砂に泳ぐ

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.56
  • (18)
  • (63)
  • (61)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 425
感想 : 72
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041019290

作品紹介・あらすじ

田舎の閉塞感から逃れるため東京行きを決心した紗耶加は、ひとり暮らしを始め優しい彼もできたが、毎日の生活に徐々に違和感を抱き始め……。はい上がるひとりの女性の姿を圧倒的リアリティで描く10年の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 田舎の閉塞感から東京へ行き。
    やりたい仕事、天性の仕事に巡り合った女性の25歳から35歳までの
    10年にわたる成長の物語。

    地元の大学を卒業後、そのまま地元の携帯販売会社で働く紗耶加。
    優しい彼・智彦もいるが、何か違う!ズレを感じるようになると共に、
    現在の生活に閉塞感を感じるようになる。
    息苦しい毎日を過ごす中、ショップの常連客のミシュアルさんが母国に帰る時、
    愛用していた水色のカメラを譲り受け、心が動いた時写真を撮る様になる。
    一念発起、恋人と別れ東京に行くことを決心する。
    派遣社員としてサポートセンターで働きながら、一人暮らしを始めた紗耶加。
    新しい職場では、倫世という親友も出来、圭介という優しい男性と出会う事が出来た。
    やがて圭介と半同棲する事になったが、彼の自分勝手な言動に振り回され、
    混乱、疲弊していく紗耶加…。
    そんな紗耶加を救ったのは、親友倫世の言葉だった。
    倫世の言葉、とっても良かったなぁ♪

    紗耶加の、心の真ん中にある真面目さや繊細さや弱さ。
    人に強い事を言ったり、冷たい態度を取る事に慣れていない姿が、
    自分に重なる所があり、すごく共感しました。
    彼女の真摯で真面目な人柄や、関わった人・出会った様々な人との繋がりを、
    きちんと大切にしていた事が、彼女がチャンスを掴む事にも繋がったと思う。

    やはり、飛鳥井さんの心情描写がとっても素晴らしい(❁´ `❁) ♡
    紗耶加の弱さや繊細さ揺れる心や哀しみ、とまどい、不安、矛盾、葛藤、決意…。
    色んな感情が真に迫ってて、読んでて息苦しい程でした。
    それだからこそ、強くなってゆく姿にホッとしました。
    圭介との別れのシーンは、とても印象的でスカッとしました。
    何かを断ち切る事は、とっても難しい…。
    人に優しくあることと、自分に酷い事をする人を「赦す」こととは違う。
    この言葉も胸にチクチクしたなぁ。

    紗耶香は、自分の本当にやりたい事、天性の仕事を見付けましたが、
    こんな風に、人生上手くいくものじゃないけれど、
    頑張ろうって…少し前向きになれました。

  • 謙遜と自己否定は違う
    人にやさしくあることと、自分に酷いことをする人を「赦す」ことは違う

    これは大事にしたいなぁ。


    先に読んだ「そのバケツ~」のトラウマなのか、倫世との関係を心配したけど終始仲良くて良かった。

  • 地元の携帯ショップで働いていた紗耶加、田舎の閉塞感を厭い、東京で一人暮らしを始めた。…

    一人の女性の10年には、本当に色々なことがあると思う。
    特にこの年頃には、結婚出産もあるだろうし、紗耶加のように仕事で自分の居場所を見つけることもある。
    紗耶加の10年には、多くの出会いがあり、その出会いによって彼女の環境も大きく変わって行く。

    出会った人達によって、強くなって行った彼女の姿はとても逞しく感じたけれど、あまり共感できるタイプではなく、何となくモヤモヤは残ってしまった。

    好きなことを見つけ、それを自分の生業にすることが出来た彼女には、それが一番の強みになるはず。
    新たな出会いもあり、終わり方はよかったと思う。


  • 何のために生きるか?、どうやって生きるか?
    生きるって当たり前にやっていることだけど難しい。
    黙っていると低く見られることもある。
    人の想いを大切にしているといつの間にかうまく利用されていたり。
    そんな中でいかに自分らしく、そして自分を大切にして生きられるか?そんなお話。

  • 飛鳥井さんの作品やなあ。
    蓮井紗耶加の25-35歳の話。自分でもいいとは思わないのにやめられない恋愛の感じとか、仲の良い友達にもらった言葉とか。共感するところがちょこちょこあった。
    読み終わった後は、清々しい気分に。

  • 携帯ショップで働く紗耶加は、変わり映えのない毎日にも、閉塞感のある田舎にも、どこかすれ違う彼氏にも少し、息苦しさを感じていた。
    思い切って彼氏と別れ飛び出した東京で、少しずつやりたいことを見つけ、ついにはフォトグラファーの座を手に入れた。

    どこか友だちの話を聞いているような、そんな身近な感じです。
    やりたいことが見つからない焦りや不安、
    好きな人と上手くいかないイライラ、
    好きなものを見つけてひたむきに頑張るところ、
    等身大な日常が描かれており、ところどころリアルで、わかる、と思うところが多々あります。

    一方で、誰の立場に立って物語を見るかによっても見え方が違ってくると思うのですが、主人公が彼氏に対して感じるような、どこかしっくりこないような違和感も同時に感じ、もやもやとした気持ちと共感する気持ちが交差していた気がします。

    フォトグラファーになった彼女。
    彼女が撮った写真が見てみたい。きっと素敵な写真だったのだろうと想像します。

  • 飛鳥井千砂さんの作品。
    携帯の販売ショップで働いて、弱くか弱い存在に見えた主人公のさやか。
    様々な人との出会いや別れを通して、自然に最後の印象は、自分を持っている強い女性。
    同一人物なんだけど、その変化がすごく自然で、かっこいいなあと思った。、

  • 初めて読んだ作家さんでした。
    初めの方は「たいしたことない本」って高をくくりながら読んでいたけど、最後の方に行くに従って、ちょっとずつ没頭していきました。
    自分に近い感覚なのかもしれないからかもしれません。

    私は「今からでもやり直せる」って思っているからスタートが遅い人の成長記録が好きなのかもしれません。
    私は「ほく、写真撮る、心が動いたから」って言葉、スゲーいいなって思います。
    私も心が動いてから読書を頑張っているからですかね。

  • これってハッピーエンドなのかなぁ。
    なんかスッキリせず。。。
    私にはしっくりきませんでしたー

  • 読みやすかった。
    さやかが色んな人に出会って、色んな感情をもって、どんどん逞しくなっていく。
    ワクワクするものに出会えるって素敵。

全72件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

飛鳥井千砂の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×