スタープレイヤー (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.62
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本棚登録 : 961
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041019245

作品紹介・あらすじ

路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる「スタープレイヤー」に選ばれ使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていき…。RPG的興奮と神話世界を融合させた異世界ファンタジーの新シリーズ、堂々開幕!

感想・レビュー・書評

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  • 買い物帰りに路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた34歳・無職の女性、斉藤夕月。
    『スタープレイヤー』という10の願いを叶える力を授かるが、元いた世界に戻るという願いだけは100日経たなければ叶わないという。
    夕月は仕方なく『スタープレイヤー』として異世界での生活を始めるが
    ある日、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく…。
    ファンタジスト恒川光太郎が描く異世界ファンタジーの新シリーズ第一弾。


    いやぁ~面白い!
    先が気になって気になって
    僕にしては珍しく二日で一気読みするほどハマってしまった(笑)

    異世界に迷いこんで帰れなくなる夢を幼い頃から頻繁に見てきたせいで
    物語の前半はコワゴワ読んでたけど、
    湿り気のあるいつもの作風とは違い
    どこかカラッとした空気感に
    まさにTVゲームをするように物語世界にのめり込んでいた。

    この物語の何が面白いって、
    「10個の願いを叶えてくれる能力を持って
    RPGの世界に突如放り込まれたら
    人間はどう生き、何を考えるのか?」という
    ある意味ゲーマーたちの妄想や願望をしっかりとした世界観で構築し描いてみせたこと。

    冒険好きや異世界ものが好きな人にはたまらない小説だろう。

    しかしいくら設定が素晴らしくても
    新しい世界や国や法律を一から築き上げていくには
    かなりの筆力と物語る力がいる。
    それを軽々とやってのけ、
    読者に夢を見せ続ける恒川光太郎の凄さよ。

    さりげなく異世界へと誘い込み
    読む者を物語へと旅立たせる、
    選び抜かれた精妙な言葉と比類なき想像力。

    紙面から吹き上がる風さえ感じる、
    幻想的なのにリアリティのある異世界描写。

    異世界に紛れ込むとという「恐怖」を描きながら
    何度となくハマりたくなる甘い誘惑は
    デビューからひたすら異世界や幻想小説を描いてきた恒川光太郎だからこその職人技と言える。


    それにしても、もし、10個の願いが叶うとしたら、
    僕なら何を願うだろう。

    まずは住まいの確保。
    野球ができるほどの庭と菜園、
    プールも欲しい。
    ミニシアターのような映画鑑賞部屋と
    防音構造の音楽鑑賞部屋に
    一通りのビンテージ楽器が揃った音楽スタジオ。
    あとはトレーニングルームとBar付きの書斎かな~(笑)

    とまぁ、読めば間違いなく
    誰もがバカな妄想に浸れること請け合い(笑)
    (しかもこの10個の願いは、スターボードという「人には見えないキーボード」に文章で打って審査が通れば叶えてくれるのだけれど、一つの文章でいくつもの願いが叶う点が実にうまくできてる。つまり、「庭付き、家具付き、プール付き、犬付き、カップヌードル一年分付きの一戸建てが欲しい」と書けばこれで一つの願いとみなしてくれるのだ。上手く書けば、一つの願いで街全体を作り出すことも可能なのである)


    物語の前半は主人公の女性、夕月(ゆづき)も
    家を建て、誰もが考えるような個人的な欲望を叶えていく。
    しかし、この国に自分と同じ能力を持つスタープレイヤーの男性、マキオと出会ったことから
    物語は大きく動き出し、
    夕月は国家民族間の争いに巻き込まれていく。

    スタープレイヤーの存在を妬む者、その力を奪おうとする者との熾烈な争いの中、
    夕月の出した結論とは…

    2015年夏に第二弾が出るとのことなので続きが楽しみだし、
    稀代の物語作家、恒川光太郎のライフワークとなりそうなシリーズなので
    この機会に沢山の人に読まれ物語の力を感じて欲しいし、
    ファンタジーや幻想世界、RPGのゲームが好きなら
    間違いなく楽しめる小説だと思う。


    ★角川書店が制作した
    『スタープレイヤー あらすじ動画』↓
    https://www.youtube.com/watch?v=KQC9Gt5Akts&feature=youtube_gdata_player

  • 作者が自信を持って、自分の代表作になるという熱意が伝わる作品でした。

    斉藤夕月は34歳、無職。
    夕ご飯の買い物帰りに、突如見知らぬ人に籤を引かされ、
    スタープレイヤーになったと告げられ、異世界に飛ばされてしまう。
    地球とは別の世界。
    そこで、神のごとくその世界を支配するフルムメアから
    10の願いを叶えてもらえる
    というのだ。

    その10の願いの使い方など案内人の石松(プログラムであり人間じゃない)に
    説明を受けながら慎重に使い始める。
    まずは住むところ。
    そして自分の容姿。
    夕月には暗い過去があり、そこもすこしずつ明らかになっていく。
    その暗い過去につながる憎しみを晴らすための復讐。
    スタープレイヤーは最低100日は元の世界に帰れないが、
    ちょこっと贅沢な暮らしを堪能したら元の世界に帰るつもりだった夕月には
    使い切れない10個の星(願い事)をどうしようかと思っていた矢先、
    別のスタープレイヤーとの出会いがあった。
    さらに住む世界が広がる。

    そして未知の世界はさらに広がりを見せ、
    王国同士が戦っていて、
    夕月たちも巻き込まれて行く。


    壮大なスケールで描かれる冒険ファンタジーです。
    世界観が違っても正義は異世界だって変わらないし、
    戦争や政治をどのように願えば良くなるのか、
    主人公が考えて周り中の人達と幸せになるために生きる気力を
    取り戻して行く様子がとても良かった。
    スピード感もあってすいすいと読めました。
    RPGゲームのようなファンタジーですが、
    主人公の女性像がリアルで、普通の感覚の人だっていうことも
    共感しやすくて、入り込めたのですね。

    面白かった〜〜

    作者のインタビューを見たら、この一作で終わりではなく
    シリーズ化していくつもりらしい。
    シリーズ化されたら、次回作もぜひ読みたいな〜(*´∀`*)

  • 何これ!面白過ぎる!突然のくじ引きで異世界に送られ、10の願いを叶える力を与えられる。もうそこから夢いっぱい、胸いっぱいだし、どんな願い事をするのかにもワクワク。不思議な世界で様々な人と出会って一緒に危機を乗り越えていく姿を見つつ、読む手が止まらない。しかし、国の名前…びっくりした。本当に楽しい読書だった。

  • 中途半端な読後感でした。

    ある時、地球から異世界に飛ばされてしまう。
    スタープレイヤーとして。
    スタープレイヤーは10個の願いを叶えることができる。
    主人公は、その力を使い…。

    スタープレイヤーが使うスターボードという設定が安っぽい。
    主人公の過去がドロドロしている割に、物語は英雄譚というかゲームの世界のように生死とリセットが繰り返される。ある意味、ドロドロが少ない。

    謎も回収されないものが多い。(もしか続編があるのか?)
    ミステリー的に展開するのか?と思ったらそうではない。
    読んだーという達成感がない…。

    面白くないわけではないが、中途半端な印象で読了。

  • 2020.10.31

    マキオと会ったあたりから急にRPG感が出てきた。
    それまでは夕月の周辺の話だけだったのに。
    思ってた小説となーんか違うな?恒川光太郎らしくない文章だし…とか思いつつ、ページをめくる手は止まらない。

    夕月のスターの使い方は頭悪すぎ(特に最初の方)その場しのぎすぎに感じて、「え、ここでスター使っちゃうの?」とあんまり共感はできなかったけれど気づけばこの厚さの本を読み終わってしまっていた。なぜか十二国記を思い出した。

    スカイレッドが呼び出された大伯母のスターの使い方、私も本当にやりたい。笑
    完全に恋愛ゲームのリアル版!笑
    最高に素敵な人と恋愛のドキドキ感だけ何度でも楽しめるなんて最高すぎる人生でしょ。いつ死んでもいいわ。

    2作目もあるということは、夕月が主人公じゃなくてマキオが主人公なのかな。またはどちらもいなくなった何十年か後の話になってるのかな?はたまた、ラナラグ目線なのか…。

    ラナログ・スウォードという名前、FF8のラグナ、キロス、ウォードをもじったのかな?と思った。

  • 恒川光太郎さん「スタープレイヤー」読了。主人公は麻婆茄子セットを持った女性。「スタープレイヤー」と呼ばれる賞をゲットしたところから物語は始まる。なにやら願いが叶うらしいのだが。。とても面白かった♪なんともハチャメチャな設定。でも誰しも胸が躍り、想像するはず。「自分だったら何を願うか」と。物語でも、いろんな事を考える人がいるんだなとワクワクしながら読みました。ある時は未開の広野を冒険する旅人、ある時は世の中を治める統治者。ほど良いドキドキ感と爽快感が味わえる作品でした。読んだ人には共感持てるはず!オススメ♪

  • 突然目の前に現れた男にくじを引かされ、フルムメアが支配する異界へ飛ばされた夕月。スタープレイヤーとして10の願いを叶える力を与えられたが、そこは様々な欲望と思惑が交錯する世界で…。

    これまでの恒川作品とは全く趣の異なる作風で、本当に同じ作者が書いたのかと思うほど。本作はそれなりに面白いのだが、これまでの「暗く冷たい異世界」を描いてきた恒川ワールドに惹かれてきた身にとってはちょっと複雑な心境。いつまでも同じ作風でいるわけにはいかないのはわかっているけれど。
    (B)

  • とても面白かった!!貴志祐介氏の「クリムゾンの迷宮」と似たようなテイストではあるものの、私にとっては完成度ははるかに高く感じた。中盤までは今までの恒川さんのホラーテイストかなと思っていたが、想像していた落ちが様々な登場人物のサブストーリーの結末として散らされていく中、本篇は想像しえなかった方向に連れて行かれた。まさに究極のゲーム。40近くにして、久しぶりに深夜までかけて一気読みしました。内容的には次作もあるのかなぁ。楽しみ!!

  • 率直なところ、表紙を見て違和感があった通り、新境地というよりも中途半端な作品だった。
    30代の女性が、突然くじ引きで大当たりしたら異世界に飛ばされ、10の願いを叶えてくれるという始まり。ユニークな設定はおもしろいけれど、離婚歴のある傷ついた女性を主人公にしたのがそもそも誤りなのでは…。RPG風のテンポを狙ったのか、主人公が不自然に明るくなったり、でも過去は取って付けたように不幸があるなど、全体的にちぐはぐしている。
    明るい作風にしたかったのなら、いっそのこと主人公は少年か少女、10代の若者にすればよかったんじゃないかしら。宮部みゆきの『ブレイブストーリー』の向こうをはって、成長の物語にするとか…。

    でも、私としては、主人公はそのままに、作風はいつものような独特の影と重みのある、余韻の味わえるものを読んでみたかった。作者にしか書けない、「夜市」のような哀しさと影のある異世界を、大人のための重厚なファンタジーをしみじみと楽しみたかったな。

  • 異世界で10の願いが叶うスタープレイヤーに選ばれた夕月の話。自分ならどうするかめちゃくちゃ想像が捗る(笑)これね、現実世界じゃなくて異世界で願いが叶えられるっていうのと、1つの願いに色々盛り込めるのが悩みどころなんよなぁ。とにかく面白い!

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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