ザ・カルテル (上) (角川文庫)

制作 : 峯村 利哉 
  • KADOKAWA/角川書店
4.22
  • (50)
  • (56)
  • (15)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 452
感想 : 42
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041019665

作品紹介・あらすじ

麻薬王アダン・バレーラが脱獄した。30年にわたる血と暴力の果てにもぎとった静寂は束の間、身を潜めるDEA捜査官アート・ケラーの首には法外な懸賞金がかけられた。王座に返り咲いた麻薬王は、血腥い抗争を続けるカルテルをまとめあげるべく動き始める。一方、アメリカもバレーラを徹底撲滅すべく精鋭部隊を送り込み、壮絶な闘いの幕が上がる――数奇な運命に導かれた2人の宿命の対決、再び。『犬の力』、待望の続篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 盟友マリモっち(いつから?)の仇討ちのため、いよいよひまわりめろんさんの出陣です

    弔い合戦じゃあ!(亡くなってないよ!)

    ってあれ?
    よく考えたら別にわいが勧めたわけじゃないや
    勝手によみ始めて勝手に挫折したんだっけ(勝手に言うな)
    じゃあ弔い合戦は無しの方向で(だから!)

    というわけでノワールの傑作『犬の力』の続編『ザ・カルテル』を遂に読み始めましたよ

    ブクログ本棚を確認したところ前作『犬の力』を読んだのは2022年5月
    なんと1年半も間あいちゃいました(テヘ)
    だって上巻632ページ、下巻591ページの大作はさすがのわいも簡単には手を出せなかったんです

    だけどやっぱ読んで良かった!
    面白かった!
    きっかけになってくれたマリモさんにちょっとだけ感謝!(ちょっとかよ)

    内容はね
    結局麻薬捜査官ケラーと麻薬王アダンの似た者同士の壮大な兄弟喧嘩が再び繰り返される二番煎じなんだけど
    もうスケールアップが半端ないんですよ
    そして前作との最大の違いは、二人が歳とってるってことなんです
    歳を重ねることにより老練さがましたり、歳をとることの悲哀なんてのも反映されてる気がしましたね

    そしてなんといっても冒頭のメキシコで殺されたり、消えたりしたジャーナリストたちの名前の列挙ですよ
    彼らに捧げるとありますが…これってもちろん言葉通りの意味もあるんでしょう

    だけど自分はこの本が「アメリカ」で書かれていることに意味があると思うんです
    このジャーナリストたちの名前には「アメリカ人」に対するウィンズロウの怒りが込められているんじゃないかと思うんです

    この人たちが消えてしまったのは、お前たちが麻薬漬けの毎日を断ち切ろうとしないからだぞ!と
    麻薬王を産んでいるのはお前たちが貢いでいるせいだぞ!と

    この物語はドン・ウィンズロウの弔い合戦なのかもしれません

    きれいにまとめた!(自分で言わない方がいいこと)

    • 1Q84O1さん
      麻薬は元気の源!
      麻薬は元気の源!
      2023/11/03
    • マリモさん
      そんな健康管理だめぜったい´д` ;

      てか麻薬王、自分は使わないんですよ確か。笑
      そんな健康管理だめぜったい´д` ;

      てか麻薬王、自分は使わないんですよ確か。笑
      2023/11/03
    • 1Q84O1さん
      健康診断でも引っかかるのでやめておきますw
      健康診断でも引っかかるのでやめておきますw
      2023/11/03
  • 前作『犬の力』から続投すると思っていたカランとノーラの名前が「主要登場人物」欄になかった時はがっかりしたものの、すぐに夢中になった。知っている名前もあることで、前作より早く物語に入り込めた。

    おなじみアダンの豪奢な日常(刑務所でも!)には悪の魅力を感じてしまうけれど、今作は更に対抗組織が増え、抗争の規模が大きくなったことで、一般人の犠牲者が増える。最後には麻薬組織側の肩を持つのはさすがに不可能な状況にまでなる。
    この泥沼に、ウィンズロウはどんな結末を用意しているのだろう。

  • 『犬の力』の続編。
    前作どんな結末だったのか思い出せないが、今作は一線を退いてひっそりと身を潜めるケラーと刑務所内で機を伺うバレーラの近況から始まる。

    バレーラの娘の葬儀を終え、機は熟したとばかりに物語が動きだし、メキシコ全土とアメリカDEA、ホワイトハウス周辺を巻き込んだ壮大な麻薬戦争の第二幕が上がる。

    いつもあと一歩のところでバレーラをとり逃がすケラー、脱獄後じわじわと当時の力を取り戻すバレーラ。
    登場人物が多すぎるし、敵味方が複雑に入れ替わる世界での話なので少し時間が空くと「あれ、これ誰だっけ」となる傾向は否めないが、総じて周辺人物達がうまい具合に2人の主人公の復讐合戦に織り込まれていて、慣れてくるとぐいぐい読まされてしまう。

    終わりなき戦いの様相を呈するこの話はどう終結するのか。
    下巻へ続く。

  • 傑作『犬の力』の続編だけあって、とにかく読ませる完徹本。
    時間をバッサリ持っていかれるので、合間読みなど決してできない。

    しかし残念ながら、"叔父貴"ことミゲル・パレーラのいない本作が、前作を超えることはない。
    『羊たちの沈黙』のレクター博士のような、作品の価値を決定づけるキャラクターの創造は今回はできなかったし、それは作者も自覚している。
    それでも続編を書かせたのは、ここ最近の麻薬物のドラマが当たる風潮に便乗しようとしたわけではなく、その後の物語世界をアップデートしなければならぬと決意させるほどの現実の状況の変化があったからだ。

    ウィンズロウという作者は実に巧みな作家で、『ストリート・キッズ』に連なるソフトで軽やかな犯罪小説を書くこともできるし、本作のように血で血を洗う暴力をハードにド直球で描くこともできる。
    言わば、あだち充と梶原一騎が同居している不思議な作家なのだ。

    「最も口数の少ない者が、最も大きな力を持っている」というティオの教訓を胸に着々とカルテルの支配を強めていくアダンと、不倶戴天の敵とされお尋ね者なのに死地に飛び込む形でメキシコ入りするケラーを軸に物語は展開するが、上巻の終わりになっても次々と新しいキャラが登場してきて目まぐるしい。
    メキシコの麻薬戦争の全体像を隅々まで写し取りたいという、作者の並々ならぬ意欲の現れだろう。

    上巻で描かれる麻薬ビジネスの実態は、お馴染のものかもしれない。
    この稼業は実は、退屈な数字の確認と会合の調整や世話の連続で、どこか単純作業に似た冗長さがある。
    警察と政治家との関係も、ちょうどトランプにおける、エースとキングの手札の奪い合いに過ぎない。
    しかしそれがメキシコを、「死体の山でお馴染みの国」に変えてしまったのだ。

    ただこれを、"メキシコの麻薬問題"と片付けてしまうわけにはいかない。
    「なぜ、こんなことに?  北米人がハイになるためだ。国境のすぐ向こうには巨大なマーケットが存在している。そして、飽くことを知らぬ隣国の消費マシーンが、巡り巡ってこの国の暴力をエスカートさせる。北米人たちは大麻とコカインを吸い、ヘロインと覚醒剤を打ちながら、図々しくも南の方向を示し、”メキシコの麻薬問題”と汚職体質を指弾する。これは"メキシコの麻薬問題“などではなく、北米の麻薬問題だ」
    と作者は登場人物に語らせている。

  • あの「犬の力」の続編が出るなんて。著者渾身の一作だと思うがまだ怒りは尽きなかったようだ。
    1ページ1ページが濃密で重く、汚職・裏切り・絶望と醜悪な報復。
    それでも、少しだけ愛とか道理があって。
    ドン・ウィンズロウの描く世界に引きずり込まれていく

  •  戦争というのは通常報道されている軍隊やゲリラによる国レベルのものと考えるのが一般的だと思う。しかしここで取り上げられるのは麻薬戦争である。麻薬との戦争に巨額の資金や武器を投じながらも、アメリカが密輸された麻薬に高額の金銭を支払っている事実を見つめ、大統領に麻薬の合法化を陳情までしたドン・ウィンズロウの問題意識は、実際に麻薬カルテルの戦争に巻き込まれて亡くなったジャーナリストたち(4ページに渡る)に本書を献じていることでもわかる。

     世の中が狂っている。麻薬カルテルも狂っている。それを追う捜査官も狂っている。ならその全貌をここで見せてやろうじゃないか。そういった気構えが作品に込められている。

     無論、作者ウィンズロウにとって麻薬を題材にしたのは初めてのことではない。三人の若者を主人公にして麻薬を道具にした富と栄誉とその代償を痛みとともに描いた実に抒情詩的な作品『野蛮な奴ら』『キング・オブ・クール』のシリーズ二作は巨大カルテルに翻弄されつつ青春を投じてゆくエネルギーに満ちた作品であった。

     そして何よりもDEA捜査官アート・ケラーと宿命の対決を余儀なくされる麻薬王アダン・バレーラの30年戦争を描いた『犬の力』である。本書は、一旦収束を見たかに思われた『犬の力』のその後を10年を描いた完結編なのである。あまりにも大作であるゆえに、『犬の力』が十分に大作と感じた向きには、この作品に向き合うのにある種の覚悟が必要なくらいだ。

     メキシコ麻薬戦争を題材とした現代の『戦争と平和』という言葉は間違ってはいないと思う。大量殺戮が日常となった国境の街フアレスを中心に、カルテルの戦争はセータ隊なる武装勢力による事実上の民間支配まで生み出してゆく。

     かつて『ダブル・ボーダー』(ウォルター・ヒル監督/ニック・ノルティ、パワーズ・ブース主演)という映画で一台麻薬武装帝国を国境地帯に築いたアメリカ人とこの王国を破壊しに行くUS側の特殊部隊の戦争を見て、こんなことあるわけない、ヒル監督が指示したペキンパ監督の『ワイルドバンチ』へのオマージュ映画だ、くらいに思っていたのだが、それを圧倒する世界が、事実この21世紀に、ほぼ現在進行形のような形で小説に描写されるのだ。フィクションと称しながらほぼ事実に基づいた形で。

     冷酷で機械的に殺戮と拷問に明け暮れるカルテル間戦争の狭間に、救いとなるのはジャーナリストや彼らを取り巻く勇気ある個人たちというチームの姿が見られる。彼らの命を賭けた取材、正義感、そして魂の強さは、本作のなかで白眉と言える部分だ。こうした民間の闘いはもちろん多くの犠牲を伴うが、屈しない精神がなければこの世には救いがない、そんなことをどうしても書きたかったのであろう作者の真情が嫌というほどわかる。

     力と魂のこもった作者一世一代の大作である。ここのところ二作同時刊行された『報復』『失踪』に続けて、作家的才能を目いっぱい発揮しているかに見えるウィンズロウの現在。昔、青年探偵ニール・ケアリーのシリーズを出していた頃(あれはあれでぼくらを十分に魅了した)に比べると、まるで別の作家だ。スケールが一回りも二回りも大きくなり、視野が広がり、現代の預言者のような風格までついて来た。われらがドン・ウィンズロウはどこまで高く飛翔してゆくのだろう。

  •  メッチャクチャ面白い( ´ ▽ ` )ノ
     個々のエピソードやキャラクター設定は幾多の小説・映画・ドラマで見たことあるようなものばっかなんだけど、とにかく語り口・構成がバツグンにうまい( ´ ▽ ` )ノ
     上巻だけで600ページを超す大長編を、よくぞこれだけヒリッヒリの緊張感を持って書けるもんだ( ´ ▽ ` )ノ
     書いてて(訳してて)頭がおかしくなんないのかな( ´ ▽ ` )ノ

     しかし、どこまで現実を反映してるのかわかんないけど、21世紀にもなって(アメリカのおとなりで)いまだ戦国時代を生きているメキシコという国よ(゚д゚)!
     サボテン、テキーラ、バンジョー、ソンブレロ、アミーゴ!、なんていうハンナ・バーベラアニメで植え付けられた陽気なテンプレイメージがガラガラ音を立てて崩壊……(>_<)
     まるで信長秀吉が闊歩するような世界……っていうより、それより更にさかのぼってヴィンランド・サガ(10世紀のバイキング)?(゚д゚)!
     ギラギラテラテラむき出しの欲望、クスリ、カネ、銃、オンナ、暴力、絶対的支配と隷属……仁義なき戦い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
     メキシコなんて、ぜったいにぜったいに行かない(>_<)
     クラックもコカインも、ダメ絶対(>_<)

     関西電力への強引賄賂問題が今年マスコミを賑わせたけど、似たようなことが本書で描かれていて(カルテルの賄賂を拒んだ警官は見せしめに殺される)いろいろ考えさせられた(>_<)



     いつまでたっても下巻が入手できないから上巻だけ先に読んじゃったけど、たぶん今後もこのまんまだろうな……ブックオフはとにかく翻訳ものが少ないからなあ……手に入っても四年後? 五年後?……内容忘れちゃってるだろうな……(´ε`;)ウーン…
     ま、悪玉アダンの破滅を信じてる( ´ ▽ ` )ノ。負けるな、絶対正義ケラー( ´ ▽ ` )ノ

    「犬の力」どうよう、すっかりドン・ウィンズロウ ワールドに魅了された( ´ ▽ ` )ノ
     シリーズ外の作品もぜひ読んでいきたい( ´ ▽ ` )ノ

    2019/12/18
     


     

  • 前作に引き続き読み応え充分の大作。
    ただ、前回よりもたくさんの血が流れて残酷なシーンも多い。
    けどこれが実際の麻薬戦争なんだろうな…
    グアテマラってコーヒーのイメージしか無かったけど今後は麻薬のイメージになってしまいそう…
    ラスト良かった。

  • 犬の力続篇

  • 登場人物が多く、錯綜していて誰が誰か解りにくかった。のは、私だけ?
    とにかくメキシコは恐ろしい。

全42件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドン・ウィンズロウの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドン・ウィンズロ...
高野 和明
トム・ロブ スミ...
ドン・ウィンズロ...
ドン・ウィンズロ...
アーナルデュル・...
ドン・ウィンズロ...
米澤 穂信
ドン・ウィンズロ...
ドン・ウィンズロ...
トム・ロブ スミ...
ロジャー ホッブ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×