてしまえましたし。

     苦労人のマコウカンが、なにげにおいしそうなカギを握っていそう・・・黒狼病を広めた人物とその理由、ヴァンとユナの「裏返り」の真相を早く知りたいです。うおう。下巻下巻!!

  • 待ちに待った上橋さんの新刊!
    今回は積まずに発売後すぐに読み始めました(笑)

    今回は大人向けのファンタジーという印象。
    守り人シリーズや獣の奏者同様に、
    すでに上橋さんの中で世界観がしっかりとできている様子。
    架空の世界でありながら、瞬く間にこの世界に引き込まれます。

    東乎瑠(ツオル)の支配する岩塩鉱で
    奴隷として地獄のような日々を送っていた元<独角>の頭ヴァン。
    ある日突然入り込んできた謎の犬に噛まれ、
    周りの奴隷達、奴隷監督達までもが次々と倒れていく。
    静かに蔓延していく疫病は、異様なスピードで人の命を奪っていく。

    噛まれながらも唯一生き残ったヴァンと、幼い少女ユナ。
    凄まじい序開きでしたが、2人の出会いと徐々に深めていく絆にほっこり。

    そして若き天才医術師ホッサルの物語も同時進行で進められる。
    謎の奇病・黒狼熱に挑む彼の姿は本当に格好良い。
    ホッサルの従者マコウカンも良いキャラしてますねー!
    やたらと医療に詳しい登場人物の中では、唯一読者視点(笑)

    ヴァンとホッサル。
    上橋作品では珍しくどちらも男の主人公ですが、
    2人の道が交わるのが楽しみ。下巻に進みます!

  • ツォル帝国に併合されたアカファ王国。
    その陽光とどかぬ岩塩坑で働かされる奴隷達を、ある日、黒い犬が襲う。
    犬は次々と奴隷を噛み、そのまま逃げさるが、噛まれた者たちは数日後、正体不明の病におかされて死んで行く。
    狐笛の彼方や 獣の奏者でも主役級で生き物が登場するが、この黒い犬とその病が重いテーマとなってこの作品を貫く。

    同時に、ツォル、アカファ、オタワル、奥、モルファ、そして辺境の民 ---- 生活環境や習慣、立場 の異なる集団が並立して描かれ、実世界の国際関係や政治を彷彿とさせる。

    黒い犬の惨事から1人生き残った <独角>のヴァンは、母の遺体に隠されるように生き延びた幼子を竃の奥に見つけ、その子を背負って逃走する。
    守り人シリーズの チャグムを守って逃げるバルサ....いや、バルサを託されて放浪するジグロの姿が重なる。

    そのヴァンに興味を惹かれ医術師ホッサルや、命令をうけてヴァンを追うサエなど主要な登場人物のみならず、ヴァンを受け入れるオキの民やホッサルを取り巻く人々などなど、周囲の人物もとてもくっきりと描かれていて、群像劇を見るようだ。

    ファンタジーとは、架空世界で、空想上の生き物や多くの場合は魔法などが繰り広げられる作品だが、何かしら読者を納得させる重みがなければ、広く読まれるものにはならない。
    民俗学研究を基礎に持つ上橋さんの描く世界には、目をこらして実世界をよくよく眺めた先に透けてみえるような存在感がある。

    上橋さんが国際アンデルセン賞を受賞されたのが2014年3月。その半年後の出版は受賞と関係が?と思ったが、そんなことを考えた自分が恥ずかしい。

  • 一気読み。これまでの上橋さんの物語は女性の物語が多かったけれど、今回は男性の物語。
    生きたいという意思が物語をぐいぐいと進めていく。
    無口で不器用なヴァン。理屈屋で医療の進歩の為に自分が残酷になれることもきちんとわかっているホッサル。共に魅力的だ。そこへユナやサエ、ミラル等の女性陣が寄り添っていく。
    その過程がいい!

  • 『鹿の王』上橋菜穂子 | 角川書店 | KADOKAWA
    http://www.kadokawa.co.jp/sp/2014/shikanoou/

    KADOKAWA/角川書店のPR
    http://www.kadokawa.co.jp/product/321403000185/

  • なんだか壮大であって盛大な作品である。いろいろなテーマやサブテーマが散りばめられていて、現代の病気や戦争のことを事細かに時代背景は違えどよみがえらせている。謎の病、黒狼病それは狂犬病のようだがそうではない。vector を通じての病、そして一度症状が現れると死を免れることはできないのをみて、狂犬病と1300年代にblack deathと呼ばれた悪しき病でヨーロッパの人口を40%も減少させたペストを彷彿させるような架空の病。そして、この時代にワクチンの発明の先駆者でもあるsmallpoxで有名なEdward Jennerの手法を取り入れた抗体の取り方をみていて、すごく興奮してドキドキしたとともに昔の人たちの神のあがめ方はきっとこういった不治の病から信仰したのだろうなと思わされた。ほかにも、脳科学で有名なMorris Water Navigation Taskというラットを使った脳と学習行動における実験も出てくるのですごくおもしろい。残念ながら、現代において科学も医療も発展していっているのに人々の思想は自然派といってワクチンを拒否する親も増えてきている。そんな今だからこそもう一度、子供たちの未来、私たちの未来を考えさせられる。

  • 剣と魔法が出てこないかわりに医術師が架空の伝染病を追跡して治療法を探すファンタジー。
    おお、ワクチンの概念ができつつある! 抗血清を作ろうとしてる! というよくわからん興奮が味わえるファンタジー。鹿の繁殖をがんばってるだけの章とかよい。

  • 上橋ワールドにまたもやどっぷり浸かってしまった。
    架空の世界の聞きなれない名前が次々に出て来て戸惑いながら読み始めたけれど、一度慣れてしまうともう止まらない!

    一群れの犬達に突如襲撃され謎の病が発生した。
    苦しみながら死に至る者が多い中、何故か生き延びる者もいる。
    死にそうな者を助けようと医術師達は薬を開発し懸命に治療するが、その行為を天の道を外れた異端の技と非難する者もいる。

    病にかからない人は何故いる?
    特効薬は?
    犬達を裏で操っているのは?
    古き因縁の病を巡る謎は深まるばかり。
    下巻へ続く!

  • 本屋大賞受賞作
    治療薬をつくる物語
    ということで読んでみた

    狼や犬に噛まれる感染症(狂犬病を思い浮かべるがちょっと違うようだ)
    民族間の抗争もある
    古い祭祀医と新しい治療医との対立もある
    新しい医師は治療薬の開発にあたる

    広大な地域とテーマ
    感染症と事件が拡大していく

  • 強大な帝国にのまれていく故郷を守るため、死を求め戦う戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、ひと群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾う。一方、移住民だけが罹ると噂される病が広がる王幡領では、医術師ホッサルが懸命に、その治療法を探していた。感染から生き残った父子と、命を救うため奔走する医師。過酷な運命に立ち向かう人々の“絆”の物語。強大な帝国にのまれていく故郷を守るため、死を求め戦う戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、ひと群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾う。一方、移住民だけが罹ると噂される病が広がる王幡領では、医術師ホッサルが懸命に、その治療法を探していた。感染から生き残った父子と、命を救うため奔走する医師。過酷な運命に立ち向かう人々の“絆”の物語。
    「鹿の王特設サイト」より

    感想は下の後で.

  • 面白い。

    囚われの身ヴァンにおきた絶望と希望。
    誰かの意志を感じつつ太古に猛威を振るった黒狼熱という疫病に戦う医術師ホッサル。

    ヴァンと子の未来は?
    ホッサルとヴァンが相対する時に何が見えるのか?

    少年心をくすぐる小説をひさびさに読んでるなー。
    下巻が楽しみ。

  • 獣の奏者でもみつばちの生態や、王獣を馴らしていく過程を、生物学的な知識をもとにリアルに描かれていたが、ここでも、現代の免疫学の知識を、異世界の文化に投影して、説得力をもって描かれているところに好感を持った。西欧における科学の発達とは別の形で、医療が発達していったとしたら、このようになるのではないかという想像力が刺激される内容だった。ひとりひとりの人物像(特に一人生き残った主人公)も魅力的で、ここからの展開が楽しみである。

  • 上橋先生特有の、文化、風習など世界観が綿密に練られており、実在するどこかの時代、どこかの国の年代記を読んでいるような気になる。

    ネットのレビューを読んでいて思ったが、
    確かに万人受けするというか、読みやすいのは精霊の守り人や獣の奏者かなと思った。
    それに比べると内容が重めだと思う。
    元々先生は子供向け、大人向けとしてわけて書いておられないということだから当然なのだが
    敢えて分類するのならば、これは比較的大人向けのファンタジーだと思う。
    たとえばトールキンの指輪が原子爆弾の比喩であると思う人がいたように
    思わずこの物語の中に描かれている様々な問題と、現実に溢れている様々な問題とを重ねあわせ
    あのことではないのかと思わず思ってしまう人もいるのではないか。

    それが、気を殺がれるとかマニアックだと感じる向きには
    ちょっと向かない内容なのかもしれない。


    よくある『子供用』の物語のような善悪に分けられた書き方ではなく
    それぞれの思想や立場があり
    民族の習慣や動物の習性、病や免疫などについて
    非常に論理的でリアリティがあり、
    繰り返しになるがノンフィクションを読んでいるような気持ちになる。


    独角の頭であったヴァンにとって
    ユナが救いになっていることが嬉しく
    飛鹿をきっかけにしてまた居場所を見つけられた彼の
    幸せを祈らずにはいられない。
    どうか奪われないようにとドキドキしながら読んでいる。


    読み終えて本を閉じたときに、表紙の美しさ
    飛鹿の神々しさに改めて魅せられた。

  • 相変わらず緻密で壮大な世界観。
    惹きこまれてからはあっという間の上巻でした。

    岩塩鉱の奴隷を襲った黒い影と謎の病。それはかつて起こった悲劇に似ていた。
    奴隷として囚われていた戦士団〈独角〉の頭・ヴァンと、謎の病を追う天才医術師ホッサルの2人を主人公に全く異なる視点から物語が紡がれている。
    最初は世界観やカタカナが頭に入ってこず、なかなか進みませんでしたが、中盤からは黙々とページを捲っていました。
    深刻な流れの中、ヴァンと彼が拾った幼子・ユナとの絆が微笑ましかった。物語が動きだし面白くなってきた所で、気になる終わり方。下巻へいきます。

  • 妻と息子を失った飛鹿乗り、独角のヴァン。命をおしまず大国ツオルに抵抗し、奴隷となり塩鉱で過酷な日々を送っていた。ある夜塩鉱を黒犬が襲う。黒犬に咬まれながらも一人生き残り逃亡したヴァンは、山犬と共鳴しあう不可思議な能力を得たことに気づく。移民族の村で、逃亡中に出会った生き残りの幼子ユナと暮らす内、心の平安を感じ始めるヴァン。しかし、塩鉱を襲った黒犬は、国、民族間の勢力を塗り替えるような恐るべき感染病を有していた。その病は黒狼の呪いか。各国、各者の思惑が乱れる中、病からの生き残りとしてヴァンは追われる者となる。
    黒狼の病に関わり不可思議な能力を得たこと、そして幼子ユナを見守ることから、生きる意味を失っていたヴァンは「生きる」意味を体感していく。

    医学的ミステリ要素ももりこまれた、上橋ワールドファンタジー。いつもながら、飛鹿、火馬、半仔、動物たちの動き、描写に目が輝く。

  • 最高に濃密な物語。頭からっぽにして読むのオススメします。
    歴史、医学、生物、政治、人を思うこと、からだのこと、命のこと、生きること、死ぬこと。
    言葉少ないヴァンの経験と感覚からくるセリフが沁みます。ユナに語りかけるのやさしくていいな~。
    ホッサルは頭いいけど怒鳴ったり熱っぽく語ったりして若さ爆発、これからが楽しみですね。
    マコウカンはフロドに振り回されるサムを思い出します(^ ^;)。

    重層的で途中で置くとストーリー忘れそうだったので一気読みしたら色んなこと考えすぎて頭パンパンになりました。
    上橋さんの著書は「読んだ!」感ハンパない。

  • かつて国を支配した者達と今支配している者達、
    取り込まれていく国とその地に住む人々、
    人と共に動く文化、作物、家畜、
    それによって引き起こされる影響は人の思惑を超えていく。

    黒狼熱から生き延びた者
    黒狼熱を止めようとする者
    2つの視点から進む話が織り交ざっていくことで
    今のこの国の姿が見えていく。
    森と人間、病と人間、国と人間
    イメージが重なっていく。

  • 2014.9.28 pm19:18 読了。ウイルス、科学と宗教、植民地。謎の病原菌は、ウイルス兵器に対する風刺であり、医学と宗教の摩擦は、進みすぎた医療技術と各人の死生観の間に生じる矛盾を表す。人工呼吸器で延命することは、ほんとうに生きているといえるのかといった倫理問題を想起した。風土に適当な暮らし無視し、画一的な施策を行うことは、現代の日本や植民地政策が思い浮かぶ。様々な警鐘が含まれる本書。『獣の奏者』と似ているので、下巻でこの本の特徴を見出したい。物語としては、色々な民族が登場して、名前が覚えにくかった。心理描写はすごい。人と動物の精神の混線を大胆に描く。『守り人』シリーズの「ナユグ」の描写と酷似しているが、それでも、透明感のある水のようなものを用いた比喩的表現には頭が下がる。水を用いたこの比喩表現こそ、著者の持ち味ではないかと思った。下巻に期待。

  • 待ち遠しすぎた、上橋菜穂子の新刊。

    今回は、「病」をテーマにした、やや大人向けファンタジー。
    以前読んだ、『銃•病原菌•鉄』の中でも病原菌は、文明の振興が激しい国からそうではない国にもたらされたものの一つだ、と書かれていた。

    日本に狂犬病が持ち込まれたのも、おなじ原理なのかもしれない。

    しかし、そういった規模の大きなテーマを一つの作品として描くことが出来るのが、やっぱりすごい。

    ヴァンとホッサル、追われる者と追う者を軸として、話は展開してゆく。
    ヴァンが携わる「飛鹿」の繁殖のくだりや、ホッサルが関わる国々の思惑と思想の違い。上橋菜穂子の作品で扱われるテーマが生きていて、懐かしくもなる。

    しかしながら、今回のテーマは、そのまま私自身の生活をも見つめ直すことになる、そんな予感がしている。

    下巻も楽しみ。ゆっくり味わいたい。

  • booklogさんの献本で頂きました。
    上橋さんの本は獣の奏者、守り人シリーズと読んできてとても好きな作家さんなのでまさか当たるとは、と驚きましたが早く読めて嬉しかったです。

    鹿の王は主に二つの視点で構成されていて、どちらも男性。しかも片や40代ときて、ファンタジー(?)でこの年齢すごいな!?って感じでした。
    物語としては、医療、ミステリ、政治、冒険と盛りだくさんで、とても多くの人の思惑に主人公と一緒に翻弄されます。上橋さんの本はとても大きな問題に立ち向かう勇気を問う一方で、もっと身近な血のつながり以外の愛情を感じさせるものが多く、今回の話も不器用だけど鷹揚に娘を見守る父親の愛情に胸を打たれました。

    今まで読んできた中ではより政治的かつ医療的分野の範囲が広く、一概にこう、とは善悪を語れないけれど、それこそ一つの国の形なのかなと思う。

    続編…とは言わないけど短編でその後のみんなの話が凄く読みたいです…!

  • 岩塩鉱の悲劇で生き残った者は、ヴァンとユナ、であるが、2人が鹿の王か不明。
    黒狼熱は「キンマの犬使い」の仕業か?
    謎は深まり、「下 還って行く者」へつづく。
    印象に残った文章
    ⒈ この獣は、野の獣ではない。
    ⒉ 我が槍は、光る枝角
    ⒊ 鷹狩りの襲撃も、アカファ岩塩鉱の悲劇も、ただ獣から偶然に移された病ではなく、意図的に仕組まれたもので、ガンサ氏族がそれに深く関わっている・・?

  • 上橋菜穂子の世界は過酷だ。そしてその過酷な環境下で生きる人達が、また精気を放っていて魅惑される。サトクリフを想起させる世界観。この物語はモンゴル帝国の征服過程を下敷きにしているように思うが、支配される側のそれぞれの民族の独自性が脅かされる時、何が起こるのか、多角的な視点で提示されている。象徴的なのはアカファ麦と黒麦が混ざって毒穂をつける、それに伴う馬と犬と人の関わり。現在の日本も種子や水等がグローバル企業に支配されようとしており、他人事でなく読んだ。そして下巻をこれから読む!

  • 戦の敗者として奴隷とされた戦士団独角の頭ヴァンは、働かされていた岩塩鉱で犬の群れに教われる。生き残ったヴァンと幼子は行き場を探して旅に出る。人の死に絶えた岩塩鉱にやって来た医師のホッサルは、血清を手にいれるためヴァンの行方を追う。
    テーマは実はかなり重いが、上橋さんの自然観、人の自然における位置付けなんかは、読んでいて何だか気持ちがいい。

  • 一気に読み進めてしまった。
    登場人物たちの掛け合いに心が温まる。
    獣、守り人シリーズに比べ、巻数が少ないので、
    初めてこの作者の作品を読む人にはおすすめです

  • 2015.10記。
    以下、ネタバレには気を付けていますが、楽しみにしている人はスルーしてください。

    ファンタジー分野ではすでにとても有名であるらしい著者の本屋大賞受賞作品。
    モンゴルを思わせる巨大帝国に飲み込まれた諸国を中心に繰り広げられる、正体不明の疫病を巡る民族の存亡をかけた戦い。物語としての面白さもさることながら、著者の人類学・民俗学的な知識にも唸らされる。例えば、戦闘集団「独角」のリーダーにして主人公のヴァンは、アイヌ民族の風習を多分に含んだ行動様式を持っている。思えばトールキンの「指輪物語」も、第1作の「ホビット族」などは人類学の研究書の体裁で書かれていた。おそらく多くの「知っている人は知っている」膨大な知識が下敷きとなっており、それが想像の世界に厚みをもたらしている。

    罹患すれば死を免れない恐ろしい伝染病でも、部族によって耐性を持つ。同じ病気にかかる人、かからない人、もう一人の主人公、鋭敏な医師ホッサルがその秘密を追う(つまりは「ワクチン」の発見の軌跡だ)。

    さて、通底するモチーフを持つ二つのマンガといえば、「風の谷のナウシカ」(マンガ原作)と「寄生獣」。疫病すら、自らを侵略する敵を粉砕するためにばらまこうとする小国の悲哀(腐海の蟲を兵器にしようとするペジテ王国)。そして、菌を媒介する狼にかまれた結果、人間離れした走力を手に入れ、また狼と精神の交感が可能になるヴァンは、寄生獣ミギーを体内に取り込むことで超人的な能力を持つことになるシンイチと重なって見える。
    文明、自然、異物、といったテーマ性において、「鹿の王」はこれら先行作品の延長線上にあるように私には思える(パクリだの元ネタだのという低次元な意味ではなく、もちろん)。

    普段ファンタジーはあまり読まず、また本屋大賞を積極的にフォローする感じでもない私にとっては、本作は通常であれば手に取る優先順位はかなり下がるはずだった。ぜひ読みたいと思ったのは、日経の書評がとても魅力的だったからだ(リンク先)。今見ると書いたのは女優の中江有里さん。今は作家業もやっていたのか。

    「最後にもう一回訪れる」罠、「鹿の王」の意味、そして哀切と希望に満ちたラスト。物語としても大変魅力的であった。

  • ハードカバーの分厚い上巻、持ち運べないし、どれくらいかかるかなと思っていたら気づいたら寝る間を惜しんで1日で読みきってしまいました。

    読み始めるとググッと引き込まれる、異世界にワープしたかのようなワクワク感と何が起こるのか先が読めないドキドキ感。しかもただの冒険物語ではなく、民族間の問題や政治的な陰謀も詰め込まれていて、まさに大人のためのファンタジー!

    小さい頃クレヨン王国や柏葉幸子さん、モモのようなファンタジーが大好きだった私には恐ろしくハマる物語です。カタカナが苦手で名前と地名を覚えるのだけが大変ですが、冒頭ページに登場人物紹介があるので何度も見返して確認しながら読めるのも助かります。

    続きが気になりすぎるところで終わってしまったので下巻も早く読みたいけど、読み終えてこの世界に浸れなくなってしまうのが勿体無いので少し我慢しようかな(笑)

  • 何度図書館で借りたのかわからないぐらい借りて、やっと最後のページまでたどり着けました。
    人名難易度が高く的に、ホッサル編は特についていけない(涙)
    しかし、どうなるのかは気になる…
    下巻、行くか?どうする、わたし!
    2017/10/5読了

  • バルサは30代の仕事のできる女だったが、ヴァンは孤独な40代男。渋いし暗すぎるだろうと思って読み進めたが、辛い過去を背負いながらも今から逃げずに前に進むオトナの背中に励まされる人も多いのでは。

全578件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

上橋菜穂子の作品

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐を本棚に登録しているひと

ツイートする