鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018897

作品紹介・あらすじ

何者かに攫われたユナを追うヴァン。同じ頃、医術師ホッサルは移住民に広がる謎の病の治療法を探していた。ヴァンとホッサル。ふたりの男たちが愛する人々、この地に生きる人々を守るため、選んだ道は――!?

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わった時に「読み終わった〜」ってなる物語でした
    うん、伝わると思う

    壮大かつ雄大でありながら非常に緻密さを感じる物語でした
    着想から書き終えるまでに10年の歳月を費やしたということでしたが(ずっと煮込み続けたのではないにしても)それも納得の大作でした
    物語の根幹となる「病」に関する考え方や、動植物の生態、辺境民族の生活様式、それぞれの民族の宗教観や死生観、政治の有り様などがきちんと積み上がって土台となりしっかりと下支えしているのでちゃんと“世界“が動いているんですよね

    自分はファンタジーで最も大切なのはそこだと思っていて、物語の表面には出てこないかもしれない“異世界の地図“がちゃんと描かれていないとちゃんと投影できないんですよね

    「ファンタジーとは地図の物語だ」
    (なんかかっこいいこと言った!)

    そして『鹿の王』は運命の不公平を描いた物語でした
    同じ人に生まれながら病にかかる人とかからない人がいる、生まれ落ちた時点で人の貴賤や貧富にどうしようもない差がある、小国に生まれたというだけで正直で慎ましい生活を追われる人がいる
    そんな運命の不公平に大切ななにかを奪われたときあるいは奪われそうになったとき
    そんなときに進むべき道のひとつが示されていた
    ような気がします

    そして運命にあがらいながらひとつの家族が生まれる物語でした

    • ひまわりめろんさん
      ドラクエは結局Ⅰが一番面白かったというじい様の意見
      ドラクエは結局Ⅰが一番面白かったというじい様の意見
      2022/09/12
    • aoi-soraさん
      ひまめろさん、こんばんは^⁠_⁠^
      改めてレビューを読ませて頂き、感動しました。
      さすが、良い事言いますね。
      「ファンタジーとは地図の...
      ひまめろさん、こんばんは^⁠_⁠^
      改めてレビューを読ませて頂き、感動しました。
      さすが、良い事言いますね。
      「ファンタジーとは地図の物語だ」!!
      うーん。唸ってしまいましたよ^⁠_⁠^
      こうゆう壮大な物語って、土台がしっかりしてないと入り込めないですよね。
      そして入り込めないと、ギブアップしがちです(*_*;

      ひまめろさんのレビュー読んで、また読みたいと思いながらも、再読する気力は今はありません(⁠个⁠_⁠个⁠)
      だってこの本、体力がいるんだよね〜。
      2022/09/15
    • ひまわりめろんさん
      アオイさん
      こんばんは!

      そうなんですよね
      良い事言いますよねw

      こういう物語を読むと本当に小説家さんて凄いなってリスペクトしますし
      読...
      アオイさん
      こんばんは!

      そうなんですよね
      良い事言いますよねw

      こういう物語を読むと本当に小説家さんて凄いなってリスペクトしますし
      読む方もなんかちゃんと読まないと!って思ったりして体力使いますよね

      そしてそんな土台のしっかりした『鹿の王』は色褪せない物語だとも思いますので慌てず騒がす再読の機が熟すまで寝かせてもいいんじゃないでしょうか
      2022/09/16
  • 下巻、ぐんっと物語に引っ張られて一気読み。
    読み終えた後、満足感と寂しさが混じった気持ちにじんわり浸りました。

    ヴァンとホッサル、2人の主人公が出会い、語らうシーンが印象的でした。
    若き天才を魅了するヴァンにしびれます!

    上橋菜穂子作品に描かれた壮大な世界にぐわぁっと飲み込まれてしまっていたせいか、感じたことを上手く文章にできないことが悔しいです…ううう…。

    守りたいものができたとき、強くありたいと思うときに、ぐっと背中を押してくれる物語だと思います。
    ぜひ、もう一度読み返したいです。

  • 「国や組織と同じように、人の身体は幾つもの命の集合体」という視点がとても新鮮でした。自分の身体を理解していて全ての行動は自分が意思決定しているようでも、実は身体の要求に従って意思が形成されていることも多々あるのだろうと。

    人に親切にしなさい。そうすれば自分に返ってきますよ。という幼い頃の教えが腑に落ちた気がします。裏を返せば、蔑ろにしたり無礼な扱いをしたことに対しては、いずれ必ずしっぺ返しが来るのが世の常だと思いました。

    人が決めた肩書やルール無しに、無条件に人を深く愛する描写が最も印象的で、そんな人になりたいし、偏見や思い込みをせずその人自身の人間性をフェアな視点で見て接することができる器の人間になりたいと強く感じました。

    ストーリー全体については、展開に大きなサプライズが無く大方予想通りに進んだのが少し物足りなかったです。

  • 一匹の雄鹿が敢然と群れを守る。
    それを鹿の王と言う。

    部族間の争いは古代からつきない。歴史は常に血ぬられている。無くされてしまった、葬り去られた無数の文化。誰が声を挙げるのか。巻き込まれた時、自分は「鹿の王」になれるのか?答をまだ見つけられずにいる。
    文庫の旨さに引き込まれた。

  • 上下ともに分厚いハードカバーなのに紙が薄く、ページ数が多かった.登場人物も多めで、独特の読み方をさせる固有名詞も多かったので、一時中断したときはコレ誰だっけ(汗と巻頭にある人物の名前一覧を見返した.でも、親切にルビがふってあったので、そこまで混乱せずに読むことができた.
    鹿の王というタイトルから「一番」とか「強い」とか「権力」ということばを想像していたけど、実際はそうではなくて、仲間が生き延びるために勇敢に戦う者、犠牲になるもののことをいうのだということに、深い感動を覚えた.
    いつの時代も為政者は己の国、民族、慾のために動くことが多い.そんな中、民族を超えて、利害を超えて、病に立ち向かおうとする人々の物語だった.
    いろんな奥深さが潜んでいる作品.時間が経ってもう一回読んだらまた違う感想が湧きあがってくるのかもしれない.
    再読したらまたここの感想を変更するかも.

  • 結末までヴァンのように走り抜けるように読んだ。
    人が自然に加わることで変わっていく生態系。そこで生きていくことのむずかしさ。人の傲慢、人の愛しさ。
    ヴァンが最後に選んだことが正しいのかは、私にはわからない。けれどユナとサエの存在が彼に救いの光を与えてくれる。ホッサルはこれからも、自分のやり方で道を進んでいくのだろうと思う。
    これは誰が何と言おうと希望の物語だ!
    だって、ヴァンにはユナとサエがいる。だから、ユナの一言に笑いながら大丈夫なんだ、そう思った瞬間に涙がこぼれて止まらなかった。

  • ようやく主役の二人が出逢った瞬間、鳥肌が立った。
    そして「鹿の王」の意味を知った時、彼が最終的に選ぶ道が想像できた。

    それはとても悲しく険しい道。
    でも彼らしい潔い決意に拍手を贈ると共に、そんな彼をどこまでも追いかける温かい家族が、きっと彼を見つけ出すと信じる!

    動物も虫も植物も人間も、地球上の全ての生き物が常に持ちつ持たれつで共存して生きていることを改めて教えてくれた作品。
    人と人、人と生き物の深い絆に感動した!

  • 素晴らしい作品。
    生の中には死が潜んでいる。それでも生きていくしかない。生まれて、消えるまでの間を
    哀しみとと喜びで満たしながら。

    「若者よ、生き生きと、生きよ。」恩師の言葉が
    蘇った。とっくの昔に若者ではなくなった
    自分のこころがびくんと震えた。

  • 生と死。
    正義と悪。
    表と裏。
    科学と非科学。

    世界は色んな側面があって、
    どっちが正しくてどっちが誤りかなんて
    誰にも審判することはできないけれど、
    それでも目の前にある大切なものを
    なんとか守ろうと掴もうと
    ジタバタするのが人間であり、
    生きるってことなのかなぁ。
    この物語に登場するみんなに
    何かしらの救いがあって欲しい。

    ラストには涙しました。

  • 「父が言っていた。人というのは哀しいもので、なにをやっても、どこかに悔いが残るもんだと」
    下巻で一番印象に残った言葉は、そんなに自分にとって新しい言葉ではなかった。
    新しい考えを教えてくれた言葉は他にもあったし、この物語の広がりにもただただ驚いた。
    今までも自分は混沌の中を生きているのだと感じてきたけれど、「混沌」という言葉に入れて個々を見てこなかったもの(恐ろしいもの、美しいもの、愛おしいもの)のことを受け取りやすい物語にして語ってくれた。
    自分が生きている世界にも、自分の身体の中にも、たくさんの命と心があって、全てが違う存在で。
    途方もなくて何から考えていけばいいのかも分からない。
    でもこの物語の広がりを感じることは必要なことだったと思う。
    そしてその上で最初に引用した言葉にやはりどうしようもなく心動かされてしまう。
    それは自分の行いについても、他人の行いについても、同じなのだ。
    この物語の中で生きている人々は誰も自分の命を捨てていない。
    望みに向かって生きた結果の死はあったけれど、物語の都合で行動していた命はなかった。
    そして全ての行いは善でも悪でもなくて、正しくも間違ってもいないんだと思う。きっと。
    善いことだ。正しいことだ。と信じられる生き方をしても他者を傷つけるし、命を奪ってしまう。
    だから何をされても仕方ないとか、そんなことを言いたいわけではないけど、全ての行いにその命の思いがあるということを知っておきたい。
    その行いを悔いる心を相手も持っているんだということも。
    そう信じられるようになりたい。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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