ザ・カルテル (下) (角川文庫)

制作 : 峯村 利哉 
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (591ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041019672

作品紹介・あらすじ

捜査陣の中に、裏切り者がいる。選び抜かれたメンバーの誰が? 密かに調査を進めたケラーは、驚愕の事実に対峙する。そんな中、バレーラが次なる狙いと定めたシウダドフアレスでは、対立する勢力が衝突し、狂気と混沌が町を支配していた。家族が引き裂かれ、命と尊厳が蹂躙される。この戦争は、誰のためのものなのか。圧倒的な怒りの熱量で、読む者を容赦なく打ちのめす。21世紀クライム・サーガの最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • はい、というわけでマリモさんに捧げるレビュー「3分deザ・カルテル下巻」ですく(`・ω・´)


    ―注意!―注意!―注意!―注意!―注意!―

    この先、角川に提訴されかねないレベルでネタバレしています
    今後『ザ・カルテル』をわずかでも読む可能性のある方、つかマリモさん以外は絶対に読まないでください!

    痴漢ダメ!絶対!(痴漢じゃないわ!)












    〜第三部〜

    裏切り者は新政権の誕生により警察トップに登り詰めたヘラルド・ベラだった
    長期間清廉潔白な警察官を演じ続けていたベラこそがアダン・バレーラの協力者だったのだ

    真実を知ったケラーは、検事局のルイス・アギラルと共に秘密裏に反撃を開始、まずは警察のナンバースリーでベラと幼い頃から行動を共にするパラシオスを落とし裏切りの証拠を集める

    しかしいよいよベラを追い詰める作戦が開始される朝、パラシオスが殺害される
    情報は漏れていたのだ
    作戦の中止を余儀なくされたケラーとアギラル
    アギラルはアメリカへの脱出を図るが、飛行機ごと爆破されてしまう
    同時にベラもまた利用価値が無くなったと判断されアダンの手によって無慈悲に射殺される

    そしてケラーの元にも追っ手が差し向けられる


    DEAの助けにより難を逃れたケラーは新たな「力」を得る
    それは暗殺部隊の指揮官だった
    そう遂に殺し合いが始まったのだ


    〜悪魔がそそのかせるのは、そそのかされたい人間だけだ〜


    暗殺リストの最上位は警官たちを殺して回ったとされるディエゴ・タピア
    実際にはアダンの仕業と知っているケラーだが、ディエゴを始末することがリストの2段目に位置するアダンに手をかける近道だとディエゴを追う

    追い詰めるために必要なのは”密告者”

    そして選ばれたのは”狂気の”エディ

    無慈悲に作戦を遂行する特殊部隊
    ディエゴの死と引き換えに自由を得たエディは言う

    「知ってるか?ヤクを売る奴は絶対にいなくならない。だったら、女子どもを殺さない人間が売ったほうがいい。どうせ誰かが売るんだったら、あんたらも、おれみたいな人間に売らせるべきなんだ」

    だがひとつの「死」は別の「死」の呼び水に過ぎなかった
    「死」の報復により罪もなき人びとが標的となる事態に直面したケラーは生まれ故郷の国境の町ファレスに戻っていた元恋人の医師マリソルと共に恐怖に立ち向かうことを決意する

    〜第四部〜

    繰り返される血の報復は市民たちをも巻き込み、オチョア率いるセータ隊とケラーが協力するメキシコ海兵隊の特殊部隊が報復合戦を繰り広げる

    そんな中、故郷を戦場にされ怒りに燃える”おんなたち”が立ち上がる
    そしてケラーの心配をよそにマリソルは町長となって闘いに身を投じてしまう

    ”われわれはここにいる”

    だが故郷を守る闘いに身を捧げたおんなたちに与えられたのは称賛や支援ではなく銃弾だった

    マリソルもまた銃弾を浴びせられるが、奇跡的に一命をとりとめ不屈の闘志で闘いを続ける

    時を同じくして麻薬の王たちは自分たちの闘いを有利に進めるためジャーナリストたちに近づいていく

    魂を売り渡せ、さもなくば死を

    ジャーリズムが沈黙する中、メキシコの麻薬関連の殺人被害者は年間一万五千二百七十三人に達する

    狂ったように殺戮を繰り返すセータ隊が徐々にメキシコ全土を手中に収めつつある中、セータ隊はアメリカの捜査官すらも手にかけ、マリソルの大切な妹分をも惨殺する

    セータ隊への増悪を募らせるDEAの上層部は同じくセータ隊によって自分の娘を身籠っていた情婦マグダを殺されたアダン・バレーラと禁断の同盟を画策する

    アダンとの同盟など決して認められないケラーの前に30年ぶりに姿を現したアダンがケラーに一時休戦をもちかける
    そして麻薬ビジネスはすでに世界の一部となっており、繰り広げられているのはすでに戦争であり、ひとりの力では何も出来ないと説くのだった

    復讐を誓うケラーは魂を売り渡し、アダンとの握手に応じる

    憎しみは憎しみさえも打ち負かす

    〜第五部〜

    セータ隊とシナロア・カルテルとの壮絶な抗争が続く中、ケラーはセータ隊の情報をシナロア・カルテルへの提供を続ける

    しかしセータ隊の隊長オチョアとNo.2のZ-40ことミゲルの行く方は掴めなかった
    それもそのはず二人はメキシコの隣国グァテマラに潜伏していたのだ

    第三国に手を出せないDEAはアメリカ国内にいるミゲルの弟ロランドに狙いを定めヨーロッパで罠を仕掛ける

    セータ隊がイスラムのテロ組織に武器を売った「事実」を作り上げることに成功したケラーはホワイトハウスからの”実在しない”支援を取り付け自ら傭兵部隊の一員としてグァテマラに向かう

    そんなケラーにマリソルは復讐の連鎖を断ち切り終わりにしてほしいと懇願する
    しかしケラーはマリソルに別れを告げ聖戦の地グァテマラへと旅立ってしまう


    一方、国境の町ファレスでは無関心の罪に警鐘を鳴らし、ペンで闘ったジャーナリストもセータ隊により非業の死を迎えペンを折られ、ケラーの復讐の書に新たなページが書き加えられる

    そして双子の父となったアダン・バレーラは息子たちの未来のためにセータ隊との和平に傾き始め、遂には義父でもあるナチョに和平交渉を依頼する
    だがそれはオチョア暗殺を確実にするためのアダンの策であった

    傭兵部隊のケラー、シナロア・カルテルのアダンとナチョ、セータ隊のオチョアとZ-40、少年兵士チュイ、戻ってきたエディと”生き残った”主要キャストがグァテマラの山村に集結する中、和平会談の幕が上がる

    しかしアダンはミスを犯す
    セータ隊に惨殺された愛人マグダに全く言及しないというミスを
    偽りの和平会談を見破ったオチョアに先手を取られてしまったケラーだが執念と兵士チュイの凶行、エディの助けなどによりオチョアとZ-40を倒すことになんとか成功する

    一方、セータ隊のキャンプ地から命からがら逃げ出したアダンは自分を守るとの誓いを立てたケラーが必ず自分を見つけると確信して助けを待つ
    そして現れたケラーに自分は引退すると宣言するが、ケラーは誓いを破りアダンの顔に銃弾を撃ち込み二人の闘いに終止符を打つ

    〜エピローグ〜

    引退したケラーはメキシコの地で精神が崩壊し成長を止めてしまったチュイを引き取り育てている

    麻薬との戦争はだらだらと続いており
    玉座はまだ空いたままだった

    • ひまわりめろんさん
      しっかし、わいまとめるの上手いな(忘れた頃に自画自賛)
      しっかし、わいまとめるの上手いな(忘れた頃に自画自賛)
      2023/11/09
    • マリモさん
      あらすじに覚醒?
      自分の備忘録にもいいんですよ(*゚∀゚*)
      あらすじに覚醒?
      自分の備忘録にもいいんですよ(*゚∀゚*)
      2023/11/09
    • ひまわりめろんさん
      めんどくさいのでやりません
      忘れるのも能力のうちw
      めんどくさいのでやりません
      忘れるのも能力のうちw
      2023/11/09
  • ものすごい作品だった。
    下巻序盤のベラの裏切りと結末には衝撃を受けたけれど、それも遥か昔に思えるくらい、様々な勝利、敗北、死が繰り返され、随分遠いところまで連れて行かれた気分。

    前作『犬の力』よりも、バレーラ一族の悪の魅力が薄まり、麻薬戦争の惨さや愚かさの告発にはっきりとフォーカスされた作品になった印象。
    前作とは比べものにならないくらいグロい暴力。これが実際にもあることとは信じられないほど。
    でも不謹慎ながら、誰が生き残るかわからない展開はエンタメとして面白すぎて、ぐいぐい読んだ。

    ただ血みどろの展開の中で、ケラーとマリソルの恋は心温まった。マリソルの生還にケラーが「ありがとう、ありがとう、ありがとう、生きていてくれて。」と思うのには胸打たれた。
    それなのにこの静かで侘しい結末…容赦ないぜウィンズロウ。

  • 本を持つ手が真っ赤に染まっていく錯覚に陥るほどの膨大な量の血が流れる。延々と繰り返される殺戮と虐殺。ウィンズロウは、いつ、どこで、誰が何人殺されたと丹念に書く。死者を積み重ね、カウントする。なぜ省くことなく、記録するのか。不毛の大地。対抗手段も持たず殺されていく人々。生きた証しは、犯され、焼き尽くされ、死者の無機質な数字へと変わり果て、地の底へと投げ捨てられる。一切の救いなどない無常の世界。誰が、一人ひとりの名を刻みつけるのか。ウィンズロウは、「麻薬戦争」で犠牲となったジャーナリストの名を本書の冒頭に置き、声無き市民の代弁者として記者の死を記す。類無き暗黒のクロニクル。この激烈なる警告を含んだ物語を真摯に受け止め、ウィンズロウの煮え滾る怒りを共有し、今現在も犠牲となっている人々に思いを馳せるべきだろう。

    圧倒的な破壊力でウィンズロウの名を一気に高らしめた〝前篇〟「犬の力」は、麻薬カルテルが強大な権力を掌握するまでの抗争の年代記であり、クライム・ノベル/ノワールの新時代到来を宣言した記念碑的傑作だった。「個」に焦点を当て、成り上がるためには手段を選ばない者どもの狂気、麻薬産業の施しを受けつつ生きながらえる国家の有り様を、DEA捜査官アート・ケラーを縦軸、麻薬王アダン・バレーラを横軸にして、緊迫感溢れる劇的な展開で読ませた。その後篇となる「ザ・カルテル」は、社会的視野を更に拡げ、自国政府を遙かに超える冨と権力を手にしたカルテルの栄枯盛衰を生々しい描写で徹底的に記録し、ケラーとバレーラの最終的決着までを描き切る。

    刃向かう者は一人残らず殲滅する。その暴力の噴出の凄まじさに圧倒される。前篇には少なからずあった「希望」の残滓も消え失せ、加熱する国家ぐるみの麻薬戦争には未来も無く、ただ虚無感のみが漂っていることを序盤で示す。バレーラ脱獄を知ったケラーは、何をしようとも無駄だという諦めのムードを断固拒否し、自らも暴力を行使しつつ、カルテル潰しに再び着手する。だが、立ちはだかる敵は、より力を増したバレーラのみならず、公然とメキシコを分割し所有する凶悪な暴力信奉者らであり、力への対抗は力でしかないことへの無力感に苛まれていく。激化する覇権争いに乗じてカルテル同士が潰し合う火種をまき続けるケラー。そんな中、非暴力で立ち向かう女性医師、言葉の力で変えていこうとするジャーナリストらとの交流が、孤独なケラーを変えていく。さらに、老いたバレーラは血統へのこだわり故に自滅への路を歩み始める。辿り着いた終幕の何ともいえない虚脱感を、結局は暴力でしか解決し得なかったことへのニヒリズムとみるか、全てを破壊したのちの再生への兆しと受けとめるかは、人それぞれであろう。

    浅はかな杞憂かもしれないが、ウィンズロウの身が心配だ。「犬の力」を読み終えた時と同じ思いが去来する。10年の間隔を空けているとはいえ、前人未踏の地を開拓した凄まじい小説を二作も上梓して、完全燃焼してしまったのではないか。例えフィクションとはいえ、永年にわたるメキシコ/アメリカ両国の恥部ともいうべき麻薬問題と実在する巨大カルテルの罪過を抉り出して、生命の危険に曝されてはいないのか。登場人物は架空だが、主題とするカルテルの実態は、ほぼ事実に即している。ウィンズロウは、半世紀にわたる人々の血に染まった地獄絵図を俯瞰しつつ、敢然と地に降り立つ。そして、五感全てを研ぎ澄まして、無残な惨状を言葉に置き換えていく。
    この壮大なる暗黒史は、ルポルタージュに迫る力強さを持ち、鬼気迫るウィンズロウのジャーナリスト精神と作家魂が昇華した超ド級のエンターテイメント大作である。

  • 『犬の力』続編。冒頭の静けさから一気に引き込まれる。バレーラが脱獄しケラーが追う。麻薬戦争、憎しみ、殺し、家族。さまざまなものが絡み合って闘いが始まる。歯止めの効かない争い、虐殺。前作よりも明らかに死者の数が増えている。そこまでして守りたいもの、家族や近しい人を危険に晒してまでも手に入れたいもの、そしてその果てにあるもの。この憎しみに終わりはあるのか。圧倒的な恐怖と血の匂いに支配された物語。緊張感や悲しみ、絶望をこれでもかと伝えてくる。次作で完結。楽しみ。

  •  戦争というのは通常報道されている軍隊やゲリラによる国レベルのものと考えるのが一般的だと思う。しかしここで取り上げられるのは麻薬戦争である。麻薬との戦争に巨額の資金や武器を投じながらも、アメリカが密輸された麻薬に高額の金銭を支払っている事実を見つめ、大統領に麻薬の合法化を陳情までしたドン・ウィンズロウの問題意識は、実際に麻薬カルテルの戦争に巻き込まれて亡くなったジャーナリストたち(4ページに渡る)に本書を献じていることでもわかる。

     世の中が狂っている。麻薬カルテルも狂っている。それを追う捜査官も狂っている。ならその全貌をここで見せてやろうじゃないか。そういった気構えが作品に込められている。

     無論、作者ウィンズロウにとって麻薬を題材にしたのは初めてのことではない。三人の若者を主人公にして麻薬を道具にした富と栄誉とその代償を痛みとともに描いた実に抒情詩的な作品『野蛮な奴ら』『キング・オブ・クール』のシリーズ二作は巨大カルテルに翻弄されつつ青春を投じてゆくエネルギーに満ちた作品であった。

     そして何よりもDEA捜査官アート・ケラーと宿命の対決を余儀なくされる麻薬王アダン・バレーラの30年戦争を描いた『犬の力』である。本書は、一旦収束を見たかに思われた『犬の力』のその後の10年を描いた完結編なのである。あまりにも大作であるゆえに、『犬の力』にもう十分と感じた向きには、この作品に向き合うのにある種の覚悟が必要なくらいだ。

     メキシコ麻薬戦争を題材とした現代の『戦争と平和』という言葉は間違ってはいないと思う。大量殺戮が日常となった国境の街フアレスを中心に、カルテルの戦争はセータ隊なる武装勢力による事実上の民間支配まで生み出してゆく。

     かつて『ダブル・ボーダー』(ウォルター・ヒル監督/ニック・ノルティ、パワーズ・ブース主演)という映画で一大麻薬武装帝国を国境地帯に築いたアメリカ人とこの王国を破壊しに行くUS側の特殊部隊の戦争を見て、こんなことあるわけない、ヒル監督が指示したペキンパ監督の『ワイルドバンチ』へのオマージュ映画だ、くらいに思っていたのだが、それを圧倒する世界が、事実この21世紀に、ほぼ現在進行形のような形で小説に描写されるのだ。フィクションと称しながらほぼ事実に基づいた形で。

     冷酷で機械的に殺戮と拷問に明け暮れるカルテル間戦争の狭間に、救いとなるのはジャーナリストや彼らを取り巻く勇気ある個人たちというチームの姿が見られる。彼らの命を賭けた取材、正義感、そして魂の強さは、本作のなかで白眉と言える部分だ。こうした民間の闘いはもちろん多くの犠牲を伴うが、屈しない精神がなければこの世には救いがない、そんなことをどうしても書きたかったのであろう作者の真情が嫌というほどわかる。

     力と魂のこもった作者一世一代の大作である。ここのところ二作同時刊行された『報復』『失踪』に続けて、作家的才能を目いっぱい発揮しているかに見えるウィンズロウの現在。昔、青年探偵ニール・ケアリーのシリーズを出していた頃(あれはあれでぼくらを十分に魅了した)に比べると、まるで別の作家だ。スケールが一回りも二回りも大きくなり、視野が広がり、現代の預言者のような風格までついて来た。われらがドン・ウィンズロウはどこまで高く飛翔してゆくのだろう。

  • 面白かった。
    早く読めば良かった。
    描かれている年月は犬の力よりも短いけれども、犯罪と暴力に巻き込まれる地域、人が拡がる。
    訳文も良かった。
    これが麻薬戦争の現実。

  • メキシコの麻薬戦争を舞台にした作品。続編らしいが本書だけでも十分楽しめる。が、それよりこのような殺戮が現実に起こったことだと思うと本当に恐ろしい。

  • 期待度はマックス。あの「犬の力」の続篇なのだから、当然だ。勇んで読み出したのだが、まったく思いもかけないことに上巻を読むのにえらく時間がかかり、なんと途中で投げ出しそうになってしまった。

    いやいや、つまらなかったわけではない。断じてない。なんと言ったらいいか、エンジンがかかりそうになってはプスプス止まってしまうような感じで、物語の流れにうまくのっていけなかったのだ。メキシコの麻薬組織同士の相関図があまりに複雑で、なかなか頭に入らない。次々登場する人物の人生は皆たっぷりと濃く、読みとばしていくことができない。休む間もなく繰り出される凄惨な暴力、死、死、死…。

    長くて複雑な話も、むごい話も、決して苦手なわけではないと思ってきたが、これはちょっとつらかった。たぶん、これが私たちの知らない「現実」を描いているからだろう。底なしの欲望と残虐さにまみれた悪人たちの姿にも震撼するが、最も胸に刺さるのは、そうした悪に巻き込まれていく人たちの恐怖と絶望だ。むき出しの暴力が日常となり、政府や警察もギャングと同じ(かそれ以上)に恐ろしい存在である社会で生きる…、その無力感が苦しい。

    下巻に入ると物語はスピーディーに展開していくが、正義と悪はより混沌としていく。何が正しいことなのか、主人公ケラーにも答えはない。軍人である息子を殺されたイルマという女性が(彼女もまた報復のため殺されるのだが)、ケラーの手を取って語りかけた言葉が心に残った。
    「アルトゥーロ、殺し返しても復讐にはならないよ。生きることで復讐するんだ」

  • 沢山の人物が出てきては去っていく。上巻とそれなりのページ数あるがグイグイ引っ張るストーリーと筆力だな。続く「ボーダー」は更に厚くなっているようだ。少し休憩してから取り掛かろう。

  • ケラーとバレーラの年を重ねることによる関係性の変化、周囲の人、環境の変化、変わらず増々激化する麻薬戦争。ラストに向かい壮絶な殺戮の繰り返しが背景でながれるシーンのように物語が進み、一気に読まずにいられなかった。
    犬の力と同様、それ以上かもしれない傑作。

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著者プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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