- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041019894
作品紹介・あらすじ
今日も「きまり屋」には、奉公人を雇いたい者、雇われたい者がひきもきらずやって来る。それでも、面倒が起きると助っ人として駆り出されるのは、決まっておふく。色気より喰い気、働きもので気立てのよいおふくは、金に渋い大将、内証に構わない女将、自分の弱さを売り物にする座頭、我侭妻に威張りん坊亭主…揃いもそろって偏屈な雇い主たちに憤慨したり閉口したり、時に同情したり。やり切れぬ思いをこらえながらも、様々な事情を抱えた人々と接するうち、おふくは姿をくらました夫への未練にも、自然と区切りをつけてゆく-。
感想・レビュー・書評
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(15-32) おふくは経営者一家の一人だが大店ではないのでせっせと働かなくてはいけないが、家族にとても愛されている。愛されてるけど甘やかされてはいないことに好感が持てた。しっかり者なのに敗れた結婚をいつまでも引きずっていることに最初のうちいらいらしたが、この小説はおふくの成長物語なのだからしかたない。
連作短編で一章ごとに少しずつおふくが変わっていくのが良かった。題名になっている最後の章のかよとおふく、かっこよくて素敵だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
口入れ屋(今の派遣会社だと思われる)のきまり屋のおふく。失踪した元夫への未練を引きずりながらも、女中の不足するお店に短期の手伝いにいく。
買い出しの支払いをしてくれなかったり、盲目の障害を言い訳に理不尽な要求をしてきたり、奥さまを女中として扱い蔑んだり。はたまた器量よしではないが、お金のない病人をタダで治療する医師に恋心を抱いたり。奉公先は様々でいろんな人がいる。不当な扱いも沢山受けるが、おふくは決して負けてない。弱い立場の人に出会うとかばって助ける。また、奉公先の粗末な食事に耐えたあと、実家で叔母の手料理に舌鼓を打つ様子は見ていてほっこりする。 -
最後が表題作とは思わなかった。
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2020年10月14日
よりが戻るかと期待していたのに…
利用ばかりされ、自分が軽んじられるのは悔しいし、悲しい。
身分差や女性蔑視が現代とは比べ物にならない時代だろうけど、理不尽な扱いに腹が立つ。
利用して怠けている者よりも、利用される正直者に私はなりたい。
口入れ屋きまりやは、その代表だ。
愛想を尽かされた雇い主は梯子を外されてその後どうやって生活するのだろう。小気味良い。 -
妻とは何んだろう。女とは何んだろう。
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祖父の代からの口入屋「きまり屋」
今は双子の伯父とおふくの父が一緒にやっている。
姿形も女の好みも仕草さえよく似た双子の伯父と父。
おふくは一度嫁いだものの、出戻りだ。
おふくの母親は労咳でなくなっていた。
伯父の妻、おとみも気持ちがいい。その次男彦蔵も幼い頃から一緒に育ったので本当の兄弟のように仲がいい。
頼まれた求人が、なかなか見つからない場合、
おふくは、そのつなぎに駆り出されるのであった。
度々、奉公先での家庭の中の問題や事件を見聞きし、
おふくも成長してゆく。
短編作品が口入屋を通して続いてゆき、最終話ではしっかり自分の心を見つめる余裕もできる成長した女性になったのだった。 -
この人の書いた本が好きで、続きが読めないのが残念。イマモムカシモ、普通の生活とは、こんな物かもしれない。
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もっと続きと読みたかった。おふくのような人を目指そう。
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宇江佐真理氏の人情味あり、笑いあり、悲哀あり、どうにもらならい人生を見つめる今昔を なんと上手にまとめ上げているのか!
いつも、本を手に取ると、一気に読まずにいられない。
6話からなる連作。
江戸の口入屋の番頭の娘で、でもどりのおふくが、短期間の仕事に助っ人として駆り出されて、色んな事情を抱えた人たちと接して、自分を見つめて、人生の再出発を鑑みるのである。
最初の書き出しもうまい!
朝の掃除を終えたおふくが箱膳の前に座ったところから話が始まる。
作者が、おふくの姿を食から表していて、人物がどのような人柄化をうまく表現している。
お金も家に入れず、それでいて、店のお金を持ち出して、何も言わずに出て行った夫への未練を捨てることが出来ないおふく。
「きまり屋」の口入屋に出戻ったおふくは駆り出される奉公先で、金に渋ちんの大将、家のことを顧みない女将に、目が見えないという障害を武器にする座頭、貧乏暇ありの独り者の医師、病人で我儘な妻、武家の虐げられた妻、、、それぞれ人の世の中を垣間見る。
お金って、、、夫婦って、、、生きるって、、、
最後の「昨日みた夢」で、若奥様のかよが、虐げられながらも、優しくしてくれた舅を看取り、我が実の娘織江と和江共、未練も残さず、おふくと家を出るのであるが、そこまで耐え忍んで仕えなければいけなかったのか?と。
おふく自体も、置き去りにした夫の甘い言葉も、吹っ切ることが出来るように、強い女に成長していた。
作者宇江佐真理氏が、存命だったら、もっと、このシリーズを楽しめたのにと、思うと、残念で仕方がない。