ザ・カルテル (上) (角川文庫)

制作 : 峯村 利哉 
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年4月23日発売)
4.19
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  • 本棚登録 :225
  • レビュー :21
  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041019665

作品紹介・あらすじ

麻薬王アダン・バレーラが脱獄した。30年にわたる血と暴力の果てにもぎとった静寂は束の間、身を潜めるDEA捜査官アート・ケラーの首には法外な懸賞金がかけられた。王座に返り咲いた麻薬王は、血腥い抗争を続けるカルテルをまとめあげるべく動き始める。一方、アメリカもバレーラを徹底撲滅すべく精鋭部隊を送り込み、壮絶な闘いの幕が上がる――数奇な運命に導かれた2人の宿命の対決、再び。『犬の力』、待望の続篇。

ザ・カルテル (上) (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 傑作『犬の力』の続編だけあって、とにかく読ませる完徹本。
    時間をバッサリ持っていかれるので、合間読みなど決してできない。

    しかし残念ながら、"叔父貴"ことミゲル・パレーラのいない本作が、前作を超えることはない。
    『羊たちの沈黙』のレクター博士のような、作品の価値を決定づけるキャラクターの創造は今回はできなかったし、それは作者も自覚している。
    それでも続編を書かせたのは、ここ最近の麻薬物のドラマが当たる風潮に便乗しようとしたわけではなく、その後の物語世界をアップデートしなければならぬと決意させるほどの現実の状況の変化があったからだ。

    ウィンズロウという作者は実に巧みな作家で、『ストリート・キッズ』に連なるソフトで軽やかな犯罪小説を書くこともできるし、本作のように血で血を洗う暴力をハードにド直球で描くこともできる。
    言わば、あだち充と梶原一騎が同居している不思議な作家なのだ。

    「最も口数の少ない者が、最も大きな力を持っている」というティオの教訓を胸に着々とカルテルの支配を強めていくアダンと、不倶戴天の敵とされお尋ね者なのに死地に飛び込む形でメキシコ入りするケラーを軸に物語は展開するが、上巻の終わりになっても次々と新しいキャラが登場してきて目まぐるしい。
    メキシコの麻薬戦争の全体像を隅々まで写し取りたいという、作者の並々ならぬ意欲の現れだろう。

    上巻で描かれる麻薬ビジネスの実態は、お馴染のものかもしれない。
    この稼業は実は、退屈な数字の確認と会合の調整や世話の連続で、どこか単純作業に似た冗長さがある。
    警察と政治家との関係も、ちょうどトランプにおける、エースとキングの手札の奪い合いに過ぎない。
    しかしそれがメキシコを、「死体の山でお馴染みの国」に変えてしまったのだ。

    ただこれを、"メキシコの麻薬問題"と片付けてしまうわけにはいかない。
    「なぜ、こんなことに?  北米人がハイになるためだ。国境のすぐ向こうには巨大なマーケットが存在している。そして、飽くことを知らぬ隣国の消費マシーンが、巡り巡ってこの国の暴力をエスカートさせる。北米人たちは大麻とコカインを吸い、ヘロインと覚醒剤を打ちながら、図々しくも南の方向を示し、”メキシコの麻薬問題”と汚職体質を指弾する。これは"メキシコの麻薬問題“などではなく、北米の麻薬問題だ」
    と作者は登場人物に語らせている。

  • 前作に引き続き読み応え充分の大作。
    ただ、前回よりもたくさんの血が流れて残酷なシーンも多い。
    けどこれが実際の麻薬戦争なんだろうな…
    グアテマラってコーヒーのイメージしか無かったけど今後は麻薬のイメージになってしまいそう…
    ラスト良かった。

  • あの「犬の力」の続編が出るなんて。著者渾身の一作だと思うがまだ怒りは尽きなかったようだ。
    1ページ1ページが濃密で重く、汚職・裏切り・絶望と醜悪な報復。
    それでも、少しだけ愛とか道理があって。
    ドン・ウィンズロウの描く世界に引きずり込まれていく

  • 行きたい国リストがあったら、メキシコは載らなくなります。

  • 私の評価基準
    ☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
    ☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
    ☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
    ☆☆ 普通 時間があれば
    ☆ つまらない もしくは趣味が合わない

    2017.4.28読了

    内容、分量、密度、共に圧巻です。
    まさに物語というに相応しいものだと思います。

    そして、新たな翻訳者も素晴らしく、乾いて埃っぽい空気の中に血の鉄の匂いや内臓の生臭さを少し感じさせたりする文章は原作のものだけでは無いと感じます

    しかし、ボリュームが物理的にも小説的にもあるので、決して読みにくい訳ではないけれど、なかなかページを手繰るスピードが上がらず、その辺は少しエンターテイメント性をスポイルするのかもしれないですね。
    そして、それは映像化されたものの方が良くなったりする理由でもあるのかもしれません。

    それでも、やはり、こういった中身のギッシリ詰まった面白い小説を読みたいと思っているのであります。

  • 「犬の力」の続編。麻薬をめぐる戦いは、ついに戦争というレベルへ発展。人対人の闘いが、組織と組織の闘いへと変わった。銃どころか、装甲車やヘリまで使い、軍隊そのものだ。悲惨な戦いはどこまで続くのか。

  •  戦争というのは通常報道されている軍隊やゲリラによる国レベルのものと考えるのが一般的だと思う。しかしここで取り上げられるのは麻薬戦争である。麻薬との戦争に巨額の資金や武器を投じながらも、アメリカが密輸された麻薬に高額の金銭を支払っている事実を見つめ、大統領に麻薬の合法化を陳情までしたドン・ウィンズロウの問題意識は、実際に麻薬カルテルの戦争に巻き込まれて亡くなったジャーナリストたち(4ページに渡る)に本書を献じていることでもわかる。

     世の中が狂っている。麻薬カルテルも狂っている。それを追う捜査官も狂っている。ならその全貌をここで見せてやろうじゃないか。そういった気構えが作品に込められている。

     無論、作者ウィンズロウにとって麻薬を題材にしたのは初めてのことではない。三人の若者を主人公にして麻薬を道具にした富と栄誉とその代償を痛みとともに描いた実に抒情詩的な作品『野蛮な奴ら』『キング・オブ・クール』のシリーズ二作は巨大カルテルに翻弄されつつ青春を投じてゆくエネルギーに満ちた作品であった。

     そして何よりもDEA捜査官アート・ケラーと宿命の対決を余儀なくされる麻薬王アダン・バレーラの30年戦争を描いた『犬の力』である。本書は、一旦収束を見たかに思われた『犬の力』のその後を10年を描いた完結編なのである。あまりにも大作であるゆえに、『犬の力』が十分に大作と感じた向きには、この作品に向き合うのにある種の覚悟が必要なくらいだ。

     メキシコ麻薬戦争を題材とした現代の『戦争と平和』という言葉は間違ってはいないと思う。大量殺戮が日常となった国境の街フアレスを中心に、カルテルの戦争はセータ隊なる武装勢力による事実上の民間支配まで生み出してゆく。

     かつて『ダブル・ボーダー』(ウォルター・ヒル監督/ニック・ノルティ、パワーズ・ブース主演)という映画で一台麻薬武装帝国を国境地帯に築いたアメリカ人とこの王国を破壊しに行くUS側の特殊部隊の戦争を見て、こんなことあるわけない、ヒル監督が指示したペキンパ監督の『ワイルドバンチ』へのオマージュ映画だ、くらいに思っていたのだが、それを圧倒する世界が、事実この21世紀に、ほぼ現在進行形のような形で小説に描写されるのだ。フィクションと称しながらほぼ事実に基づいた形で。

     冷酷で機械的に殺戮と拷問に明け暮れるカルテル間戦争の狭間に、救いとなるのはジャーナリストや彼らを取り巻く勇気ある個人たちというチームの姿が見られる。彼らの命を賭けた取材、正義感、そして魂の強さは、本作のなかで白眉と言える部分だ。こうした民間の闘いはもちろん多くの犠牲を伴うが、屈しない精神がなければこの世には救いがない、そんなことをどうしても書きたかったのであろう作者の真情が嫌というほどわかる。

     力と魂のこもった作者一世一代の大作である。ここのところ二作同時刊行された『報復』『失踪』に続けて、作家的才能を目いっぱい発揮しているかに見えるウィンズロウの現在。昔、青年探偵ニール・ケアリーのシリーズを出していた頃(あれはあれでぼくらを十分に魅了した)に比べると、まるで別の作家だ。スケールが一回りも二回りも大きくなり、視野が広がり、現代の預言者のような風格までついて来た。われらがドン・ウィンズロウはどこまで高く飛翔してゆくのだろう。

  • 相関がごっちゃになってしまう。

  • 裏切りにつぐ裏切りの泥沼の麻薬戦争。
    『犬の力』の続編となっていますが、この作品だけでの読めるようになっています。
    ただ訳者が変わっているので、『犬の力』から一気に読むと違和感があります。
    巻頭にメキシコの地図があるのは、地名を言われてもピンとこない私にはありがたいです。

  • 犬の力は怖い世界と思って読んでいたら、もっと最悪な地獄が描かれていた。
    ちょっと読む手が止まるぐらい。

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